~Side Mirai Sakumoto~ 〜『溜め息』と『幸福』と彼との『馴れ初め』〜
「未来、おっはよ〜♪」
「ああ、おはよう。ま、家に入れよ」
どうも、はじめまして。佐久本 未来です。
と、まぁ固い挨拶はこのくらいにしとくか。私のキャラじゃないしな。
今日は日曜日。賢は用事があるらしく、その……なんだ。所謂デ、デートか? お預けなんだよ。
そこで、『綺羅君も何処かへ出掛けちゃうから暇だよ〜』と悶えていたウズヒが私の家へ来る事になった。
「未来の部屋って何処?」
「私の部屋か? そこだ」
家に入って階段を上がり、1番近くの部屋を指差す。言い忘れてたけど、我が家は2階建ての一軒家だ。……どうでもいい情報だな。
「お邪魔しま〜す。……予想通りだけど、殺風景だね?」
「悪かったな!」
必要最低限の物しか置いてない部屋を見て、ウズヒがボソッと呟いた。
家族の6人中4人が男で、しかも兄貴達と同じ様に育てられたんだ。女っ気がないのは仕方ないだろ!
「あ、写真はっけ〜ん♪ どれどれ……未来、可愛い! これ何時の写真? まだ髪が長いけど」
ウズヒが机から取り上げた写真は、私と賢のツーショット写真。
賢は微笑んでいるけど、肩に手を掛けられてる私の顔は真っ赤だ。
「それは確か中2の始めくらいか。髪を短くし始めたのはその夏だからな」
「そうなんだ。でも、なんでこんなに顔が真っ赤なの?」
「そ、それは…その……賢とつ、付き合いだしてすぐに撮ったから……」
恥ずかしくて呂律が回らねぇ! 写真の中の私も顔が朱いけど、今は絶対それ以上に朱くなってる!!
「へぇ〜。そういえば、未来と賢人君の馴れ初めって聞いた事無いんだけど?」
「まぁ知ってるのは私達と、あとは綺羅くらいだからな」
アイツは何でも知ってるんだよ。余分な事まで。そのお陰で助かった事も少なからずあるけどな。
「ねぇ何があったの? 教えて教えて♪」
「そうだなぁ。あれは中2になってすぐだったか――」
・
・
・
陽射しもだいぶ暖かくなり、桜も散り始めた今日この頃。
現在朝の8時。私こと佐久本 未来は毎朝一緒に登校している奴をいつもの場所で待ってる。
しかし、今日はいつになく遅いな。べ、別に待ち遠しいとかそんな事はない……とも言い切れん。
そいつは小学校からの幼馴染みで、めちゃめちゃ格好いい。その分告白も沢山されてるから、毎回毎回『アイツがOK出したらどうしよう』って冷や冷やしてんだよ。……もう私の想いなんて言わなくていいよな? 察してくれ。
それにしても遅い。もうそろそろ来てもいい頃なんだが……
「おはよー! ごめん、未来。寝坊しちゃって……」
一人物思いに耽っていると、家から走ってきたのだろう、息を切らした幼馴染みが駆け寄ってきた。
「あ、ああ。おはよう」
確かにお前も幼馴染みだけど、噂の人物はお前じゃない! お決まりのパターンをこんな所で出すな!!
「未来? どうかしたの?」
いつもより反応が薄い事を不思議に思ったのか、目の前に居る私よりも背の低いヤサ男――天領 綺羅が私の顔を覗き込んでくる。
「……なんでもない。それより賢は?」
「あれ? メール来なかった? 賢、今日は休みだって」
は!? マジか!? 慌てて鞄の底に埋まってた携帯を取り出して見てみると
『熱が出た。すまん』
と書かれた賢からの新着メールが。文が短いのはいつも通りだけど、何か淋しい。熱で辛い事は伝わるけどさ。
「そろそろ行かないと遅刻しちゃうよ?」
「……そうだな。行くか」
急激に重くなった身体を引きずるようにして、私達は中学校へと歩きだした。
・
・
・
「はぁ……」
学校に着いてから、溜め息しかしてない気がする。午前中の授業なんて全く頭に入ってねぇしな…。
あ〜あ……マジでキャラじゃねぇよ。まるっきり乙女だし。こんな喋り方なのに乙女とかお笑いだな。はは……
「未来? 全然箸が進んでないけど、大丈夫?」
「大丈夫、大丈夫。少し考え事してただけだって」
普段は此処――屋上に来て3人で飯を食ってるけど、今日は私と綺羅の2人だけ。コイツも大切な親友だけど、賢とは違う。コイツを男として見るのは無理。そういう奴って絶対1人は居るだろ? 居ない? 居る事にしといてくれ。
「はぁ……」
一体どうしたらいいんだ……。誰かこの溜め息の止め方を教えてくれ。
「ふふっ。賢が居ないと淋しい?」
「だ、誰もそんな事言ってねぇだろ!」
綺羅に見事に言い当てられ、思わず大きい声を出しちまった。憎たらしく目の前で笑うコイツをどうにかする方法も教えてくれ。頼むから!
