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とある少女とひとつのフラグ

翌日、風斬と舞が登校してきた。二人の目にはいつもなら考えられない光景が写った。西園寺が二人よりも先に来ていたのだ。これには、二人も驚きを隠せず、風斬は思わず「どうしたの?桃李がこんな早く来ているなんて珍しいね」と聞いた。「ちょっとな...」と言葉を濁し、柚木のほうを向いて「透華のやつ失礼なことしてなかった?」と聞いた。それを聞いて風斬が「ちょっと!失礼なことって何!?」と少し不機嫌そうに言い放「失礼なことなんて何も。む、むしろ助けてもらったぐらいで…」と柚木が言うと、「そっか、でも風斬がなんかしたらいつでも言ってくれよ。」と冗談混じとりに西園寺が言った。「なにそれ!私がなんかするわけないじゃん!」と怒ったように風斬が言った。そんな話をしながら三人は教室へと向かった。


三人は舞と桃李の教室の前に着き、透華はそこから自分の教室へと向かった。

舞と桃李が教室に入ろうとすると、中から怒鳴り声が聞こえてきた。そしてドアに何かが衝突した音が聞こえ、二人が慌てて中に入ると舞をいじめていた主犯格の女がドアの前に倒れていた。「大丈夫か?」と桃李が声をかけるが「大丈夫よ!これぐらい!」とその女は桃李の声を跳ね除けて立ち上がる。桃李が改めて辺りを見渡すと、どうやら主に喧嘩をしているのはクラス内序列男女1位同士の二人らしい。その周りをそれぞれ3人程度が囲んでいるがこの者たちは面白半分か仕方なしと言った感じだろう。そのような考察をしているうちにまた喧嘩が始まった。桃李は取り巻きの一人に「何があった?」と聞く。するとその取り巻きが桃李にこの状況の説明を始めた。

その話を聞くと、どうやら女が自分の席に座っていた一人の男をどかそうとした際にこれだから男は…と余計なことを言ったことが発端らしい。その場面をみていた1位の男が近づいていき女に突っ掛かり今に至るといった感じだ。

触らぬ神に祟りなしと思いそそくさと自分の席に向かいいつものように机に伏して居眠りを始める。舞はその隣に座る。が、喧嘩の騒音がうるさく、静かに眠れそうにないと思った桃李は隣の舞が気にしてる様子もあり喧嘩の仲裁をしようと席を立とうとした時に後ろの方から一人の男がやって来た。名前は吉岡守。女の席に座っていた男である。「う、うるさ〜い!」吉岡が叫ぶ。「も、もうすぐ先生…が…来るから…」と言った後に吉岡は女の方を向き、「寺口さん、勝手に席に座ってて…ごめん!」と謝った。それを聞いた寺口はちょっと戸惑った様子を見せ、「わ、分かればいいのよ」と言いながら席に戻る。その様子を見た男は寺口を呼び止め文句を言おうとするが、吉岡が「金田君もういいから!」と止める。


そして担任が来てHRが終わり1限目が始まる。先生が寺口を当てるがなにか先程のことを気にしている様子でボーッとしており返事をしなかった。近くの女子が「唯…唯!」と語りかける。それに気づき「!なに?」と返すと「当てられてるよ」と言われ前を向くと確かに先生がこっちを睨んでいた。急いで返事をして「…を読んでと言われたのでその場に立って指定された場所を読み始めた。

授業が終わると寺口に話しかけた女子が寺口に近寄って行き「唯、どうしたの?」と聞く。「あははは…ちょっと家でね、大したことじゃないから」と寺口が答える。「ならいいけど…」と女子が言って自分の席に着く。

(ほんとにあんなことを気にするなんて私らしくない…私も謝った方が良かった…かな?…いや、吉岡もいいって言ってたし…でも…)そんな堂々めぐりを考えていたら、2限目の始まりのチャイムが鳴る。そして集中できないまま2限目も終わり、放課後になる。舞のことを忘れていたようで舞に絡むことなく帰宅した。西園寺がその寺口の異変に気付いたのは翌日のことだった。

