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第17話 〜『遊園地』と『罰』と『兄妹愛』〜

「「西強♪ デート♪ 西強♪ デート♪」」




「…ねぇ、賢人さん?」


「……何だ?」


「何でこの2人(太陽&未来)はこんなにテンションが高いのかな? しかもいつもの2人のノリじゃないし。」


「……さぁ」


中間テストが終わり、テスト休みのお陰で3連休となった6月の始め。3連休の初日である土曜日、ボク達4人+4人は球技大会の副賞である『西強メチャクチャアミューズメントパーク』のチケットを手に、バスに乗っている。

全員で8人の理由は、チケットがペア用だったんだよね。いつもの4人以外のメンバーは……すぐにわかると思うから。



「お兄ちゃん、知らないの? 西強(以下略)って女の子の憧れなんだよ?」


「そうなの? 美樹ちゃんも知ってる?」


「ええ♪ 当たり前ですよぉ〜。西強にはある言い伝えがあって、その言い伝えはカップルに関する物だから、恋人が要る人は知らず知らずの内にテンションが上がっちゃうんですぅ。お兄さんは『西強・観覧車の伝説』って聞いた事ありませんかぁ?」


この娘は板谷美樹ちゃん。


板谷 美樹(イタヤ ミキ)中学2年生。亜梨香のクラスメートで親友(らしい)。小学生の頃から我が家へ遊びに来たりしていたのでボクとも結構仲がいい。しっかり者で美人系な亜梨香とは対象的に、小動物的で思わず守ってあげたくなるような可愛さがある。何故性格が正反対なこの2人が親友なのかは謎。

ある筋で得た情報では、亜梨香と彼女で男子からの人気を二分しているらしい。



「ん〜聞いた事ないな」


「そうですかぁ〜。折角西強(略)に行く事が出来るんだからちゃんと調べてこなきゃダメですよぉ?」


「ごめん、ごめん。テストとかあって忙しくてね」


「なら、しょうがないですねぇ〜。でも次からは気をつけた方がいいですよぉ〜」



そう注意を促してくれるが……。めちゃめちゃカワイイ!中学校の男の子達が奪い合う(と言っても亜梨香同様、誰も彼氏の座についた事は無いみたい)のもわかる。

まぁボクには最愛のウズヒちゃんが居るから関係ないんだけどね♪……え?キモい?ごめんなさい……。



「…おい、綺羅! ちょっとこっちに来い!」


少々心の中で惚気のろけていると、後ろの方から声を掛けられた。


「聖? どうしたの? 何かあった??」


「いいから来い! 悪いけど賢も来てくれるか?」


「……了解」


ついでみたいに呼ばれた賢と共に、自分達以外にはお年寄りが5〜6人くらいしか乗っていない車内を歩いて彼の近くにある座席へと腰掛ける。


「で、どうしたの?」


「…お前は桜井さんに続いて板谷さんまで自分のものにするつもりか!?」


「…は? 何言ってるの? ボクはただ単に美樹ちゃんと話してただけ…」


『カワイイなぁ〜』くらいは思ったけど、それ以上は何もしてないし、しようとも思ってない。


「それにしては顔がデレデレし過ぎだ! 桜井さんの方を見てみろ!」


「ウズヒの方?」


聖に言われた通り、ウズヒの方を見てみると……


「!!」


思わず顔を逸らしてしまった。だってすごいジト目で『何でそんなデレデレしてるのかなぁ?』って訴えてたからね! 端正なお顔が台無しだよ?



「……ふっ」


「賢! お願いだから、笑ってないで助けて!!」


「……無理だ」


簡単に言わないで! 始めから助ける気が無いだけじゃないの!?



「…聖くん?」


「嫌だ。自分の失態は自分で補うんだな」


少しくらい助けてよ! どうせ面白いがってるんでしょ!?

……どうせ誰も助けてくれないんだ。こうなったら救世主に!