「言ってないけど顔に書いてあるよ。『賢が傍に居てほしい。……好きだから』ってね」
「!? 何でお前がそれを――」
――賢が好きな事を知ってんだよ!? 誰にも話した事なんてないのに……
「未来、それに賢と出会って、もう7年だよ? 毎日会ってれば嫌でも分かるって」
……ふぅ。余計な所で勘が鋭いコイツの事だ。ハッタリではないんだろう。『カマをかけただけ』とか言いやがったら、絶対に許さねぇ。
「…そうか。……私はどうすればいいんだろうな」
綺羅の真意を疑いながらも、悩みを曝け出している自分が嫌だ。
「不安なんだ? 賢が他の女の子に盗られないかって」
「バ、バカ! ち、違わ…ない……かもしれないな。告白されてるアイツを見てると、悲しくなってる自分が居るから……」
なんだ? この弱気発言。勝手に口から出てきやがる……
「……自分だって毎日告白されてるくせに」
「あ!? 何か言ったか!?」
「イエ、ナンデモナイデス」
ったく、人が真剣に悩んでる時にコイツは。こっちが真面目に話してんだから、それに応えろよ!
「今のはボクが悪かったけどさ、そんなに不安だったら未来も賢に告白すればいいじゃん」
「バカ! 出来るわけねぇ!!」
「なんで?」
なんで?ってこの野郎……。少し考えれば、すぐに分かるだろう!
「もし断られてみろ! 今までの関係が全部崩れるぞ!? 3人の関係が!!」
「そんな事はないと思うんだけどなぁ」
何がないんだよ!? 断られる事か? 関係が崩れる事か? あぁ……。コイツと話してたら疲れてきた。
「だったら明日にでも探りを入れてみる?」
「探り?」
「うん。賢の好きなタイプとか聞いてみれば、いろいろと参考になるんじゃない?」
……確かにな。それも一つの手か。
「分かった。それでいいぜ」
「じゃあ明日決行ね。休んじゃ駄目だよ?」
そう言う綺羅が、心なしかとても楽しそうにしている気がする。
何が楽しいんだか。こっちは不安でしょうがねぇってのに。
・
・
・
あっという間に一日が過ぎ、昨日と同じ場所で昼食中。昨日と違うのは、賢が居る所。やっぱり3人で居るのが1番しっくりくるな。
ただ、このあとの事を考えると、しっくりくるとか言ってる場合じゃない。もう帰りてぇよ。でも、そうはいかない訳で。
「そうだ。賢ってどんな女の子がタイプなの?」
綺羅!! その質問は唐突過ぎるだろ! 怪しまれたらどうすんだよ! とは思っても言えない。言ったらばれるだろ?
「……よく分からん」
「じゃあボクが質問するからそれに答えてよ」
「……分かった」
……無表情だから、賢が乗り気なのか、そうじゃないのかさっぱり分からん。そんな所も……ゴホンゴホン。今のは忘れてくれ。何でもない。
「まずは……髪の長い女性と短い女性だったらどっちが好み?」
「……短い方だな。……その女性に合ってれば長くてもいいけど」
早速ハズレじゃねぇか! ……今度切る時は短くしようか。たまには髪型を変えるのもいいだろう。
「じゃあ、活発な女性とおしとやかな女性だったら?」
「……活発な方がいいな。……俺自身がこんなだから」
よしきた!! これなら大丈夫! 逆だったら致命傷だ。おとしやかな性格なんて、私の対極だからな。
「背は高い方がいい?」
「……いや、160cmくらいが1番いいな」
致命傷だ……。私はもうすぐ170を越えるぞ? ヒールを履いたら余裕で172、3はあるし。……泣きたい。母さん、何故貴女はもう少し小さく産んでくれなかったんですか?
