表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/46

第11話 〜妹の『買い物』と『ラブレター』〜

「………暑い」



学校が始まって早1ヶ月。


ついに日本中の人々が待ち望んでいたであろう、黄金週間ことゴールデンウィークに突入し、休みの中盤に差し掛かろうという今日この頃。


遊びに出掛ける人、里帰りする人、家でゆっくり過ごす人、いろいろな人がいるだろう。


ボクはもちろん家でゆっくり過ごしている。

去年とは比較にならない程に今年は疲れたからね(主に終わりの無い追いかけっこで)。



だけど……


「……なんでこんなに暑いの?」


そう、とても暑いのだ。5月の始めとは思えないほど暑い。

そりゃもうセミが早起きして、かき氷りがバカ売れするくらい暑い。


とにかく暑い!! 暑い!! 暑い!!!!




「しかも暇だし…」


いくらゆっくり過ごすと言っても、そう何日も休みが有ると暇になってくる。


ウズヒは杏奈さんや悠真さんと家族3人で旅行に行っちゃったし、賢と未来は2人でデートばっかりしてる。

仲がいいのはわかるけど……そんなに行く所あるの??



自室のベッドでゴロゴロしながらそんな事を考えていると……


『ドドドドドッ!!』


誰かが凄い勢いで階段を駆け上がってきた。


『ガチャ』


「お兄ちゃん、入ってもいい??」


我が妹よ……。入ってきてから聞いても意味が無いよ?


「亜梨香、どうしたの?」


「出掛けるから付き合って??」


「この暑い日差しの中で?」


「うん♪ どうせ暇でしょ?」


人が暇だって決めつけないでよ。確かに暇だけどさ……。


「どうしても?」


「どうしても。じゃないとウズヒさんが帰ってきたら、有る事無い事喋っちゃうよ??」


「………例えば?」


「そうだねぇ〜。ウズヒさんがいない間にお兄ちゃんがムラムラッときちゃって、それを抑え切れずに私を襲い、あらがいきれなかった私はお兄ちゃんに純潔を……」


「わかった、行くよ」


「やった♪ 30分以内に用意してね?」


そう言い残し、返事も聞かずに部屋を出ていった。


「はぁ……」


ついに亜梨香まで母さん化してきたよ…。最近ウズヒにも同じような事を言われて脅されるし……。




「……準備するか」


もう考えない事にしよう。ボクにはどうにも出来ない事だ。










 ・

  ・


最寄りの駅から電車に揺られて30分、この地方で1番大きな都市である辻ヶ丘市に着いた。

ボクらの住んでいる飛鳥市は結構地理的に良い場所にある。


え?町の名前出したのが始めてだって?? まぁ気にしない気にしない。

誰かさんが最近思いついた名前を出しただけ…なんて事は無いから。



「何考えてるの? 次のお店行くんだから早く!!」


「ちょっと待ってよ。もう3軒も回ったのにまだお店を回るの?」


「そうだよ。だってまだそんなに買ってないじゃん」


「ボクの両手は既に塞がっているんですが……」


「まだ持てるから大丈夫だよ♪」


それはボクが決める事なんだけどな…。結構重いんだよ?


「これからこういう役目は彼氏に頼んでね…?」


亜梨香と付き合えてテンションがハイになった彼氏なら、何でも喜んで持ってくれるから。


「え? 彼氏なんかいないから無理だよ。だからこれからもよろしくネ??」


「え…いないの!?」


マジで!?


「う、うん」


「ラブレターとか貰ってるのに?」


「なんで知ってるの!!??」


「こ、声が大きいって……」


周りの人達がこっちを見てるし……。


「せ、説明するからさ。まずどこか喫茶店にでも入ろ?ね??」


「…しょうがないわね」


痴話喧嘩してんじゃねーよ的な視線が痛い……。




とりあえず近くに見えた喫茶店に突入。


『カランカランッ』


「いらっしゃいませ〜。お客様は2名様ですか?」


「は、はい」


「ではお好きな席へどうぞ。」


「何処に座る?ってボクを置いていかないで!!」


亜梨香はボクを置いてズンズン奥に進んでいく。

店員さんに『あぁ喧嘩したんだな』って感じの目で見られてた。…恥ずかしい。



「ここ」


「……はい」


結局座ったのは1番奥にある4人掛けの席。

席に着くと同時に店員さんが水を持ってメニューを聞きに来た。


「ご注文は何になさいますか?」


「私はオレンジジュースで」


「じゃあボクは……メロンソーダを下さい」


「畏まりました。少々お待ち下さい」


と言って厨房の方へ去っていった。



「で、何でラブレターの事を知ってるのかしら?」


うぅ…。ドスが効いてて怖いよ……。


「それは……」


「まさか私の机をあさったの!?」


「そ、そんな事しないって!! ラブレターの事は友達から聞いただけだよ!」


「友達?」


「うん、ヒジリから」


「聖って誰??」


名前じゃわからないか。


東野トウノだよ。東野聖」


「ああ、東野先輩ね。そういえば弟の東野 直斗ナオト君から貰った事はあるよ」


「聖も『俺の弟がお前の妹にラブレターを出した』って言ってたからね。だからボクも知ってたんだよ」


「だからかぁ〜。お兄ちゃんが私の机を漁ったとは考えられなかったから、何でかな〜って思ったんだよ?」


さっきおもいっきり疑ってたのに??


