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05

・前回の悪戦転移

 ひとときの平和な日常を過ごす伯爵家。

 キイはついに冒険者として独り立ちを認められる。

 心を癒やすひとときの出会い。

 だが。そんな間隙を突くように、ディアーヌを卑劣な罠が狙う。

 偶然によりそれに気づいたキイ達は、ディアーヌの馬車を追跡。

 たどり着いた採石場では、今まさにディアーヌを襲う異形の姿があった。








 城塞都市アンバー。

 夜の採石場にて。


 キイと蜘蛛人間が向かい合う。

 シュウシュウと呼吸音を漏らす蜘蛛人間に、キイは斧状の武器を構えて警戒をあらわにしている。


「ディアーヌ様、ご無事ですかっ!?」


 馬車の影に飛び込んだレナは、ディアーヌが怪我など無いかざっと調べると、ぎゅっと抱きしめた。


「え、ええ。ありがとう。まさか、貴方たちだけですの?」

「いえ。すぐにでも騎士団が追いかけて来るはずす……」


 気丈にも青白い顔でレナを労うディアーヌに、ククルが答える。

 前回の襲撃であれほどの被害を受けたのだ。三人だけでここへ向かうほどうかつでは無い。

 どやしつけた伝令君に命じて、城への連絡と、別宅の警備に当たっていた騎士達を編成して追いかけるように告げてある。後続の騎士達は、ククルの打ち上げた照明魔法を目印にやってくるはずだ。


「シャア、シャア。大人しく従っていれば、苦しまずに済むものを。シャアアアアアアアッ!!」


 まるでバネ仕掛けのおもちゃのように飛び上がった蜘蛛人間が、背中から生えた二対の蜘蛛の足を槍のように突き出してキイに襲いかかる。その声は異形の怪物にふさわしく、かすれ、ひび割れたような音に変わり果てていた。


「きぃっ!」


 対するキイはそれを余裕を持って見切り、横跳ねに飛んで左下から切り上げるように武器を振るった。斧と鋭い足が激突し、そこに込められたエネルギーが小爆発を起こす。


 しかし、二百キログラム近い重量を片手で吹き飛ばすキイの一撃を、蜘蛛人間は平気で打ち払った。

 キイはその勢いに逆らわず、飛び込み前転で衝撃を逃がして、振り向きながら立ち上がる。


「シャハァァァ! 甘い甘い甘い!」


 がくり、とキイの姿勢が左から崩れる。


「キイの左手に糸がっ!?」


 悲鳴のようなククルの声。

 目で追うことも難しいような今の一瞬の交錯で、蜘蛛人間はいつの間にかキイの腕に蜘蛛の糸を巻き付けていたのだ。

 ロープを引くような動作で強引にキイをたぐり寄せる蜘蛛人間。キイがあっという間にバランスを崩して転倒すると、蜘蛛男はハンマー投げの要領でキイを振り回した。

 ごうごうと風がなるほどの勢いで振り回されたキイは、そのまま大地に叩き付けられる。その衝撃に、どっと土煙が沸き上がってディアーヌ達の視界を覆った。l


「シャハハハハ。人にしては良くやったと褒めてやろう。だが、ここまでだ」

「キイっ!?」

「そんなっ!」


 正直なところ、ククル達は甘く見ていた。

 騎士団の増援を指示したものの、キイであれば以前のように一人で片付けてしまい、彼らには後始末を任せるだけで済むのでは無いかと内心では考えていたのだ。


 しかし、頼みの綱のキイさえも力負けするほどの敵となると、話が違ってくる。

 騎士団の練度を考えれば、人数さえそろえば何とかなるかも知れない。しかし、彼らが到着するまでの時間が稼げるかどうかが分からない。また、間に合ったとしても、本当にディアーヌを守り抜くことが出来るかどうかは分からない。


