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LUCKY PRESENT  作者: みっち
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第六話 青い何か×闘技場×ヒーロー


結局こいつらは俺についてくることになってしまった。

だがサラ曰く


「いい?あんたは特別に私たちに付いて『こさせて』あげてるんだからね?それに町の外では私たちから絶対離れないように!あなた弱いんだからすぐ死んじゃうし」


だそうだ。

俺が依頼主だってことはもうこの際言わない方がいい気がしてきた。

また面倒なことになるに決まっている。


「こら!そこの変態!!なにか失礼なこと考えてたでしょ!?」


失礼なのはお前の全てだと言ってやりたいがここは大人の俺、我慢。


それに比べてレイナちゃんは凄くいい子だ。

サラの隣で幸せそうにアイスを食べている。

朝からアイスっていうのもどうかと思うがサラよりかはずいぶんまし。

てかレイナちゃん、ホントに俺と同い年なのか疑わしいところだよ、全く。


そういえばサラから聞いた話によるとこの世界にはいくつかのダンジョンがあり、そこにはかなりのレアアイテムが眠っているとのこと。

サラたちは何度かダンジョンに入ったことがあるらしいが全然めぼしいものは見つからなかったそうだ。

それに中ではサーチの魔法が妨害されダンジョンの構造については不明らしい。

それについては見つけ次第入ってみるとしよう。


でなんだかんだで大都市アルケディアを出発し、「ルクスム」 というならず者が多く住む町へ向かっている。

意外と近いらしく三日歩いたら着くらしい。

何が意外と近いのかさっぱり理解できんが…

まぁ今の俺なら一日かけずに着けるだろうな。

何故そんな町に行くのかと聞くと、ならず者の町だからこそ、普段は知り得ない情報を得ることが出来たりするそうだ。

妙に納得。


そういえば大都市にいたのにアイテムを得れるようなイベントには出会わなかったな。

そうだ、夜こいつらが眠ったら瞬間移動で夜のアルケディアに行ってみるか。


そんなことを考えてるうちに大分あいつらより遅れてしまっている。

走って追い付いたらサラに離れたらダメでしょ!とげんこつを食らった。

あんたの子供か?俺は…


しばらく歩いていると前方に一つの青い何かが現れた。


「スライムよ!ここは私がやるから二人は下がってて!!」


どうやらあの青い何かはスライムというらしい。

スライムと言えばドラ〇エの某キャラを思い出すが、目の前にいるあれはそんな可愛らしいものとは到底言えない。

見るからにグロい…

なんか全身から液体吐き出してるし…

その吐き出した液に当たった場所の草が腐っちゃったよ。

最近のスライムは物騒だな。


サラは飛ばしてきた溶解液らしきものを簡単に避けると剣でスライムを一刀両断した。

真っ二つになったスライムは、グショッと気持ち悪い音をたてて絶命した。

すると狼の時のようにカードになった。


そのカードをサラは拾い俺に渡す。

レア度が低いし持ってるからいらないらしい。


説明を見ると…


[『スライム』ランクG

どこにでもいるぶよぶよした何か。吐き出す溶解液は全てを腐らしてしまうが、動きが遅いので簡単に避けることが可能。]


と書いてあった。

ぶよぶよした何かっていう表現は間違いなく最適だと思う。


俺達はカードをファイルに収めると再び歩き始めた。

ずっと歩いていたら日が暮れたので野宿することにした。


「それにしてもあんた、弱いくせによく一日中歩けたわね。弱音の一つぐらい吐くと思ってたけど少し見直したわ」


やった、サラの評価が−∞から1上がったー


もうお前の評価なんてどうだっていいよ。


「それはどうも。で、ご飯はどうするの?」


「冒険者に携帯食料は付き物でしょ?それを食べなさいよ。ってまさかあんた持ってないの!?…あーあ可哀想に。三日間食事抜きね。私のを分けてあげたいけど生憎丁度三日分しか持ち合わせてないの。ごめんねー」


