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仲間と紡ぐ異世界譚  作者: 灰虎
第1章 拠点編
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2.改めまして

 気持ちよく目覚めた僕は、最高に肌触りの良い暖かなものに包まれていた。白色の長い毛に埋もれていた僕は起き上がろうとして、視線を感じ顔を向けた。そこには、巨大な三毛猫の顔があった。

 視線があった僕は、一瞬ドキリとしたが相手から敵意は感じられず、すぐに先のことを思い出した。


「あれは夢じゃなかったのか。君が助けてくれたのか?」


 僕が声を掛けると、巨大な三毛猫は喉を鳴らせて頬を擦り寄せてきた。


「ちょっと待って、やめてってば」


 喉を鳴らしたまま、擦り寄るのを止めてくれた。賢いみたいだ。それに、これだけ大きいのに獣臭くない。むしろ良い香りがする。

 瞳の色は青味がかった紫。顔は鼻からすうっと黒い筋が通り、目を境に上が橙色下が白色に分かれ耳の先端が黒色になっており、両目の下に朱い頬ならぬ橙色の斑が白色に覆われた中で目を引く。そして額に3つの小さい角があった。


「ねえ、君は僕の仲間の事、何か知らない?」


 自分でもなぜ猫に問いかけたのかわからない。当然、巨大三毛猫は答える事もなく頬擦りしてくる。なぜ、此処まで懐かれてるのか分からない。



 突然、後ろから女性の咳払いが聞こえた。間違いない、女性だ。そしてなぜかヒシヒシと憎悪の視線を感じる。同時にクスクスと笑い声も聞こえてきた。

 後ろを振り向くと、椅子に腰掛けた黒ずくめの愛らしい少女とその隣に立つ引き締まった肉体美のヘソ出しルックのポニテ少女がいた。

 やはり夢ではなかったようだ。


「僕は八島千ヤシマ セン。助けて貰えたようでどうもありがとう。それで、僕の仲間も助けて貰えたのかな?」


 2人の美少女を観察しながら挨拶とお礼を含め、一番重要な事を質問する。


「まずは離れろ。私の三ツ星から」


 黒ずくめの少女の横に立つ朱色の髪をポニテにした少女が、怒声を放ちこちらに近づいてくる。

 すると、一瞬で間合いを詰められ襟首を捕まれた僕は、簡単に投げ飛ばされた。完全に意表を突かれた僕は受け身も取れず背中から落ちた。しかし柔らかいものがクッションになり床に落ちた。


「だめよ。怪我させちゃ」黒ずくめの少女がクスリと笑った。


「しかし」反論しようとするポニテを黒ずくめの少女が制する。


「三ツ星はとられたりしないわよ。本当にもう」


 僕は立ち上がり、2人に前後を挟まれる形となった状態で視線を交互に移す。黒ずくめの少女の方が立場が上のようだ。だから、立場が上であろう黒ずくめの少女に視線を固定した。改めてお辞儀をし先程と同じ事を口にする。


「僕は名前は八島千といいます。救助には心から感謝します。それで、僕の仲間も助けていただけたのでしょうか?そうであれば、これ以上の喜びはありません。まだであるならば、僕に出来る事は何でもいたしますので、どうかあなた様のお力をお貸しください。どうかお願いします」


 仮にも落下中の僕を空中に留め置き、三毛猫に乗って空を飛ぶ存在。それに今し方投げられた僕を不可思議な力で救った事といい、僕の常識では測れない能力を持っているのは明らかだ。

 最優先事項は3人の安全。3人ともどうか生きていて欲しい。3人の状態を思い出し知らず涙零れる。自分の無力さを痛感し、頬を伝う熱い涙が自分だけは生きている事を嫌でも理解させる。


「そんなに簡単に何でもしますなんて言って大丈・・・」黒ずくめ少女の言葉が途切れる。


 顔を上げたセンを見て、何かが彼女の中で爆発した。きゅん・きゅん・きゅん・エクスプロード。


「な・な・何でもするのね。せ・せ・せ・セン。嘘つついたたら、ゆるるさにゃいんだから」


 キョドリ噛みまくる黒ずくめの少女。

 普段と明らかに異なる黒ずくめの少女の状態を見たポニテが、隣へさっと移動し心配した声を掛ける。ほんの少し少女の頬に赤みがさしている。


「サトミ様どうかなさいましたか?」


 ポニテを一瞥したサトミは「別にどうもしないわ」と答えた。

 どうやら平静に戻っている。先程の事は何だったのか?と疑問を抱えたポニテが、八島千と名乗った若者を見る。

 ずっきゅーん、ポニテの本能が"彼"を守らないといけないと告げている。


「はい・・・出来る・事は何・・でも。仲間・・を助けて・・・くだ・・さい」未だ涙を流し途切れ途切れに若者が尋ねる。



 彼は気付いていない。小柄でやや中性的な顔立ちの彼は、普段からよくからかわれる。同性・異性に関係なく。しかし、泣いている時の彼は特殊なフェロモンが出るらしく庇護欲を刺激するらしい。そうなったら以後、彼に害意を持つ事も、危害を加える事は出来なくなる。


