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第28話 〜極小の『浮輪』と2組の『2人組み』〜

「ねぇねぇ綺羅君。早く泳ごうよ!」


「いや、まぁ……そうだね。泳ごうか」



全てを焼き尽くさんが如く照り付ける、真っ赤な太陽。太陽の光を浴びて輝く白い砂浜。それとは対照的に、どこまでも続く、碧く透き通る海。そして周りには人っ子1人見当たらないという穴場中の穴場。


そんな誰もが羨む美しいビーチに行ったのが1週間前。



やっと日焼けのヒリヒリ感が無くなったと思ったら、突然彼女が行きたい、と言い出した場所は此処。

そう、室内市民プール。

温水や流れるプールはもちろんの事、ウォータースライダー、飛び込み台、温泉まで完備の巨大施設。その為、市民プールにも拘わらず、高校生や大学生も大挙して訪れる。ちなみに我が家から徒歩15分。

みんなの憩いの場、市民プールは大勢の人で賑わっています。


「ほらほら、まずはウォータースライダーへレッツゴーだよ!」


楽しそうにボクの手を引くウズヒの肌はこんがり小麦色。

持ち物チェックを忘れていたボクと違い、ちゃんと海へと日焼け止めを持参した彼女の肌は綺麗に焼けています。塗ったのはボクなんですがね。半強制的に。

しかも、一緒に行った親友2人には呆れ顔で見られ、余りを分けてもらおうとしたら全く残っていなかったという悲劇。

その為ボクの背中は見るも無惨な状態に。まぁ自業自得だけどさ……。


そんな事を考えている間に、ウォータースライダーの順番待ちをしている行列の1番後ろへと到着。


「ん〜待ち時間10分だって。綺羅君、どうする?」


最後尾付近に立ち、行列整理係の人が持っているプレートを見てウズヒがボクの方に振り向く。


「それくらいなら待ってもいいんじゃない? 時間もあることだし」


そうだね、と言いながら楽しそうに列へと並ぶ姿は、いつも以上に綺麗に見える。

ただ、非の打ち所の無い端正な顔立ち。健康的な小麦色の肌。余計な贅肉の付いていない、完璧なプロポーション。そんな彼女の体を包む、髪と同じ深紅のビキニ。そんな彼女に魅了されるのがボクだけである訳もなく……。


「お前、声掛けてこいよ」


近くに居た2人組の内の1人が、ウズヒの方を見ながら相方へと声を掛ける姿が視界に入ってくる。


「無理言うなって。レベルが半端なさすぎるだろ、アレは」


興味無さそうに相方の方が肩をすくめる。


「それによく見ろよ。横に男が居るだろう。どうせ彼氏だ」


「まさかぁ。全然釣り合ってないぞ? もし彼氏だったら、どんなつもりで隣に並んでいるんだよ」


……そういう事を喋る時は、本人の聞こえない大きさにして下さい。聞こえない様に喋っているつもりでも、本人に聞こえてるって事もあるんですよ。


「綺羅君どうしたの? 何かあった?」


今の話、聞こえなかったの? と、下から覗き込む格好になっているウズヒに聞きたかったけど、やめておいた。今の会話の内容を知ったら絶対に怒る。


「早く順番が来ないかなぁ、って考えてたんだよ。楽しそうだからね」


「もう綺羅君のエッチ♪」


「……何で?」


「だって、2人乗りの浮輪で滑ると体が密着するんだよ? 知らなかったの?」


知らなかった……というか、ウォータースライダーって1人ずつやる物だと思ってた。でも、だからと言って今更やめるなどと言えるはずもない。


「……もちろん知ってたよ。その上で楽しみだっていう事」


「だよね! みんなに私達のラブラブっぷりを見せ付けられるもんね!!」


あぁ更に周りからの視線がきつくなるよ……。それが今の発言の所為なのか、それとも笑顔で腕を絡めてきたウズヒの所為なのか、はたまたその両方か……。ボクは両方だと思います。







