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仲間と紡ぐ異世界譚  作者: 灰虎
第1章 拠点編
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9.洞窟探索

 『義風』と共にマガラニカ大森林の崖を目指していると、ノブと美月がいた。

ノブは今までずっと万能武器のイメージをしていたが、形に出来ていない様だった。

なぜ美月がいたのか。単純に洞窟の深さを知りたかったらしく、探索隊がここを通ると思ったから待っていたそうだ。待っている暇潰しにノブにアドバイスをしていた様だ。

ノブ曰く「あれはアドバイスじゃなくて笑われていただけ」だそうだ。



 総勢9名となった一行は、麗美が作った穴改め”新しく発見された洞窟”入り口へと着いた。夕刻だが空はまだ明るい。巨大な円形の入り口は深い暗闇へと続いていた。このような洞窟が突然出来る事は偶にあるそうだ。深ければ深いほど危険な魔獣などが潜んでいたり、希少な鉱物などが採取出来たりするそうだ。まあ今回は人工物だからそんな事ないよ、なんて事は言わない。探索する楽しみを奪っちゃいけないと思うから。


「しかしこの入り口、綺麗な円形だな。形的には地虫の類いとみるべきなんだが・・・ここの岩壁ってかなり硬いはずだよな」と、アルトリウスが呟く。


「アルの言う通り、だからこそ天然の防壁とも成り得る。上の大森林とセットだけどさ」チャサが相槌を打つ。

「うっわー、これ触ってみてよ。スベスベしてて転ばない様に注意しないと怪我しちゃうよ」エステルが注意を促してくれる。


「綺麗さに見とれてると、エステルの言う通りになるわね」エリシアがエステルのフォローをした。


「うーん、微かに魔力の痕跡がある。みんな、十分に気をつけてね」とセガも警戒する様促した。


「セガが言うのなら間違いないな。3:2だ。行くぞ」


 アルの号令に『義風』のメンバーが頷き返した。僕たちは彼等に囲まれて進む事になった。

 先頭はエステル、アルトリウス、チャサ。続く僕たちの後ろにサガ、エリシアの順だ。

 エステルとエリシアが光虫の入った灯りを持っている。洞窟内は光が反射してかなり明るく綺麗だった。だが、ちょっとだけ進んだところで行進が止まる。岩壁が硬すぎて、灯りを掛ける為の穴が空けられないそうだ。道理で先程から壁をギィンギィン叩いていたわけだ。


「アレ・・・じゃない。アル、足下に。反射するから」


「えーと美月が言いたいのは、壁に掛けなくても光が反射して十分に光量が確保できるって事だと思う」


「おい、美月。俺達以外には丁寧に説明しないと通じないぞ。学習しろよ」


「サトミは理解した。問題ない」


 と言い終わる前に、ノブの顎を掠めるパンチが放たれた。ふらつくノブ。どうやら脳を揺さぶる攻撃が、早く効果が出るので最近はコレばっかりだ。


「お前等、仲良いな。どうだ、エステル」


 美月とノブの遣り取りに早くも慣れたアルトリウスがエステルに問いかける。


「問題ないよ。壁際に設置していくよ」


「よしっ、じゃあ進むぞ」


「僕等冒険者が固定観念に囚われる様になったら危険信号なんだ。やっぱり君達はいいね」


「そうね。慣れない様に注意してたつもりなんだけど、いつの間にか慣れてしまっていたみたいね」


 セガの呟きにエリシアが相槌を打っていた。

 相変わらず真っ直ぐな1本道が続く先は暗闇の中へと消えている。

 行進の合間に等間隔で缶コーヒー大の光虫の入った容器を設置していった。

 洞窟に入ってから30分ほどだと思うけど、かなり設置しているはずなのに一体全体どこに隠し持っているのか。分からない事は聞けば良い。否、知らないままではこの世界は危険すぎる。


