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第13話 〜『ピッチャー』と『キャッチャー』と謎の『魔球』〜

『野球』そして『ソフトボール』


勝利に向かって1つの白球を9人の仲間と共に、打ったり、捕ったり、投げたりするスポーツ。


そして……我が星春高校における、体育大会初日の競技でもある(因みに午前が野球で午後がソフトボールね)。





ボクは明日のサッカーには出ない事になっている。だから今日はなんとしてでも勝ちたいし、絶対に勝ちにいく! 勝ちにいくけど……



「綺羅君、大丈夫?」


「…いや、全くもって大丈夫じゃないよ。キャッチャーなんてやったこともないし……」


9ヶ所あるポジションの中でも1、2を争うぐらいに難しいと言われるキャッチャー。それをボクが任されてしまったのだ。


「ピッチャーの賢人君は手加減してくれないの?」


「うん。もう賢の目には、ボクのミットじゃなくて『奇跡』しか映ってないんじゃないかな。」


「いつも冷静な賢人君にしては珍しいね?」


「未来の為になんとしてでも!って考えてるみたいだよ。その気持ちが160kmのストレートに乗ってくるんだから捕ってる方はやってられないよ……」


すでに手はパンパンに腫れてる。他にも色んな場所に青アザが……。


「そんなに速いの!?」


「そんなに速いの。1年の時はずっと野球部から誘われてたくらいなんだよ?『君が入部してくれれば、甲子園優勝も夢じゃない!!』ってさ」


結局どれだけ誘っても賢は首を縦に振らなかったから諦めたみたい。



「あ、未来と賢人君だよ。2人ともこっちこっち〜」


ウズヒが手を振っている方向を向くと、いつもは冷静な男が体中にオーラを纏いながら、そのオーラを纏う原因になっている人物と共にこっちへ歩いてくる。


「よう。仲がいいな、お2人さん」


貴女達もね。


「ありがと♪ 2人は今まで何をしてたの??」


「秘密の特訓だ。所謂、魔球ってやつの練習だな」


「普通それはバッテリーの間でする事でしょ? ボクの立場はいずこへ??」


正直付き合わされなくて良かったと思っているボクも居たりするけどね。


「……これ以上お前の体がボロボロになると、試合に支障をきたすからな。……だから未来にボールを受けてもらっていた」


「未来は賢のボールを捕れたの!?」


「ああ、余裕だったぜ」


……本当に? 150kmですけど??


「……」


「さすが将来は賢人君のお嫁さんになる未来ね。『野球での女房役も、息ピッタリの私に任せろ!!』って感じ?」


「な、ななな何言ってんだ!? お、おおおお嫁さんなんて…」


焦りすぎじゃない? 30歳のニートを息子に持つお母さんみたいだよ??よく分からない?気にしないで。


「だってこの前2人で喋った時に、未来の夢はお嫁さんだって…」


「だあぁぁぁぁ!! それ以上言うな!!」



『ピンポンパンポン♪

5分後に第一回戦第8試合を行います。2年12組と18組の生徒は第3グラウンドに集合して下さい。』



「ほ、ほら集合がかかってるぞ?? 早く行って大差で勝ってこい!!」


「そんな大きな声を出さなくても聞こえるって。賢、行こうか?」


早く行かないと不戦敗になるから。主に骨折や打撲が原因で。


「……了解」


「綺羅君、頑張って♪」


「うん。一生懸命頑張るよ」


無事に生還出来るように。


「負けんなよ、賢!!」


「……ああ!」


この男がピッチャーやってれば負けないって。










 ・

  ・


球技大会第一回戦第8試合は9回裏ツーアウト満塁、得点は0―1で12組が1点のリード…………なんて事はなく、5回裏ツーアウト、ランナー無し。得点が0―25で絶対に負けない状況。


しかも試合を沢山やるために5回までとはいえ、ランナーを1人も出さずに試合を締め括る《完全試合》を賢が達成しようとしている。




カウントは2ストライク0ボール。あと1つのストライクで試合終了だ。

緻密な計算を…しないでサインをピッチャーの賢に送る。


(ど真ん中のストレート。小細工はいらないよ)



  『コクッ』


賢が小さく頷き、投球モーションに入る。

そして賢の手からボールが放たれ……


「ットライーク!! バッターアウト!! ゲームセット!!」


「よしっ!!」



審判の判定と同時に、らしくないガッツポーズを決めたボクは皆と同じ様にマウンドにいる賢に近付いて声を掛ける。


「やったね、完全試合だよ?」


「……優勝しなければ意味がない」


あらら……淡泊なのね?



