3.異世界での生活
区切りがよくなかった。
今日はこの異世界のことについてサリエンスから少し詳しく教えてもらった。
近いうちに森の外にも行くことを考えている。
この世界、科学もそれなりに発達している。魔法もある程度科学的に解明されて研究されていた。魔法科学という分野らしい。
それでもまだまだ魔法には未知の部分が多いという。
魔力はエネルギーとして利用されている。電気も使われているが電化製品より魔道具の方が一般的に使われているという。
サリエンスの屋敷には電化製品はほとんどない。代わりに多くの魔道具がある。魔力は太陽光や大気中から得ることができる。
化学的エネルギーからも魔力を作ることができるから石油や石炭や天然ガスから魔力を作ることは可能だ。
電気も基本的に太陽光発電や燃料電池から作られていることも付け加えておこう。内燃機関の技術もあるが使われていない。
素材には合成樹脂や合成繊維があり天然素材と共に使われている。合成素材の廃棄物処理もしっかり行われ自然への負荷は少なくなるように工夫がされている。
勿論紙は地球と同じようにパルプを原料にした物が一般的だが魔術的な本には魔物の皮から作られた羊皮紙のような紙が使われている。
魔物から採られる素材は魔石や内臓や骨や肉や血液などがあるが薬草と共に魔道具や魔法薬などの原料として使われている。
魔物の肉は食材にもなっているが物によっては適切な処理が必要な場合もある。
魔石は魔力を蓄えるのに必要な素材なので重要だ。魔物から得られるほかに魔石鉱山から産出される。未だに合成で工業的に作ることはできないという。
交通機関は馬車・自転車・電動二輪車・電動四輪車・魔動車・魔動列車・魔動船・魔動飛行船が存在する。
後は魔力を大量に消費するために使い勝手が悪いが転移門も存在している。
貨幣は銅貨・銀貨・金貨があり紙幣はない。銅貨10枚で銀貨1枚に、銀貨10枚で金貨1枚になる。
砂金10gが金貨3枚だというから金貨1枚が1万円弱程度かな。
これらの硬貨には不壊や偽造防止などの魔法が施されており世界共通で使える。
紙幣がない代わりに魔道具の通貨カードがありそれによって貯金から支払う事ができる。
通貨カードは本人にしか使えないというセキュリティのしっかりとしたものだ。
通信網も魔法によって構築されておりスマートフォンのような魔道具がある。電話やメールもでき、落としても本人のところに戻って来る機能がある。
この通信の魔道具はアクセサリの形をとっている物も多いので多くの人は身につけている。そう言えば私の持つ『賢者の腕輪』にも通信機能があった。
この通信機能を起動すると頭の中にスマートフォンのような画面が浮かんできた。これで色々な事が検索できる。
このだけ科学や魔法が発達した世界で神様は大事にされており存在も確認されている。まあ邪神という人間に害をもたらす神様もいるという。
但し神様はあまり人類の生活には直接介入はしてこないらしい。悪魔がいて魔物がいてアンデッドがいて神様が存在する世界。魔人や魔王はいないようだが。
人類の人種は人間族・獣人族・妖精族・森人族・山人族・海人族・天人族がおり複数の種族の血を引く者もいる。
貴族もおり王国や帝国もある一方で共和国も存在する。一部の国には奴隷制度がある。
言葉は世界共通だ。私はサリエンスによって言語理解の能力を供与されたのでこの世界の言葉を使える。文字も書ける。
ファンタジーによく出てくるギルドもある。ハンターギルドや商業ギルド・職人ギルドや農業ギルドや漁業ギルドなどがある。
ハンターは魔物討伐やダンジョン探索を行い生計をたてている。そうこの世界にはダンジョンが存在している。ダンジョンからは様々な素材を手に入れることができる。
この世界の1年は360日、ひと月は5週の30日。そう一週間は6日だ。一週は火曜日・水曜日・木曜日・金曜日・土曜日・休養日だ。休養日は無曜日ともいう。
休養日以外は五行に相当する。そしてこの火水木金土が魔法の基本五属性だ。魔法にはそれ以外にも光・影・雷・空間・聖・無という特殊な上位属性もあるがこちらはほとんど使える人がいない。
私は今使えるのは聖属性だけだ。全魔法適性があるから将来的は全属性が使えるようになるらしい。
多くの人が生活魔法か一つぐらいの属性魔法を使えるらしい。
魔導士になると二つ三つの属性が使えるらしい。
魔法の基本五属性が使えるのが大魔導士。基本五属性に加えて基本五属性以外の属性が使えると聖人・聖女だったり勇者や賢者や大賢者になる。
私は聖魔法が使えても基本五属性はまだ使えないのに『賢者』がついているのは何故だろう?適性を持っていると使える扱いになるのかな?
