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第6話 〜ボクの『気持ち』と『親心』〜


 彼女と出会って2週間。明後日からは学校が始まるという普通の朝。

 ただいま朝の6時。目の前には親が勝手に決めた、世に稀にみる美少女の許婚。


 ……前回と同じような始まり方なのは気にしない、気にしてはいけません。そして何故彼女がボクのベットで寝ているかというと。

 トーカドーに行った次の日の朝、ボクが起きると彼女がいつの間にか隣で静かに寝息を立てながら眠っていた。前の晩は確かに別々で寝ていたはずだったのにね。

 心臓が飛び出るんじゃないかというくらいビックリしたけど、そのままという訳にもいかなかったので彼女を起こして理由を聞くと、寝付けなかったからと言っていた。


 まぁ過ぎてしまったものを言っても仕方がないので、次から気をつけてもらうように言った。

 そりゃあ嬉しいけど、びっくりするからね。


 しかし次の日の朝も同じ事が起きた。彼女いわく


「やっぱりこっちの方が落ち着くし、寝やすいんだもん♪」


 らしい。そんな事言われても毎朝いきなり目の前にウズヒがいたらボクの心臓が持たない。

 だからどーにかしてもらえないか頼んだら、笑顔で了承してくれたので、どうにかしてくれるだろうと思っていたんだけれど。

 その日の夜、ボクが寝ようと自室に入ると、いつの間にか彼女がボクのベットに。

 驚いているボクに彼女が、


「どうせ今日も来ちゃうから、これが私の対処法だよ。……ダメ??」


 そんなことを上目使いで言われたらダメとは言えなくなるよね、うん。


 その日から、ボクと胃痛の戦いが始まったわけですよ。そろそろ病院へ行かないと、胃腸に穴が開いてしまうんじゃないかと不安になる今日この頃。

 ええ、幸せ過ぎる悩みだって事は分かっているんです。でも、据え膳食わぬは……なんて度胸のないボクには到底無理なのですよ。


 そんなこんなで今日に至ると。

 今日はトーカドーに行ったときに少し話していたウズヒの家に行くつもり。昨日悠真さんと杏奈さんに連絡をとったら今日だったら空いているという事なのでお伺いすることになった。


 ベッドで目を瞑ったままそんな考えていたら、午前7時を告げる目覚まし時計のアラームが部屋中に鳴り響く。先程よりも覚醒した意識の中で目覚まし時計を止めようと手を伸ばしたら、ボクの手が届く前に時計が鳴りやんだ。不思議に思って目を開けてみると、ウズヒがボクの顔をじっと見つめている事に気が付いた。