 ・

  ・


彼女の言葉通り、体が密着する――というよりも、密着させる為に作られてるんじゃなかろうかと思える極小の浮輪を係りの人に返却し、2人でウォータースライダーの近くに設置してあるベンチへと腰掛ける。



「うわぁぁーー!!」


……そして背後から聞こえてくる声によって悪夢が蘇る。


列に並び始めてから10分経って、ようやく順番が回ってきたウォータースライダー。その内容は市民プールにあるまじき物だった。

まさに恐怖。遊園地のジェットコースターが比にならないくらい。

水の流れが想像以上に速い上に、密閉型だった為、自分が弾丸になった様な気がしてかなり怖かった。目の前で楽しそうに喋っている美少女はかなり楽しそうだったんだけどね……。


「綺羅君は次、何処に行きたい? 流れるプール? それとも飛び込みでもやってみる?」


飛び込みは嫌だなぁ……。見てるだけで怖いもん。


「ウォータースライダーをやったばかりだし、やっぱり……「あ! あれが楽しそうじゃない?」……」


流れるプールがいいと言い終わる前に、ウズヒが近くの壁に貼ってあったポスターへと近づいていく。

何が書いてあるのかと、ボクも近寄ってポスターを見てみると……



『今年もやってきた!!

夏の暑さなんて、愛の力で吹っ飛ばせ!! 未〇年の主張!! 本日は高校生が主役!!』


……これはアレだね。去年、残念ながら終了した、某テレビ番組の名物コーナーを真似したんだよね。あの学校の屋上で叫ぶやつ。

ただ、場所と言い回しがおかしい。上のタイトルが大きく書かれた下に『叫ぶ場所:飛び込み台(地上約10m) もちろん愛の告白でなくてもOK!!』と小さく書かれているから。


「……これをやるの?」


『もちろん愛の告白でなくてもOK!!』と書く辺りに悪意を感じる。こんな事を書いたら、観客は少なからず期待しちゃうと思うんだけどな。そんな場所で告白以外の事を叫んだら場がシラけちゃうんじゃ……。


「うん、やってみたい! ダメ?」


嬉しそうな顔から一転、目をウルウルさせながら頼まれたら嫌と言える訳がない。


「……いいよ。行こうか」


「本当に!? やったぁ!! 早く行こっ!」


「ちょ……ウズヒ、少し待って! お願い!」


ボクの手を引いて嬉しそうに目的地に向かおうとするウズヒへ必死になって声を掛ける。


「どうしたの? やっぱり行きたくない?」


「ううん、行くよ。だけど、その前にトイレに行きたいかな」


「あ……気が付かなくてごめんね」


私はこの辺りに居るから、というウズヒをその場に残し、更衣室にあるトイレへ移動する。

此処へ来た理由は簡単。高い所に上った時、不測の事態が起きないようにする為。正直な所、地上10mの場所に自分が立っている事を想像するだけで色々とやばい。そして同じ様な境遇なのか、トイレにはボクと同い年くらいの人達の列が出来ていた。