 絶望の気配にくちびるを噛むククルの肩を、ディアーヌが叩いた。


「大丈夫、キイを信じましょう」

「シャシャシャ、死んだ者に何を期待すると――――」


 先ほどまでの様子が嘘のようにしっかりと立つディアーヌを、蜘蛛人間が嘲笑しながらゆっくりと土煙をかき分けながら歩み寄る。

 だが、ディアーヌは一切ひるまず、声高らかに命じた。


「キイ、全力戦闘を許可します。立ちなさい! そして、薙ぎ払えッ!!」「KEYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYッ!!」


 閃光と共に、立ちこめていた土煙が一気に吹き飛ばされた。


「シャアアアっ!?」


 慌てて振り向く蜘蛛人間が、光の中から現れた拳に殴り飛ばされる。

 その拳は、漆黒のグローブ。肘から指先までを、白銀の金属で守られた異形の拳だ。


 光が消えたとき、そこには異形の戦闘員の姿があった。

 全身を包む漆黒のスーツ。

 身体の要所には白銀の金属とおぼしきプレートが配されている。

 なによりもその頭部は、およそ生物とはかけ離れたデザインの仮面で守られていた。

 その額からにょろりと生えた二本の触覚がぴこぴことうごめき、眉間の宝珠がぎらりと光を放つ。


「シャアアア、貴様は何者だあっ」


 よろよろと立ち上がる蜘蛛人間に、キイはびしりといつもの敬礼を決め淡々と答える。


「キイはディアーヌ様の戦闘員。ディアーヌ様に仇なす輩は許さない」

「シャハハハ! いいだろう、もう少し相手をしてやる」


 キイを再び絡め取るべく、蜘蛛人間がその足の先端から糸を次々と発射する。

 だが、キイも黙って絡め取られたりはしない。ジグザグにサイドステップを入れながら蜘蛛人間に肉薄する。


「キーッ!」

「シャアッハア!」


 二人は密着状態からの乱打戦に突入。

 連打をかける蜘蛛人間の四本の蜘蛛足を、キイは武器だけで無く手足まで使ってあちこちから火花を飛ばしながら捌いていく。


「姫様、なんかキイの早さが跳ね上がってるすけど」

「ですです。どういうことです?」


 二人の疑問に、ディアーヌは笑みを浮かべて答える。キイが守ってくれると信じているのだ。


「簡単なことですわ。あの時のことを思い返してご覧なさい。キイは手足を振り回すだけで人間が千切れ飛ぶのですから、わたくしが命じたとき以外は全力を出すなと指示してあったのです」


 あの凄惨な現場を思い出して、ああ、と頷く二人。現場の片付けを命じられた騎士達は、涙目で死体を処理していたと伝え聞いている。


「シャアッ」

「キィッ!」


 ラッシュ合戦から、大きく飛びずさって一旦距離を取る二つの異形。

 蜘蛛人間が息が荒いのに対し、キイは平然としたようすで武器を変化させる。


 キイの武器の形状をおおざっぱに言うと、破砕斧形態フラクチャアクス・モードでは一本の棒を半分に折り曲げて、グリップになる部分の外側の柄に、半月状の斧刃を取り付けたような形の武器だ。

 棒を伸ばすようにガチャリと音がするまで開くと、刃を固定している部分を銃身とした破壊光線形態(ブラスタ・モード)に。そこからさらにまっすぐになるまで伸ばすと、じゃきっと小気味よい音と共に片刃の刀身が飛び出して、斧刃が護拳となる位置に移動、切れ味重視の切断刃形態サーベランスエッジ・モードとなる。


