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 ヘビから許してもらえたリスは、ありがとう、と、ごめんなさい、を、何度も交互に繰り返しました。

そこへ、川向からクマが声をかけてきました。


「あの~。ヘビさん、リスくん。オンボロ橋が流されて、みんなが困ると思うんだけど。」


「あ、そうだった。どうしよう。」


「どうしよう、じゃないでしょ、リスくん。こんなの、いたずらじゃ済まないわよ。」


 リスが壊してしまったオンボロ橋を直すため、ヘビと、リスが縄を、クマが板を用意しました。


「じゃあ、縄を投げるから受け取ってね、クマさん。」


 川に縄を渡そうと、リスは、その小さな体全体を使って放り投げました。ですが、いくら投げても反対の川岸まで届きません。


 そこで、三人は知恵を出し合いました。

 まず、ヘビが川べりの杭に尻尾を縛り付け、川向に向かって、長い体を目いっぱい伸ばします。

 同じように、クマが反対の川べりから体と腕を目いっぱい伸ばします。


「がんばれ、ヘビさんクマさん。二人とも、もう少しずつ体を伸ばして。」


 リスの励ましにクマは、足のつま先に力を入れ、川に落ちるギリギリの所で腕を伸ばします。

 ヘビは、ぶるぶると震えながら、細い体をさらに細くして伸ばしました。


「かぷ。」


 なんとかヘビは、クマの指先を何とかくわえました。こうして川に、ヘビとクマの橋が架かりました。


「よし、じゃあ渡るよ、ヘビさん、クマさん。」


 そう言って、リスは縄を担いで、ヘビとクマの橋を渡り始めました。

 ところが、リスが、ヘビの背中を渡り切り、頭を越えようとした時です。


「もう、だめ~。」


 空腹に耐えかねた、ヘビの全身の力が抜けてしまい、杭に巻きつけていた尻尾がほどけてしまいました。


「わあっ、落ちる!」


「きゃあっ。」


どぼ、どぼ、どぼーん。


 そのまま三人は真っ逆さま。川へと落ちてしまいました。

 すると、体の大きなクマが、水しぶきを上げて立ち上がります。普段は臆病者のクマですが、川に沈んだ二人を助けようと必死です。


「大変! ヘビさーん。リスくーん。」


 クマは、腰まで水に浸かりながら、何度も、ヘビとリスに声を掛けます。

 すると、川の中に幾つかの影が見えました。クマは、その影目がけて腕を振り、川岸へ放り上げました。


「ビチビチ。ビチビチ。」


「あれ? あれあれ?」


 それは、川上へ登ってきた秋鮭でした。クマは、慌てて別の影を見つけては、次々に腕を振るい、川からすくい上げます。でも、やっぱりそれらは全て秋鮭。

 生まれて初めての経験ですが、クマは、実は魚とりの名人だったのです。

 魚はどんどんとれますが、肝心のヘビとリスは、一向にすくい上げられません。


「どうしてお魚ばかりが、とれるのよーっ。」


 それでも諦めないクマは、ヘビとリスを潜って探そうと、大きく息を吸い込みました。

 そして川の水面に顔を近づけると、目の前に逆さ虹が映り込みました。

 突然、川に架かった逆さ虹に、クマが目をぱちぱちさせていると、抱きしめ合うヘビとリスが、ぷかーっと浮かんできました。まるで、逆さ虹にすくわれたように。


「うええ、く、くるしいよ~、ヘビさん。」


「もう、水は、いらないわよ~。リスくん。」


「ああ、良かった。二人とも生きてる。」


クマは、川面に浮かぶヘビとリスを、虹ごとその両腕に抱き上げると、川から上がりました。


 秋風は肌寒く、間もなく訪れる冬を感じさせます。風邪を引いてはいけないと、三人でたき火を囲みます。そのたき火の周りは、笑顔と笑い声。そして、クマがとった川の幸。


「おいしいね。」


「うん。おいしいね。」


「あったかいね。」


「うん。あったかいね。」


「ぽかぽかだ。」


「ぽかぽかだ。」


「ほんとう。ぽかぽかだ。」


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