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仲間と紡ぐ異世界譚  作者: 灰虎
第1章 拠点編
7/38

7.初の害虫退治

 まどろみの中で、優しく囁く声が聞こえる。


 サトミの姿を思い浮かべて、サトミの姿を思い浮かべて、サトミの姿を思い浮かべて、サトミの姿を思い浮かべて、繰り返されるフレーズ。


 サトミ、サトミ、サトミ。おぼろげな輪郭だったモノが、王女の可愛らしい姿となって現れる。


 思い浮かべた、と問うてくる。


「うん」


 サトミが大好き、サトミが大好き、サトミが大好き、サトミが大好き、繰り返されるフレーズ。


「大好き。サトミが大好き」


 微かに甘い香り、温かくて弾力があって柔らかいモノに包まれる感触。




「な・な・な・何をされてるんですかー」


 大声に驚いて目が覚める。が、視界が何かに塞がれて暗い。手を動かせば何かに触れる。両手で押し退ける。10指が柔らかいモノに埋もれる。


「きゃっ。馬鹿ー」


 勢いよく吹き飛ぶ僕。フワッ。壁にぶつかる寸前でヨーコにキャッチされた。美少女にお姫様抱っこされる僕。恥ずかしい。左腕に柔らかい感触。良い匂いがする。


「ありがとう、ヨーコさん」


 お礼を言うも、恥ずかしくて上目遣いになってしまった。


「気にするな。それより、怪我はないか」


「うん」


 彼女と目が合う。燃えるような真紅の瞳の美しさに魅入ってしまう。ヨーコが若干力を強くしているのか、僕の頬が彼女の胸に当たる。彼女の息づかいを間近で感じる。彼女の香りを、より一層意識する。


「もう大丈夫だから。離して下さい」


「ああ、済まない」


 気の所為か、彼女がちょっと残念そうな表情をした様に見えた。しかし、照れくさくて僕にはじっくり観察する余裕なんか無かった。


「サトミ様、どうしてセンが部屋に居るのですか。説明して下さい」


「んー、ちょっと教育してただけよ」


「未婚の王女が男と寝室に2人きり。それだけでも大問題なのに。どこが教育ですか」


「そこはヨーコが黙っていれば済む話でしょ。まずは、名前で呼んでくれるように教育してたの」


「洗脳の間違いでしょう」


「睡眠学習っていって、立派な教育よ」


「とにかく、この様な事は今後一切認めません。いいですね」


 言い争う2人をよそに、僕は昨夜の記憶を探る。4人で明日の行動を話し合った。麗美と美月を部屋へ戻し、ノブより先にお風呂に入って眠りについた。

 そして現在、なぜかサトミの寝室にいる。


「ねえ、セン。私は、だ・あ・れ」


「サトミ。・・・王女様です」


「「!!」」


 何で僕はサトミを呼び捨てに。あれ、王女じゃなくてサトミって考えてる。


「ね。ちゃんと教育出来てるでしょ」


「ね、じゃありません。それは洗脳なんです、絶対だめです」


「やーね、睡眠学習よ睡眠学習。あと声が大きい。そんなに怒ってると小皺が増えるわよ」


「誰の所為ですか。とにかくいけません」



 朝からとんだ目にあった。僕は1人で大厨房に行く。僕に気付いた、ピックとリーフが手を振ってくる。

 ピックとリーフの他に、1人知らない女性がいた。


「おはようございます。そちらの方は」


「「おはようございます」」


「はーい、エステルだよ。君だよね、昨日の料理考えたの。来てくれて良かったー。会いたいと思ってたんだ」


 彼女の名は、エステル。艶のある真っ白な長髪をツインテールにしている。ライトブルーの瞳が綺麗だ。特質すべきは、真っ白な猫耳と尻尾を持つ獣人。なんでも双子の姉がいるらしい。冒険者で4人の仲間と一緒に拠点作りに参加しているらしい。割と料理が得意なので、厨房担当なのだそうだ。朝食の用意が終わったので、昨日の卵料理について話し合っていたそうだ。


 僕は、材料をピックに用意して貰い、早速調理開始。プレーンオムレツと鮭のムニエル。ジャガイモのスープ。唐揚げ。ジャガイモの細切り炒めとサツマイモと卵のサラダ。こんなものかな。味見と称してピックとリーフとエステルがつまみ食いをするので、各7皿用意した。


