表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仲間と紡ぐ異世界譚  作者: 灰虎
第2章 フォルトナ編
35/38

魔力増幅(ブースト)

久々の投稿です

 今朝は登校前に、僕とノブと麗美と美月の4人で、サトミのお城の結界補強を手伝う事になった。場所はサトミの書斎なんだけれど、なんとも殺風景な部屋であった。あるのは、特に装飾もない木製の机と椅子。そのすぐ横には、クリスタルで出来た等身大の僕の人形がある。そう、麗美謹製の海パン一丁の僕の人形だ。それと、微かに青味を帯びた白色の大きな生地だけを囲む額縁が壁に掛かるだけ。

 うーん、書類仕事だけをする空間だとしてもどうなの?って感じなのだ。まっ、本人が仕事をしやすいのなら僕が口を出す事でもない。

 そんな事を考えていると、サトミがパンパンと手を打ち合わせて、僕達の意識を自身へと向けさせた。

 

「さあ、始めるわよ。貴方達もセンを介して魔力が増幅される感覚は体験済みなのよね。でも、効率の良い方法を見つけないと勿体ないわ。だから、今からちょっとした実験をするわよ」


「わかった」

「効率か、確かに一理あるかもな」

 美月が即答し、ノブも魔力増幅の実験に賛同の様だ。そんな中「セン、大丈夫?」と、麗美が僕の顔を覗き込んでくる。


「大丈夫だよ。ただちょっと、実験って言葉が気になっただけで。サトミ・・・酷い事しないよね?痛い事とかだったら、僕は嫌だからね」と、答えたけれど不安だ。うーん、あまり顔に出ない様に気を付けよう。

 でも仕方ないのだ。サトミは、見た目は小っちゃな少女なのに、とっても力が強くてこの国の王女で大魔導という魔法のスペシャリストだ。


「そんな事しないわ。でも・・・刺激があると変化するのかしら?何だかちょっと面白そうね」


 わずかばかり腕組みして考えたかと思えば、不穏な言葉を放つサトミ。実に楽しげな表情をしている。

 そんなサトミに向かって「全く楽しくないから」と、僕は答えた。


「冗談よ冗談、うっふふ。この案は美月が大元なんだから、あまり負担はかけないように考えてるわ」


「むー。秘密だったのに」


 美月が口をとがらせ、サトミに抗議している。


「だってセンが怖がってるから仕方ないでしょう」


「別に。全然怖くないから」


 からかわれている事は分かっているけれど、言うべき事は言っておかないとダメなのだ。他人の事をおもんばかる・空気を読む事は、大切な事でもある。しかし、高度なスキルも、お互いが持ち合わせていなければ、ほぼ無いに等しい。そればかりか、要らぬ誤解から不幸になる事の方が、圧倒的に多い事は歴史が証明している。

 まぁ、現実は、軽く受け流されてしまうのだけれど。


「うっふふ。強がってるセンも可愛いわね」


「だよなー。子犬がぷるぷるしてる愛らしさがある。思わず抱きしめたくなっちまうよな」


 僕はサトミに賛同したノブの言葉がショックで絶句してしまった。その間に、美月に右手を握られ、麗美には左腕に抱きつかれて身動きが出来なくなっている。どういうこと?


「残念。ノブが触れる場所はない」

「私がノブ君から守るから安心してね、セン」


 なるほど、美月と麗美の理由はわかったつもりだ。


「例え話だろうが。美月も麗美もセンがショックで固まってるだろ。いいかげん離れろ」


 いやいや、僕が固まってるのはノブの所為だからね?と心の声を口に出したりはしない。何でもかんでも、伝えれば良いって事では無いという事もある。以前のノブならば、こんな言葉は出てこなかったと断言できる。

 でも、今のノブは、眷族とやらの影響だろうなと思える様になったので、本人がショックを受けるような事は、なるべく避けたいのだ。だって、ノブの所為じゃないのだから・・・たぶん。


「そのままでいいわよ。私とノブが足の担当。そうね、私が右足でノブは左足よ」と、言いながらサトミが僕の右足に抱きついてきた。

 あれあれ、僕の意見は?最近、僕の意見抜きで事が進んでいる気がするよ!


