お転婆お姫様の婿探し
1000年前、ある1国シノノ国にとても強くお姫様がおりました。
彼女は国一番の武道家で武道を始めた頃から男の子にも負けたことがございません。
そんなお姫様に憧れる人は多くいました。
しかしそれを嬉しくも悲しくも感じる人がおりました。
それは言わずとも分かると思いますがそれは彼女のお父さん
つまりこの国の王様です。
彼は今、頭を抱えているのです。
それは国のことではございません。
「どうすればお姫様の夫を迎えれるのであろうか・・・?」
そう他国のお姫様と同年代の女の子たちは嫁いだりし既に子供もいるのです。
ですが、自分の娘を他国に嫁がせる気はさらさらない王様
だけど、孫の顔はみたくて仕方がありません。
2年ぐらい前からずっと王様はそう考えて、以前お姫様に夫を娶らないか、と話を持ちかけました。
ですがお姫様はこう答えました。
「私より強い男でないと嫌です。自分より劣っている人間と結婚などしたくありません!!!」
確かに王様もそういった男が娘の婿が良いと考えています。
ですが、この国には彼女より強い男など存在しないのです。
さぁ、どうしましょう
王様は頭を抱えます。
すると聡明な王様はあることを思いつきました。
「そうだ、娘より強い男を探せば良いのだ!」と・・・
お姫様より弱いのは道場の中にいた男達だけ・・・
世の中、いやこの国にはお姫様より強い男はわんさかいる。
王様はお姫様より強い男を見つけるためにあることを開始しようと家臣に指示を出します。
そんなことを王様が思いき実行に移そうとしているとはつゆしらず、お姫様はいつもの日課を過ごしておりました。
その中には馬屋で過ごす、というものがありました。
「元気!?トーイ!」
「姫様!?」
馬屋につき中にいる人間に声をかけるとその人物は驚きお姫様を見つめました。
馬屋にいたのは城に使える馬屋番の息子のトーイ
彼はお姫様の幼馴染で唯一の友達
そして密かにお姫様は彼の事を幼馴染・友達以上に思っていたのです。
「ねぇ、トーイ・・・私ね?お父様に夫を娶るように言われたの」
お姫様はいつもの定位置の藁の上に座り作業をしているトーイを見つめています。
トーイの一所懸命に働く姿が好きなのです。
汗をかき馬に優しく接するその姿が・・・
そんなトーイの後ろ姿にお姫様は静かに言うとトーイは驚いた風に振り返った。
「私、どうすれば良い?」
「それは・・・良い話ではありませんか?」
いつものように返された言葉にお姫様の心は深く傷つきました。
「姫様ももう結婚して良い歳なんですから、もう馬屋に来たりするのも止めた方が良いと思いますよ。アナタはこの国のお姫様なんですから」
トーイはそう言うと作業の手をまた動かし始めた。
まるで関係無いかのように言うトーイ
お姫様は静かに藁から降りる
「トーイの馬鹿ぁああ!」
その言葉と同時に近くにあった水入りの桶をトーイに投げつけ逃げるように馬屋から逃げ出したのです。
お姫様は素直にトーイに私のお婿さんになって、とは言えず、それが悔しくて悔しくて仕方がないのです。
ああ、自分はこんなにも不甲斐ない女だったのか?