その日は風斬が桃李の家まで朝起こしに来たため西園寺は遅刻せず余裕の時間帯に学校に着いた日だった。二人の前には多数の生徒に混じって、吉岡と寺口がいた。吉岡はいつも通りだが寺口は細かくて分かりにくかったが、吉岡の事を少し避けているようだった。

教室でも一見いつも通りだが、西園寺の目には寺口が吉岡のことを妙に意識しているように見えた。その日1日は様子が変わることはなかった。


日が変わって今日は土曜日。寺口はいつもの取り巻きと3人組で街に遊びに来ていた。何かを忘れようとするように三人で遊び尽くした。そして最後に近くのカラオケに向かった。

店内に入り、レジで3時間利用することを伝え、指定された部屋へと向かう。部屋に入ると三人はまずドリンクを注文する。そして取り巻きの一人が曲を入れ歌い始めた。一人が歌っている間にもう一人が曲を入れる。歌い終わると次の人が歌う。そして二人が歌い終わり、「唯もなにか歌いなよ」と二人が寺口に機械を渡す。寺口が曲を探そうとすると部屋の扉をノックする音が聞こえ、返事をするとドアが開き店員が入ってきた。入ってきた店員を見て三人は驚いた表情を見せる。そして取り巻きの二人がその店員に話しかける。「吉岡じゃん!え?なに?ここでバイトしてたの?」「まじで?」吉岡が「う、うん。まあ…」と困った感じで答える。そして寺口の方を見て少し寂しそうな顔をする。その間も寺口は吉岡から目をそらしたりと避け気味に接してしまう。吉岡が部屋から出て行く。それを追うように「ち、ちょっとトイレ」と言って寺口も部屋を出る。吉岡が出てすぐに追いかけたので追いつくのは容易だった。「?どうしたの?寺口さん」と吉岡が聞くと寺口は少し言い渋っていたが、「ちょっとあんたに言いたいことがあるんだけど…」と切り出そうとしたが、「今はまだ仕事中だから、寺口さん達が帰る頃に休憩入れるから…その時じゃだめ?」と吉岡が聞く。「べ、別に構わないわ」と寺口が答えると「じゃあ終わったら裏口で待っててもらえる?僕も休憩に入ったらすぐ行くから」と言って吉岡は先に進んでいった。

利用時間の3時間が過ぎ、寺口達三人は会計を済ませ店の外に出た。これで解散ということで取り巻きの二人が帰ろうとするが寺口は動く気配がない。「どうしたの?唯」と聞くと「私まだ用事あるから先帰ってて」と吉岡が言った。二人は分かったと言って帰る。二人の姿が見えなくなったのを確認し、寺口は吉岡に言われた通り店の裏口に向かった。寺口が裏口に着いたちょうどその時に吉岡が裏口のドアから出てきた。寺口も吉岡も何も言わぬまま沈黙が流れ、吉岡が痺れを切らし、「えーっと….それで話って何?」と聞く。寺口は「えっと…一昨日のことだけど…その…ご、ごめんなさい…」と言いにくそうにしながらも謝った。

「え?…あ、いや、そ、そんなの気にしてないし改めていわれても…」吉岡が戸惑い気味にいった。「そうだよね、ごめん。私昨日も今日もそのことばっか考えてて集中出来なくて…」と寺口が返す。「寺口さんって意外に優しいんだね」吉岡が素直に言うと「優しい?私が?」寺口が予想外の言葉に意外そうな顔をして聞いた。「うん。一昨日のことも気にしてくれてたし今日もこうやって謝りに来てくれたし」と吉岡が言う。「あ…えっと…それは…その…」寺口が戸惑っていると「じゃあ、僕はそろそろ仕事に戻るよ」と吉岡が言った。「あ…うん。また学校で…」と寺口が言うと吉岡返事をして、店内に入っていった。


