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異世界へは夢の中から  作者: TKSZ
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1.プロローグ

夢の中でいろいろな所に行っていてふと書いてみました。

道に迷った。ここはどこだ?

仕事がない週末、高尾山に来ている。高尾山には50年以上にわたって訪れている。

正月に薬王院で天狗の団扇を買うのが楽しみだった。昭和の頃だったと思うが団扇を買うそれが福引になっていた。・・・当たらなかったけど。

さらにここ10年は月に1回以上のペースで訪れている高尾山の道は細かいところまで把握しているはずだった。

台風の影響でいくつかの道が通れなくなっているのが残念だと思いながら一号路を歩いて来た。

ちょっと休憩をして写真を撮っていると眠くなってしまった。近くのベンチに座った瞬間一瞬寝てしまったようだった。

はっと思ってあたりを見回すと今までに見たことのない脇道があることに気がついた。

あれ何で休憩前に気がつかなかったのかな?不思議な事もあるもんだ。不思議な事と言えばもう一つ。

こんな脇道知らないぞ!高尾山周辺の道はよく知っている私が知らない道があるなんて!

それもこの脇道かなりしっかりとした道だ。石畳の脇道は森の中へと繋がっている。

この一月のうちにこんな道の工事がされたのかと驚きつつ折角だから行ってみようと思い足を踏み入れた。

私はそれまでに行ったことがない所に行くのは好きだ。野外調査でもお陰で何回か遭難しかけたことがあるのは内緒だが。

秋の週末なのに今私の近くにはなぜか他の人がいないのが気がかりだったのだが・・・・。

石畳の脇道をまっすぐ500m位進んだところで気がついた。どうしてこの山の中に起伏のないまっすぐの道が500mもあるのか?

一号路は東西に伸びる尾根に南斜面から上っていく。九十九折のこの道は下りでは結構膝にくる。そして尾根に辿り着くと西に向かって緩やかに登っていく。

ケーブルカーやリフトは尾根まで数分で運んでくれるがそれでは面白くない。私は高尾山に登るときは一号路か琵琶滝から一号路に登るルート使う事が多い。

だからたとえ尾根であっても起伏のないまっすぐな道が森の中に500mも続くことはない。

森の木は尾根の南側が照葉樹林、北側は夏緑樹林のはずだが・・・この道の両側の樹々は私が見たことのないものだった。

まさか天国に向かう道?いやいや、それはないだろう。


考えているうちに背中がぞくっとしてきた。ちょっと鳥肌も立った。

嫌な予感がしたので後ろを振り返るとそこには今まで歩いてきた道がなかった。そして前を向くとそこにも道がなかった。

木の上にいるのは栗鼠かなそれともムササビ?少し先でがさがさと音がするけど兎かな。猪や熊は勘弁だよ。

一つの事実として私は一人森の中にいた。狸に化かされた?狐におちょくられているのか?ムササビに・・・・???

兎に角、樹々を掻き分けて今来た方向に歩いた。が、いつの間にか先程の場所に戻っている念のために枝に結んでおいた紙縒りで元の場所に戻って来たのが確認できた。

こういう時は樹木に傷をつけて印にするものだろうが高尾山の樹木には傷を付けたくない。だから紙縒りで印をつけた。

困った。ここは迷いの森なのか?樹海か?よく見ると樹木は空を覆い太陽が見えない。それなのに下草も多い不思議な空間だ。

森の木々の根元まで日が射さないと草は育ちにくく苔やシダが多くなるはずなのに、ここには日射しを好みそうな草が多く生育している。

考えても仕方がない。意を決して先程進んでいっていた方向に向かう。

歩いていると20mぐらい進んだところで忽然と目の前に石畳の道が再び現れた。しかしまっすぐの道なのに100m位先しか確認できないのは何故だろう?

歩いても歩いても100m先までしか見えない。その先は靄の中だ。凄く不安だが歩いて行くしか選択肢はない。

少し前を小動物が歩いているよに感じる。目には見えない何かが20m先にいる。狸か?穴熊か?兎か?栗鼠か?ムササビか?導かれているのかな?

