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第34話 〜酔い潰れた『母親』と『校長室』〜

朝の出来事で散々精神力を使い果たした後、一階に降りて朝食を……と思ったんだけれど……。


「……ウズヒ、この状況は何だと思う?」


「さぁ……」


リビングで母さんと杏奈さんがそれぞれのソファーで横になっていて、その周りにはビールの空き缶と空き瓶。さらに部屋がお酒臭い。この臭いだけで酔っ払っちゃいそうなくらい。

今まで母さんが1人で飲んでいた時に朝まで部屋が臭っていたなんて事はなかったから、2人でありえない程の量を飲んだんだろうね……。


「お、お前らやっと起きてきたか。ウズヒ、悪いがこっち来て料理を変わってくれ」


声がした方を向くと、悠真さんが台所へと続くドアから顔だけを出していた。


「あ、はい。今行きます」


悠真さんに呼ばれたウズヒが台所へと消えていき、代わりに悠真さんが台所から出てきた。


「よし。じゃあこいつらを運ぶとするか?」


「はい?」


「お前は霞を頼むな。オレは杏奈を運ぶから」


母さんを運ぶって部屋へですか? 母さんの部屋は2階だから、結構足や腰に……。


「杏奈さんは何処へ運ぶんですか?」


「ああ、それなら昨日オレ達2人が寝る為に敷いといた布団があるんだよ。隣の部屋にな」


そう言って、杏奈さんを背負った悠真さんはドアの向こうへ消えていった。次はボクの番か……。

母さんを背負い、2階にある母さんの部屋へと移動する。

案外軽いや。背丈の関係があるのかもしれないけれど、ウズヒよりも軽い気がする。


「あれ? お兄ちゃん、何してるの?」


ちょうどウズヒと亜梨香の部屋の前を通った時に、目を擦りながらドアの向こう側から現れた、とても血が繋がっているとは思えない程顔立ちの整った我が妹。


「母さんが酔い潰れて下で寝ちゃってたんだよ」


「はぁ〜……。やっぱりそうなの。お兄ちゃん、頑張ってね」


「うん、ありがとう」


亜梨香とボクは似ていないけど、母さんとも同じくらい似ていない気がする……。






 ・

  ・


「痛い! 痛いよ未来!!」


「うるさい! お前がウズヒを連れ帰れなかったのが悪い!」


普段と同じ時間に家を出て待ち合わせの場所に向かったら、既に賢と未来は到着していた。そしてボクが一人で現れたのを確認すると、未来にいきなりヘッドロックをかけられた。


「だから昨日の事もあるし、今日は大事をとって休んでもらっただけだって」


ウズヒは渋って中々承知してくれなかったけど、最終的には家に居てくれる事になった。家になら母さんが居るし、今日1日は悠真さんも杏奈さんと一緒に居てくれるって言ってたから。……母さんと杏奈さんは酔い潰れているけど。


「は? そんな事言ったか?」


「言ったよ! ね、賢?」


「……ああ。……さっきそんな事を言ってたな」


賢がやれやれと首を振りながらもフォローしてくれた。そんなに呆れるくらいなら、早めに助けてくれればいいのに……。


「そうだったか? まぁ悪かったな。ほら」


未来が頭に回した手を離してくれたけど、まだ微かに痛い。どうしてボクがこんな目に……。


そんな事がありながらも、未来&賢と共に登校。昨日ウズヒの家で起きた事を詳しく話していると、あっという間に学校に着いた……と思ったら、校内連絡を知らせる音楽。


『え〜こちら校長。天領綺羅は学校に到着したら真っ先に校長室へ。以上』


今、確実にボクの名前が出てたよね? 校長室に来いって言ってたけど、行かないとまずいかな?


「お前、何したんだよ?」


「さぁ? 何かあるとしたら昨日の事だと思うんだけど」


そのまま賢達と別れ、校長室へと向かう。生徒の教室と校長室は別の校舎にあるから、移動が大変なんだよね。

校長室がある校舎には、他に教頭室や職員用の会議室、その他諸々の職員に必要な施設が詰まっている。一々生徒用の校舎と移動するのが面倒じゃないのかな?


「天領綺羅です! 呼び出されたので来ました!」


無駄に重厚で高価そうな校長室の扉の前に立ってノックした後に叫ぶ。何でも大きな声を出さないと聞こえないくらい厚いらしい。防犯用?


「綺羅か!? 入ってくれ!」


返事があったので中に入ると、扉と同じく高価そうな置物や棚が、かなり広い部屋の中に並んでいる。橘先生は高価な物に興味はないみたいなのだけれど、代々の校長に受け継がれてきた物なので捨て切れないみたい。


「お待たせしました。何か御用ですか?」


「まぁとりあえず座ってくれ」


勧められるまま、これまた高級感溢れるソファーに腰掛ける。

このソファーふっかふかだよ! 1年生に来た時より座り心地がいい!


「そのソファーはこの前買い換えてな。前のやつが破れて……って、今そんな事はどうでもいいんだよ。お前を呼び出したのは霞の事なんだ」


「母さんの事ですか?」


「ああ。昨日の朝あいつから電話があってな。綺

羅とウズヒが休むからよろしくって」


「はぁ……」


本当に校長先生へ連絡したんだ……。普通、連絡は担任の先生にするものじゃないのかな?