月曜になり寺口はすっきりした顔をして学校に向かっていた。校門の前に着きよく知った顔の三人組を見かけたので「おはよう!」と元気よく挨拶をしてその三人の中に加わろうとした。しかし気づかなかったのか知らんフリをして三人組は歩き続ける。様子がおかしいと思いながらもいつものふざけ合いだと思って三人の後を追い「ちょっと無視とかひどくない?」と軽い調子で話しかけた。出来るだけ最悪な想像をしたくなかったから。しかし三人の反応は最悪な想像をさせるに十分なほど徹底していた。

「馴れ馴れしくしないで」「あんたとは友達でも何でもないんだし」と口々に寺口に言葉を浴びせる。「ちょっ…ほんとにどうしたの?」と寺口は表面上は平常心を装いながらも内心では理由も分からずに自分にいじめの矛先が向いたことを理解し泣きそうな思いだった。三人は無視して教室へと向かう。寺口も、もう何も言わず黙ったまま歩き始めた。

寺口が教室に入ると女子たちの様子はやはりいつもとは違う感じだった。女子たちは寺口に気付くと口々に噂話を始めた。「吉岡と付き合ってるってマジかな?」「まじじゃない?見た人がいるって言うし」「男は敵とか言っといて自分はあんな地味なのと」「実はヤリマンだったんじゃない?w」などという話が聞こえてきて状況を理解した寺口。しかし弁明したところで意味はないと思い、何も言わず自分の席に着く。

チャイムが鳴り担任が入ってきて「HR始めるぞ」と言ったところで教室のドアが開き、西園寺が入ってくる。「西園寺…まったくお前は、また遅刻か!」と担任が言い、「すいません。寝坊です」と西園寺が言い自分の席に着き、また居眠りを始めた。担任は呆れた顔を見せながらもHRを進めた。「もうすぐ学園祭があるのは知ってるな?そろそろ出し物と実行委員を決めないといけないのだがうちのクラスはまだ何も決まってない。そこで今日は一日使って学園祭の決めものをしようと思う。まず実行委員から決めよう。誰かやりたいやつはいるか?」と担任が言った。誰も手を挙げない中女子が一人手を挙げる。「竹中、どうした。やるか?」と担任が聞く。この女子は取り巻きの三人組の一人である。「いえ、私じゃなくて寺口さんを推薦します。」と竹中が言うと「賛成」と他の女子が口々に言いだした。「寺口いいのか?」担任が聞く。「…はい。」と寺口が弱気に返事をした。「…じゃあ女子は寺口で決定だな。次は男子だが、やりたいやつはいるか?」と担任が聞く。が誰も手を挙げない。「じゃあ推薦はいるか?」と聞くと、「吉岡君がいいと思いま〜す」と女子の方から聞こえてきた。すると私も吉岡君でいいと思いまーす。と次々に女子の意見が挙がってくる。吉岡は顔に不満を残しながらもここで反対しても無駄に長引くだけだと思い、「…分かりました。やります」と渋々了承した。女子の方から皮肉と思われる言葉が飛ぶ。

担任がたった今決まった実行委員の二人に司会進行を任せ、横にずれ座り込んだ。そして寺口と吉岡は教卓の所へ行き司会進行を始める。が二人とも緊張しているのか、何も言わぬまま時が過ぎる。そして吉岡が「えーっと…じ、じゃあまず出し物から決めよう。なにかやりたい事がある人は居ますか?」と進行を始める。男子の方から一人手が上がる。寺口と言い合っていた金田である。「お化け屋敷でいいんじゃね?」と金田が言うと男子たちは早く決めたいとばかりに賛成の声を挙げる。女子たちはどうでもよさそうにしている。「じゃあ、お化け屋敷で決定で。」と吉岡が出し物の決定を告げる。その間も寺口は元気がなく黙ったままである。

