2.能力と魔法と現実
よろしくお願いします。
「HLショット」
聖魔法の「HLショット」を使って森の魔物を倒している。手を拳銃のようにすると聖光弾を撃つことができた。
この聖光弾で魔物を容易に倒すことができる。銃撃術を身につけた事によって命中率が高くなった。
聖光弾は何発でも撃てた。魔力を使っているが魔力の存在は感じたが魔力の減りは感じられなかった。
魔力操作で魔力の流れを調べると消費より体内で生み出される魔力の方が今のところ多い。
ゴブリン・ホーンラビット・キラーボア・オーク・キラーウルフ・キラーベア・オーガを「HLショット」で倒していく。
この森にはこのような魔物が多いのだという。サリエンスの屋敷周辺には魔物は来れないが1kmも離れると魔物が沢山いる。
HLショットは射程2000mだ。さらに射程16000mのHLミサイルも撃てた。
HLミサイルは長さ50cm直径12cmのミサイル型の聖光弾丸で標的へと誘導でき着弾で爆発させることができる。
聖光剣・聖光刀というものも使えた。聖光で剣や刀を創って使う聖魔法だ。壊れることもなく岩をも切ることができる剣と刀は便利だ。
何と言ってもお手入れ不要。その都度瞬時に出現させることができるから収納不要。日本で銃刀法違反で捕まる心配もないと思う。
弓や槍、斧や槌も創れたが私には向かないと思う。まあ、杖は少しは利用できるかな。
聖光刀で切った岩は花崗岩や玄武岩だったが、聖光を手に纏えば手刀で凝灰岩や石灰岩を切ることができた。
さらに聖魔法による聖光治癒や聖光回復も行う事が出来た。簡単に短時間で自分の能力を使いこなせるようになってきた。
もしかして私って才能があるのかな?
「HLショット」など聖光弾をはじめとする攻撃魔法が使える事によって楽に魔物を討伐することができるようになった。
私のこれらの能力への順応にはサリエンスも驚いていたがこの結果に満足したようだ。
まあ、魔法を使う前もサリエンスにもらった短剣でゴブリン・ホーンラビット・キラーボア・オークを私が単独で倒すことができたのだが・・・。
そう言ってもまだ聖魔法以外の魔法・転移・錬金・調合・鍛冶・魔道具製作は適性は持っていても試していないし覚醒していない。
折角だから能力を育てる訓練・菜園などでの生産活動・サリエンスとの語らいをしながら屋敷に一室をもらい数日を過ごした。
「そろそろ帰った方がいいでしょうね?」
「そうね。地球の生活に違和感を感じてしまう前に戻った方がいいわね。お土産に砂金を少し持っていきなさい。向こうの世界でも資金が必要だろうから」
「ありがとうございます」
起きると朝だった。まだ早朝だ。腕輪の収納には砂金が100gも入っていた。さらに宝石の原石も。
さて、こちらの世界でどの位の能力を使えるかはまだわからないが殺傷性のある能力の使用は控えなくてはいけない。十分に気を付けようと思う。
でも能力については検証しておきたいな。その考えながら出勤の準備をしていて気がついた。
眼鏡がなくてもよく見える。最近は近眼に加えて老眼も酷くて困っていたのに眼鏡なしで近くも遠くもよく見えるようになった。
いや、遠くをズームアップして見ることができた。小さな物を拡大できた。
私の眼は望遠鏡機能と顕微鏡機能が付いたのか!?一応望遠鏡機能は地上望遠鏡だ。天体望遠鏡のように逆様に見えたら困るよね。
さらに地球に僅かに存在する魔力も見えた。魔力を操ることもできた。すごいなこれって。魔法の才能があるという事かな?
目の機能向上は身体能力も上がったという事かな。
鏡で確認すると姿は今までと変わらない60過ぎの爺さんだが肌は少し綺麗になったような・・・。しわも減った?
足腰の痛みもなく体は軽い。異世界であれほど精力的に活動したのに疲れは全くない。これって凄いよね。
そう言えば向こうの世界で跳躍力や瞬発力が向上していたけどこちらではどうなのだろうか。
出勤の準備を止めて動きやす服装に着替えて近くで少しランニングをしてみる。
速い。今まで全力疾走でもこんなに速くは走れことはなかった。軽く流しているのに時速40kmぐらいは出ている。
100mの世界記録並みだ。軽い跳躍も助走なしで3mは跳び上がることができた。小石を握り潰すこともできた。砂にできるほどではないが・・・。
力だけではない。瞬発力も向上している。体の切れもいい。・・・・今の誰にも見られてはいないよね。
聖光弾も使える。さらに不可視の聖光弾も放てるようになっていた。銃刀法大丈夫かな?