くっ…こいつはじめから分けるつもりないくせに…


隣で服をちょんちょんと引っ張ってるレイナちゃんを見るとどうやらパンを分けてくれようとしているようだ。


「いいんだよ、レイナちゃん。サラの言う通り俺が持ってこなかったのが悪いんだ。それにレイナちゃんのがなくなっちゃうでしょ?」


「でも…コースケ…元気がいい」


「大丈夫。三日ぐらい食べなくても平気だから」


「そーよ。レイナが分けてあげる必要なんてないわ。こいつどうせ見た目通りゴキブリ並の生命力ありそうだし大丈夫に決まってる」


くそっ…サラめ…言いたい放題言いやがって。

それにしてもレイナちゃん優しい。

この子が天使に見えてきた。


結局俺は二人の前では何も食べず、両方共寝るのを待った。

モンスターの警戒はレイナちゃんが結界を張っているから大丈夫らしい。

じゃあ俺は大都市に戻りますか。


瞬間移動で大都市アルケディアまで飛ぶとその町は昼とは違う顔を見せていた。


「すっげー…なんかここだけ夜じゃないみたいだ」


昼の様な賑やかさはないけれどもこの町は夜がないように感じさせるほどライトアップされていた。

まるで別の町に来たみたい。


「とりあえず飯だな」


俺は近くの居酒屋に入る。

中はかなり大にぎわいで人がごった返していた。

真ん中を見るとリングみたいなステージがあって二人の屈強な男が戦っている。

どうやら闘技場でもあるようだ。

周りの観客はそれを賭けの対象にしているらしく、勝負がつくと喜ぶ人もいれば悲しむ人もいた。


そして俺は奥の方のカウンターの席に座るとマスターに適当な注文をする。

俺は元の世界でもこういうところに来ることが多かった。


「マスター、盛り上がってるようだけど誰か強いのがいるのかい?」


「ああ、あそこで今やってる筋骨隆々の男がいるだろう?あいつが今十九連勝してるんだよ」


俺は食い終わるとマスターに闘技場の状況を聞く。


「へー…じゃあさ、俺があの男に勝ったらここの代金マスターの奢りにしてよ」


「バカ言え、お前みたいなひょろひょろのやつがあいつに勝てるわけがないだろう?もし勝てたなら奢りだけじゃなく10Gつけたっていいぜ?」


「おっ!マスター、その言葉忘れんなよ?」


俺はマスターににやりと笑うと席を立ちリングの方へ向かっていく。


「只今!ドロンゴ選手が十九連勝中です!!だれか挑戦者はいませんか!?」


「俺がやろう!!」


俺はリングに入るとどよめきが起こった。

それはそうだろう。

見るからに若く、おせじにも筋肉が有るとは言えないひょろひょろの奴が、身長が2mあり脳みそまで筋肉でできてそうな屈強な男に勝てるわけがない。

観客達はやじを飛ばす。


「おい!そこの坊主引っ込め!賭けにならんだろうが!!」


「ドロンゴ!身の程知らねぇ奴なんか叩き潰しちまえ!!」


「あの…本当に大丈夫でしょうか?一度始まればもう逃げられませんよ?」


レフェリーらしき人が俺に確認を取りにきた。


「ああ、もちろん。みんな!!俺は今からこのデカブツを五秒で仕留めてやる!よく見とけ!」


突然の俺の瞬殺宣言に会場が急に盛り上がった。

さしずめ俺が口だけだから叩きのめされるのを見たいというところだろう。


「おい…そこのガキ。お前ごときがこの俺様を五秒で倒すだと?ふざけやがって。逆に俺様が三秒でてめえをあの世へ送ってやるわッ!!」


対するドロンゴも大分頭にきているようだ。

一触即発の中ついにゴングが鳴る。


俺は瞬間奴の後ろへ回りこみ重心の足を刈りとる。

体勢を崩したところで真上から腹に一発の拳を降り下ろした。


ドゴオオオォォォォン!!!