「おいおい、マジかよ姫さん。ったく、仕様がねえな」と、ノブが右へ左へ視線をウロウロさせながら、がっしりと僕の左太股を掴んだ。だけど、なぜか頬擦りしてきた。ノブが悪いわけじゃないと思うしかない。はぁ、結構疲れるなぁ・・・終わったら出発前に樹珠の恵みを飲んで学院へ行くことにしよう。


「当たり前でしょう、これは実験よ。手足で効果が変わるかどうかのね。さ、みんな集中して」


 サトミ曰く、魔力が3倍になったそうだ。1.2倍とか1.5倍じゃなくて3倍。3倍って反則じゃないか、ゲームだったらチートだよ。チート。ドーピング剤なんて目じゃないよ。だけど、みんなで円を作って手を繋いだら5倍になったそうだ。

 僕には5倍なんて正確な事は分からないけど、魔力が桁違いに大きくなって体を巡るのを感じる事は出来ている。見た目の変化は、みんなの瞳が輝いている様に見える事だ。


「みんなの目から強い力を感じるよ」


「センの目だってそうだぜ」


「なんて素晴らしいの。これならテンサイにも勝てるかも。いーえ、絶対に勝てるわよ」と、サトミの興奮が尋常じゃない。


「サトミ、まだ終わってない」と、1人興奮しているサトミに美月が冷静に指摘する。


「そうだったわ。次は、手を重ねるわよ。はい、順番に片手を重ねたらもう片方もね」


 サトミが右手を差し出す。その小さな手の上に、僕が右手を乗せて麗美・ノブ・美月と続く。再度サトミが左手を美月の右手に重ねた。

 瞬間、魔力が跳ね上がる。勘違いではなく、部屋の中で風が吹いている。否、正確には僕達が風の発生源のようだ。みんなの瞳が金色こんじきの輝きを放っている。しかも、体からうっすらと陽炎みたいなものが立ちのぼっている。


「うわっ。何だか危険じゃない?もう止めようよ」


「大丈夫よ。センってば、やっぱり怖がりなのね。増幅された濃密な魔力が、部屋中に満ちてる所為で気流が生まれたのよ。しっかり集中しなさい」


「うあぁぁあすごい。想像以上」と、さすがの美月も興奮している様で、頬や耳がほんのりと赤味を帯びている。


「うおっ、ミニ美がめっちゃ光ってるぞ。麗美大丈夫なのか」と、ノブが大声をあげる。


 隣を見ればノブの言う通り、ミニ美が金色に輝いている。いつもミニ美のまわりで弾けている燐光まで黄金色こがねいろだ。


「うん?何も心配要らないよ。美味しいって、喜んでるだけだよ」と、麗美が右手の人差し指で左肩にいるミニ美をつつく。


「美味しいって魔力の事だよな、そうだよな。何だかミニ美がちょっと怖く感じるぞ」


「変なノブ君。今回は許すけど、今度この子をディスったら撃っちゃうよ」


 ポンと麗美の口から、物騒な言葉が飛び出す。笑顔でノブに答える麗美の目が本気だ。麗美も眷族とやらの影響が大きい様だ。しかし、これは注意しないといけない。


「ちょっ麗美、そんなことしたら絶対にだめだよ」


「大丈夫だよ、ノブ君頑丈だし。いざとなったら命珠だってあるから、センが心配する必要は全然ないよ」


 !!!

 大丈夫じゃないよ。単なるノリなのか?もしかして、眷族の暴走!?ここは流しちゃいけない気がする。麗美に、きっちり釘を刺しておかないと。


「いやいやいやいや、命珠とかの問題じゃないから。ノブに、仲間にそんな事したら絶対にだめだからね」


「えーー。・・・もう冗談だよー、センってば本気にしないで。ね、ノブ君」


「お・おう?そうだよな、ははっはははっ」とノブが青い顔をして返した。


 本当に冗談だったのかな?ちょっと間があったのが気になる。

 それにしても、命珠を持ってるんだ。麗美と美月だけなら、樹珠集めだけで裕福な暮らしが出来るんだよね。わざわざ冒険者という危険を冒さなくても。


「全く大した余裕ね。さっきまで怖がってたセンの緊張が解れたようだからいいけれど。しっかり集中するわよ」


 サトミは分かってない。別の意味で緊張してるよ。あぁ、早く終わってほしい。


 色々試した結果、全員が手を重ね合わせるのが一番魔力を増幅できる事が分かった。特に一番上と一番下は僕が担当する事で10倍になる事が判明(サトミ談)。

 僕達は手を重ねるだけでサトミが魔法を発動し、新たな結界の核を等身大の僕の人形に移して手伝いは終了した。

 前回みたいな倦怠感はない、どうやら僕が魔法を発動すると、みんなの魔力を消費するのだろうとサトミが結論付けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