栗鼠はムササビなら樹上だろうと自分で突っ込みを入れながら歩いて行く。懐中時計を持っていたらファンタジーだ。

1時間ぐらい歩いただろうか?突然200mぐらい先に建物が見えてきた。

こざっぱりした高級別荘風の二階建てのちょっとしたお屋敷という感じだね。木をふんだんと使い、塗装は木の質感を殺さない透明なもののようだ。木目がきれいに見えている。

庭には東屋がありそこには一人の少女が座ってこちらを見ている。傍らにいるのは・・・・ムササビか?兎や猫ではない。懐中時計は持っていない。


「やあ、いらっしゃい。こちらのどうぞ」

「はい、すみません突然お邪魔して。道に迷ってしまいまして・・・」

「知っているよ。道に迷った君をここまで誘導して来たのはこの子だから」


そういうと彼女はムササビを見た。ムササビは手を挙げてこちらに挨拶してきた。懐中時計を持っていなくてもファンタジーだった。

私はムササビに導かれてここまで来たということなのか。使い魔?という言葉は慌てて飲み込んだ。


「せっかくここまで来たんだ。悪いけど少し私の話し相手になってくれるかな」

「はあ、はい、いいですけど」


何か彼女の話し方は老練さを感じる。見た目は中学生ぐらいなのに・・・。まあ、長い黒髪を持つ美少女だ。同じ年頃だった惚れているな。

でもこんな山奥に中学生?親は保護者は?


「ああ、私はこれでも君よりずーっと年上だよ。君たちの言う『ロリババア』というやつだ」


そう言って笑う。この人、自分で『ロリババア』と言っちゃったよ。笑い顔はかわいいのにね。

しかし眼は笑っていないな。『ロリババア』なんて言ったら許さないという眼だ。

でも還暦を越えた私より年上だって何歳なんだ?