しかし、男子用トイレの順番なんてすぐに回ってくるもの。

早くウズヒの所へ戻らなきゃ、など考えながら手を洗っていると、ある事に気が付く。


「まずいかも……」


慌てて更衣室を飛び出し、元居た場所へと急ぐ。徒歩で。

だってプールサイドだよ? 転んだら痛いで済まない可能性があるんだよ? だから徒歩。


そんな言い訳をしている間に元居た場所に到着。そこで目にした光景は……


「ねぇねぇ〜。君、1人なんでしょ? 俺達と遊ぼうよぉ〜」


「そうそう。俺達と遊べば絶対に楽しいって」


案の定、ウズヒがナンパにあっていました……。相手は金髪の男2人組。たぶん大学生くらいかな。いかにも『遊んでます!』って感じ。


「ごめんなさい。連れがいるので結構です」


ウズヒがはっきりと拒絶の意思を示し、金髪のお兄さん達が居るのとは逆の方向を向いたけど……


「そんな事言わないでさぁ〜。俺、君に一目惚れしちゃったみたいなんだよねぇ〜」


「連れって、もしかして彼氏? だったら、君を残して何処か行っちゃう奴なんか放っておいて俺達を彼氏にしなよ」


金髪2人組が正面に回り込んで、更に話し続けてる。

先に喋った人――仮に金髪Aとしよう――は、下心丸出しの表情かおだし、後の人――こちらは金髪Bだね――は、あまりに展開が急過ぎる。出会って5分でお付き合いですか?


「ウズヒ、待たせてごめん。……この人達は?」


ナンパだと分かってはいるけど、一応聞いてみる。


「何でもないよ。早く行こっ」


「それはちょっとヒドイんじゃない? っていうか、コレが君の彼氏なの?」


2人組を無視して歩き出そうとしたけど、Aさんの方がウズヒの肩に手を掛けて引き留めた。『コレ』と呼ばれるのは別にいいけど、彼女に触れないで欲しい。


「こんなのと一緒に居るより、俺達と遊んだ方が絶対楽しいよ」


Bさんはボキャブラリーが圧倒的に足りていない。さっきから『遊ぶ』って言葉しか言ってないし。


「すいません。ボク達、これから用事が有るんで……」


「うっせぇ! テメェには聞いてねぇ! 黙ってろ!!」


態度が180度違う……。同じ様な猫撫で声でも嫌だけどさ……。


「お前、自分の事分かってんのか? カノジョと全然釣り合ってねぇ。鏡見てから行動しろ。分かったな? さっさと失せろ」


「お前、まともな神経してないだろ? どうやってこの娘を落とした? 脅迫か? 催眠術か? ま、お前じゃそのくらいの手段を採らないといけなかったのかもな。ハッハッハ!!」


初対面の人間に、よくそこまで言えるね。まぁ釣り合ってない自覚はあるから、そんなにショックじゃないけど。笑われても『いつもの事か』ってやり過ごせるるし。

でも、ウズヒはそうじゃなかったみたいで……。


「さ、行こうか」


Bさんがウズヒの手首を引っ張って歩き出そうとしたけど、ウズヒはその場から1mmも動かない。


「……さない」


「「え?」」


AさんとBさんの声が綺麗にハモる。ちなみにボクも聞き取れなかった。

ただ、絶対にやばい事だけは分かる。ウズヒの肩が震えて――本気で怒ってる。


「赦さない!! 絶対に赦さないッ!!」


何かが水に叩き付けられる音と、激しい水しぶきが上がる。その原因が、プールへと一本背負いで叩き付けられた金髪Bさんだと気が付くまでに数秒。


「綺羅君を侮辱するなんて赦せない! 赦さない!!」


「ウ、ウズヒ。落ち着いて……」


「綺羅君、放して! この人達は絶対に赦せない!!」


ボクが必死に腕を掴んで声を掛けても、止まってくれる気配が一向に無い。金髪Aさんは膝が笑っちゃってるし、Bさんは沈んだまま浮かんでこない。大丈夫かな?


