はい、只今暴走中!
ふははははははははーっ! 今の俺は誰にも止められないぜ!? 俺の燃え滾るハートは恋のビートだ! 意味わからないって? 俺もテンション上がってわけわからないんだよ! 俺に聞くなっ。
めっちゃ高笑いしながら走っていると、クラスの担任であるさっちーを発見した。お約束どおりに「廊下を走るな!」と怒っている。――しょうがねえ!
俺は先生の目の前に立ち止まり、せんせぇごめーん! と謝りながらそのたっぷりしたふたつの肉を掴む! うほっ!!
「――!? いやあああああっ」
よっしゃあ、充電完了だ。先生、ありがとーッ!
俺は先生にお礼を言うと更にダッシュ、ダッシュ! 猛ダァアアッシュ!!
だあああああららららぁっしゃあああああああああああああッツ!!
雄叫びをあげて教室の引き戸を思い切ってドロップキックした俺に驚いたのか、教室中が静まり返っている。今は飯どきだというのにみんな弁当は机にほったらかしでグループごとに話し込んでいたようだ。
「よ、よお、へn――もとい、野崎。どうした?」
お前いま変態って言おうとしただろう。俺の異様な雰囲気に押されたのか、男子のやつらがごっきゅんと生唾を飲む音が聞こえる。女子も同様だ。
「あ、ご、ごめん、袋に詰めてたのを忘れてたわけじゃないんだ、たださ弁当さきにしようかと思って! なあ!?」
「そ、そうそうそう! 腹へって力でなかったら袋開けられないし!」
あぁん? なに言ってんだばぁろぉーい! そんなの問題じゃない!
辻谷だ、辻谷がいそうな場所わからないのか!?
「え? つ、辻谷? さあ……保健室じゃねえの?」
いなかったからこうして腰低くして聞いてるんだろうがああああ!
俺は思わず興奮して、大声をあげながら脇役の襟首を掴み、とりあえず俺より目線は上のとこまで持ち上げてからがっくんがっくんしてあげる。
他のやつらに押さえ込まれてそいつを放してしまった。やめろよ、邪魔すんなよ! どっちが上か教えてあげてるんだよぅ!
羽交い絞めにされた俺だったが、なぜかみんないつものように華麗な連係プレーをしようとしない。やっと俺の必死さを理解してくれたみたいだ。
と、そこへ女子がひとり、ぽつりと呟いた。
「そ、そういえば辻谷さんって、病院行くって――」
病院――入院!? な、なにぃ、そんなに体の具合が悪かったのか! あ、いやまあ、俺が名前を覚えてないぐらいだから相当なもんだろうけどさ!
俺は脇役どもを振り払うとその女子の乳――もとい、肩を揺さぶる。もちろん、目を合わせると「キモい」言われるので目は合わせない、かわりに谷間をガン見だ。
透けろ、透けろーっ。
「いやあああ! なによコイツぅ!」
「リカコを離せよこの妄想力少年!」
ファック!
俺は思わず声をあげて崩れ落ちる。あの女、金的しやがった! てか妄想力少年って言っていいのはアンナだけだぞ! お前ら本当の意味しらねーだろ! ばーか、ばーか!
などと言っていたら女子が集まってか弱い俺を踏み始める。痛い痛い!
「ふっざけんな、死ねっ!」
「う、うわああ、笑ってる」
「きもい、きもいーっ!」
あ、はふぅ、もっとぉ。とか恍惚としてる場合じゃない! お前ら、本当に今は大変なんだ、辻谷さんが行方不明なんだよ、アンナも必死になって探してる! みんな彼女が行きそうな場所を教えてくれ!
「嘘つけ変態!」
ファアアアアアアアアアアアアアアアアアックゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウ!! おういぇ。
強烈すぎる! 俺の命を潰す気か!?
日ごろの行いが悪いせいかまったくもって信じてくれない皆さん。ああ、俺、俺って……思わず泣きそうになっていると、女子のひとりが口を開いた。
「――でも、そう言えば萌ちゃん病院行くのイヤって、言ってたような……」
ぬぁぁにぃい?
そりゃ本当かっ。どういうことだ!? 詳細教えろーッ!
「も、ももももも萌ちゃん、学校にこれなくなるかもって、だから嫌だって! 病院がずっと遠くだからみんなと会えなくなるのが嫌って言ってたのおおお!!」
俺が近づくと泣き出す女。なんだよぅ、お前らが蹴ったり踏んだりして血まみれにしたんじゃないか。
だが今はそれもどうでもいいことだ! たぶん、彼女を治す病院が凄まじく遠いんだろう! そして入院して、俺たちと顔を合わせられなくなるのが凄く嫌なんだ。事情はわかった、あとは辻谷を探すだけだ!
「ほ、本当に辻谷さんを探しているの……?」
「マジか――、野崎、俺らも手伝うよ!」
み、みんな――
俺は思わず涙を浮かべた。なんていい奴らなんだ。けどみんなは、俺が涙目になると嫌そうな顔をして半歩ほど仰け反った。
ちっくしょおおおおお!
俺は空き缶すら転がすのに一分以上の時間を要する念力を使った。だが、今の俺はテンションMAXだ、はっきり言ってなんでもできちゃう気がする! 俺が念じると同時に女子のブラウスのボタンが弾け、スカートが落ちる!
ひょ〜ほほほほほほほほほおぅッ!!
俺は再びエネルギー(これってたぶん、俺のサイキックパワーなんじゃないか?)を充填すると、阿鼻叫喚の教室から走り出た。
待ってろアンナ、辻谷! 俺がお前らの愛のキューピッドになってやる! そして俺と一緒のベッドで寝ろおおおおお!!
俺の哄笑は、いつまでも廊下に鳴り響いた。