「「何でも」」2人の少女がゴクリと生唾を呑み込み、声が重なった。瞬間、2人の少女は部屋から吹き飛ばされていた。


 壁を突き破り、屋外まで吹き飛んだ2人。何が起きたのかは認識していた。

 三ツ星が2人を尻尾ではたいたのだ。3本の尻尾で高速3連打。



 アヴァール王国第4王女、王位継承権第6位。天才といわれる大魔導『偉大なる黒光』とアヴァール王国近衛総隊長『紅の暴風』の娘である『紅の槌』。2人でなければ無事では済まない威力だ。


「ふふっ、怒られちゃった」


「そんな、三ツ星が三ツ星が」


 楽しげに笑う王女と、自慢の騎獣からの攻撃に意気消沈するヨーコ。



 突然の爆音に、拠点の建設作業をしていた人員が集まってきたが、2人が作業の継続を指示したのでそれぞれの持ち場へと帰っていく。


「でもなんて強力な魅了なの。まいったわー」王女が腕組みをして唸る。


「やはり魔法なのですか」心配そうな顔で様子を伺うヨーコ。


「ん?あー違うよ。あれは体質だと思う。しかも無自覚。防ぐのは無理っぽい。それはわかるよね」


「はい、三ツ星がアレでは」


「センね。面白い子達よね。とりあえず、こちらもきちんと挨拶しましょう」


「はい」2人は先程の部屋へと歩き出す。



 部屋には泣き止んだ若者が、三ツ星に両前足で固定されジャレつかれていた。2人を察知した三ツ星が視線を移し、釣られて若者も顔を向ける。


「あ、無事だったんだ・・・ですね。」若者が苦笑する。


「どうってことないわ。それより自己紹介がまだだったわね。私はアヴァール王国第4王女、サトミ=トゥル=イスクル。サトミでいいわ。こっちは親友のヨーコ・ボルハ。とっても強いんだから手を出しちゃだめよ」


 ヨーコが椅子をサトミの後ろに差し出す。サトミが腰掛けると、彼女の斜め前に立つ。怒っているのか悲しんでいるのか複雑な表情である。


 2人を改めて注視するセン。

(黒ずくめの小っちゃな愛らしい彼女が、王女のサトミ=トゥル=イス?イクルス?あれ?まぁ、いっか。サトミで良いって言ってたし。呼び捨てはちょっとあれだし、様にしようか、殿下にしようか。それにしても、10指全てに指輪してるのは、王女の嗜みなのかな。嫌味に見えないのは高貴さ故か彼女の資質なのか。ポニテのアスリートって感じの娘が、ヨーコボルハって名前か。ヨーコって呼んでもいいかな)


「王女様とヨーコさん。改めまして、僕の事はセンと呼んで下さい。それであ・・」センの言葉をサトミが途中で遮る。


「コホン。セン、あなたの仲間は既に保護しているわ。簡単な取り調べも終わってるの」


 王女は報告書らしい紙を取り出し読み上げる。


「これによると、麗美・女・15歳。美月・女・16歳。ノブ・男・16歳。千・男・15歳。4人とも日本国の日本人で高校生というそうね。でも、日本なんて国、聞いた事もないのよ。只、あの3人が嘘をついていない事は解っている。そして4日前、気付いたらマガラニカ大森林にいたそうね。」


 王女が視線で説明を求めてくる。


「あー、そうじゃないかなと思ってました。僕たちの知識には空飛ぶ三毛猫もいなければ、落下中の人間を空中に固定する技術もありません。別世界って割り切った方が理解しやすいです。言葉の問題は謎ですけど」


 喜びに顔をくしゃくしゃにしたセンが告げる。


「僕を含め仲間を助けて下さり、本当に有り難うございます。掃除とか出来る事は何でもやります。受けた御恩は必ず御返します」深々とお辞儀をし、謝意を伝えるセン。


「「!!!」」王女とヨーコが僅かに体を震わせた。


 顔を上げたセンは、目の前の2人の少女からほんの一瞬だけ悪寒めいたものを感じた。



 ぐ~~~

 室内に暢気な音がなる。

 センは悪びれもせずに「すみません。なんだか急にお腹が空いちゃって」とはにかんだ。

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