・
・
・
あの後いくつか質問したけど、私との一致率は50%くらいだった。……正直無理。髪とかなら変えられるけど、性格的な物は変えられねぇし。
「はぁ〜……」
もう何回ついたか分からない溜め息。これまでいくつ幸福が逃げていったんだろうな。
「未来、溜め息ばっかりついてると幸福が逃げるよ?」
「……ああ、そうだな」
その事で悩んでんだよ! その悩みの所為でまた出てくるし。溜め息をつく→幸福が逃げる→溜め息をつく。無限ループだろ……。あぁ面倒くせぇ。誰が最初にこんな事を言い始めたんだよ? アンタの所為で1つ溜め息が増えただろ!
「それにしても遅いね、賢」
私が1人で物思いに耽っていると、校舎を見ながら綺羅が呟いた。午後の授業を終え、用事があるという賢を待って私達は今正門に居る。
「何か大事な用事なんだろ?」
「そうだね。いつもみたいに告白かな?」
「わ、私がそんな事知るかよ!」
コイツ……私の気持ちを知っててそんな事を言うか? 無意識の発言なんだろうけど、結構傷つくぞ?
「そういえば、未来は賢のどんな所が好きなの?」
「……は?」
賢の好きな所? いきなり何を言い出すんだよ?
「何となく気になってね」
「ど、どことか言われても……。せ、背が高い所?」
思い付いた事をとりあえず言ってみる。在り来りな内容だけど気にすんな。3高とか昔あったんだろ?
「賢は特別背が高い訳じゃないじゃん。それに、ボクに聞かれても困るから」
「じゃ、じゃあ無口な所」
「その言い方だとけなしちゃってるよ。せめて物静かとか言わないと」
仕方ないだろ! 思い付いたアイツの特徴を口に出してるだけなんだから!!
「か、顔がいい所?」
「未来って面食いだっけ?」
「ち、違う!! もう!! とりあえず私はアイツが、賢がいいんだよ!」
……思わず叫んでしまった自分が恥ずかしい。そして顔が熱い。火が噴き出すくらいに。
「笑ってんな!!」
綺羅の表情がニヤケ顔に変わったのが腹立たしくて、再び叫ぶ。なんで私がお前にからかわれなきゃならん!
「おもしろいなぁ〜と思って」
「うっせぇ!! 人で遊んでんじゃ……どうした?」
急に綺羅の顔から表情が消え、目が点になったので、視線の先を追ってみる。するとそこには……
「賢……」
今まで話題の渦中に居た男が。隣に見た事が無い女を連れて。
「……未来、今の「ごめん、帰る!!」……」
何か言いかけた賢を無視して逃げる様に駆け出す。
聞かれた! 絶対に聞かれた!! 隣に居た女は誰だよ!? なんで、あんなに都合が悪い場面で来るんだよ!! そんな瞳で私を見るなよ……
そんな想いを抱えながら。
・
・
・
次の日、私は学校を休んだ。アイツと顔を合わすのが嫌で。隣に居た女を紹介され、フラれるのが嫌で。
もう自分の部屋に篭って半日が過ぎた。何もせず、ただぼーっと。飯も食ってねぇ。私は何をしてんだろう。
『ピンポーン』
微かに聞こえたインターホンの呼び鈴。『母さんが出るから私には関係ないだろ』そんな事を考えながら、もう寝てしまおうと布団に入って数十秒後、突然ドアをノックする音が。
「母さん? 悪いけど、飯なら要らないから」
「……俺だ、未来」
「賢!?」
予想もしていなかった返事に声が裏返った。何で賢が此処に!?
「……入っていいか?」
「ま、待って!! 髪も梳かしてないし、服だって寝巻だし……」
意外とか言うな! 私だってそれくらいはする! ボサボサの髪のまま、学校なんて行けないわ!! それ以上に、そんな状態でコイツと顔を合わせられる訳がない!
「……入るぞ」
……私の言った事聞いてたか? 何で普通に入って来てんだよ!?
「……その様子なら大丈夫そうだな」
部屋に入って来た賢はベットの近くまで来て、そのまま腰掛けた。ち、近いって! 昨日の今日だろうが!!