サリエンスは基本五属性に加えて光・雷・聖・無が使え大賢者だった。
言語は全世界で共通語が使われている。私には何故か簡単に理解できた。言語理解能力でも持っているのだろうか?
長さや質量などの単位は地球と同じだった。物理法則の多くは地球と共通だった。ただそこにエネルギーとしての魔力が介入してくる。
異世界アーステルドには20の国が存在する。大陸が3つと大きな島が4つ。
3つの帝国と10の王国、そして6つの共和国と1つの宗教国家。宗教は1つしかない。神が確認されている世界だから当たり前か。
その一方でどの国にも属さない地域がいくつかある。聖域とか魔の地とか呼ばれている。サリエンスの屋敷がある場所もその一つだ。
サリエンスの住む『聖魔女の森』はカルハ大陸の中央から南部にある聖域だ。聖域の中でも最も広く、その広さは南北4000km東西1600kmにも及ぶ。
亜熱帯から冷温帯まであり、四季も存在する。南の方は海に面しているが標高3000mの山もある。
サリエンスの屋敷は暖温帯にあり標高は200m位だ。『聖魔女の森』の北側にはスルテン王国、東にはハサンテ共和国、北西にはフレテル王国、西にはヤマト王国がある。
ヤマト王国の西にはカザン共和国、ハサンテ共和国とスルテン王国の東にはハミル帝国がある。スルテン王国とハミル帝国の間では紛争が絶えない。
『聖魔女の森』は聖域ではあるが立ち入りが禁止されている訳ではない。まあ、サリエンスの屋敷の周囲200kmは結界によって許可のない人類は立ち入ることができない。
聖魔女の森の中にも街がいくつかある。全て聖魔女サリエンスが許可して造られた街だ。その多くがダンジョンの入り口を管理している街だ。
『聖魔女の森』にある街は森やダンジョンで素材を集めてくるハンターにとって大事な拠点になる街だ。
そして今その街の一つであるクルボストンに来ている。何日かのアーステルド学習会と訓練の後の修学旅行というところか。一人だけど・・・。
「にぎやかな街だな」
まだ朝7時なのにこの時間から活気のある街だ。
クルボストンにもダンジョンがある。ここには多くのハンターとそのハンターを支える職業の人たちが集っている。
ハンターはダンジョンや森で素材集めを行う事によって生計を立てている。集められた素材を商人が買い各地に運んでいる。
ハンターが生活するための宿や食堂や道具屋や薬屋や医療院もある。そしてそれを取りまとめるギルドも存在する。
聖域の中の街は絶海の孤島のようなものだ。聖域の中の街自体は結界で聖域に住む魔物から守られている。域外からは道も鉄道もない。
だから普通の人類では域外からここまで移動してくることはできない。普通なら。2級以上のハンターなら聖域内を自由に移動可能だとも言われている。
そしていつもは空にも魔物『聖域の空の守護者』がおり魔動飛行船での移動も危険だ。魔動飛行船にも武器はあるが『聖域の空の守護者』には通用しない。
但し10日に一日だけが『聖域の空の守護者』が活動しない日がある。だから聖域の中の街との往来はこの日に魔動飛行船で行う事になる。
まあ、貴族や大商人や役人の多くは転移門を使って移動するのだが・・・。
一方、街にあるダンジョンの魔物はダンジョンから出てくることはできない。ダンジョン内の魔物はダンジョンから出ると魔石を残して消えてしまう。
ダンジョン内の魔物はダンジョンで致命傷を負っても消えてしまうがこの時は魔石と共に様々な素材を残す。その素材は金属塊だったり合成樹脂だったり合成繊維だったりなのだが。
ダンジョンには魔物以外の動植物も生育している。これらは狩ったり採集して消えることはない。これらはダンジョン外の同種のものより生体内の魔力が高く、良質の素材や食材として重宝される。
ダンジョンには罠が存在するが宝箱はない。
ダンジョンには魔石や鉱物を採掘できる場所もある。
ダンジョンの9割は聖域内にある。
聖域の動植物はダンジョン内ほどではないが良質の素材や食材を得られるものが多い。また聖域内にしか生育しない動植物もいる。
聖域内の魔物は他の地域の魔物より強い。その代わり討伐しても消えないから得られる素材は高品質の物を得られる。
この間にサリエンスの屋敷に滞在した時に討伐した魔物はこの聖域外より強い魔物だ。最近は何の苦も無く倒せるようになっているのだが。
まずはハンターギルドでハンター登録をすることにした。
ハンター登録にはその国の身分証明証が必要だけど聖域内の街での登録には身分証明証が不要だ。
神殿から貸し出されている賞罰鑑定機で合格すればハンターに登録できる。
大きな犯罪を犯していなければその点は大丈夫だ。
ハンターギルドの受付はきれいのお姉さん・・・・でなくイケメンのお兄さんだった。
ハンターにはランクがある。最も高いランクは1級、登録直後は原則10級だ。