「どうしたの??」


「私は幸せだな〜と思ったの」


「え?」


「だって、今お互いの体温を感じていられるでしょ? だから嬉しいの。それが好きな人なら特に♪」


 ニッコリ笑顔でそんな事を言われたら、恥ずかしくなっちゃうよ。もちろん嬉しい事も否定なんてできないのだけれど。

 そんな恥ずかしさをを隠すために少し会話を交わしてからすぐに1階へと降りてきた。一方、彼女は鼻歌を歌いながら上機嫌でボクについてきてくれている。


 ボクの、彼女に対する気持ちは、この2週間でどのように変化しているんだろう。



 ・

  ・


 朝食をとり準備を整えたボク達は今電車に乗っている。

 2人でいるときにはいつもウズヒが話題を振ってくれるのでボクはとても助かっている。


 前にも言った通りボクは口下手なので会話を繋ぐのが苦手だ。相手が女の子なら尚更ね。




 電車に乗って40分くらいたった後


「次は桜駅〜。次は桜駅〜」


「次だよ?降りよ??」


 そうか桜駅だね。覚えとかなきゃ。




 電車から降りて駅を出ると海が見えた。


「いい景色でしょ?」


 ウズヒが駅の改札から出てきて言った。


「そうだね。こんな近くに海があるなんて知らなかったよ」


「ここは緑も多いのよ。暮らしやすい所だよ」


「へぇ〜」



 都会ではないけど特別田舎なわけではない気がする。家も多そうなので住宅地なのかな。



「じゃあ行こう?」


 と言ってボクに腕を絡めてきた。


 最近どこかに2人で出かけるときはいつも腕を組んで歩いている。

 周りの視線は痛いが、外しても絡めてくるし嫌ではないので今は普通に組んでいる。





 ・

  ・


「ここが私の家だよ♪」


 駅から約15分くらい歩いたかな。

 彼女の家は結構大きい……。

 ボクの家もそんな小さいわけではないが彼女の家はもっと大きい。


「早く入ろうよ?緊張してるの??」


「い、いや。そんな事ないよ!!じゃ、じゃあ入ろうか」


 そんな事を言っても、実際は緊張してる。初めて彼女の両親へ挨拶にいく彼氏の気持ちが良く分かるよ。そんな事を考えながら家に入ると、花のいいかおりがした。


「ただいま〜」


「おじゃまします」


「お帰り、ウズヒ。いらっしゃい、綺羅君」


「ご無沙汰してます。杏奈さん」


「いえいえ。さぁ上がって?」


「はい」


 杏奈さんに連れられてボク達は居間に入った。

 白を基調とした清潔感溢れる部屋だ。

 

「とりあえずそこに座って。今悠真がお買い物に行ってるから」


「悠真さんが?」


「ええ。もうすぐお昼でしょ??だからお昼ご飯の材料の買い出しに行ってもらってるの」


「いつもお父さんが行ってるんだよ♪」


 尻に敷かれてるのかな……。出来ればそうはなりたくない。


「貴女も結婚したらきちんと上下関係をしっかりつけないとダメよ♪」


「大丈夫よ♪ね?綺羅君??」


「………ボクに振らないで下さい」


 ボクとウズヒの関係は許婚。将来尻に敷かれるのはボク?

 調教とかされるのかな……。



 ウズヒが某女芸人みたいな服を着て女王様みたいな言葉を遣い、調教をする。


 ………エロいな。だけどボクはマゾじゃない!!