一方、そんな賢とは対象的に観客席では…


『やったぜぇ〜!! 賢、ナイスピッチングだったぞ〜!!』


嬉しいのはわかるけど騒ぎすぎだって……。


『み、未来!! 騒ぎすぎよ?』


ナイスフォローだよ、ウズヒさん!!


『わ、悪ィ。変にテンションが上がっちまった…。』



恥ずかしいよ……。賢も顔が朱いし。


「愛川、お前の彼女は元気だな?」


《委員長》兼《野球部》兼《三塁手》の遊佐君(第9話以来の登場)が賢に声を掛ける。


「……すまん、悪気は無いんだ」


「責めてるわけじゃないから気にするな。彼女はお前にとって勝利の女神様…って所か?」


「……まぁな」


女神様から《勝利の》女神様にランクアップだね。


「天領君にとっては桜井さんが勝利の女神様ですわね?」


来たな、安藤B(オカマ&中堅手)。ってゆうかオカマって男子の試合に出るの!? そりゃ体力は男子だろうけど……


「何か失礼な事を考えてらっしゃいませんか?」


バレた!?


「そ、そそそんな事ないよ!! あるわけないじゃないですか!!」


「そんなに動揺しながらおっしゃられても……。まぁいいですわ。とりあえずおめでとうございます、愛川君。次も期待してますわ」


「……任せてくれ」


大船…いや、イージス艦に乗った気でいてもいいくらいに頼もしいね。










 ・

  ・


その後2回戦、3回戦、準決勝と勝ち進んだ(全試合が賢の完全試合と化した)ボク達は今、決勝戦の舞台に立っている。

相手は2年1組で、回は5回表ツーアウトのランナー無し、今回は正真正銘0―1の得点で1点のリード。もちろんランナーは出していない。


決勝戦なのに、何故ここまでの描写が無いかと言うと……書くのが面倒になった奴がいるから。


どうせ皆も興味無いでしょ? 主人公チームだもん。勝つに決まってるじゃん。




っとそんな無駄話は置いといて、試合をしなきゃね。


(どうせ打たれないし、初球からど真ん中のストレートで)


  『コクッ』


ボクのサインに賢が頷く。

そしてしなやかなフォームから放たれた剛速球はボクの構えているミットに……


  『カキーン!!』


入らなかった。



「ウソッ!?」


打たれちゃったよ!? 打った人は一塁ベースの上ではしゃいでるし。


「す、すいません! タイムをお願いします」


「タイム!!」


審判の人に頼み、マウンドの賢の下に向かう。


「賢、気にするなよ? 1本くらいヒット打たれても大丈夫だって」


こういう台詞がキャッチャーっぽくない?


「……心配するな。……それより次のバッターだ」


次のバッターは野球部でも、2年生にして4番を任されている一条君。前の打席では、あわやホームランか!? という当たりを放たれた。


「一条君だよね? 敬遠して次のバッターと勝負する??」


「……敬遠はしない。……勝負にいく!」


「でもどうやって打ち取る? 前の打席に変化球は全部ファールされて、最後にストレートを打たれたよね?」


下手に打たれて点を取られましたじゃ済まないよ?


「……ナックルを投げる」


「ナックル!? ナックルってあのナックルボール!?」



《ナックルボール》………現代の魔球と呼ばれ、回転を掛けずに投げるので不規則な変化になり、非常に打ちにくい。まず、一般の高校生が投げられる球じゃない事は確か。



「そりゃ投げられるなら心強いけど……。投げられるの?」


「……朝、未来と練習したからな」


一回戦が始まる前に言ってたのはナックルの事だったのね。


「わかったよ。じゃあ配球だけど、初球からナックルを投げる?」


「……ああ。……他の球では打たれる」


「了解。おもいっきり投げてこいよ?」


「……絶対に打ち取る!」


またオーラが出てきたね。

バッターボックスの横で素振りをしている一条君と、ホームベース上で詰まらなそうにしている審判の下に駆け寄って謝る。


「すみません、お待たせしました」


「本当だよ、まったく!」


審判は随分お冠だな……。


「気にするなよ?俺は君達との対戦を楽しんでるんだから」


一条君が優しくて助かったよ。


「一条君、ありがとう」


「いや、いいさ。それより前の打席は打ち取られたが今回はそうはいかないぜ!」


この人からもオーラが……。でも負けない!!