と、そこへ…


「メロンソーダとオレンジジュースになります」


「ありがとうございます。じゃあ飲もっか?」


「そうね。いただきます」


ん〜やっぱりメロンソーダは美味しい。


「そういえば、さっき机にラブレターがある。みたいな事言った?」


「言ったよ。それがどうかした??」


「今まで貰ったラブレターって全部保管してるの?」


「だって全部人の気持ちが篭った物だから棄てるのは失礼でしょ??」


そりゃそうだ。


「亜梨香は優しいね」


「ありがとう♪ でも、ウズヒさんも大事にしてるって言ってたよ?」


「ウズヒも?」


「うん。この前も5〜6通を1度に貰って来てたよ。全部断ってたけど。知らなかったの?」


「……うん」


気付かなかったな…。


「はぁ……。大丈夫なの?」


「何が??」


「何がって…。このままじゃ他の誰かにウズヒさんを持っていかれるかもよ?」


は!?


「何故!?」


「…今はお兄ちゃんの事を好きって言ってくれてるかもしれないけど、情熱的なラブレターが来たらその人に惹かれていっちゃうかも」


ボクの発言に呆れながらも亜梨香が心配を口にする。


「………」


「それでもいいの!?」


「……ウズヒがそれを望むなら仕方がないんじゃない?」


「………」


「………??」


どうしたの?



『……ブチッ!!』


え?今『ブチッ!!』って……。


「いい加減にしなさい!! 良い訳ないでしょう!! 男なら『ウズヒは誰にも渡さない!』くらい言いなさいよ!!」


「だって……」


「だってじゃない!!」


「………」


亜梨香が凄い剣幕で怒るので、ボクは喋り続ける事が出来ない。


「考えてもみてよ。ウズヒさんが知らない男の人と一緒に歩いてるかもしれないんだよ??」


それはキツイな……。


「ウズヒさんみたいな人、なかなかいないよ? 綺麗でなんでも上手にこなせて、とっても優しい」


そうだね、その通りだよ。


「それにストレートに自分の気持ちを伝えられる。お兄ちゃんはよく、『好き』って言われるんじゃないの??」


「……うん」


「それってなかなか出来ない事だと思わない?それに応えてあげなきゃ。本当に愛想を尽かされるよ?」


そう……かもね。


「……どうしたらいい?」


「それくらい自分で考えてよ」


「………」


……何がいいんだろう? プレゼント? いや…出来れば物よりも、もっとしっかりと気持ちを伝えたい。物だと伝わらないって訳じゃないけど……。



考えること10分。


「決まらないの?」


「…うん。物をプレゼントするより、他の何かにしようとは考えているんだけど」


「ならラブレターにしたら?」


一応贈り物じゃないの?


「ラブレター? ボクが!?」


「良い考えだと思うけど?」


ボクは16年間の人生の中でラブレターなんて書いた事が無い。


でも…


「書くよ。想いは言葉や文字にしないと伝わらないからね」


「わかってるなら始めからそうしてよね…。じゃあ帰ろっか?」


「買い物は?」


「また今度でいいよ。早く帰ってラブレターを書かないとね」


「そんなに急がなくても……」


「明日のウズヒさんが帰ってくる時間に間に合わせなきゃ。善は急げ、ってね♪」


急がば回れ……は通用しないよね。










 ・

  ・


「ふぅ……。終わった」


買い物から帰った後、すぐに執筆に取りかかったボクは、翌日の鶏が鳴く時間まで不眠不休で頑張り続け、今やっと完成した。


「何々? 前略 桜井太陽様……」


「どわっ!!」


「キャッ!!」


いきなり亜梨香が出てきてびっくりしたよ!!


「急に現れて何で読んでるの!?」


「アイデアを出したのは私なんだからいいじゃない」


「ダ〜メ。亜梨香だって貰ったラブレターは見られたくないでしょ?」


「ケチ〜。見せてよぉ〜」


「何て言ったって駄目。さぁ、朝ご飯作って食べよ?」


「むぅ〜。納得出来なぁ〜い」


「さぁ歩いた、歩いた」


亜梨香を部屋から追い出しつつ振り返る。



一生懸命書いた手紙が朝陽の祝福を受けている……様に見えなくもない。














その日の夕方、旅行から帰ってきたウズヒへラブレターを渡した。

すると顔を真っ赤にして、


「ありがとう。もちろんOKだよ♪」


という言葉と最高の笑顔をくれた。恐らくボクの顔も真っ赤だったに違いない。


その日の夜はいつも以上にウズヒがくっついてきて、それを亜梨香に見られ、とても恥ずかしかった事しか覚えてません。
















数日後、彼女の机の上には、あの後に2人で撮った写真と共に『それ』が飾ってあった。






《前略 桜井太陽様


 急な手紙で驚いたと思います。この手紙は、貴女にボクの想いを伝えたくて書きました。


  好きです。貴女の事が。


 もし許婚という関係でなかったのなら、ボクは貴女と話す事も出来なかったでしょう。それくらい貴女は遠い存在だったと思います。

 だから、とても感謝しています。許婚という事実に。貴女と過ごすことの出来るこの時に。


 しかし、いつかはどちらかが離れていく日が来ます。それがこの世を離れる時なのか、別の理由わけなのかはわかりません。

 ただ、その時が来るまでは貴女と出来るだけ多くの時間を供にしたいです。

 

 ボクの…『彼女』になって下さい。


      天領綺羅》















それを読んだ亜梨香に、


「クサッ!!」


と言われました。


どうもakishiです♪


今回はコメディー重視でいこう…と考えていたんですが、このような話になってしまいました。

やっぱり腕が無いなぁ……と。ただいつも出番の少ない亜梨香さんが活躍出来たのはよかったと思います。


どうかこれからもよろしくお願いします♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