「一条君!! 今ボクが頼れるのは君しかいない!!」


聖の隣に座っていた一条君の手を『ガシッ!』と掴み、必死に訴える。


「ハハ……。そんなに困ってるなら1つだけアドバイスをさせてもらおうかな」


「よっ! 流石将来の日本野球界を背負って立つ男! それでアドバイスって?」


もう、一条君の笑顔が軽く引き攣ってるとか、そんな事を気にしている余裕なんて無い。なんとしてでもウズヒの機嫌を直さないと。


「天領君は『西強・観覧車の伝説』って知ってるかな?」


「さっき亜梨香と美樹ちゃんから名前だけは聞いたけど?」


「実はその内容が、……………なんだよ」


「本当に!?」


「ああ。俺が聞いた話ではそんな内容だったね」


「……俺もだ」


「多少違いが有るけど、俺も同じ内容だな」


「みんな大体一緒なんだ…。それならそれに賭けてみよっと」


ウズヒも知ったら喜びそうな……って言うか知ってて、更にそういう話が好きだから、あんなにはしゃいでたんだよね。



「綺羅。どこかへトリップしてるとこ悪いが、もうそろそろ着くぞ?」


「え?」


「ほら、あそこを見てみろよ」


聖の指差す方を見ると……


「あ、あれは何!?」


「…見ての通り観覧車だが?」


「それはわかるよ! ボクが言いたいのは、何であんなに大きいかって事!!」


まだ遊園地の敷地までは少しあるが、遠目で見てもかなり大きい。東京にある真っ赤なタワー位に大きい……わけ無いけど、近くに建っているビルよりは余裕で高い。


「まぁまぁ天領君。それは作った人に聞いてみないとわからないよ」


「そ、それもそうだね……。意味がわからない所で熱くなっちゃってゴメン…」


「それだけ自分でも気付かない間にテンションが上がってたんだよ」


いやぁ〜、一条君は優しいね。ボクが女の子だったら間違いなく惚れちゃう。ホント、さっき助けてくれなかった2人とは違うな〜。



「……聖」


「ああ。こいつは一度シメとくか」


「え?」


何故か、噂(ボクの中で)のお2人さんが不気味な笑顔でこっちを見てるんですけど……


「……覚悟!」


「ちょ、ちょっと!! い、痛いよ!」


賢がボクの右腕に間接技をきめ、技に使っていない方の腕を首に回して、逃げられないようにがっちりホールドする。



「次は俺だな。さぁて…どうしてくれようか」


『う〜ん』と首を捻りながら考える聖君。出来ればそのまま何も思いつかなきゃいいんだけど……


「よし、決めた!……これでどうだ! 痛いか?」


「い、いひゃいです! だゃから、ほっふぇを引っひゃるのはやめて!」


「それは無理な相談だな。お前は西強に着く迄、ずっとこのままだ」


「ひょ、ひょんなぁ……」


一条君は苦笑してて今度ばかりは助けてくれなさそうだし、女性陣は全員がボクを見て爆笑してるので始めから期待薄(ただ笑顔を見る限りでは、ウズヒの機嫌が少しは良くなった可能性大)。更に、一緒にバスに乗ってるおじいちゃんおばあちゃんには『若いねぇ〜』という目で見られる始末。


「もういひゃだ……」


「ん? 何だって?」


「…なんれもないれふ」


さっきまで普通に会話出来てたんだから今のも聞き取れてたでしょう!? 今更聞こえないフリなんて白々しいって!

……もういい! 少々痛くても我慢するよ!!



「……反応が薄くなったな」


「よ〜し! じゃあ強さをアップだ」


「や、やめれ……」


「無理」


このままじゃ本当に西強まで持たないかも…。主に痛さと羞恥心で。









 ・

  ・


頬を引っ張られたまま15分、やっと遊園地のバス停に着いた。


「もうバヒュも降りたんだひ、離ひてくりぇない?」


あまりにバスから降りるのに苦労したせいか、賢は解放してくれましたよ?


「と言ってますがどうします? 桜井さん?」


「そのままでお願い♪」


「だとさ。残念だったな?」


「うぅ……。ウジュヒはボクの顔が変わっひゃってもいいにょ?」


「私は綺羅君がどんな顔でも一生愛し続けるから大丈夫だよ♪」


この状況でそんな事言われても嬉しくない……。しかもまだ怒ってるのか、顔は微笑んでるけど目が笑ってない。さっきので多少は良くなったんじゃないの?