「シャシャシャ、そんな武器で俺の甲殻が斬れるわけがない!」


 爆発的な加速で突っ込む蜘蛛人間に対して、キイはグリップのトリガーを引くと同時に、半歩横に踏み出して、無造作に剣を振り抜く。


「シャギャアアアアアア!?」


 一閃。

 青い光の太刀筋が、蜘蛛人間の足を一本切り飛ばし、その腕にも深い傷をつける。

 振り抜きからの残心の構えを取るキイの剣は、刃の部分にエネルギーを湛えブルーLEDのように淡く輝いていた。


「ガガガガガ、おのれぇええええええっ」


 よろめき、後ずさる蜘蛛人間に、キイは大上段に構えた長剣を叩き付けるべく突っ込む。


「きゃあああっ」


 その一撃が不意に響いた悲鳴によって止まる。

 思わず馬車を振り向いたキイ。そこには、当て身を喰らって倒れるククルとレナ、そしてぐったりとしたディアーヌを担いだ五匹の蟻人間の姿があった。


「よそ見をするとは余裕だなシャアアアアッ!」

「キィッ!?」


 反射的に両手で頭部をかばって身を守るキイ。

 しかし、蜘蛛人間の大きく開いたあごから吹き出された消化液の飛沫が全身に襲いかかる。蜘蛛は相手の体内に消化液を注入して、溶けた液体を啜ることで食事を取る。その体外消化能力がこの蜘蛛人間にも存在したようだ。

 よろめくキイの肩を蜘蛛足が貫き、吹き飛ばす。

 全身をスパーク混じりの小爆発に蹂躙されながらごろごろと転がるキイ。


 それを尻目に、蜘蛛人間は一気に跳躍。ディアーヌの側に着地すると、蟻人間から彼女を受け取り、命じた。


「足止めは任せたぞ、アントワーカーども!」


 キイがふらふらと立ち上がる頃には、蜘蛛人間の姿は闇に紛れ、蟻人間がそれぞれ手にしたメイスを振り上げてキイに襲いかかる。


「きーぃ……」


 五匹の蟻人間の連係攻撃にキイは防戦一方だ。

 蟻人間は蜘蛛人間に比べれば遙かに弱く、マッドグリズリーにも劣る程度。万全の状態であるならばキイの敵では無いが、蜘蛛人間に喰らった消化液が今だにシュウシュウと白煙を上げており、抉られた肩のダメージもあわさって、キイの戦闘能力を大きく奪っていた。


「待たせたな!」

「わしらに任せろっ!」


 だが、そんなキイの窮地を救うべく、二頭の騎馬が戦場に躍り込んだ。

 シュウと騎士団長だ。

 駆け抜けざまに振るわれたバスタードソードとハルバードが、蟻人間を一匹づつ吹き飛ばし、騎馬達が後足で一匹づつ蹴り飛ばす。その隙にキイも残った一匹を蹴り飛ばして蟻人間の包囲を脱出する。