このランクによって適正な魔物討伐や適正なダンジョン探索がわかる。初心者ハンターの場合は10級だが登録後の講習後に行われる能力判定と実力審査でランクが上げられることもあるという。
今日は10時から講習会があることを知っていたので今日ハンター登録に来た。
当日の9時までに登録を行えばその日の講習を受けることができる。余裕をもって7時半にハンターギルドに到着して登録を行った。
登録する時の内容は氏名・年齢・性別・居住地の有無(あれば記載)・連絡方法有無(通話・メール)・使用可能魔法・主な能力などを記載する。
氏名・年齢・性別・連絡方法有無以外は記載しなくてもよいらしい。
使用可能魔法は聖魔法、主な能力は鑑定と刀剣術と体術と錬金と調合を記載した。
記載内容はサリエンスのアドバイスに従った。
ハンターランクが10級だと聖域の中の街から100m以上離れることができない。その範囲での採集しか仕事ができない。ダンジョンにも入れない。
6級から9級は活動可能な聖域の区域やダンジョンの階層が指定されている。だから5級以上のランクが必要だ。そうでないと行動範囲が制限されてしまう。
初心者講習が終了して一度ランクが決まってしまうとギルドへの貢献度と実力審査でランクが上がったり下がったりする。
街の外は危険だからハンターランクによって入れる区域が異なるのは当たり前か。まあ、私はサリエンスの屋敷からこの街まで聖域内を走って来たのだが・・・。
街の入り口は犯罪者は通れないようになっている。犯罪を犯していると結界に阻まれて入ろうとすると弾かれるようだ。
入り口では出て行く人の入ってくる人を魔法で自動的に記録しているようだ。結界に弾かれた者以外はフリーパスのようだ。
弾かれた人物が出ると衛兵が動き出すのだという。あとは出て行ったまま帰ってこないハンターがいると探索するのだと。
門から出て行ったハンターは基本的に夕方18時までに戻ることになっている。街の外で夜を明かす場合は門の横の詰め所で届け出が必要だという。
因みに街の結界はサリエンスが維持しているようだ。
ギルドカードには謎機能がある。魔物を倒すと記録される機能と通貨カードの機能とギルドからの連絡機能だ。連絡に対する返信もできる。
ハンター登録を行う時には能力判定によってランク上げをすることが認められている。
生活魔法以外の魔法を使える事で一ランク、鑑定が使える事で一ランク、能力に武術を持っていることで一ランク、生産系の能力を持つことで一ランク上がるらしい。
勿論自己申告だけでなく能力の確認を講習後に行う。これが認められれば私はそれだけでランクが6級になる。
講習の後の実力審査でもう一ランク上げたいのだが・・・・。
講習会と確認テストは問題なく終わった。講習は免許更新講習に似ていたなと感じた。映像の魔道具を使っていた。
何故か私の能力確認にはギルド長や他の街のギルド幹部が見に来ていた。
後で知ったが登録申請書類を見た職員が上司に知らせ、ギルドが所有している人物鑑定の魔道具で私の能力を鑑定したらしい。その情報に基づいて他の街のギルド幹部は転移門を使って来たようだ。
私に対して鑑定を行ったのは内緒だから規定に基づいて能力の確認が行われた。
まずは鑑定能力。薬草や植物素材や魔物の素材や魔石や鉱物資源の鑑定を行った。当然問題なく確認ができた。
少し鑑定に現れる情報が増えてきているように感じるのだが・・・・・。
他にも人物鑑定ができるがそれは魔道具でなければできないという事になっているので確認されなかった。
魔道具もなく人物鑑定が可能なのは大賢者だけらしい。
私に対する人物鑑定では『賢者』さえも見えなかったはずだ。能力隠蔽万歳!
生産系の能力の確認では何種類かの魔法薬の調合と魔法素材の合成を行う事になった。できたものは最高品質という評価をもらいこれも問題がなかった。
いや、品質が高すぎて問題を呼び寄せたか。
できた魔法薬などはギルドが買い取ってくれた。金貨12枚と銀貨8枚が懐に入ってきたよ。
武術は実力判定用の剣と標的が使われた。これが使われることで刀剣術や体術のレベルがわかるらしい。
「標的には不壊の魔法がかけられていますから思いっきり剣で切り、蹴りや突きを入れてもいいですよ。但し魔法は使わないでください」
5つの標的を刀剣術と体術を駆使して攻撃したのだが・・・・・。
不壊のはずの標的と剣が壊れてしまった。壊れる前に私の刀剣術と体術は最高ランクとして判定されたようだけど。
唖然としているギルド職員とギルド幹部たち。高価なものを壊して不味かった。弁償か?先程貰ったお金以外には銀貨2枚しか持っていないよ。
「あ、すぐ修復しますね。リペア」
聖魔法の回復と錬金と魔力操作を組み合わせることで修復魔法『リペア』が使えるようになった。
あ、これって私のオリジナル魔法だ。修復魔法『リペア』はサリエンスも驚いていた魔法だよ。またやってしまった?