聖光をサーチライトのように穏やかに照射することもできた。聖光の照射も威力は弱めたり不可視にすることができた。
照射された聖光は生きている者には無害だが浮遊霊や地縛霊を浄化・成仏させることができるようだ。むしろ生きている者には回復効果があるようだ。
実際、近くにいた浮遊霊や地縛霊を浄化・成仏させることができた。南無阿弥陀仏・・・・。
聖光照射は悪魔やアンデッドや妖を浄化撃退するのにも有効だろう。まあ今回は悪魔やアンデッドや妖は近くにはいないようだから試さない。
しかし動物霊をはじめとした霊が周囲にこのように多く存在しているとは思わなかった。魔力を感知できることによって今まで見えなかったものが見えるようになったようだ。
調子に乗って人気のない所で新たに使えるようになったものも含めていくつかの聖魔法も試していたら大分時間が経ってしまった。
帰宅してシャワーを浴びて急いで出勤をした。朝食を摂り損ねたよ。人気を避けながら急いで職場に向かったらいつもより早く着いた。
通勤の時に気がついたのだが人や動植物の気配察知できるようになったようだ。お陰で急いでも他人などにぶつかるようなことはなかった。
職場に向かいながらこっそりと自分を鑑定してみる。
須厨気他可視 60歳(20歳)
物理攻撃耐性(小) 魔法攻撃耐性(小) 毒耐性(小) 状態異常耐性(小) 敏捷(中) 体力上昇(小)
聖魔法中級 鑑定 刀剣術 魔力操作 俊敏 気配察知 体術 気配隠蔽
転移適性 全魔法適性 錬金適性 調合適性 鍛冶適性 魔道具製作適性
手刀を使って練習したことで『体術』も覚えた。さらに見つからないように行動したことで『気配隠蔽』の能力も発動できるようになった。
耐性もいくつか上昇し聖魔法は中級になっている。体力上昇(小)のお陰で小石を握り潰すことができたり3mも飛び上がれたのかな。
速く走れるのは敏捷(中)と俊敏のお陰だろう。
「急に若くなってどこかいい温泉でも行ったの?」
「そうかな?」
職場で上司の女性にいきなり声をかけられた。今私はこの職場では嘱託非常勤という形で週3日働いている。さらに他のところで2日働いている。
ここに来るのは2日ぶりだ。2日で目に明らかに若返ったという事か。眼鏡は必要がないのだが急にないのもおかしいので掛けている。
眼鏡をかけてもよく見えるようになっている。環境に順応しやすくなっているのかな。
「肌はきれいだし、疲れが感じられないわね。生き生きとした感じがあるわ。最近感じていた老けた感じがなくなっているわ」
「そうですか」
「まさか美容整形?」
「まさか!」
「そうだよね。タカシさんほど美容整形という言葉が似合わない人はいないよね」
彼女は40代後半だが見た目は30歳半ば。凄くアンチエイジングには興味を持っている。私と知り合って30年以上になるなあ。
今の職場にいるのも彼女と彼女の両親のお陰だ。この会社は彼女の両親の経営だ。
因みに彼女は独身だ。優秀過ぎて釣り合いが取れる男性がいないらしい。何故か私が妻子と離れた後、優秀でもない私に彼女本人と両親から彼女と結婚しないかという話が来た事がある。
別れた妻からも彼女と結婚したらと勧められた。別れた妻と彼女は歳は離れているが友人だ。彼女と結婚の話は全て釣り合いが取れないと断ったけど。
「昨日は高尾山の日でしょ。何かいい温泉か薬草かパワースポットでも見つけた?」
「そんなことないよ。普通に自然を楽しんできただけだよ」
「ふーん、次の高尾山の日に私も久しぶりに付いて行こうかしら」
「い、いつもの高尾山だったよ」
「怪しいなあ。高尾山で新しい出会いでもあったみたい。素敵な女性でも見つけたかな?」
「え、・・・」
「ますます怪しい。タカシさんが変な女性に騙されないように私が監視しないと。次回の高尾山には私の同行決定ね!」
「ああ、いいよ」
私の仕事は研究調査のデータ分析だ。実験や物質分析で出たデータについて分析考察して研究者に助言を与える。
勿論受け入れてくれる時もあれば受け入れてもらえないこともある。当たり前のことだ。
それでもほとんどの全て研究の結果の検討会には招かれ、疑問や意見を出すことが多い。
以前は私自身も実験を行っていたが最近はほとんどやっていない。
「タカシさん。今日、信二が体調不良で休んでしまったので実験準備を手伝ってもらえませんか?」
「ああいいよ。試験薬の調合だよね」