それから雪女は寺口といったようなお化け役の配役や大体の構成を決めていった。そして放課後になり、吉岡が準備に取り掛かろうとすると、女子たちがかばんを持って教室を出ようとする。それを見て吉岡が止めようとすると後ろから金田が呼び止めようとする。そこを吉岡が止める。「吉岡なんで止めんだよ!」金田が吉岡に言い放つ。「今日は買い出しだけのつもりだから帰っても問題ないから」と吉岡が答える。「でも準備があるかもしれないのにお構いなしに帰ろうとしたんだぞ!」「だ、大丈夫だから」と吉岡が言うと金田は納得いかない顔を浮かべながら自分の席に向かいかばんを手に取り教室を出ていった。ちなみに女子たちは言い合いの間に出ていった。その後に続くように男子たちが出ていく。「じゃあ、行こう寺口さん」

と寺口を誘い、実行委員の二人で買い出しに出た。

そして翌日。朝のHRがあり、授業をして放課後になり、今から文化祭の準備をしようと吉岡が声をかけると女子はもちろん男子も応じずに教室を出ていった。慌てて追いかけてどういうことか聞こうとすると「…悪い、用事があるから無理」とみんな同じことを言ってその場を去っていった。教室に残ったのは寺口と吉岡、実行委員の二人だけだった。ちなみに柚木はほかの女子たちに同調していき、西園寺は眠いからと家に帰った。仕方なくその日は二人だけでやる事にした。昨日の買い出しで買ったものを出して作業を始める吉岡と寺口。まずは衣装を作るために布を取り出し、寺口に渡すと「服は作れる?」と吉岡が聞く。「…うん」と寺口が小さく返事をすると「じゃあ衣装を作ってくれる?」と吉岡が言うと寺口が小さく頷き作業を始める。そして吉岡は小道具作りに専念する。


2週間が過ぎ文化祭まであと3週間となったある日、寺口が「ねえ、ちょっと進行状況きつくない?」と吉岡に聞く。「うーん、まだ全体の2割も終わってないからなー。このままじゃ終わらないかも…」と吉岡が返す。「やっぱり他の人にも協力してもらわないと終わらないな」と吉岡が言うと「でも…」となにか言いにくそうに寺口が俯きがちになる。「明日男子にだけでも頼んでみるよ」

そして翌日の放課後、みんなが帰ろうとすると吉岡が前に出て「みんな…その…文化祭の準備手伝ってくれない?このままじゃ終わりそうになくて」と頭を下げて言う。「しょうがないな。やるか、みんな!」と金田が言うと男子たちからは賛成の声が挙がる。が女子の方は相変わらずである。金田が見かねて呼び止め、「おい、お前らもやれよ!」と言うと「私たちは男子と馴れ合うつもりはないから。そこの女と違ってね」そう言って竹中が出ようとすると、吉岡が「そう言わずに同じクラスなんだしさ。」と女子にむかって言った。「同じ?私たちをそこの女と同じにしないでくれる?私たちはあんなヤリマンとは違うんだしw」と竹中が言ったのを聞くと吉岡が耐えきれず、「ヤリマンってなんだよ!寺口さんは優しい人だよ!寺口さんの何を知ってそんなこと…!!」と怒鳴り散らした。その様子に呆気にとられたような顔をみせ、「ふ、ふん良かったじゃないあんたを庇ってくれるような男がいて」と吐き捨て去っていった。

「なんで女子たちはあんなにお前のこと毛嫌いするんだ?」と金田が寺口に聞いた。寺口が言いにくそうにしていると柚木が「寺口さん、吉岡くんと付き合ってるっていう話になってるから」と答える。「え、なにそれ?」と男子一同が聞き返す。金田が吉岡の方を向くと吉岡は違うと言わんばかりに首を横に振る。そんな様子を見ながら柚木が「どこからそんな話になったかは分からないけど寺口さんと吉岡くんが一緒にいるところ見たって人がいて…」と続けた。「僕と寺口さんが?いつ…あ!土曜日の」と思い出したように吉岡が言い出す。「土曜日?」金田が聞き返す。「うん先々週の。それじゃあただの勘違いじゃん!」と吉岡が言う。「でもなんでそれだけで女子たちは寺口をあんなに敵視するんだ?吉岡がモテるやつだっていうなら分かるけど…」と金田が柚木に聞く。「多分寺口さんはほかの女の子達に男は敵みたいなことをいってたんじゃない?」と柚木が答えながらも寺口に質問を投げかけた。「う、うん」寺口が返事をする。「えーっと、つまり…男を敵視してたくせに男と付き合ってることが許せないってこと?」金田が補足する。「何だよそれ!自分勝手にも程があんぞ!しかも勘違いって!!」男子たちから声が挙がる。