「キイ、姫様は?」

「一足遅かったか。何処に連れて行かれたものか……」


 馬を切り返してキイの左右を固めるシュウと騎士団長。


「きーぃ、攫われた。でも、まだ見失ってない」


 キイの触角がぴこぴこと蠢き、眉間の宝珠がちかちかと瞬いている。


「ならば、追え」

「おい!」


 ひらりと馬から下りたシュウの言葉に、騎士団長が不平をこぼす。


「俺たちが追っても、方角ぐらいしかわからんだろうが」


 シュウはキイの魔法の鎧が探知能力を持っているのだろうと当たりをつけていた。


「お前なら、今居る場所も分かるんだろ?」

「分かる」


 中年コンビに吹き飛ばされた蟻人間達が、何事も無かったかのように立ち上がるのを見て、騎士団長がハルバードを構え直す。


「ちっ 丈夫な奴らだ。なんだ、この蟻どもは」

「だんちょーに裏ギルマスまで。すんません……」

「ディアーヌ様を、奪われました」


 頭を振りながら起き上がったククルとレナが、詫びながら駆け寄ってくる。


「丁度いい。レナ、キイを治療してやれ。おっと、その前にククルは水魔法でキイを洗浄してやれ。酸のようなものをかぶってるぞ」


 冒険者上がりで魔物との経験豊富なシュウは、キイのダメージを正確に見切って二人に指示し、蟻人間と斬り合いを始める。


「ロドリコ、蟻って事は蟻酸を吐くかもしれん。気をつけろ!」

「もとより承知よ! 遅いぞ貴様ら、減俸ものだあっ!!」


 遅ればせながら駆け込んできた騎士達に怒声を飛ばす騎士団長ロドリコ。騎士達は一瞬首をすくめるものの、意気軒昂に蟻人間を取り囲んで攻撃を始める。


「貴奴らの鎧は堅いぞ! だからと言って、刃をつぶすような無様を晒すなよ!」

「「「応ッ!」」」


 仮にも領内最強を誇る騎士達である。例え相手が異形であったとしても、その戦いぶりには危なげが無い。

 安心してこの場を任せ、ククルとレナは指示通りにキイの治療を終わらせて馬にまたがった。


「あっち」


 ククルは異形の姿のままでキイが指さす方向に馬を走らせる。

 時折方角を変えながら、しばらく馬を進ませるとスラム街にほど近い下水施設の入り口で「この中」とキイが馬から飛び降りた。


「なんか、臭そうすね」

「口元に布を巻いて、あとは我慢するですよー」


 ククルの明かりを頼りに、三人は下水道へと降りていった。




   ※   




「……ここは」


 ディアーヌが意識を取り戻すと、そこは見知らぬ地下室だった。

 冷たい石の寝台に横たわっており、手足は頑丈な鎖で縛り付けられていた。

 かろうじて動かせる頭を回して周囲を確かめると、人が五十人は入れそうなほどの巨大な石造りの玄室のようだった。頭上の方には蛇が絡みついた女性を形取った奇怪な造形の石像が祭られており、寝台を取り囲むように複雑な魔法陣が描かれている。そこかしこには供物とおぼしき生肉や、血を湛えた壺、どんな生き物のものか分からぬ不気味な頭蓋骨が配されていた。


「ヒ、フヒヒ。目が覚めたかね、ディアアーヌゥ」


 脂肪が声にまで回ったかのような、脂ぎった声がかけられた。

 そちらに目を向ければ、蜘蛛人間と思しき黒ローブを纏いフードで顔を隠した男と、金糸銀糸で刺繍を施した法衣を纏い、じゃらじゃらと悪趣味な金細工で飾り立てた、でっぷりと太った中年の姿があった。


「どういうつもりですの、男爵。仮にも貴族位を持つ人間が誘拐など、恥を知るべきですわ」


 気丈に言い放つディアーヌに、長年彼女に粘着していた男爵は卑しい笑みを浮かべて言い放つ。


「お前が悪いのだよ、ディアアアアアヌゥ。素直に我が妻になっておれば、このような目に遭わずに済んだものを」


 べろぉり、と頬を舐め上げられたディアーヌは背筋に怖気が走るのをこらえながら言い放つ。


「お止めなさい、汚らわし―――― っ!?」


 ぱん、っと乾いた音が響く。

 かっとなった男爵が振り下ろした拳を、黒ローブの手が止めていた。


「お止め下さい、父上。このようなことをしては、奴らが――――」

「ええいっ 黙れ黙れ黙れえっ!!」


 ごっと、男爵は腰に差していたメイスを引き抜いて男を打ち据えた。


「ディアーヌさえ手に入れば、雷爪の賢人(ライトニング・クロウ)どもなど、恐るるにたりぬ! このわしが邪神を復活せしめ、その力を手にこの国を支配するのだっ」

「しかしっ」

「くどいぞビリスッ! 下がっておれ!! お前自身が奴らにどんな目に遭わされたのか忘れたかっ!! これはお前のための復讐でもあるのだっ」


 ビリスと呼ばれた男は肩を落とし、俯いて壁際にまで下がる。


「……邪神復活などと、本気ですの?」


 あきれたような声をこぼすディアーヌ。

 確かに、この世界に神は存在する。神官の治癒魔法などは、その力の一端を借り受けて行使するものだ。しかし、邪神などというものは只の伝説、おとぎ話に過ぎないというのが基本的な認識である。


 しかし、男爵は自信満々といった様子で革表紙の本をディアーヌに見せる。


「ふふん。これはわしが何年も下げたくも無い頭を下げ続けて、ようやく任された計画の要となるものだ。この魔導書に記載されたように儀式を行えば、大魔神サスゥワ・キ・カドゥハイオが復活するのだ!」