「アルトリウス、教えて欲しい事があるんだけど」


「どうした」


「さっきから設置している灯りなんだけど、どこから出してるの?荷物なんて持ってなさそうに見えるけど」


「それは俺も考えてたな」


「私もセンと同じ」


「僕も」


 みんな同じ事を考えていた様だ。でもノブが言い出さなかったって変な感じだ。何かモヤモヤする。


「は?そんなの当たり前じゃないか。嵩張る物は倉庫珠こいつから取り出すんだよ。荷物なんか持ってたら戦闘なんか出来ねえだろ」


「アルは余り説明には向かないから。セガ教えてさしあげて」


「チャサその言いぐさ酷すぎねーか」


全員みんな同じ考えさ。アルにはアルの。我には我の。それぞれ得手不得手があって補い合う為のチームだ。義風を纏められるのはリーダーのアルだけさ」


 チャサさんは腹黒かも、忘れないようにしておこう。


 僕たちは、セガから倉庫珠そうこだまなる道具を実際に見せてもらった。色取り取りの『倉庫珠』には、小さい物はゴルフボールくらい、大きな物は野球の硬球くらいある。もっと大きな物があるそうだが、値が張るようだ。重量は見た目通りで重くない。収納しても空でも変わらないそうだ。

『倉庫珠』の価値によって収納数が変わり、大きさによって収納できる大きさが変わるそうだ。つまり高価値で大きな物程、大きくて大量の物を保管できるということだ。ただし保存は出来ないようだ。ナマモノ厳禁。

小さくてもそれなりに高価で、購入するには、一定ランク以上の称号が必要になるそうだ。所有するには国の許可が要るそうだ。なかなかハードルが高い。

 なお商いをする者は所持できないそうだ。どこにでも隠せそうだもの。この国の税制とか知らないけど、悪用し放題な気がする。

 よく考えたら『改装具』と似ている。日本の偉大なマンガに出てくる?次元ポケットの劣化版じゃないか。



 景色に変化はなく進んでは設置、進んでは設置の繰り返し。もうかなり歩いた気がする。

 ぐ~~~~~

 どうやらお腹が空いたみたいだ。

 笑いは取れたけどお腹は満足してくれないので、小休憩を取る事になった。みんなで円く座る。

 エステルがゆで卵と蒸かし芋を、エリシアが飲み物を配ってくれた。どちらも喉が渇くのでとても有り難い。


「おお、ゆで卵か。はむっ・・・うまー。この中身のとろっとするのが堪らない。エステルでかした」


「うんうん。たーっくさん、感謝しなさい」


「俺の村じゃまだ捨ててるんだろうな。はぁーー、もったいねー」


「アル、そこはみんな一緒さ。だからそこまで落ち込むなよ」


「そうか。チャサはオムレツ食うな」


「なんでそうなるのさ。我が何か悪い事でもしたかい」


「はいはい、喧嘩しない。とっておきがあるんだよ。ほーいっ!」


 エステルがみんなの前に差し出したのは唐揚げだった。片栗粉の入手経路については聞かない事にしよう。


「なんだこりゃ」


 『義風』の面々の視線がエステルと唐揚げ(薄い衣を纏った一口大の肉らしき物)を交互に見やる。


「お、唐揚げか。いっただっきまーす」


 ノブが手で摘み一口にする。


「冷めてるけど・・うむぐむ・・うめーな。あったかけりゃもっとうまいな、これ」


 さらにもう1つと手を伸ばすノブの手をエステルが叩く。


「ダーメ、1人1個なの」


「麗美と美月はそれ以上太ったら困るだろ。俺が食べてやるよ」


 袋叩きにあったノブ。流石にフォロー出来ない、ごめんよ。


「お、カリッっとしたかと思ったら中は軟らけえな。冷めてなきゃ、もっと美味いのか?」


「この肉美味いな」


「ほーんと美味しい」


「これはぜひ、温かい物を食べてみたいですね」


「食べるのがこんなに楽しいなんて初めてかもな。世界が大きく変わるぞ」


「その為にもセン達の”食材”ってのを見つけないとね」


「そうだ。小腹も膨れたし行くか」



 それからも洞窟に変化は見られない。巨大な1本道を進む。後ろは明るい通路、前には暗闇が。

 