「ねぇ…お兄ちゃんってそういうプレイが好きだったの?」


「ちぎゃうよ!! ほりゃ、アリキャだって何かきゃん違いしてりゅきゃら!!」


それに、滑舌が悪すぎて何喋ってるのかわからなくなってきてる!!


「確かに周りに居る子供達とかには悪影響かもね。東野君、ありがとう♪ もう離してあげて?」


「オッケーだ。…ほら、離して貰った感想は?」


「……聖はなんでこんな事したの?」


いきなり頬を引っ張られるような事をした覚えは…無い。本当だよ? ボクは純真……ではないけど潔白です。


「まず始めがそれかよ? まぁいいけどな。…さっき雅明がお前をたすけた時に、俺と賢は役に立たないとか考えただろ? だからその罰だ」


雅明マサアキ』ってのは一条君の下の名前ね。


「い、いや…そんな事は……」


「お前は顔に出過ぎなんだよ。少しはポーカーフェイスを身につけた方がいいぞ?」


「……そうするよ」



そんなにボクって顔に出て、わかりやすいのかな…。って事はウズヒにも色々バレてる?それはマズイよ……。ボクは男の子で彼女は美少女ですからね。

そんな事を考えながらウズヒの方を見ると…


「あれ? 居ない……」


ついさっきまで傍にいたよね?…いったい何処へ行ったの??


「おい、さっさと行くぞ! もう皆入口で待ってんだから」


西強(略)の入口を見てみると…


「皆、早っ!!」


既にチケットをパスに交換して入園してる! 西強に来れて嬉しいのはわかるけど、恋人or親友or兄妹or友達を置いてかないで!!


「おい、走るぞ!」


「ちょ…待って!!」


聖が返事も聞かずに駆け出し、ボクもそれに続いて走り出す。

…走り出したのはいいけど、聖が速過ぎる。ボクを凄い勢いで置き去りにしてゲートをくぐって行っちゃった。ボクは遅れること数十秒でゲートにたどり着く。


「西強メチャクチャアミューズメントパークへようこそ♪」


「ハァ…ハァ……。このチケットでお願いします」


笑顔(少し苦笑い)で迎えてくれた従業員の女の人にチケットを渡す。


「畏まりました。…1名様ですね。パスをどうぞ。楽しんで来て下さいね♪」


「ありがとうございます」


営業スマイルとわかっていても、やっぱり無愛想な表情よりも笑顔の方がいい。笑顔の女性は普段よりも3割増しの美人になるって言うしね。










 ・

  ・


「ご、ごめん…。待たせちゃったね……」


やっとの思いで皆に追いつき、とりあえず始めに謝罪の言葉を口にする。


「もう! お兄ちゃん遅いよ!! 東野先輩はとっくに追いついてるんだから!」


ボクの言葉に亜梨香だけが反応してくれた。他の皆はそれぞれで談笑中。ボクの存在は君達にとって空気? それとも、そこらに転がってる小さな小さな石ころですか?


「亜梨香、ボクに気付いてくれるのは君だけだよ! ありがとう!!」


そんな台詞と共に彼女の手を『ガシッ!』と握る。


「はいはい。お兄ちゃんの言いたい事はよくわかったわ。だから手は離してね?」


さり気無く握っていた手を解くとは、さすが常日頃からおモテになる亜梨香さんだね。男のあしらい方をよく知ってるよ。

でも、ボクは普段言い寄ってくるやからとは違うからね。一応貴女のお兄ちゃんだよ?


「お兄ちゃんは悲しいよ…。よく『おにいちゃ〜ん! おててつなご〜?』って言ってた昔の亜梨香は何処へ行ったの?」


「知らないわよ! 昔は昔、今は今なの!! そんな古い話を出さないで!」


何故かねだられる時はいつも家に居る時だけだったけど。外ではボクが『手をつなぐ?』って聞いても、絶対に『はずかしいからイヤ!』って家とは正反対の事を言ってた気がする。


「ねぇ、もしかして亜梨香って……」


「何?」


「い、いや…。何でもないよ」


「?? 変なの」


『もしかして亜梨香ってツンデレ?』って聞こうと思ったけど止めた。言ったら必ず光速の平手打ちがとんでくるし。それが痛いの何のって。もしその平手打ちが、さっきまで引っ張られてた頬にヒットしたら、2重の痛みで卒倒するかもしれない。