「な、なんで来たんだよ?」
「……綺羅に『未来が高熱を出してかなり辛いみたいだから、お見舞いに行ってあげて』って言われてな。……迷惑だったか?」
「べ、別に迷惑ではないけど……」
あの野郎……。一応休むってメールしといたのが間違いだった。高熱なんて書いてねぇし。明日、学校行ったら絶対赦さん。
「……」
「……」
この沈黙は何だよ? めちゃくちゃ気まずい……
「そ、そうだ! 昨日連れてた娘は彼女か? 良かったな、可愛い女の子で!」
あまりの気まずさに、1番聞きたくない話を自分から出してしまった。何をしてんだ、私は……。
「……未来」
「いやぁ〜可愛い娘だったな。ああいうのがお前タイプなんて知らなかったよ」
好みなら昨日の昼に聞いた気がするけど、今は関係無い。この場を何とか乗り切るのが先決だ。
「……おい」
「さ、もう帰ってあの娘の所へ行ってやれよ。彼女が居るのに他の女の部屋に居るなんて……」
「俺の話を聞け!!」
「!?」
……始めて聞いた賢の怒鳴り声。驚きながらも、『あぁ。コイツは怒る時、こんな顔をするんだ』なんて考えてる自分が居る。
「……あの娘は彼女じゃない。……告白はされたけど、断った」
断った? あの娘は彼女じゃない? でも、あの時2人きりで歩いてた。 あの娘は楽しそうに喋り掛けていた。
「……『出来れば、学校を出るまで隣を歩かせて欲しい』って言われて。……それで、正門まで行ったらお前達が居た」
そうだ。あの時私は……
「あぁ、あれな。あの時私が言ってた事は気にするなよ? あれは綺羅に乗せられて口が滑っただけで……」
自分で墓穴を掘ってる気がしながらもなんとか言葉を紡いでいると、突然賢に抱き寄せられた。
……は? 抱き寄せられた?
「ちょっ……お前何してんだよ!?」
必死に抵抗しても、なかなか抜け出せそうにない。背中に回された手が、暖かい。
「……あれを、あの告白をずっと待ってた。……今までの関係が崩れるのが怖くて、自分からは言い出せなかったから」
やっぱり、付き合いが長いと考える事も似てくるんだな。……少し、少しだけ嬉しい。似てきた事が。今の発言が。
「笑えない冗談はよせよ。マジな顔でそんな事は言うべきじゃないぞ」
「……冗談でこんな事は言わない。……どれだけ告白されても、お前以外の娘と付き合う気なんてない」
真剣な賢の眼差しに、自分の視線を合わせる事が出来ない。このまま流されてしまいそうだから。
「馬鹿言ってんな。私は止めとけ。男っぽいし、がさつだし、嫉妬深いし。面倒くせぇだけだって」
自分で言ってて悲しいくらい、欠点のオンパレード。今までこんなのに告白してくれた男子は相当な物好きだな。
「……それでも俺はお前がいいんだ。……お節介で、面倒見が良くて、誰よりも俺を理解してくれるお前がな」
そう言いながらさっきより強く抱きしめてくる賢の腕には優しさが篭められてる。
「……本当に? 本当に私でいいのか? 後悔するぞ?」
「……そんな事は絶対にない。……お前こそ俺でいいのか?」
「当たり前だ。お前以上の男なんて居ねぇよ」
自分で恥ずかしいって分かってても、こんな事をペラペラと喋ってるのはこの雰囲気の所為か?
いつの間にか、私が賢を抱きしめ返してた事も?
ファーストキスの味を知ったのも?
「……綺羅に礼を言わないとな」
「あぁ。そうだな」
セカンドキスの味を知ったのも?