「しかもお前は欠席でいいけど、ウズヒを欠席扱いするなって言うんだよ……。自棄ヤケで2人共学校に来た事にしといたけどな」


「本当にすいません……。もしかして母さん、先生を脅してたんですか?」


お願いだから犯罪は止めて下さい。捕まっちゃったら洒落になりません。


「いや、そんな物騒なものじゃないんだけどな。あいつにはいろいろと借りがあるんだよ。もう卒業して○十年なのに……」


ここでは伏せ字を使わせてもらいます。ボクはいいのだけれど、母さんにバレたら作者が地獄をみる事になっちゃうから……。


「すみません……。帰ったら、ボクから母さんに言っておきます」


「頼むな、マジで」


本当に必死そうな校長先生の顔をみて、何とか母さんを説得しなければいけないと心に誓った。






 ・

  ・


本日も、何故か授業後に購買へ集合。どうして毎回購買なんだろう? 帰り道にある喫茶店……は先日いろいろとあったので勘弁。やっぱり購買しかないのかな?


「で、どこから解決してくよ? 舞衣の事か? それともウズヒと一緒に居やがった野郎の事か?」


未来、居やがったっていう表現は……。怒る気持ちは分かるけどさ。

別にボクは怒ってませんよ? 怒る権利なんてありませんから。


「ん? どうした?」


「ううん、なんでもないよ。ボクは先に舞衣と会った方がいいと思うな。賢は?」


「……俺も柊が先だと思う。……ウズヒと居た男が誰かも分かってないしな。……ウズヒが学校に来てからの方がいいだろう」


そういえばウズヒからあの時一緒に居た人の話を全く聞いてないや。別に聞き出さなくてもいいと思っていたんだけど、相手の事もあるから聞かないと駄目なんだろうな。っと、今は舞衣の事を。


「じゃあ先にボクが舞衣と会わなきゃね。何を話したらいいかな?」


「そりゃ『付き合えない』の一言以外に何があるんだよ? 『また付き合ってもいい』って舞衣に言った訳でもないんだろ?」


「それは当たり前だよ。そんな事言えないって」


ボクにはウズヒが居るからね。あの時は冷静さが足りなくて断る事が出来なかったけれど、今だったら絶対に断る。

もう、あの笑顔を裏切ったりしないって決めたから。次に裏切ったら……考えたくないや。ウズヒに捨てられて、母さんや未来のお陰で、人前に出られない状態になる自信がある。あ、こんな自信は要らないね。






 ・

  ・


その後も3人でこれからの話をしていると、廊下から誰かが購買に向かって走って来る音が聞こえた。


「うるせぇなぁ。一体誰だよ?」


走る音がうるさいと未来から言われた人物は……。


「ハァハァ……。綺羅、助けてくれ!!」


「聖? どうしたの?」


部活中だったのであろう、ウェアを着た聖の顔は、文字通り真っ青だった。


「コレ、とりあえず代わってくれ」


「……はい?」


聖が差し出してきたのは携帯電話。画面には《通話中》の文字が。


「頼むから! 早く代わってくれ!」


「はいはい。……もしもし? 代わりましたけど」


『あ、綺羅君?』


「瑞穂さん? どうしたの?」


電話の向こうに居たのは、ウズヒと幼稚園来の親友である瑞穂さん。実際に話すのはダブルデートを以来かな。聖から話は聞いていたけれど。


『実はね、ウズヒの事なの』


「ウズヒの?」


『ええ。この前、聖からウズヒがその……ホテル街に入って行ったって聞いたのよね?』


「うん……」


聖から話を聞いたあと、家に帰ってウズヒと喧嘩して……。最悪の1日だったね。もしかしたら、今まで生きてきた中でもっとも最低だったかも。


『あれね、聖の勘違いよ』


「……は?」


何でも瑞穂さんの話によると、あの日聖とのデートを終えた瑞穂さんが駅で電車を待っていたら、とてつもなく暗い顔をしたウズヒに会ったらしい。そしてあの日に起こった事を全て聞いたと。

そういえばあの道は駅への近道に使えるっけ……。


『それでウズヒから全部話を聞いたあと、あの娘を家まで送っていったの』


「そうだったんだ……。ありがとね、瑞穂さん」


『気にしないでいいのよ。もう、ウズヒとは仲直りしたのかしら?』


「うん。既にボクの家に戻ってきてくれてるから」


瑞穂さんには本当に感謝しなきゃ。もし駅で2人が会っていなかったら、今頃どうなっていたか……。

そのまま少し話したあと電話を切ろうとしたら、未来が代わってくれと言うので、電話を渡すと1分程話して切ってしまった。電話を渡した時に席を離れたので、男3人には何も聞こえなかったんだけど。


「聖、ほら」


席に戻ってきた未来が聖に携帯電話を投げた。心なしか力が強かったような……。もしかして何か怒ってます?


「……未来、どうした?」


流石賢人君。不機嫌オーラを纏っている未来に話し掛けられるのは君とウズヒくらいだよ。


「聖、お前今度罰ゲーム決定だ」


「「「は??」」」


男3人の声が見事に重なる。ついでに3人共、目が点。


「今お前の彼女と話してな。無駄な誤解を抱かせたお前への罰だ」


「ちょっ、そんな……」


「ちなみに彼女も乗り気だからな。逃げたらもっと酷いぞ?」


「嘘だろ……? はぁ、マジかよ……」
















数日後、瑞穂さんと未来がタッグを組んで聖に罰を与えていたそうな。


そして次の日に聖が学校に来られるはずもなく……


あの時聖君が見た光景はこういう事だったんですね。と他人の様に言える立場でもありませんが。

実はコレ、あの場面を書いた時にはもう決まっていたんです。すみませんでした。

次回からは、また朱実君と共に後書きをお送りしたいと思っています。



次の更新は9日(木)です。もう学校が始まってしまうので、更新間隔が延びてしまいます。ご了承下さい。


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