そして翌日、目に見えて分かるように男子と女子の間に亀裂が入る。とはいえ女子の方はあまり変化はなく今まで通りと言っていいくらいであった。変化があったのは男子のほうである女子たちの寺口に対する態度について聞いたために女子たちを明らかに毛嫌いして避けるような態度を取っていたのだ。そんな男子の様子を見た女子たちは男子の態度に不満を感じ、男達とも口をきこうとしなくなり、女子男子がお互いに避ける形になった。そして女子の寺口に対する当たりがさらにきつくなる。

担任が入ってきてHRを始める。その教室の雰囲気から担任はやりづらそうにしていたが、なんとかHRが終わる。担任が出て行き、チャイムが鳴り違う先生が入ってきて1限が始まる。そして1限がおわり、2限が始まり、終わり昼休みになり、吉岡が何かを決意した顔になる。そして放課後になる。女子たちが荷物を持って帰ろうとすると、吉岡が「待って!」と引き止める。「なに?私たち早く帰りたいんだけど」と竹中が言うと吉岡が「えーっと…文化祭のことなんだけどやっぱり人手が足りなくて…手伝ってもらえないかな?」と聞くと「…だから私たちは手伝わないって…」と最初よりは申し訳なさそうにしながらも変わらず竹中が断る。その様子を見た吉岡が口を開く「なんで手伝わないの?」「私たちはそこの女のことが嫌いなの」と竹中が答える。「…それって僕と付き合ってるっていう噂から?」と吉岡が聞く。「そうよ!男は敵なんて言っといて自分は…」と竹中が言う。「僕たち付き合ってないよ。もしそうだったら今どれだけ幸せになってるか…」と吉岡が答える。「どういうこと?」女子の一人が聞く。「でもあなたとあの女が一緒にいた所を見たって人が」と竹中が言う。「それは多分本当だろうけど会話の内容までは聞いてなかったんじゃないかな?僕たちそんな話は一切してないし」吉岡が答える。「…じゃあどんな話を?」竹中が聞く。「この文化祭実行委員を決めた日の前の週に男子と女子で喧嘩してたでしょ。そこで寺口さんが僕に謝らなかったことを気にしてたらしくて、その週の土曜日にそのことで話があるって言われて多分その話をしてた所を見られたんだと思う」と吉岡が説明する。「えーっと…じゃああんたとあの女はなにもないってこと?」竹中が聞く「う、うん…そう…なるね…」吉岡はちょっと残念そうに答える。「ん?あんた、唯のことどう思ってんの?」と竹中が吉岡に聞く。「え?!ど、どうって…?」吉岡が取り乱したように聞く。「好きなの?どうなの?」と竹中がさらに聞く。「…好き…かもしれない(ボソボソ)」吉岡が小さい声で言う。竹中は聞き取れていたが、面白がったように「え、なんて?」と聞き返す。「だから…その…」と吉岡が言いよどんでいると「なに?」と竹中が聞き返す。「あーもー!好きですよ!寺口さんに謝られたあの時から」とやけになったように吉岡が叫ぶのを聞いた寺口が目を丸くしてこちらを見ていた。そんな寺口を見た吉岡が何かを決めたような顔つきをして寺口に近づく。そして「…寺口さん!」「は、はい」「あの…その…初めて見た時は気が強くて取っ付き難い印象だったけど…寺口さんが謝りに来たあの時からその印象が変わって…優しい人だと思い始めました。…多分その時からもう寺口さんに惹かれていたのだと思います。それから一緒に文化祭の準備をしていてその思いはどんどん大きくなっていきました。…僕は寺口さんのことが好きです!僕と付き合ってくれませんか?」と吉岡が寺口に告白をする。