「望むところだよ!!」


きっちり言い返してキャッチャーのポジションに着く。

続いて一条君もバッターボックスに入り、審判の声が掛かる。


「プレイッ!!」



(コースは真ん中で。ナックルなら絶対に打たれない。)


『コクッ』


いつもの様に首を振り、賢がナックルボールを…投げた。


(よし!! これだけ変化すれば大丈夫!!)


そしてボールがミットに……


『ガッキィーン!!』


え? 今の音は何?? 普通は『ズバンッ!!』ってミットのいい音が…。あれ? ミットの中にボールが無い……。

何で一条君がベースを廻り終えて、皆と喜んでるの?


……ああ。ホームランを打たれたのか。…ホームラン!?


「し、審判!! もう一度タイムをお願いします!!」


「またかね? 今度は早くしてくれよ?」


審判の言葉が終わるか終わらないかの内に賢に駆け寄る。


「………」


「け、賢……」


「……次の攻撃で逆転すればいい。……あと1つアウトを取るぞ」


「う、うん」






次のバッターを打ち取ったボク達は、攻撃に移った…が、皆の気合いが空回りして既にツーアウトでランナー無し。

次のバッターは…キャッチャー同様4番である賢との相性だけで決められた3番ボク。


この場面でヘタレな部分を出すわけにはいかない。



「賢」


「……なんだ?」


「ボクが絶対に塁に出る」


「………」


「だから後は頼んだよ。未来の為に勝つんでしょ?」


ボクはウズヒの為に…ね?


「……ああ、任せろ。だからお前も頼んだぞ」


「任されて!」


自分に一発気合いを入れた後にバッターボックスに立つ。

マウンドにはあの一条君。投手としてプロ入りも囁かれてるくらいなので正直無理!でも打つ!!




〜1分後〜


「いったぁ……」


ボクは一塁ベース上にいます。お察しの通りデッドボールです。

しかし、塁に出れた事には変わりありません。

後はバッターボックスで阿修羅と化している賢人君に任せましょう。


対する一条君は鬼人と化しています。既に人間の闘いではありません。



でも、ボクらは信じています。阿修羅の勝利を。



そして《魂の一球》と《渾身の一振り》の結果は……









 ・

  ・


「「「かんぱ〜い!!」」」


「……乾杯」


只今4人で昼食をとってます。つかの間の戦士の休息ってやつだよ。まぁ今日はもうソフトボールの応援だけしかないから、明日まで休めるけどね。


「いやぁ〜でもよかったな。最近のテレビや小説によくある『実は負けちゃいました』的なパターンじゃなくて。お前達が負けた場合は『感動』じゃなくて、『後悔』しか残らなかっただろ??」


未来…酷いって……


「まぁまぁ、勝ったんだからいいじゃない。綺羅君、賢人君お疲れ様♪」


「ありがとう、ウズヒ」


「……ありがとう。……未来もな?」


賢が愛しの未来にも声を掛ける。


「あ、当たり前だろ? それより次は私達のソフトボールだな??」


「そうだね。私達2人にかかれば、世界征服も夢じゃないんだから!」


いや、それは言い過ぎ……


「その通りだ!! まず手始めにぶっち切りで優勝を決めるぞ!?」


「「オォ〜!!」」


あー女の子2人が変なテンションになっちゃったよ……。


「……綺羅、諦めろ」


最近自分の諦めのよさがすごい気がする。気のせい??
















その後、女神sは圧倒的強さで優勝し、球技大会初日は過ぎていったとさ。


どうもakishiです。


まずは更新が遅れてしまい、申し訳ありません。私用で遅れてしまいました。

そしてスポ魂っぽいノリ+恋愛性の薄さに、もうただひたすら平伏するしかありません。更に今回の主人公は賢人君でしたね……。次回は太陽さんと未来さんが活躍する予定です。綺羅君の活躍の場は……無いかもしれません(笑)。後書きまで無駄に長くなってしまってスイマセン……。


どうか次回もよろしくお願いします。

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