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仲間と紡ぐ異世界譚  作者: 灰虎
第1章 拠点編
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8.万能武器

 僕たちは庭へと移動した。

 万能武器の形態変化に挑戦することにした。


「イメージだって言ってたよね。銃とかもできるのかな」


「ふふっ、俺はもう決めてるぜ」


「私も」


「僕も」


「セン早く決めろ。決まったら一斉のだ」


「うーん・・・よし、待って・・・O.K.」


「いいか。んじゃ、せーのっ!」


 ノブの掛け声にみんなで頷き返す。

 迷って決めた武器をイメージする。

 それぞれの武器が変化した。

 ノブがイメージしたのは盾だろう。薄っぺらい看板になってたけど。

 美月のは、バトン?聞けば、ライトセイバーだそうだ。なるほど。

 僕のは棒の先が捻れて細くなってる。槍にしたかったんだけど。

 麗美は・・・銃にしては口径が大きい。


「麗美のそれは何をイメージしたのかな」


「はーい。これはねー、魔砲まほうだよ。えっへへ、出来たから褒めて褒めて」


「魔力・・・はっ!アレが言ってた」


「アレって・・・アルトリウスだよ。せめてアルって呼んで美月」


 麗美曰く、魔力を自動で吸い上げてトリガーを引けば圧縮された魔力が放出されるとの事。あくまでイメージだけど。魔砲の側面には小さなハートマークが3つ。圧縮された魔力がチャージ出来た事を表示できる様にしたそうで。連続3回撃てるようだ。既に小さなハートマークは3つとも青白く点灯している。大きな二重のハートマークがあり、リミットオフ状態に切り替えれば使用可能との事。後、ホーミングだから外れない。あくまでイメージだけど。

 気付いた事がある。元に戻す時もイメージするだけ。つまりイメージ次第。ヨーコに教わった動作は、たぶん僕たちが簡単に出来るように刷り込みをしてくれたんだと思う。




 ぐ~~~~~

 お腹が減ったので昼食にした。

 食事中に試し撃ちと試し切りをしたい事を話すと、王女とヨーコに驚かれた。2人が同行するというので場所は、拠点後方を守るマガラニカ大森林直下の崖に決まった。歩いて10分も掛からなかった。