「空気に澱みは・・・ないな。かなり深いのに」とアルトリウスが漏らす。


「微かに感じる魔力も最初と変わらない」とセガが。


「静かに」


 エステルが振り返り、口元に指を立てる。多分喋るなってことだろう。両耳がピクピク動いている。ちょっと頷いたと思ったらエリシアが音も立てずにエステルの横に並ぶ。エリシアの耳も何かを感じ取っているのか、ピクピクと動いている。尻尾も若干太くなっている気がする。

 2人は灯りも持たず足音さえも立てる事なく暗闇へと消えていった。

 麗美が僕の袖を引っ張りながらどうしたんだろうと小声で問いかける。何かはあるんだろうけど、その何かが僕に分かるわけもないので、どうしたんだろうねとしか答えられない。



「接敵、至急応援」


 エステルかエリシアかの声が聞こえた。2人とも声が似てるから僕には判別出来ない。


「いくぞ。セン達は少し距離を取って付いてこい」言うなりアルトリウスが駆け出す。チャサも続く。


「逃げてって言ったらすぐに逃げてね」とセガが言いながら駆けていく。


「センチー。見失わないくらいで追いかける」


「わかった。美月に任せるよ」


「麗美が作った穴が魔物まで生み出しちまったか」


「ノブ、そんなわけないでしょ。麗美も気にしないで」


「わりぃ・・・済まねえ麗美」


「・・・うん」


 美月が動き出したので僕たちも彼女に続く。

 しばらくすると金属の打ち合わされる音が聞こえてきた。灯りがある所で戦闘が行われていた。

 そこには、かなり広い空間があった。


 敵と思しきモノは、膨らんだり萎んだり広がったりと、形が変化する。たぶんスライムなんだろう。

 スライムなんだけど固いらしく金属音がする。水銀の様な液体金属なのか。ただ色は黒い。

 暗闇の中であんな黒いモノと交戦してたエステルとエリシアって・・・獣人のポテンシャルは驚嘆に値する。


「こいつら雑魚じゃねえな、硬いかと思えば軟らかくなりやがる。気をつけろ」敵と交戦しながらアルトリウスが味方に情報を伝えている。


「上にも気をつけて。落ちてくるから」と交戦中のエステルが注意を促す。


「飛び道具もあるから要注意よ。酸と固い物を飛ばすわ」同じく交戦中のエリシアがエステルの補足をする。


「こいつら何匹いやがる」アルトリウスが誰ともなく問う。


「上に3匹。地面に7匹」エステルが敵の攻撃を避けながら答えた。


「セガ、上は任せて良いか」


「何とかしてみる」アルトリウスの要請に苦笑するセガ。


 セガは左手に持った本を開き、何事かを呟く。

 天井で3つの雷光が閃きスライムらしきモノを蒸発させた。


「おっしゃー。わかったぞ、セガ」


「さすが我らが頼れるブレーン」


「セガには唐揚げ作ってあげる」


「えー、お姉ちゃんも欲しいよー」


 交戦中の『義風』の面々の武器が青紫の糸を纏った。雷なのかな。

 どうやらかなり効果があったらしく、すぐに勝敗は決した。

 この魔物、1匹が魔鉱結晶片を5~7個持っていた。死んだら溶ける様に地面に染み込んで消えたんだけど。

 『義風』の喜び様は、子供みたいにはしゃいでいた。

 新種の魔物の情報は高く評価され報奨金が出るそうだ。なるほど、それは嬉しいわけだ。



 この広い空間には数カ所穴が見られた。闇が濃くて、どこに通じているかは分からない。これまでと違って人1人がやっと通れそうな狭さだ。アルトリウスとかだと進むだけでも苦労しそうだ。

 麗美の魔砲が穿った穴はここまでだった様だ。明らかに岩質が違うから見ただけで分かる。それでも十分すごい。入り口からここまで6キロメートル以上はあるだろう。

 ”食材”が見つからなくて済まないと申し訳さなそうに謝るアルトリウスにちょっぴり罪悪感を感じてしまった。逆に、魔物がいるなんて予想外だったのでこちらこそが感謝している。

 今回はここで戻るらしい。僕たちに異存はなかった。

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