・
・
・
「――とまぁ、そんな感じだ」
話を終え、カップに入った紅茶を口に運ぶ。懐かしいのと同じくらい恥ずかしいな、この話は。因みに次の日、礼を篭めて奴を絞めたのは言うまでもない。
「綺羅君、ナイスアシスト!!」
「お前……食いつく所はそこかよ!!」
「もちろん! 私の中で綺羅君に勝てるモノなんてないよ!」
はぁ……。一体コイツの頭の中はどうなってんだ? 一度覗いてみたいぜ。
「たぶん綺羅君が詰まってるかな」
「思考を読むな。何処でそんな能力を手に入れたんだよ?」
「この前霞さんに教えてもらったの。ごく親しい人にしか効かないけどね」
霞さん――綺羅のお母様だ。あの女性は昔からの憧れなんだよなぁ。とても2児の母とは思えないくらいお若くて美人だし、バリバリ仕事もこなして格好いい。いつかあんな女性になるのが私の夢だ。……もちろん2つある内の1つだけど。
「そういえば、最近お前達はどうなんだよ?」
「?? 毎日会ってるじゃん。急にどうしたの?」
不思議そうに首を傾げるウズヒは、女の私から見ても可愛いと思う。こんな仕草に男はグッとくるんだろうな。
「いや、上手くいってるのは知ってる。毎日あれだけ見せ付けられたら嫌でも分かるわ。私が言いたいのはそうじゃなくて、その……」
「あ〜夫婦の営み話ね♪」
「そ、そうだけど……」
そんなはっきり言うなよ……。それに夫婦じゃねぇだろ。
「そっちも上手くいってるよ♪ 元々綺羅君があんまり意思表示をしてくれないから、私からアプローチして、その時の綺羅君の表情を見て判断してるかな。何となくだけど、それだけで分かるんだよね。
もちろん綺羅君から来てくれた時の準備もしてるよ? 女の子だからいろいろとあるけど、出来るだけ大好きな彼に応えてあげたいもん……って、未来ったら何を言わすのよ〜」
お前がペラペラ勝手に喋ったんだろうが! 誰もそこまで話せとは言ってねぇ!!
「……まぁいいや。ところで、あのヘタレにお前を襲う度胸なんてあるのか?」
「全然。家に2人っきりで居ても、1度もそんな素振りを見せてくれた事がないんだよねぇ〜」
流石ヘタレ。どうせまだ『自分とウズヒじゃ釣り合わない』とか考えてんだろうな。そんなこだわりなんてさっさと捨てろっての。
「未来と賢人君の場合はどうなの? お盛ん?」
「その言い方は止めろ……。まぁそこそこだ。未だにあの独特の雰囲気には慣れないけどな」
慣れようとも思わねぇしな。無理すると、すぐにアイツが感づくんだよ。鋭過ぎるのも結構考えもんだぜ。
「もう私達の話はいいだろ。今度はお前が話せよ。綺羅との事」
「うん♪ 分かった♪」
これ以上この話を掘り下げると自分が何を言ってるのか分からなくなりそうだったので、無理矢理話題を変えると、ウズヒが水を得た魚の様に凄い勢いで語りだした。
そんなコイツの姿を見てると、本当に出会えて良かったと思う。こんなに腹を割って何でも話し合えた奴は今まで居なかったからな。賢や綺羅とは違う、大事な親友だよ。
「未来、聞いてる?」
「ああ。ちゃんと聞いてるって」
「そう? だからその時私はね――」
いつか大人になって、さらに年を食って爺さん婆さんになっても、コイツらとはずっとこのままの関係で居たい。というか、嫌でもそうなる気がする。
私達は本当にいい仲間を持ったな。そうだろ、賢?
その後、綺羅の事を許婚と知った所から始まり、アイツの隠された魅力まで5時間も掛けて熱弁された。
はぁ〜……無理に話題なんて変えるんじゃなかった……
akishi「さて、今回は久々の番外編。そして主役は男勝りな純情美少女:佐久本未来さんでした」
朱実「キャラ紹介を抜くと、本当に久々だな。あと、何で未来ちゃんなんだ?」
akishi「結構人気が高いらしいんだよねぇ〜。作者自身も好きだし。ちょっと乙女過ぎた気がしないでもないですが……」
朱実「まぁそこはいいとしてさ。最後、賢人君が亡くなった感じになってるじゃねぇか!」
akishi「そこはもう謝罪の言葉しか見つかりません…。本当にすいません……」
朱実「分かった分かった。分かったから暗くなってないで先に進めろよ」
akishi「暗くさせた張本人が言うかな……。まぁ気を取り直して。
次回から本編再開です。久々……でもないですが、二言目には《テニス》が出てくる男が登場します」
朱実「お前も二言目には《テニス》が出てくるよな?」
akishi「…それは否定しませんよ。でも、彼との共通点はそこだけなのであしからず。
では、また次回お会いしましょう!」