「私は800歳は越えているよ。私は『不老』を持っているからね。ここに住んでいるのは私だけだから君が時折訪ねてくれると嬉しいのだけど」

「こんな爺さんでもいいですか?」

「いいのよ。中身は爺さんでもここにいるときは若々しい青年の外見だから」


そう言って見せられた鏡の中の自分の姿を見て驚いた。そこにいるのは大学生頃の自分だ。



「で、ここはどこですか?日本じゃありませんよね」

「うーん、異世界。魔法や異能が地球より多くある世界。君がきっと生き生きとしていられる夢の世界。そんな答えでいいかな」

「はあ、わかったようなわからないような」


確かにただ生きるためだけに仕事をしている今の人生は面白くない。虚しい、そして私は疲れている。

たまに今日のように自然と触れ合うか本を読むぐらいしか楽しみがない。

生き生きと生ける世界があればそれほどうれしいことはないよ。


「まあ、お茶で飲みながら話し相手になってくれ。君の人生について相談に乗るよ、有料で」

「有料かいな!」

「冗談冗談、1割ぐらいは冗談」

「9割は本気か!」


どっと疲れた。まあ、観客のいない漫才のお陰で初対面の緊張が解けた。その後は取りとめもない会話を楽しむことができた。

彼女サリエンスに色々と話を聞かせてもらった。流石年の功。彼女は色々な事を知っている。彼女は地球の事にも詳しかった。

地球に行ったことがあるのかと訊いたがないという答えだった。

彼女自身はここ『聖魔女の森』から動くわけにはいかないのだそうだ。理由は・・・・教えてもらえなかった。

ムササビのムルはこの異世界でも地球でも自由に動き回ることが出来るらしい。

だから地球の物も手に入るのだが持って来れるのはごみ置き場にあった物か自然の中にあるものだけだという。

所有者がいる物を勝手に持ってきたりはしない、いやできないという。


「神様もそこまで許してはくれないのよ」


ただ、ムルを祀ってある祠にあるお供え物は持って来れるらしい。ムルって祀られる対象なんだね・・・。

基本的にサリエンスはこの森の幸と彼女の持つ田畑・果樹園・畜舎から得られる産物による自給自足生活だそうだ。ここには米や各種調味料もあった。

敷地内の工房では酒類や醤油や味噌や豆腐や納豆まで作っていた。マヨネーズや梅干しまであったのには驚いた。

今度何か地球の物を買ってきてあげようかな。ムササビでは買い物はできないからね。私がまた来れることが前提だけど・・・・。

昼食を挟んでのんびり会話そして作業を楽しんだ。結構彼女とは波長が合うようだ。なかなか楽しい時間を過ごせた。体が軽くなったように感じる。

作業は屋敷の周りにある菜園でのものだ。池にいる魚も釣り上げた。鱒だね。近くの散策にも一緒に行った。

そうこうするうちに夕方になってきた。色々やったのに体が若返ったせいか疲れを感じない。今日はこれでお暇をすることになった。


「今日は楽しかったわ。また来てね。約束よ」

「また来れるのかな?」

「ふふふ、大丈夫よ」


帰り際に一冊の本と銀色の腕輪を渡された。腕輪は左腕に近づけると自然に装着された。しかし着けているという感じがしない。

本は革表紙のしっかりとした図鑑のような厚い本だった。この本をザックに入れた。

サリエンスと別れ、ムルに導かれて道を進むといつの間にか一号路の求刑した場所のベンチに座っていた。

今は脇道はない。時計を見ると時刻は脇道に入って行った時から1分も経っていなかった。夢だったのか?疲れて座ったところで1分間寝ていたのか?

それも目を開けたまま寝ていたのかな?体は全く疲れていない。ザックには・・・・革表紙の厚い本が入っていた。

腕輪も付けている。異世界へ行ったのは夢ではなかったようだ。

腕輪は直接見れば見えるのにガラスに映った私は着けていない。写真にも写らない。という事は他の人にも見えないのかな?


考えるのはやめた。その後、薬王院に行きそして山頂へ。富士山もよく見えた。山頂でおにぎりを食べて色づき始めた樹々を見ながら下山した。

紅葉の時期は登山客が多い。まあ、例年のことだから慣れている。帰りも一号路を利用したけど脇道はやはりなかった。

サリエンスにまた来ると言ったけど行けるのかな?

今日も麓の高尾山口でとろろそばを食べてから帰宅した。今日はいい経験をした。明日は仕事だ。

早めに入浴して横になった。もらった本を読んでいるとすぐに眠りに落ちた。

そして夢の世界に・・・。白い霧に覆われたような空間にいたがすぐに白い霧は霧散した。


そこにはサリエンスとムルがいた。そしてあの屋敷がある。


「その様子ではまだあの本を全部は読んでいないのね」

「これは夢」

「うーん、何と説明したらいいかな。夢の世界から異世界に転移したと言ったらいいかな」

「精神だけ?肉体と分離?まさか幽体離脱!」

「いいえ、貴方との世界にはあなたの代わりが置いてある。もちろん誰にも気づかれないわ」

「ねえ、ここと地球は時間の流れが違うのかな?」

「そうね、今は違えてあるわ。あなたの好きな時間だけここにいられるように速めたり遅らせたりしてね」

「そうなんだ」


少し休憩してからもらった本の続きを読んだ。

本の内容はいくつかの物語と異世界アーステルドに関する知識と魔法の知識。

物語は時空を超えて訪れた賢者の物語。そして森の聖魔女の物語。

賢者って私という事ではないよね・・・。賢者は悪魔を倒して世界を統一して平和な世界を創るって・・・。

聖魔女はサリエンスのことだよね。

私の貰った腕輪についても書かれていた。無限収納の機能があるらしい。そして防御結界を発動できるという。


賢者って鑑定能力があるようだ。まさか私は持っていないよね。腕輪をじっと見ると腕輪が『賢者の腕輪』だとわかった。

さらに見つめているともう少しだけ詳しい情報が入って来た。


賢者の腕輪 所持者 須厨気他可視すずきたかし


機能 無限収納 防御結界 魔力貯蔵供給 通信 腕輪隠蔽 能力隠蔽



貰った本を鑑定する。


賢者の魔導書 所持者 須厨気他可視すずきたかし


所持者のみが使える魔導書



自分を鑑定してみる。


須厨気他可視すずきたかし 20歳(60歳)


物理攻撃耐性(小) 魔法攻撃耐性(微小) 毒耐性(微小) 状態異常耐性(小) 敏捷(中)

聖魔法

鑑定 転移適性 刀剣術 全魔法適性 錬金適性 調合適性 鍛冶適性 魔道具製作 魔力操作 俊敏



レベルとかも出るのかと思ったけどそのようなものは表示されなかった。『ステータス』と唱えれば出るのかな?恥ずかしいからやらないけどね。

鑑定能力って上がるのかな?というか問題は賢者も持っている鑑定能力を持っていたよ。

でも私には賢者の称号はないよね。。。魔導書の『賢者』は初めからついていたんだよね。

お読みいただきありがとうございました。

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自転車で行く異世界旅 https://ncode.syosetu.com/n9098fx/ もよろしくお願いします。

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