「はい、お願いします。以前にも指摘していただきましたが時間との勝負なので」
「わかった。なかなか苦労しているんだね」
「よろしくお願いします」
今、頼んできた賢人がリーダーを務めているチームでの研究ではいかに試薬を時間通りに準備するかが重要になっている。
これまでの失敗もそれが原因だ。その事は私が指摘したのだが未だにいいタイミングで試薬が準備できていない。
ゴリゴリゴリ、カシャカシャカシャ。
素材を潰し薬品を混ぜ調合していく。自然から得られる素材も使っているので成分が多い部分を見極めて潰し調合することも大事だ。
この見極めで時間を使ってしまうのだが・・・何故か見極めがすごく早くできた。
魔力を感じることと身体能力が上がったことの影響かな?五感も確実に上昇しているよね。
試薬の調合も絶妙なタイミングで完了した。そしてメインの実験も。賢人のチームの実験はこの日初めて成功して期待した結果を得ることができた。
「やはりタカシさんは違いますね。また手伝ってくださいよ。あ、こんなこと言ったらサオリお嬢様に叱られてしまいますね」
「まあ、困ったら言ってくれ」
「お願いします」
賢人の研究の問題点と改善点などを助言して私は帰った。賢人らは今晩はチームで成功のお祝いを行うらしい。私も誘われたが丁重にお断りをした。
私には分かっていた『錬金』と『調合』の能力が覚醒したことが。
だから賢人たちには私が手伝わなくてもうまくいく方法を助言した。能力の覚醒によって私が手伝わなくてもうまくいく方法も判るようになっていた。
今日は本来の仕事に加えて実験の手伝いが入ったにもかかわらずいつも以上に分析や考察の方も進めることができた。
タイピング速度からして今までの3倍以上だ。考察も今まで思い浮かばなかったような画期的な考察ができた。思考速度が上昇している?
そんな言葉が浮かんでくる。
帰り道で自分の能力を鑑定してみると・・・・
須厨気他可視 60歳(20歳) (賢者)
物理攻撃耐性(小) 魔法攻撃耐性(小) 毒耐性(小) 状態異常耐性(小) 敏捷(中) 体力上昇(小)
聖魔法中級 鑑定 刀剣術 魔力操作 俊敏 気配察知 体術 気配隠蔽 潜伏 錬金 調合 思考速度上昇 思考能力上昇
転移適性 全魔法適性 鍛冶適性 魔道具製作適性
『錬金』と『調合』の能力覚醒に加えて思った通り『思考速度上昇』と『思考能力上昇』が加わっている。
考察への影響は『思考能力上昇』が影響しているという訳だ。さらに気配隠蔽で潜伏の能力も芽生えたようだ。
いつの間にか賢者の称号が付いていた・・・・・。はあ、付いちゃうんだ。
道すがらちょっと気になる霊を浄化しながら自宅に向かった。いろいろ気になることが増えているように思えるのは気のせいではないと思う。
夕食と入浴後、『賢者の魔導書』を読んでから就寝。
まあ、まったく疲れていないから眠れるのかなと気になったが問題はなかった。
気がつくとサリエンスの屋敷の東屋にいた。目の前にはサリエンスが座っている。
「どうだった?」
「すごく能力が上昇して戸惑っていますよ」
「それは必要な事だから」
「え、それって・・・」
「何でもないわ。今日も色々やりましょう。今日の経験も聞かせてね」
「は、はい」
『色々やりましょう』が『色々やらかしましょう』と聞こえたような感じがするのは気のせいか?
まあ、楽しくなってきたからいいか。つい無責任に考えてしまうなあー。
「うーん、美味しいね。グッジョブ!」
「満足してもらえたようだね」
「またよろしくね。ムルでは買って来れないから」
「仰せのままに」
帰宅の時に砂金を売るために知人のいる都心の貴金属店に行った。お陰でそれなりの臨時収入を得た。
その時に買ってきたちょっと高級なケーキを収納に入れておいた。収納に入れておけば夢の中からこの世界に来るときに持って来れる。
しかし、就寝時とこの世界に来た時では服装が異なるのはどんな仕組みなのだろうか?
そのケーキを出すとサリエンスは大変に喜んでくれた。ムササビのムルも同じものを食べている。
日本橋千疋屋のモンブランだよ。満員電車の中でつぶさないように持って帰って来たのも収納のお陰だ。
勿論収納は人気がない所で使用した。
お読みいただきありがとうございました。
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