 でも彼女だったらいいかも……。



「どうしたの??ボーッとして」


「なんでもない!なんでもない!!」


「??」


 まずいまずい……。トリップしてたよ。昼間から何を考えてんだろうね。ボクは。

 そんな風にボクが将来の不安について考えていると悠真さんが帰ってきた。


「ただいま」


「「おかえり」」


「お帰りなさい、悠真さん。ご無沙汰してます」


「久し振りだな。元気だったか?」


「はい、おかげさまで」


「ゆっくりしてけよ??」


「はい。ありがとうございます」






 ・

  ・


 その後ボク達は昼食をとり、今は母さんや杏奈さん達の昔の話を聞いている。


「本当に霞はモテたのよ。ね、悠真?」


「ああ。毎日と言っていいほど下駄箱にラブレターが入ってたな」


「へぇ〜。あの母さんが……」


「すごかったのよ?スポーツも勉強も出来て誰にでも好かれて。自慢の親友だったわぁ〜。今でもだけどね♪」


「それを言ったら杏奈も凄かったけどな」


「お母さんも??」


「ああ。中学のときからオレと付き合ってたのに、それでも告白とかされてたからな」


「でも1回もOKなんかだしたことなかったからいいじゃない」


「まぁそうだけど…」




 男からすれば自分の彼女が頻繁に告白されてたら嫌だろうな……。



「だけど不思議だよな。あれだけ誰の告白も受けなかった霞が、いきなり朱実と付き合いだしたんだから」


「あれ?覚えてないの??霞は中学のときからずっと朱実君の事が好きだったじゃない?」


 確か前に母さんと父さんは中学からずっと一緒の学校だったって聞いたことがある。



「そうだったか?そういえば、好きな人がいるってフラれた奴はいたな」


「周りの人からみれば不思議だったかもね。朱実君はあんまり目立つ方じゃなかったし」


「そうだな。あんまり交友も広い方ではなかったしな」


 ……こんな事言われてますよ。父さん。



「確かにいい奴だったけど、霞は朱実のどこに惹かれたのか聞いたことあるか??」


「聞いてみたことはあるけど、教えてくれなかったわね。綺羅君は聞いたことある??」


「無いですね。母さんは父さんの事を家ではあまり話しませんでしたし…」


「そう。じゃあ霞が仕事から帰ってきたら皆で聞こうね♪」


「ああ」


「はい」


「うん♪」


 母さん教えてくれるかな。




 ・

  ・


 他にも色々な事を話していたらそろそろ帰る時間になってきた。

 すると杏奈さんが、


「そういえば、この前持っていけなかった服とかを今日持っていくって言ってなかった??ウズヒ?」


「あ、忘れてた!!」


「今から用意してらっしゃい?」


「うん!!綺羅君、待っててね♪」


 そう言うと彼女は居間から出て行った。

 彼女が自分の部屋に入っていったのを確認すると悠真さんが口を開いた。


「綺羅、ちょっといいか?」


「なんですか??」


「明後日から学校が始まるだろ?だから先に言っときたい事があってな」


「ウズヒが転入してくる事ですか?」


「知ってたのか!?」


「いいえ。何となくそんな気がしただけです」


フッ…これがラブコメ小説の主人公をやってる男の実力さ。


「ふふっ。流石霞と朱実君の子供ね♪同じクラスになったらよろしくね♪」


「同じクラス!?ウズヒって今度2年生なんですか!?」


「え、ええ……。そうよ?」


同い年くらいにはみてたけど、少し上だと思ってた……。



「もう1つ話があるんだけどいいかしら?」


「何ですか?」


「貴方達、一緒に寝てるのよね??」


は?


「……何で知ってるんですか?」


とぼけても、どっちみちばれるだろう。


「たまに電話くらいはしてるからね。とても嬉しそうな声で言ってたわ」


「………。」


「それで…エッチはしてるの??」


「え!?」


「いくら親でも、それは聞けなかったの。

もちろん貴方の事も子供同然に思っているけど、このままじゃいけないと思ったから2人で話し合って貴方に聞く事に決めたの」


「………。」


「話しにくい事だとは思うわ。でも出来れば話してくれないかしら?」


 その言葉から親の気持ちがひしひしと伝わってきた。

 ここで答えなきゃ男じゃないな。


「……確かに一緒には寝ています。だけどそれはしてません。………まだ出会って2週間だけど、ボクなりに彼女を大事に思ってるつもりです」


「……だ、そうだぞ杏奈」


「ええ。大丈夫みたいね。

でもね?綺羅君」


「はい」


「いつかはそんな時が来ると思うわ。その時はよく考えて行動してね??」


「……赤ちゃんが…って事ですか?」


「そうよ。まだまだ2人は若いの。一つの出来事で大きく人生が変わってしまうわ。だから気をつけて?ね??」


「はい。約束します!!」





 ・

  ・


駅まで車で送ってもらったボク達は杏奈さんと悠真さんに挨拶をして電車に乗り、先程家に帰ってきた。


彼女は2階で荷物を整理をしており、ボクはテレビを見ている。



疲れからか少しうとうとし始めた頃にウズヒが降りてきた。


「綺羅君起きてる??」


「ギリギリ起きてるよ」


「じゃあ一緒にお風呂入らない??」


今のは幻聴?……じゃないよね。

彼女はいつもと同じだと思ってるだろうけど、今日のボクは違う。


「いいよ。入ろうか」


「そ、そうだよね……。やっぱりダメ……っていいの!!??」


「うん」


「………」


「………」


「………私の身体も綺麗に洗ってくれる??」


それは「するの??」って聞いてるんだよね?


「もちろん♪」


君の事を大切にする自信があるからこう答える。









「私、初めて抱きしめてくれた人が綺羅君でよかった」


恥ずかしそうに、でも満面の笑みでそう言ってくれる彼女。


「ボクもだよ。ウズヒ、好きだ」


そんな彼女にボクも精一杯の想いを込めた言葉で応える。


「私も……愛してる」



もう一度口付けを交わした後、そのままボク等は眠りにつき、夜は更けていった。
















………なんか忘れてる気がする。


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