轟音と共にドロンゴの身体はくの字に曲がり地面に突き刺さった。

地面は凹んでおり、ドロンゴの体の半分が埋まっている。

もちろん俺が何をしたかなんて誰にも見えてはいない。


観客やレフェリーからしてみれば開始のゴングが鳴った瞬間ドロンゴが地面に突き刺さっていたのだ。

到底理解できるものではない。


「おっちゃんカウントは!?」


レフェリーはドロンゴの状態を見るとカウントする必要もないと思ったのか手を大きく交差した。


「しょ、勝者、謎の少年!!」


レフェリーが声高々と俺の勝ちを宣言するが、誰も何も反応がない。

シーンと酒場の空間が静まり返っている。

この現状を誰も信じられないのだろう。

俺は固まった観客達を無視し、リングから降りると、マスターの所へ行く。


「ほら、勝ったからとっとと10G出して」


「あ、ああ…」


マスターも開いた口がふさがらないといった感じでレジから10G出すと俺に渡した。


俺は依然固まったままの皆を置いて店を出た。


その居酒屋にいた人たちがようやく事を理解した頃にはすでに俺はいなかったが、俺はその居酒屋で伝説となった。



…が本人はそのことを知らない。



店から出ると俺はちょっと反省した。


「ちょっとやり過ぎたかなぁ…でも死なない程度には手加減したし…そもそもサラからのストレスを発散したかっただけなんだけど…」


ぶつぶつ言いながらふと気づくと知らない路地に入っていた。

そこは表の通りとはうって変わってなんか気味の悪いところだった。


「あれ?迷子になっちゃった?うーん…どうしよう」


すると女の人の声が聞こえた。


「キャー!助けてー!!」


俺はすぐさま声のする方に向かって行った。

すると男三人が一人の女性を囲っていた。


「へっへっ。そんなに叫んでもこの裏路地じゃ誰にも聞こえねえって」


「そうそう。大人しく観念して俺たちとよろしくやろうじゃん?」


「ここでいいから早く脱ぎなよ。それとも脱がしてほしいのかぁ?」


「い、嫌っ!!」


おいおい、これは典型的お助けパターンのやつじゃん。

まぁテンプレのっかって助けちゃいますか。


「兄さん達、俺も混ぜてよ」


「なんだてめぇ?死にてえのか!?おいお前らまずこっちをぼこすぞ!!」


そう言って女の子が逃げないように一人を残し、後の二人が向かって来た。

しかし俺は何もなかったように二人の間をすり抜け女の子の隣に立った。


「逃げましょう」


そう言って俺は彼女をお姫様抱っこすると空高くジャンプし、屋根の上にあがる。

そしてそのまま表通りの噴水の所まで走った。

流石に追い付けるはずはない。


噴水に着くと彼女を下ろしてあげる。

裏路地では暗くてよく見えなかったが、今この明かりではっきりと顔が見える。

かなり美人。

美人なんだが、何というか…清楚な感じだ。

シスターさんみたいなオーラが出てる。服も白を基調としたドレスみたい。

…てかこれドレスじゃね?

パーティーかなんかだったのか…って俺には関係ねぇな。


「大丈夫でしたか?どこか怪我をしていませんか??」


「えっ…あの…」


「大丈夫なようなら俺はここで…」


少し無責任だが美人に関わっては身の危険が危ないということをレイナちゃんをもって体験済みだ。

もちろんレイナちゃんが悪いわけではない。

それをとりまく「彼女」が危険なのだ。


俺は足早と立ち去ろうとしたが「待ってください!!」という一言で足を止めた。

…あれこういうこと前にも無かったっけ?デジャブ??


「あの…名前を教えていただけませんか??」


「俺は菊地幸助。コースケでいいよ。で…君の「ミディアです!!」」


「ミディア・アルセウス・ガーネットって言います!!ミディアって呼んでください!」


うわっ!眩しい笑顔だなぁ…

これは逃れられそうにないわ…

はぁ…素直に喜んでいいのかそうでないのかもうわかんねぇや。


こうして俺はミディアと出会った。

まだまだ長い夜は終わりそうにない(面倒的な意味で)。



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