「…そ、そんなこと急に言われても…私まだあなたのことよく知らないし」と寺口が戸惑い気味に答える。「僕じゃ…駄目ですか…」と吉岡がオーバーに落ち込みながら言う。「あ、いや、そうじゃなくて…その…私でよければ」寺口が取り繕うように返す。「え?それじゃ…」「はい!こちらこそよろしくお願いします」と嬉しそうに笑顔を浮かべて寺口が返事をする。「ここまで堂々とされると逆に憎む気がなくなるわね」「唯!よかったわね!あと…今までごめんね?ちゃんと文化祭の手伝いもするから許してくれる?」と竹中が言うと、それに続けて他の女子たちも前に出て謝り始めた。金田が「一件落着だな」と言って女子のところへ行こうとすると「あんたたちのことはまだ許してないから」と竹中が言う。「はあ!?どういうことだよ!」と金田が聞く。「唯の話聞いたからって私たちへのあの態度はないんじゃない?」「それはお前たちが寺口にひどいことをしてたのがわるいんだろ!?」「確かに唯には悪いことをしたと思ってるよ!でもそれであなたたちにどうこう言われる筋合いはないと思いますけど」「うぐぐ…人にひどいことするような奴らとは関わりたくないと思うのは当たり前だろ!」「確かにそうですね〜。でもその理論で言うならば私たちにひどいことしたあなたたちとも私たちは関わりたくないってことになるからやっぱりあんたたちのことは許してないで合ってるね」

「ちょっと…早く準備を進めようよ。もう文化祭まで…時間が無いし…」と2人の言い合いに割って入ったのは吉岡だった。


「文化祭っていつなの?」と竹中が聞く。「夏休み入ってすぐの土日だったと思う…」と寺口が答える。「じゃあ後3週間程ってこと?どれだけ進んでるの?」と竹中に聞かれ、吉岡が進行状況を見せると竹中はちょっと困った顔を見せる。そしてちょっと考え込んで「唯、悪いけど衣装全般お願い出来る?」と寺口に聞く。「うん、いいよ」と寺口が返事をする。「じゃあ次は…女子は小道具チームと衣装チームに分かれて、小道具チームは男がやってる小道具作りの手伝い、衣装チームは唯の手伝いをしてくれる?」と竹中がみんなに指示を出す。

そしてみんなその指示通りに衣装チーム小道具チームに分かれ、黙々と作業を続けていった。そしてその日の下校時間が過ぎ、その日は解散となった。

次の日もHRが始まり、1限が始まり放課後になりみんなで作業をしての繰り返しで、1週間が過ぎ、2週間が過ぎそれから数日が経ち、終業式の日になり、その放課後にまたみんなで作業をしてとうとう「終わった〜!」金田が叫んだ。それに続けて他の人も伸びるなり気が抜けたようになった。

夏休みに入り、最初の土日。待ちに待った文化祭の日がやってきた。西園寺たちのクラスはお化け屋敷をやる事になっている。柚木は雪女で西園寺は楽が出来るという理由でぬりかべを選んだ。