「その白い粉は何」


「これはジャガイモから採れたデンプン。片栗粉です」


「ふふん。それ、俺が作ったんだぞ」


 ピックが誇らしげに鼻を鳴らす。エステルは片栗粉を舐めておいしくないと言っている。

 朝食の準備は出来たんだけど、プレーンオムレツの指導を頼まれた。見てたよね、とは言えない。


 ピックとリーフがプレーンオムレツに挑戦しているが、うまくいかない。まぁ、失敗作はスクランブルエッグにして提供すれば良い。作っていれば上達する、と励ますが苦笑いが返ってくる。

 原因はエステルである。初見で見事に作り上げました。彼女の方が技術は上であるのは確かだ。


「エステルの仲間って、強いのかな」と話を振ってみる。


「弱くないよ。強いってのは分からないけど」


「いやいや、師匠。エステルは、『義風ギフウ』って冒険者の一団の幹部なんですよ。腕利きの集団で評判も良い奴らです。討伐・防衛・探索なんでもこなします」


 横から話に参加してきたピックに、いきなり師匠扱いされた。師になった覚えもなければ、弟子に取った覚えもないよ。なぜかリーフも参加してきてピックと1番弟子の取り合いをする始末。2人共、またオムレツ失敗してますよ。

『義風』か。この縁が吉となるかどうか。


「あのさ、エステル。『義風』に頼みたい事があるんだけど」


 王女の許可は得ていて、後は護衛が必要な事。周辺探索に付き合って欲しい事を伝えた。仲間と相談するだろうと思ったんだけど、即答だった。

 報酬は、料理の手解き。食事のレパートリーが増えるのは、お金に代え難いそうだ。レシピを書いて渡すのはダメだそうだ。エステルは見て・聞いて・嗅いで・味わって自分のモノにするそうだ。

 詳しい予定は、みんなと相談した上で伝えるということになった。



 朝食を摂りながら、片栗粉増産と干し芋作成に必要な道具の開発を依頼した。

 王女を除いた5人で朝の訓練をする。準備運動の後、4対1の実践稽古。昨日よりも、格段に動きが良くなっていると褒められた。結局、ヨーコに触れる事さえ出来なかったけど。


 休憩中、あのマズイ飲み物を渡された。回復効果があるそうで、覚悟を決めて一口飲んだ。

 美味しかったし、劇的に疲労が解消された。どうやら、疲れていれば美味しいようだ。レモンを美味しく感じるのと似てる。


 今日は、周辺の害獣・害虫退治をするそうだ。これは、週1回行うそうだ。

 後は、拠点拡張時にも臨時で行われるとの事。

 今日は臨時だ。目的は食料生産量を増やす為ということだが。探索の為と思うのは考え過ぎなのかな。

 不安と好奇心が綯い交ぜになっている。ドキドキワクワクってやつだ。



 拠点出入り口付近には、5~6人で一塊ひとかたまりの集団が30程出来ていた。

 皆、普通の服装に見える。虫はともかく獣相手に武器も無し。

 僕たちは武器とシャツで武装してるのに、肩すかしを食らった気分だ。

 すると、声を掛けてくる者が。エステルである。続いて、彼女の仲間達が自己紹介してきた。


「あたしはエステル。セン以外とは初めてよね。仲良くしよっ」みんなと握手をするエステル。


「やあ、初めまして。『義風』リーダーのアルトリウスだ。アルって呼んでくれて構わない。依頼の件は任せてくれ」


「皆さん、初めまして。我が名はチャサ。よろしく」


「あたしは、エステルの姉のエリシアよ。捜し物ならお姉さんに頼ってね」


「僕はセガ。『義風』のブレーンで魔法使いさ。君達にはとっても興味があってね。こうして知り合えて歓喜しているよ」



 アルトリウスは赤茶色の髪を後ろに束ねた大柄な体躯。ノブより高いから身長2メートルくらい。

 チャサは茶褐色のサイドを刈り上げた短髪パーマ。黒い肌に白い歯が映えるナイスガイ。ノブと同じくらいだから身長190くらい。

 エリシアはエステルの姉。白黒斑の長髪をお下げにしている。白黒斑の猫耳と尻尾を持つ獣人。耳と尻尾がなければ人と見分けが付かない。美月と同じくらいだから身長180くらい。

