行伍と安和
これは思春期の男子たちの妄想、こうなったらいいなぁ、とか、ああなったらいいなぁ、という個人の願望を小説にした――スミマセン、嘘です。私の趣味です。
こんな私の趣味で書いた小説ですが、みなさんのお時間が潰れたら嬉しいと思います。
なんって気持ちのいい朝なんだ。交通量が少ないせいか小鳥のさえずりもあいまって本当に清々しい。
早歩きをやめたお年よりが毎日シアワセっていうのも、なんだか納得できるってモンだ。
『おい、見ろよあのアホヅラ』
『ケケケ、あれ、絶対に女いねーよ』
……ンだとごらあああああッ! こ雀が人間サマなめとんのかいぃ! おりろや、電線なんぞにお高く止まってんじゃねえぞーっ! 感電してフライドチキンになりやがれ!
声を張り上げながら石をぶん投げると、雀どもはピチチチ、と悲鳴をあげて逃げていく。
――なめやがって、チクショウ!
「……なあ、なにやってんだ、お前」
俺が悔しそうに公園のど真ん中で地面を叩いていると、とっても気の毒そうな声が聞こえてきた。この声は俺の親友――五十嵐 安和だ。
俺は無言で立ち上がると、アンナに笑顔を向けた。
やあ、おはようアンナ。今日も可愛い女性物しぐふぉおうッ。
「……っ! !?」
思いっきり腹をボールに見立てたかのような強烈なシュートを決められる。もんどりうってごろごろと転がる俺を、アンナは顔を赤くしながら胸を隠すように腕を組む。
あ、ちなみにこれ、本人に言うと「ただ腕を組んでるだけだっ!」て瓦割りがとんでくる。
「どこ見てんだよ、妄想オタク!」
す、すいませぇんっ!
思わず土下座。俺とアンナは幼馴染だった。そして彼女は女なのに、男のかっこうというありえないコラボレーションだ。それなのに俺なんかよか全然モテる。外でもちょっと声が低いからって男で通用するんだ。
ちなみに、アンナはいつも男子学生服。私服だって男物だ。なのに、なぜアンナの下着類が女性物だとわかったのか、それは――ふっ。まだ秘密だ。
――「あらすじ読んだから知ってるよ」、みたいなツラすんなぁぁ! そうだよ、俺はエスパーだから透視とか親しい人なら見えるんだよっ、見えちゃうんだよっ、スケスケだよ!
隣のあの子は透けないのに俺の親父はスケスケなんだぞおお! ばっかやろおおおおおおっ!
――はっ。隣に立っていたアンナが「こいつ大丈夫か?」の表情で俺を見ている。あ、うぅん、ゴホン。できるだけ爽やかに……。
さあて、五十嵐。学校へ行こうか。
「俺の半径3メートル以内に寄るんじゃねえ、妄想力少年」
だから妄想じゃないんだってええええ! 信じておくれよお、アンナちゃああんッ!!
「う、うわ、キモい! つか下の名前で呼ぶな!」
どさくさに紛れて抱きつこうとした俺の顎を、容赦なく蹴り砕く。
――ああ、相も変わらずそのおみ足、美しゅうございます……。
崩れ落ちた俺を、やりすぎだと思ったのか「大丈夫か」と声をかけてくれる親友・アンナ。ありがとう、君のその胸の感触は絶対に忘れ――、
ブラックアウト。