 げらげらと笑い続ける男爵に、ディアーヌは哀れな者を見るかのような視線を向ける。

 伯爵令嬢という立場上、神々の名前にもそれなりに詳しいが、そんな名前など聞いたことも無かった。

名前さえ知られることの無いマイナーな神なのかも知れないが、仮にも賢人と名乗る人物が、男爵のような男にそんな危険なものを授けるようなうかつな存在なのだろうか、と首をひねる。


「フヒ、フヒヒヒ。残念だったな、ディアアアアアヌゥ。わしの想いに答えておれば、このような目に遭わずに済んだものを。お前の心臓を抉りだし、神像に捧げることで儀式は完了する。さあ、己が見る目のなさを後悔しながら、邪神の供物となるが良いわっ!」


 男爵は、祭壇に安置されていた黄金の儀式剣を抜き放ち、ディアーヌに覆い被さるようにして振りかぶった。

 諦めたかのように目を閉じたディアーヌを見て、男爵は嫌らしい笑みを浮かべた。

 だが、次の瞬間にはディアーヌは、かっと目を見開いて男爵を睨み付ける。


「貴方がいかに邪悪な振る舞いをしようとも、わたくしは諦めません」


 びくりと怯えたかのように思わず手を止める男爵。


「わたくしは、命ある限り貴方の思うようにはなりません。そして、わたくしの命が潰えようとも、その結果として本当に邪神が蘇り、世界を破滅に追いやろうとしたとしても、きっと心ある人々がその驚異を打ち払うことでしょう。貴方には必ず正義の名の下に捌かれる日が来ます」

「フヒャ、フヒャハハハハハハハハッ」


 男爵はおこりに掛かったかのようにがくがくと体を震わせて奇声を放った。もはや、その目に正気の色はうかがえない。


「最後の最後まで笑わせてくれるのう、ディアアアアヌゥ。そんな時がいつ来るというのじゃ? 今から死ぬ貴様に心配される謂われなど無いわ。さあ、あの世へ―――― ひぎゃっ!?」


 突如襲いかかった光弾が、男爵の儀式剣をはじき飛ばした。


「とりあえず、今じゃないすか? あんたが裁かれるのは」


 ビリスが素早く前に出て男爵をかばう。


「何者だ……」


 下水道に通じる通路に、三つの影が浮かぶ。


「私達が来た以上、貴方の悪巧みはここまでです」


 三人の姿を目にしたディアーヌは、思わず涙を浮かべてしまった。

 長年ディアーヌに仕え続けてくれた魔法使いのククル。神官のレナ。そして――――


「KEYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYッ!!」

「シャアアアアア、貴様か」


 直立不動でディアーヌに敬礼するキイの姿を認めた瞬間、ビリスが変化を開始する。黒ローブを突き破って蜘蛛の足が生え、めくれ上がったフードから異形の顔があらわになる。


「フヒ、フヒヒ! やれ、ビリス! そいつらの命を、大魔神サスゥワ・キ・カドゥハイオ復活の前祝いに――――」

「……野球選手を復活させるです?」


 キイが不思議そうに、こてん、と首をかしげた。


「な、何のことだっ!?」

「知っているのですか、キイ!?」


 ディアーヌと男爵は、驚愕の表情で問いかけた。父親のあまりの勢いに、ビリスの動きも思わず一旦停止する。


「日本の、ニッポン国のスポー…… 運動競技の選手です。大魔神佐々――――」


 そんなキイの言葉を遮って男爵が叫ぶ。

 この奇妙な鎧の男の言うことが理解できなかった。


「ええい、戯れ言をっ やれ、ビリス!」

「シャッハアアアアアアッ!!」


 この瞬間、最後の決戦の火ぶたが切って落とされた。






・次回予告

 ついに始まった最終決戦。

 苛烈な戦いの結末はいかなる物になるのか?

 果たして、雷爪の四賢人とはいかなる存在なのか?


 ディアーヌの慟哭の叫びが響くとき、新たなる物語の扉が開かれる。


 次回も戦闘員の触覚がうなるっ!




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