 セガは黒髪を7:3に分けた中肉中背の魔法使い。麗美より高くて美月より低いから身長175くらいかな。


 こちらも自己紹介する。なかなか人当たりの良い印象を抱かせてくれる人達だ。

 例によって、ノブは馴染むのが異常に早い。

 エステルが依頼を受けた事を尋ねると問題ないと言ってくれた。彼女の信頼は仲間内でかなり高い様だ。


 門から出て、集団毎に横一列に並ぶ。この集団の多くは冒険者仲間同士であるらしい。

 ソロや2人の少人数は6人の集団に纏められている。

 ヨーコが全体の指揮を取るようだ。

 僕たちは4人。隣には『義風』の面々もいるし心強い。


「ほお~、お前等良い武器持ってるな。だが全員棒使いなのか。基本ちゃ基本だけどよ」


「これってそんなに良い武器なの」


「はははは・・・はあーあ。知らねえのか。そりゃ、万能武器シリーズの高級品だぜ」


 乾いた笑い声に呆れを多分に含んだ溜息をもらすアルトリウス。彼の仲間達も一様に苦笑いしている。


「「「「万能武器」」」」首を傾げる僕たち。



 鍛冶の匠と魔法具の匠が協力して作り上げる万能武器。所有者のイメージによって形を変える武器。

 状況によって使い分ける事ができ、頑丈・軽量・コンパクト。しかも、身体能力強化の効果までついているらしい。なるほど、高級品。棒は基本ね。

 僕たちは、見事にヨーコにすり込まれてたのか。まぁ、彼女に触れる事さえ出来ない僕たちじゃ仕方ない事だけど。

 もしかして、このシャツもそうなんだろうか。


「アルトリウス達も万能武器これ使ってみたかったりするの」


「いや、相性的に難しいな。特に高級品ほど。あぁ、嫌。別に金の問題じゃねえんだぜ。済まん、金の問題もあるけどよ。万能武器は維持するのに魔力が必要になんだよ。特に性能が上がれば上がるほどな。だから俺達の中で使えそうなのはセガくらいなんだが、セガに肉弾戦は無理だしな」


 ふーん、魔力ねえ。僕たちには魔力があるのか。

 新事実発覚。武器の維持にも魔力が必要と。魔力があれば問題ないけど、維持に必要な魔力が足りないとガラクタになるって事かな?


「なぁ、害獣とか害虫ってどんな格好してんだ。良かったら聞かせてくれ」


「場所によって様々だな。ここら辺は、結構大型が多いが余裕だぜ。襲ってくるのだけ討伐すりゃいい。逃げたやつは、そうそう近づいてこないからよ」


「大型って犬くらい?それとも猪?もしかしてアルトリウスくらいあったりするのかな」


「ん?犬とか猪ってのは知らないが、だいたい俺等くらいってところだ」


 へぇー、そんな大きなのがいるのか。獣はともかく、人間大の昆虫。それはもう、バケモノだね。筋力的に勝てないでしょう。うん。害獣にしても大きすぎでしょ。僕は妄想で恐怖をどんどん膨らませていた。


「センセン。わたし、頑張る。いざって時は、ノブくんを盾にすればいいし」


 気遣ってくれる麗美。でも盾ってノブが可哀相だよ。


「てっめっ、麗美。よーくわかってんじゃねえか。センを守れるのは俺しかいねー」


 勝ち誇った様な視線を麗美と美月に向けるノブに、美月のジャブが炸裂する。

 が、ノブはノーダメージだった。当の美月とノブだけでなく僕と麗美も驚いた。

 最初にショックから抜け出したのはノブだった。美月を見下すようにニヤリとする。

 ノブの嘲りの表情に美月がストレートを放つ。顔面にクリーンヒットしたが、ノブは少し揺らいだだけ。

 また、ノブがニヤリとする。


「面白いな、君達は」チャサが笑いかけてくる。


「なんだ、随分余裕があるじゃないか」アルトリウスも笑っている。


「ああ、加護の鎧着まで持ってるのか。なるほどなるほど」セガの言葉に皆が頷いている。


 加護の鎧着とは、僕たちの着ているシャツ。これには物理防御力上昇・魔法防御力上昇・異常効果軽減・浄化の効果があるそうだ。当然高級品。自身の魔力量に応じて防御力上昇補正が追加されるそうだ。