 高く聳える黒い岩肌をした天然の壁が、周りの緑の中でこれでもかと主張している。

 辺りには、大小様々な形の岩がある。大きなものは小さなビルほどもある。

 ちなみに試し切りは美月だ。麗美の言葉で気付いた美月は、圧縮した魔力を噴き出すようにイメージしたらあっさり成功させた。基本は出来てたし。

 僕とノブの武器はまだイメージがうまくいかない。ノブは盾に拘るみたいだけど。



 最初は美月の試し切り。目標は3メートルはありそうな巨大な岩。イメージして武器を作り出す美月。柄から青白い光が1メートルも延びている。


「まあ、なんて素晴らしい!魔法が使えないからこその発想ね。この力・・・目標変更。あそこの岩にしましょう。美月、良いかしら」


「大丈夫。姫様は仲間だから」


「あら、じゃあサトミと呼んでくれないとダメよ。パートナーなのよね」


「分かった、サトミ」


 王女が指定した岩は3階建てのビルくらいはあるだろう。さっきのでも問題ないじゃないか。大きくするのにどんな意味があるの。ジャンプしても届かないし。

と、美月の持つ武器に変化が。青白い光の刀身が細く長く変形していった。長大な日本刀が3本顕現した。

そうだ、イメージすることで変化する武器なんだ。僕の中で何となく自分の目指す武器の雛形が浮かびかけていた。



「斬る」


 美月が短く告げた。

 パンのようにスライスされた巨岩だった物が土煙を上げ横倒しとなった。

 切断された面は、光沢を放っていた。触れずともつるつるすべすべな事が容易に想像出来た。


「「・・・」」


 僕とノブは言葉も出ない。

 麗美はどうやら良い刺激を受けたらしく、やる気を漲らせていた。

 王女は美月を褒め称えていた。

 ヨーコもしきりに感心していたが、まだまだ彼女には余裕が見て取れた。



 いよいよ麗美の試し撃ちとなった。

 麗美の標的は美月がスライスした岩塊に決定した。

 王女とヨーコが興味津々といった感じで美月に説明を要求していた。どうやら飛び道具は弓矢やスリングなどであるらしく、銃という概念が無いそうで。

 なんとか王女を説き伏せた?麗美は魔砲を構えた。

 麗美がこちらを見つめていた。


「がんばれ」


 僕の声に頷き笑顔を見せた彼女はトリガーを引いた。



 青白い光の線が岩塊を貫いた。

 突如巻き起こる爆風に吹き飛ぶ麗美。

 僕は吹き飛ばないように耐え、彼女の名前を叫ぶだけで精一杯。

 飛ばされる麗美をヨーコが受け止めていた。

 途端に風が止んだ。

 しかし、僕たちから少し離れると周囲にはまだ暴風が吹いていた。

 おそらく王女の魔法で見えない壁が出来ていて風を避けているのだろう。

 自分達だけで試し撃ちしなくって良かったと心底思った。

 そして、同行してくれた王女とヨーコに改めて感謝する事になった。



 魔砲を撃った本人は元より、その場の全員が想像以上の威力に驚いていた。

 麗美の魔砲が穿った穴は、スライスされた岩塊を余裕で貫いていた。上方にあった岩塊は蒸発したのか、吹き飛んだのか穴を塞ぐものは存在しなかった。

 直径4メートルくらいのトンネル入り口が出来ていたのだ。

 奥は暗くてどれくらい深いのか分からない。


「まじかよ・・・。セン、俺がんばるぜ。絶対俺がお前を守るんだから」


 ん?ノブがおかしな方向に意欲を燃やしていた。


「麗美の魔砲もすごいわ。貴方達といると本当に楽しくてびっくりさせられて退屈しないわ」


「私も正直、お前達を侮りすぎていた。美月にも麗美にも、素晴らしいものを見せて貰った」


「うん。ヨーコ、ありがと。でも、これからも練習付き合って」


 麗美もヨーコに慣れ始めたのか、美月と一緒にヨーコと話していた。


「センとノブも楽しみにしているわ」


 ノブは王女に任せろと自信満々にサムズアップしていた。僕は苦笑するしかなかった。


「これは大切な事なんだけど。2人とも今後その武器を使っちゃだめよ」


 王女の発言に当の2人だけでなくノブと僕も驚いた。真意は続く彼女の言葉で理解できた。


「威力が強すぎて武器が保たないわ。次に使ったら壊れるわよ。もっと良い物手に入れないとだめね。できればリミットオフ?ってのも見てみたかったけれど残念だわ。それまでは、絶対使っちゃだめよ」


 王女の気遣いとアドバイスを受けて、頷く麗美と美月。

 僕たちはこの場で解散する事になった。


 ノブは武器のイメージトレーニング。

 美月は王女と何事かの相談に。

 ヨーコは当然王女の護衛。

 僕と麗美は干し芋の様子を見に貴賓室へ。




 2階の干し芋部屋となった貴賓室へ行く前に大厨房へとちょっと寄り道する。其処にはピックとリーフとエステルの3人はいなかった。

 大厨房内には知らない7人が忙しなく動き回っていた。

 夕食の準備で忙しそうなので邪魔になりそうだ。そう思い干し芋部屋へと向かおうとしたら、声を掛けられた。


「どうしたんだい、もうお腹が減ったのかい?あれ、あんた等は確か王女様の客人だったかい」


 薄緑色の髪、茶褐色の瞳をしたお姉さんが調理の手を止めずにこちらを見ている。よく見るとすごい露出度の高い服装だ。白い肌と凹凸のある女性らしい丸みのある身体が否が応にも目に入る。特に胸の豊満さが。彼女は、自分の顔と別の箇所を交互に見る僕の視線に気付いたようで、好奇の目を向けてきた。