「へぇ〜。亜梨香にもそんな時があったんですねぇ〜」


「美樹ちゃん? いつからボクの隣に居た?」


「結構前からですよぉ。お兄さんが亜梨香と楽しそうなお話をされてたので、お隣で聞かさせてもらいましたぁ」


「気付かなくてごめんね?」


「気にしちゃダメですよぉ。私が勝手に聞いてたんですからぁ」


美樹ちゃんは本当にいい娘だな。知らず知らずの内に癒されるよ。……っていけない、いけない。またウズヒを怒らせちゃう所だった。


「話を戻しちゃうけど、美樹ちゃんから見た亜梨香って、さっきの話のイメージとは違うの?」


「全然違いますよぉ〜。学校での亜梨香はいつも誰かに頼られてるって言うか、皆のリーダー的存在ですからねぇ」


「確かに今の亜梨香を見てるとそんな気がするよ。部活で次期キャプテンって噂されるのもそれの影響かな?」


亜梨香には、このまましっかり者として育っていって欲しい。……いや、とりあえず母さんみたいにならなければいいや。


「やっぱりお兄さんは亜梨香の事をよく見てますねぇ。亜梨香、よかったねぇ?」


「べ、別に何にもいい事なんてないわよ!! お兄ちゃんも余計な事言わなくていいの!」


「はいはい。ごめんなさい」


これは彼氏が出来たらツンデレ決定だね。ツンの割合が多い気がしない事もないけど、時々みせるとびきりの笑顔が可愛いんだよ。あ、勿論妹としてね。ボクにはウズヒちゃんが居るから♪…この展開2回目だって? 気にしない、気にしない。


「美しい兄妹愛ですねぇ〜」


「今の流れで兄妹愛なんて一切関係ないじゃない!」


「あれぇ〜。そうだったぁ〜?」


「そうよ! 私達に兄妹愛なんて無いんだから!!」


亜梨香……恥ずかしくて否定したいのもわかるけどさ、その発言は兄として流石に傷つくよ…。


「亜梨香ったら照れ屋さんねぇ。顔が真っ赤よぉ?」


「て、照れてなんかないわよ!! 顔が朱いのは暑いせいよ!」


「もぉ〜。亜梨香は素直じゃないんだからぁ〜」


「う、五月蝿うるさいわね! だから違うって言ってるでしょ!?」


「まぁまぁ。亜梨香も落ち着いて……」


「元はと言えば悪いのはお兄ちゃんじゃない!!」


『バッチィィィン!!』


「グハッ!!」


亜梨香が放った渾身の平手打ちは、ボクの意識を簡単に刈り取るのに十分過ぎる程だった。


…え?今回これで終わり? 中途半端でしょ!? ちょっと待っ………


そこでボク(の意識)は落ちていった……。
















結局5分後に目が覚めた時、近くに居たのは心配そうな顔をした従業員さんだった。マジで皆酷過ぎ……

作者「どうもakishiです」


朱実「どうも天領朱実です」


作者「さて、遂に…という程でもないですが『西強(略)』に来ましたね」


朱実「それにしてはアトラクションが1個も出てこなかったな」


作者「そ、それは次回にとって置いてあるの!今回のテーマはズバリ『兄妹愛』!!」


朱実「それも急遽予定変更だろ?」


作者「ち、ちが……」


朱実「それに何で亜梨香がツンデレになってんだよ?」


作者「亜梨香ちゃんは始めからツンデレなの!ただ、それが大勢の人が居て、しかも綺羅くんにしか発揮されないだけ!」


朱実「そんな裏設定があるんだったら、さっさと出しとけっての」


作者「うぅ……」


朱実「更に新キャラまで出して。ちゃんと収集つくのかね」


作者「………」


朱実「大体俺の回だって……」



〜1時間後〜


朱実「だからお前は……っていつの間にか気絶してやがる」


作者「………」


朱実「じゃあ今日はこの位にしといてやるか。こんなどうしようもない奴ですが、どうか付き合ってやって下さいね?宜しくお願いします。ほら、お前も何か言え!」


作者「………」


朱実「駄目だ。完全にのびてやがる」

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