 万能武器もそうだけど、めちゃくちゃ厚遇されてるなあ。単なる親切心・・・なわけないよね。


「へっ、済まねえ美月。溢れる才能で、ついにお前を超えちまったぜ」


「寝言は寝て言え」


 物凄い早さで正拳付きを放つ美月。僕は見た。美月の右拳が淡く光っていた。

 ノブは美月も見ずに両手を頭の後ろで組んで口笛を吹いている。

 結果、白目を向いて倒れ込むノブ。くの字となったノブの身体がピクピクと痙攣していた。

 ”ノブ、カムバーック”と叫ぼうとしたところで、セガが左手に持った本を開き何事か呟く。すると、「痛ってて」とノブの意識が戻った。

 僕と麗美と美月は、魔法による奇跡を目にした。僕がセガにお礼を言っていると2人が懲りずに続きを再開する。


「あっぶねー。川向こうで見知らぬ誰かが手招きしてやがった。危うく逝っちまうとこだったぜ。暴力女」


「ふん、思い知ったか。負け犬ノブ」


「ジャレてるとこワリィが、そろそろだ。注意しろよ」


 ノブと美月の間にアルトリウスが注意喚起する。

 ノブと美月は抗議の声を上げようとして、真剣なアルトリウスの表情に気付いた様だ。

 間近に青々した2~3メートル丈の草が生い茂っている草地が迫る。

 どうやら、害獣か害虫のお出ましのようだ。2人のお陰で、恐怖による緊張は解れている。


「ノブ・麗美・美月。油断しないでね」


「頑張る」


「任せろセン。いざって時は俺が防いでやる」


「いいや僕が守る」


「おいみんなー、『偉大なる黒光』の頼みでもある。こいつらを死なせるのだけは防げよ」


「分かってるって。でもあの装備なんだ。逆に傷つける方が難しいぞ」


「そういえば、報酬聞いてないぞ」


「ふっふーん。あったらしー料理レシピの伝授」


「「「「世界樹に感謝」」」」


 アルトリウスの呼びかけに『義風』の面々が声を上げる。

 すると彼等の。否、平服に見えたほぼ全員の出で立ちが変わっていた。

 一体どこに隠し持っていたのか、剣や槍等の武器を持っている。服装も皮服や鎧などに変わっていた。



 目の前の草地がいきなり無くなった。

 一瞬で草が全て刈り払われたのだ。

 100メートル程先に青々と茂った草地が見える。

 刈り払われた草地から黒くて大きな生物が数体、別の班と戦闘を始めていた。

 僕たちに向かってくるやつはいない。なので戦闘を観察する。

 黒光りする大きな1つ目、そこに長いムカデみたいな胴体、尻尾の部分が口。大きな鎌にも見える大顎。

 目玉をがんがん攻撃する冒険者。目玉はかなり硬いようで傷を付ける事が出来ていない。

 そこに巻き付こうとする巨虫。目玉を攻撃していた冒険者がすかさず飛び退く。

 空振りし大きな隙が出来た尻尾を切り落とすと、死んだのか動作を停止。

 冒険者も害虫も動きがかなり遅い。冒険者は武器が重いにしても、害虫の筋力からすれば鈍すぎる。

 そんな光景が3分ほどで終わる。害虫殲滅。


「よし、次だ」


 呆気にとられる僕たちに声を掛けて『義風』が駆けていく。僕たちは彼等を追いかける。

 また草地が一瞬で刈り払われる。現れる害虫数匹。

 次々に倒されていく害虫。そして僅か3分ほどで殲滅。

 繰り返される。繰り返される。


「尻尾が弱点だな。流石に覚えたぜ」


「うん、ただ実際に出来るかどうか分からないけど」


「でも動きが遅いから私でも避けれるよ」


「当たらない攻撃は怖くない・・・」


「「「・・・」」」


 自身の言葉に美月が落ち込む。

 僕もノブも麗美も言葉が出ない。分かるよ。今日も、ちょっと前に経験した事だし。



 その後も害虫が僕たちの所へ来る事はなく終了した。拠点内へ戻り解散となった。

 尚、害虫の死体は打ち捨てられたままだ。明日には、他の生物によって綺麗に消えてるそうだ。

 そうして綺麗なった所で畑を作るそうだ。

 探索の日取りは、明後日となった。明日は畑作りの見学をしたいからだ。

 約束を取り付け『義風』の面々とも別れた。


 因みに、武器や服などが変わっていたのは、魔法具の1種で『改装具』と言うそうだ。『改装具』は色々な装飾品として普及しているそうで、登録した装いに瞬時に変われる。高価な物ほど、装飾に凝っていたり登録できる箇所が増やせるそうだ。実際に見せて貰ったからね。

 ここら辺は地球よりかなり進んでる。元よりそんな技術地球になかったけど。

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