そうそう、この魔法をサリエンスの屋敷で魔道具に使った後、土属性と雷属性と光属性の魔法と魔道具製作の能力が覚醒したんだっけ。
「えーと、次は聖魔法ですか?」
「はい、あちらの魔法用の標的に対してお願いします。一応不壊ですけどね・・・」
「壊れたら直しますから・・・」
「お、お願いします」
そして、フラグは回収しました。
HLショットで簡単に標的は壊れてしまった。
聖光剣や聖光刀でも同様の結果だった。
その後は壊した5つの標的の修復を行いました。勿論壊れる前程度の不壊になるように修復した。本当の不壊にもできるのだが自重しておいた・・・・。
聖光回復と聖光治癒もあると言ったら何人かの怪我人や病人が連れてこられた。
これらの人の聖光治癒と聖光回復を行って・・・。古傷や慢性病も治った事にはこちらもびっくりだ。
ここでも報酬をもらってしまった。金貨8枚と銀貨6枚も。実力審査だよね。報酬をもらっていいのかな。
聖光障壁と聖光結界は模擬戦で試すことになった。
模擬戦の相手はロボット・・・・ゴーレム。
魔術的に動くロボット・・・と考えればいいのか。それも複数用意されている。
ゴーレムの攻撃を防ぎ、倒してみるように言われた。
あ、一体は電気的に動く人型ロボットだな。わざと混ぜているのか。
壊した後はまた修復魔法を使うんだろうな。魔力不足とかという心配はないのだが・・・・面倒だ。
聖光結界や聖光障壁でゴーレムたちの攻撃を防いだり軽快に攻撃を躱したり、刀剣術と体術と聖魔法でゴーレムたちとを倒したりして・・・・。
その後は・・・ゴーレムとロボットを修理させていただきました。
それで実力審査は終わりだ・・・・・と思っていた。
甘かったようだ。
「聖光照射」「聖光剣」
召喚魔法で呼び出された魔物とアンデッドを倒している。
聖魔法を駆使してという事で・・・。
キラーウルフ・オーク・オーガ・ゾンビ・スケルトンなどを。
聖魔法ならアンデッドにも有効だろうという事でアンデッドもいる。
急遽召喚魔法の使い手が呼び寄せられたらしい。。。
お手数かけますね。
これで終わりだよね。
「次は対人戦闘の模擬戦もお願いできないかな?」
「ええ、いいですけど」
違いました。そして私は『NO』と言えない日本人です。
ということで腕に覚えのあるギルド職員との模擬戦を行った。
相手は元ハンターでギルドランク2級の剣士。
あ、速度で圧倒して1秒で倒してしまった。
同じく元ハンターでギルドランク2級の魔導士。
こちらも1秒で倒してしまった。
ともに治療はしたよ。武器も直してあげた。
実力審査が終わった後、他の新人は審査結果をもらい、ギルカードの更新を行って帰って行った。
私は別室に案内された。先程からギルド長とギルド職員と他の街のギルド幹部が話し合っている。
ギルド長は50歳ぐらいの品のいい男性だ。ハンターにしては弱そうだが眼光は鋭い。
さあ、私は何級になったか?せめて5級はほしいのだけど。
「2級ですか?!」
「すまんな、低くて」
「いやいや高すぎませんか」
「希少な聖魔法や高度な武術、オリジナル魔法や磨かれた戦闘センス、治癒や回復魔法どれをとっても一流だ。しかしまだギルドへの貢献がないので1級にはできなかった」
「いや、5級で十分ですよ」
「こんな実力者を5級何て低い級にはできないだろう。依頼達成や素材納品でギルドに貢献してくれればすぐに1級だ」
その後ギルド長や他の街のギルド幹部の紹介があったけど・・・・一度にこんなに顔と名前を覚えられるか!
その後私の正体を詮索しようという動きがあったが疲れたと言って帰らせてもらった。
お読みいただきありがとうございました。
ご意見や感想をいただければ幸いです。
ブックマークへの登録もお願いします。
次話はダンジョンです。
自転車で行く異世界旅 https://ncode.syosetu.com/n9098fx/もお願いします。