吉岡と寺口は他の人が気を使い、初日は自由行動という事になったのだ。「じゃ、じゃあ寺口さん…どこか行きたいところはある?」と吉岡が寺口に聞く。「じゃあまずはお腹も空いてきたしどこかで昼を食べよう!」と言って吉岡の手を取り引いて行く。そして昼を済ませた二人は適当に文化祭を回る。それからしばらくして「私、吉岡くんと絶対行きたいって思ってたところがあるんだけどいい?」「うん、いいよ。どこ?」「こっち!」と寺口が吉岡を引っ張っていく。「ちょ、ちょっと寺口さん!」と吉岡もそれに着いて行く。そんな二人が着いたのは怪しげな占いの館風の部屋の前だった。看板にはカップル相性診断と書いてある。それを読んだ吉岡がどういうことか聞こうとするがお構いなしに吉岡を引っ張って中に入る寺口。「いらっしゃいませ、カップルの館へようこそ」と中に入ると声をかけられる。「今日はあなたたち二人の相性診断ということでよろしいですか?」と聞かれ「はい」と寺口が返事をする。「では、いくつか質問させてもらいますよ。まずはあなたたちは付き合い始めてどれぐらいですか?」「…3週間…ぐらいかな」と吉岡が答える。「なるほど。では次の質問です。告白はどちらからしましたか?」「それは…言わなきゃだめ?」と寺口が聞く。「診断には必要なことです。答えてもらわないとこの診断が出来ないですよ?」「…か、彼…から…」と俯きがちになり恥ずかしそうに寺口が答えた。「なるほど。ご協力感謝します。ただいま診断中ですので少々お待ちください」と言われ、数分経ったころ、「お待たせしました。結果が出ましたよ」と言って机の上に何かが書かれた紙を置く。そこには今答えた質問の答えが線で結ばれ、なにやら言葉が書いてあるがどういう意味かはサッパリ分からない。とそんなことを考えていると「えー、あなたたちの相性は97%。すごぶる良いと言えるでしょう。恐らくこれから先あなたたちには様々な困難も待ち受けているでしょうが、あなたたち二人が一緒なら問題はないでしょう。このまま結婚まで行ってもおかしくはないと言ってもいいぐらいの相性ですよ。ただ万に一つどちらかが相手を信じられなくなったりした場合はお二人の関係は崩れる可能性が高いです」と診断結果を聞き、二人は微妙な表情を浮かべながらありがとうございましたと挨拶をしてその店を出た。

館を出た二人はこの後特にやることも無かったので自分のクラスのお化け屋敷に行くことにした。お化け屋敷に着くと二人ともちょっと驚いた表情を見せる。受付に竹中と金田がいたのだ。「よう、今日はどうだったよ?」「二人で楽しめた?」と受付の二人が聞く。「う、うん。お陰さまで」と吉岡が答える。「全くこんな余計な気まわさなくていいのに…」と寺口がちょっと照れた表情を浮かべながら言った。そして二人は受付を済ませ、中へと入った。

「ばあ!」「きゃ〜!」「て、寺口さん…手が…」「う、うるさい!別に怖いわけじゃないから!はぐれたりしたら困るし…きゃ〜!」「くすくすっ!」「な、なに笑ってんのよ!」「いや、寺口さんが怖がりなのが意外だなあ〜と思って」「なによ!悪い!私だって怖いものぐらいあるわよ!」「いや、可愛いなと思ってちょっと」「な!急になに言ってんのよ…ていうかあんたは怖くないの?」「うーん、怖いけどこれでも一応男だからね。僕まで怖がったら寺口さんが余計に不安になっちゃうだろうし」「…ばか。なにこんな時にかっこつけてんのよ…」「あ、出口が見えてきたよ」「よう、お疲れさん!」と出口を出た二人に声をかけたのは同じクラスの男子の一人だった。文化祭初日終了のチャイムが鳴る。「よし、お前たちもう帰っていいぞ。今日はそんな片付けないし、人手もいらないだろうし」と受付を抜け出してきた金田が言った。「でも…」と吉岡が言おうとすると「お前たちに準備であれだけ迷惑掛けたんだしこれぐらいはな!」「…分かった。じゃあ、後よろしく」と吉岡が言うと「おう!」と金田が返事をする。そして吉岡と寺口が帰り、残りの者で後片付けをして、文化祭初日は終わった。


文化祭二日目。吉岡と寺口は初日に丸一日休みをもらったためこの日は一日中働くことになった。




































 

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