この国の誰よりも強い女なのに何故トーイには素直になれないのか
ただそれが不甲斐なくて悲しくて苦しくて・・・
その気持ちが胸を締めつけていく
もうどうすればいいのか分からない
お姫様は逃げるように自分の部屋に戻りベットに倒れ込み枕を涙を濡らしました。
お姫様は泣き続けます。
悲しくて悲しくてたまらないのです。
*******
そしていつの間にか寝てしまい朝を迎えると王様から「国中の男を集め婿集めをする」と言う話をされてしまいました。
しかも決闘方式で男同士が戦い最後に残ったモノがお姫様と戦いその決闘で勝ったらそのモノがお婿さんになる、という内容でした。
お姫様は昨日の出来事が忘れず上の空のまま王様の申し出にOKをしてしまいました。
王様は手を上げて喜びすぐに御触れを出しました。
それを見た男達はこぞって応募をし始めました。
そして国中の腕自慢が集まり決闘は始まりました。
もちろん、会場には王様もお姫様もいます。
次々と決闘をして行き候補がいなくなっていきます。
こんな現状ですが、お姫様の頭にはトーイのことしかありません。
目の前で夫になるかもしれない男を見ていても胸がときめきません。
ああ、やっぱり私はトーイが好きなんだ・・・
やっぱり諦められない・・・
幼馴染の関係が終わっても構わない
そう思ったお姫様は覚悟を決め立ち上がり、準決勝が終わりフィールドにいる人物に目を向ける。
とにかく、今はこのくだらないモノを終わらせる
そして、トーイに自分の気持ちを素直に打ち明ける!
そして決闘の優勝者の前にお姫様は立ちました。
お姫様の相手はローブを深く被り顔は見えません。
「私はこの国で一番強い!貴様のように顔を隠す軟弱モノなど我が夫に相応しくない!だが、御触れの通り私は貴様と戦い敗北したあかつきには貴様の妻となり生涯を共にすると誓う!この言葉に偽りは無い!」
そう高だがに宣言すると会場も盛り上がった。
そして開始の合図が鳴り、お姫様が先に踏み込んだ
しかし相手も此処まで来た兵
簡単に避けられてしまう
此処からは一進一退・・・
どちらが勝つにしても可笑しくない状態だ。
この私と互角に渡り合うモノがいたとはっ!?
お姫様は驚きを隠せません。
だが面白い・・・
お姫様はニッ、と笑い踏み込もうとしたその瞬間、足を滑らせてしまい前に倒れてしう
短い悲鳴を耳に聞きながらお姫様は目を瞑りました。
ですが、身体に衝撃は走ってきませんでした。
恐る恐る目を開けると誰かの服が見えました。
顔を上げると対戦者が庇ってくれています。
観客は唖然とし、誰も何も言えませんでした。
お姫様はそんなことより対戦者のフードが取れそこから出た顔に目を丸くしています。
「トーイ・・・」
そう馬屋のトーイだったのです。
「なんで・・・」
トーイの顔は真っ赤になっています。
お姫様が見た事のないトーイの顔
彼は静かに口を開きました。
「姫様より、強い男なら・・・姫様の婿になれるって御触れが出て・・・」
トーイは真っ直ぐとお姫様の目を見つめた
「俺はずっと姫様の傍にいたいんです!他の男が姫様の隣にいるなんて、絶対に嫌なんです!!」
そう真っ赤にさせながら言うトーイにお姫様は目を見開き顔を真っ赤に染め上げたが、恥ずかしそうに微笑んだ
「・・・私より強い男はいたんだな・・・こんなに近くに」
そう呟くように言うとお姫様は王様に顔を向けました
「お父様!私はトーイの妻になります!」
その言葉に会場は驚きの声に包まれた
「この男は私より強い男です!だから、私はトーイと結婚します!!そして、私はずっっと、トーイと結婚したかったのです!!だって、トーイは私の初恋の相手ですから!」
そう高々に言うと会場内から拍手喝さいが鳴り響いた。
誰も何も言わない。
お姫様が本当に幸せそうだからです。
そしてお姫様はトーイに顔を向けました。
「トーイ、私もあなたが好きです。ずっとこれからもアナタだけを愛し続けます・・・」
「姫様・・・」
「姫様じゃない。コハクだ。そう呼べ。トーイは私の夫なのだからな!」
私の本当の名前・・・
トーイは顔をクシャクシャにしながら笑った
「はい!コハク!俺が一生傍にいます!!」
コハクはトーイの言葉に笑顔になり彼に抱きつきました。
「当たり前だ!この私を負かしたのだからな!!」
こうしてお転婆お姫様のお婿さんは見つかり、国はコハクとトーイの二人の手によってもっと豊かになっていったのです。
end