「ウズヒ、お願いだから落ち着いて! これ以上やったら、問題になっちゃうから!」


暴力事件になんてなったら洒落にならない。


「……」


ふぅ……。やっと落ち着いてくれたよ。未だに凄い剣幕で睨んでるけどね。いつも笑顔の美人が怒るとかなりおっかない。


「もう帰ろうか?」


ここには居にくいし……という言葉は口に出さずに飲み込む。

ほんの一瞬だけボクの顔を見た後、渋々ながらも了承してくれたらしいウズヒが、黙って更衣室へと移動し始める。そしてボクはワンテンポ遅れてそれに付いていく。

チラッと後ろを振り返ると、我に帰ったAさんが、監視員の人と一緒に相方を引っ張りあげていた。






 ・

  ・


それぞれ男女の更衣室で着替えを終え、今は徒歩で帰宅中。空気が果てしなく重い。隣で歩いているウズヒの顔さえ見られない。声を掛けるなんてもっと無理。


でもこのまま帰る訳にもいかないよなぁ。あの時ボクがビシッ!! とあの2人に言えてれば、ウズヒが怒る事も無かったし、こんな状態にもならずに済んだ筈だし。

赦してもらえなくても、まずは謝る事から始めよう。


「ウズヒ、さっきは……?」


思いきって謝ろうと横を向いても誰も居なかった。

不思議に思って辺りを見渡すと、後方3mくらいで紅髪の少女が俯きながら立っている。


「どうしたの? 体調が悪い?」


近寄って、そう声を掛けると、ウズヒの右手がボクの左手を掴んだ。


「ごめんね……」


ここで、何が? と聞くほどボクは鈍くない。もうすぐ出会って半年だ。

ウズヒは全部自分が悪いと思ってる。だけど、それは違う。悪いのはボク。


「別にウズヒが謝る必要なんてないよ」


「だって頭に血が上って、見ず知らずの人にあんな事をしちゃったし、綺羅君にも迷惑掛けて……」


市民プールを出る時に受付で、怒って手の付けられないウズヒの代わりに色々と事情を聞かれたけど、それで迷惑を掛けたと思っているのだろうか。


「迷惑なんて何も無かったよ。それにあったとしても、原因を作ったのはボクだから。考えなしに君を1人にしたし、あの2人へもっと強く言えてれば、あんな状況にはならなかっただろうから」


「だったら、市民プールに行こうって誘った私が原因だよ!」


「そんな事言ってたら、何処へも行けなくなるよ?」


「だけど、悪いのは私だもん!」


そのまま自分の方が悪いんだ。とお互いに主張し続けて5分。此処が人通りの少ない道で助かった。


「……」


「……」


取り上げる例が両方に無くなり、2人して黙り込む。


「……このまま話し合ってても、イタチごっこだね。もうどっちが悪いって話は止めない?」


「でも……」


再びウズヒが俯いてしまう。やっぱり納得してくれないか。意外に頑固な所があるからね、目の前の美少女は。


「相手に何か1つ、絶対に叶えてもらえる事を条件にしてさ。ボクはウズヒの悲しい顔なんて見ていたくないな」


「……うん、分かったよ。ごめんね」


「ウズヒ、そこで謝っちゃ駄目だと思うよ?」


「……そうだね。綺羅君、ありがとう♪」


うん、やっぱりウズヒには笑顔が1番似合ってる。
















次の日の朝、ウズヒから1つの事を言い渡された。

顔を紅くして、もじもじしながらの呟く様な声だったけど、きちんとボクには聞こえた。

どうやら、自分から言うのは何の躊躇いも無く出来るけど、頼むのは凄く恥ずかしいらしい。




「――大好きって言って?」


akishi「すいません!! すいません!! すいません!!」


朱実「謝罪から入るとはいい心掛けだな。赦してもらえるかどうかは知らんが」


akishi「更新が遅れてしまい、本当にすいませんでした。言い訳をするつもりはありません。責められて然るべきだとおもいます」


朱実「ほう。で?」


akishi「あらすじにも書いたよりも多少早く更新できましたが、次回も少し遅れるかもしれません」


朱実「……は?」


akishi「で、でも、次回は長くても1ヶ月は空きません。これは絶対にお約束します」


朱実「それは絶対なんだな?」


akishi「はい。これは絶対です。物語の時期的に番外編になるかもしれませんが、絶対です」


朱実「ま、俺だけは応援しといてやるよ。頑張れよな」


akishi「ありがとうございます。では、1ヶ月以内に更新しますので……。また次回お会いしましょう」

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