「あたいはショーコってんだ。初心うぶで可愛い坊やだね。そっちのお嬢ちゃんも可愛いね。2人とも食べちゃおうか」


「あなたに食べられるわけにはいきません。麗美逃げて」


 僕は素早く腰の武器を棒に変化させ構える。しかし、麗美は僕の前に出て魔砲を彼女に向けていた。

速い。麗美の動きが見えなかった。もしかして以前からこんなに速く動けたの?と思っていると。


「全く冗談も通じないほど初心だったとは。悪かったよ。にしても、なかなか良い仲間じゃないか。しかもお嬢ちゃんは怖いねー、このあたしが冷や汗が止まらないなんて」


 この拠点にいるのは、ほとんどが冒険者。どうやら彼女には危険に対する鋭敏な嗅覚が備わっているようだ。

 麗美の『魔砲』の凄さを知っているのは、6人だけのはずだから。


「いい加減、その物騒な物をこっちに向けるのを止めちゃくれないかい。降参だよ、降参」


「リーダー、仮にも武器でいいのか?そんな物を向けた相手を許しちゃいかんでしょ」


「そうそう。ジョーダンとは言え武器を持ち出されちゃ締めないとだめでしょ」


 ショーコと名乗る女性の後ろから2人が現れた。黄白色の肌に茶褐色の髪と茶色の瞳。2人ともよく似た顔であるが、違うのは体つきだ。片方は女性特有の凹凸がある。


「黙んな。力量も分かんない奴から死ぬのがこの稼業。そんなに死にたけりゃ、あたいを巻き込むんじゃないよ」


「そんな、王女様だって相手が武器を持ちだしたって言えば咎めやしねぇよ」


「そうだよ、ナットの言う通りだって」


「何度も言わせんじゃないよ。目の前にある危険も察知出来ない奴とはもう組めないね。お嬢ちゃん、この2人には決して手を出させないから、ここは収めちゃくれないか」


「麗美、冗談だって言ってるんだし許してあげようよ。僕たちだって、まだこちらの事をよく知らないんだから」


「うん。センがそう言うんなら」


 武器をしまい僕にくっつきながらも、視線はショーコ達から外さない麗美。

 そのショーコは、額の汗を拭う所作をしてから背後の2人を叱りつけた。

 こちらに振り向いたショーコは再度詫びてきた。謝られるのは気持ちいい物じゃないね。

 とにかく小さな誤解から、戦争にまで発展する事もあるんだから仲直りできて良かった。




「あー、師匠じゃないですか。どうかされました」


「あら、1番弟子のわたくし。このリーフに何でもおっしゃって下さい」


「どうしたの。また何か作ってくれるのー」


 騒ぎが落ち着いた所に、ピックとリーフとエステルの3人が大厨房へ戻ってきた。

 聞けば3人は干し芋と片栗粉の具合を観察してきたそうだ。手間が省けた。

 師匠と呼ばないで欲しいと言ったがピックとリーフに断固拒否された。それっておかしくない?

 とはいえ、時間が出来たのは確かだし何をしようか思案していると。


「あら、あんたがこの料理を教えてくれた『師匠』だったのかい。ホントに済まなかったねえ」


「もう済んだ事です」


「んー、何かあったの?」


 ショーコと僕の遣り取りを疑問に思ったエステルが、理由を尋ねてきた。ショーコはバツの悪い表情かおをしたが完結に話して聞かせた。エステルもピックもリーフも呆れていたが、最後は顔が青ざめていた。


「あ、あなたが冷や汗?それこそ冗談でしょう」


「この拠点なかでも屈指の実力者のあなたが勝てないとか・・・ほんとうに?」


「そう言ってんだ。共闘できるなら最高さ、敵だったら絶対に逃げる」


「・・・それほどに」


「信じるも信じないも勝手さ。対価は命だろうけど」


「「「・・・」」」


「俺は元から師匠やその仲間に失礼な事は考えちゃいないから問題ない」


「ちょっとピック、それは私のセリフよ」


「あたしは雇用主は裏切らないし、メンバーもこの子等を気に入ったみたいだし」


「『義風』に『艶華エンカ』が・・・すごいです、師匠。俺、一生師匠について行きます」


 何が何だか分からないけど、ここでの安全度が更に上がったみたいだ。でもピック、どうしてそうなるの?

 因みに食べるというのは性交と言う事だそうだ。僕も麗美も赤面し笑われてしまった。調子に乗ったリーフとエステルが、今夜いっしょにどう?と発言して麗美に魔砲を向けられ震え上がった。エステルだけじゃなくリーフも冒険者として優秀なのかも。

 しかし、麗美のキャラが、というか何か違ってきている気がする。



「おーい、エステルいるかー。夕食前に依頼しごとだぞー」


「どうしたの」


 『義風』の面々が武装して厨房入り口に立っていた。

 アルトリウスが言うには、拠点裏の崖に洞窟らしきものが発見されたので、深さや危険生物がいないかの調査を依頼されたようだ。それって麗美の魔砲で出来た穴の事だよね。


「お、センと麗美もいるのか。丁度良い。お前等も一緒に来いよ。”食材”ってのが見つかるかも知れないぞ」と、アルトリウスが笑顔で話しかけてくる。

うん、多分食材はないと思うんだけど。せっかく誘ってくれてるし行こうかな。どのくらい深いのか興味があるし。


「師匠、俺も付いて行きます」


「もちろん、1番弟子の私が付いて行きます」


「何言ってんだい。エステルは依頼だから仕方ないけど、あんたら2人は調理こっちが仕事だろ」


 ピックとリーフは、ショーコに叱られてしょんぼりと僕たちを見送った。

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