第9話 試練の訳
どうもこんにちは。アークティックです。これからどんどん話を展開させていく予定です。どうぞ読んでいってください。
女神メリスによる攻撃の説明をするため、仁人達は街の飲食店に来ていた。
「で、話を引き延ばしてここまで来ましたけどそろそろ話してもらえますかね?」
「そうよ。早く話しなさい。なんで仁人に攻撃をしたのか。でも、仁人。なぜあなたは私の後ろにいるの?」
現在仁人は自分の椅子には座らず、彩香の椅子の後ろにしがみついているのだ。
「メリスは信用できないからだ。何をされるかわかったもんじゃない。この中で一番信用できるのは彩香だから。」
「そ、そう。それならいいわ。さぁ、早く話しをしなさい!」
彩香は顔を赤くさせながら話を本題に戻した。
「えと、今回のことは試練とでも言いますか、、、異世界からやって来た者達は大抵この世界では暴れるんですよね。」
「それはあるかもしれませんね。なにせ魔法が使えるようになるなんて夢のようですから。」
「でも、こちらとしては暴れられるのは困るのですよ。貴族やなんかに見つかると兵器として雇われたりしてこの世界の状況が一気に変わってしまうのです。なので我々女神はそれを異世界かか来た者達に力の差というものを教え込むために魔法を覚えた頃に一度お灸をすえるということをやっていたのです。ちなみにこの試練を受けなかった異世界人はブラックリストに載せられ常に監視されることになります。
「優しく言ってるけど、簡単に言えば魔法を覚えたての異世界人に強力な魔法撃ってボコボコにしとけば暴れることもないだろうってことだろ。」
「ま、まぁそういうことになりますね。」
「つまり、俺に危害を加えるつもりは無くてただマニュアル通りに脅しをするだけだったと。」
「はい、そういうことです。」
「信じられるか!そんなもん!」
「ちなみにフェミルもグルよ。」
「「え、」」
「も、申し訳ありません!仁人さん。天照大神様に言われてまして、どうしてもやらなくてはいけないことらしくて、、、」
「そんな、、、フェミルが、俺を、裏切った?あ、あぁ、、、」
それだけ言って仁人は倒れてしまった。
「き、仁人さん!いったいどうしたんですか?」
「メリス様、フェミル様。言わせてもらいたいことがあります。」
「「はい。」」
倒れた仁人を優しく守るように抱えながら彩香は話しはじめた。
「私は仁人と出会って6年になります。仁人は私の知る限り信頼していない人のことは何も考えません。何をされようが何を言われようが何も感じません。彼から言わせれば信用のない人間に酷いことをされるのは当たり前なのだそうです。なぜなら酷いことをするから信用できないのだと。私も最初は大変でした。仲良くなろうとしてもとてもガードが強かったんです。ある時をきっかけに仲良くなれてから5年たちますが、この期間にわかったことがあります。仁人は信用する人間、簡単に言えば友達や仲間などを過剰に意識するのです。誰であろうが何であろうが自分の認めた友達や仲間に危害を加えようとするものがいればどんな手段を使ってでもそれを排除しようとするのです。」
「とても仲間思いのいい人なのですね。」
「そうねメリス様。でもね、仁人にはもう一つ特徴があるのよ。」
「それはいったい何ですか?」
「聞くだけじゃ無くて少しは考えたらどうですかフェミル様。今こうして仁人が倒れている原因はあなたなんですからね。」
「わ、私なんですか。そんな、、、私が仁人さんに何かしてしまったのですね。」
「あなた方はここまで話してまだわからないのですか?仁人は友達や仲間を過剰なほどに大切にします。その友達や仲間に裏切らることがあったらどうなるか、考えなくてもわかりますよね。」
「女神フェミルの創造は仁人が自分の全てを捧げて行ったもの。つまり自分の一部を使ったようなもの。そんな存在に裏切られたら、、、なるほどそういうことだったのね。」
「私は裏切るつもりなんてなかったんです。ただ、仁人さんをブラックリストに載せたくなかっただけなのです。」
「そんなことは関係ないわ。あなたがどう考えて行動したかは仁人の知らないこと。仁人が裏切られたと感じたらそれが全てよ。」
「そんな、仁人さんがこのまま起きなかったら私、どうしたら、、、」
「3年前に一度、ずっと友達だと思ってた人に裏切らたことがあったわ。家まで連れて帰ったら大騒ぎになったの。仁人のおじいちゃんが出てきてつれていったわ。その時は半年間自分の部屋に引きこもってしまったのよ。私は何回も声をかけにいったけれど一度も返事をしてくれなかった。」
「そ、そんなことが。その時はどうやって立ち直ったんですか?や
「詳しくは知らないけれど、妹さんの存在が大きいらしいわ。なんでも妹さんの声にだけは反応をしていたらしいの。」
「妹さんですか、、、。この世界での解決は難しそうですね。いったいどうすれば、、、」
そう言いながらフェミルはふらっとして倒れそうになった。
「どうしたのです?フェミル。」
「い、いえ、少し力が抜けまして。」
「力が抜ける?いったいどういうことかしら。」
「そんなの決まってるじゃない。あなたは裏切ったと思われてるのよ?信者が仁人しかいない状況でその信者の信用がなくなりつつあるんだから力なんて消えて当然よ。そのうち存在自体が消えて無くなるかもしれないわね。」
「そ、そんな。早くなんとかしないと。」
「とりあえず宿に行きましょう。仁人を休ませてあげないと。」
宿屋に到着した4人(1人は気絶中)は部屋を2つ取り、休むことにした。彩香は仁人を部屋まで連れて行き、ベットに寝かせていた。
「おやすみ仁人。ゆっくり休んで明日にはちゃんと起きてね。」
そう言ってベットから離れようとした彩香だったがすぐにベットに戻った。仁人が彩香の腕を掴んでいたからだ。
「仁人?気がついたの?」
「あ、あぁ、頼みがあるんだけど。」
「なぁに?なんでも言ってみな。」
「今日はいろいろありすぎて疲れた。明日は一日中起きれないと思う。だから彩香、俺を1人にしないでくれ。今この世界で信じることができるのはお前しかいないから。」
「うん。わかった。私はずっとここにいるよ。」
「ありがとう。」
仁人の言葉に動揺しつつ、彩香はしっかりと返事をした。そして翌日、宣言通り仁人は起きるることはなかった。その間、彩香はずっと仁人の隣に座っていた。
その翌日、事件は起こった。
読んでいただきありがとうございます。次回は少し長くなるかもしれません。この物語のキーパーソンの登場も予定しています。これからも読んでいただけるだけ嬉しいです。