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LUCKY PRESENT  作者: みっち
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第三十話 考察×潜入×任務

始めに言っておきます。

おまけが本編です。

覚悟してください。笑


まぁ意外とそのおまけが重要だったりします。


 戦争を止めるべくして立ち上がった一組の男女と、それについて来る可愛らしい魔王が一人。

 三人は魔王城を後にして現在帝都ランブルディアの宿屋に拠点を張っている。

 いきなり乗り込まないのは幸介が城ごと滅ぼしてしまうと、ここに住んでいる人達の生活も崩壊してしまうからだ。

 どれだけ国が悪いことをしていてもそこで人達が日常を過ごしている限りそれを安易に壊すことは出来ない。

 根源を出来るだけ早く見つけ、被害を最低限にすることが民の為になる。

 しかし、今回の場合は時間が限られている。

 そこで幸介は手っ取り早くある方法を提案した。


「レインは単独で一旦城に戻って、王に帰還報告してほしい」


「何だと? ……そんなことしていいのか? フィーネと繋がっている奴の前にわざわざ殺し損ねた獲物が再度現れるなんて、殺してくれと言っているようなものだろう。それなら姿をくらまして探りを入れた方がいいのでは……」


「リスク無しで探りを入れることはまず不可能だ。そんなことをするよりかこっちの方が確実。まぁ……かなり荒療治だけど。それにレインが裏切り者がいると言っておけば、戦争よりも優先度が高いからある程度戦争を延期させることが出来るかもしれないし。もちろんフィーネ達と通じている奴はレインを目の敵にするだろうけどね。暗殺の線は薄いけど、そうしようとしてくれたら助かるな」


 レインが暗殺される可能性が少ないのは、裏切り者の疑惑が浮上した後に殺されたなら、その存在がほぼ確定してしまうからだ。

 しかし何らかの方法で干渉してくるのは確かだろう。

 もしかしたら事故に見せかけて……ということもあるかもしれない。


「助かるって…… まぁ一度死んだ身…… 覚悟を決めろということか」


「違う違う。もちろんレインには絶対怪我させないよ。ほらこの指輪をあげるから着けてみて。これでもう傷一つ付くことはないから」


 無から作り出した指輪を渡されたレインはこんな物が自分を護ってくれることが不思議で不安そうな顔色を浮かべている。

 同時にその指輪をどこに着けるかも正直迷った。がここは無難に人差し指に着けておく。


「実はミディアにも似たような物渡してるんだ。タイプは違うけど安全性については大丈夫だよ、実験済みだし」


(ミディア殿にも渡したのか……っていかんいかん。何をそんな……これではまるで私がコースケを好いているようではないか)


「どうかした?いきなり首振って」


「い、いや何でもない。それでもしフィーネ達が既に王に報告していたらどうするんだ? 私が疑われるかもしれないぞ?」


「いや、その可能性も低い。二人で先に帰っておいて仲間を見捨てて来ましたなんて言えない。レインが生きていることはばれているから、レインが帰ってくることも考えて、残ったのは二人だけですとも言えない。だから言わずに側近とやらの近くに身を隠しているってところが妥当だろう。

 あいつらは自分達の強さをレインに痛いほど知らしめたと思っているからまさか戻ってくるとは思っていない。でも万が一戻って来た時の為に言わない。まぁこれがあいつらにとって一番の安全策だろうね」


「なるほど……では私は今から行ってくればいいんだな?」


「こんな危ない仕事任せてごめん。本当は俺が行くべきだったんだけど……」


「なぁに、気にするな。これは私しか出来ない仕事だ。それに城にはもうひとつ用がある。ついでみたいなものさ」


「ありがと、じゃあ……頼んだよ。ってその指輪コンタクトの役割もしてるから。寂しくなったら連絡してね」


「なっ……! 誰が寂しくなんか……」


「冗談だよ。報告とかよろしく……ってマゥは?」


 照れたレインをよそに、いつの間にか消えていたマゥに気づいた幸介。


「さぁ……始めの方からいなかった気がするが…… しかしマゥは魔王だから気にしなくても大丈夫なんじゃないか?」


「とは言っても見た目幼児だぞ? 違う意味で危ない。探してみる。こっちは任せてレインはミディアを頼んだ」


「ああ……ではまたな」


 名残惜しそうに部屋を後にするレイン。

 レインは今から起こり得る危険に対して身を奮い立たせ、少し恐ろしさも感じているように見える。


(でもまぁ……寂しくなったらコースケに……って一体何考えてるんだ私は! 馬鹿馬鹿!! もう……コースケに会ってから調子狂わされてばっかりだ。……はぁ)


 ……見えるだけなのかもしれない。



おまけ 〜マゥの魔王な大冒険〜


 めんどくさそうな幸介達の話を察知した魔王のマゥは、早々と部屋を抜け出して初めての城下町探検へと身を乗り出していた。

 魔王城から一歩も外に出たことのない彼女にとって見るもの全てが新しい。

 お店というものも理解出来ないし、人がごった返すという状況もただただマゥを圧倒していく。

 マゥは魔族達としか遊ぶ機会がなかったのだ。


 ちなみに例の四天王達はお留守番である。

 もう一度言う、桃〇郎四天王はお留守番。


「なんかいいにおいがするー」


 するとマゥは何かの食べ物の臭いに釣られて、その臭いのする方へするするーと人ごみをすり抜けていった。


「おう!らっしゃいお嬢ちゃん!!」


 そこでは筋肉質のおっちゃんが鉄板の上でおいしい臭いの何かを炒めている。どうやら焼きそばのようだ。

 香ばしいソースの臭いが辺りに広がる。


「これおいしーの?」


「ああ、勿論だとも!お嬢ちゃん焼きそば初めてか?どうだ?いるか?」


「うん!いるー」


「お嬢ちゃん、お父ちゃんかお母ちゃんは近くにいねーのか?」


「うん、今は部屋にいるよー」


「そうか、困ったな。お金は持ってるか?」


「おかね?なにそれー?」


「持ってないのか……残念だなお嬢ちゃん。今度はお父ちゃん達連れて来て買ってもらいな。そん時はサービスしてやっから」


「えーそれ欲しいー」


「えーっと……な。お金が無いと買えないんだよ。それがルールなんだ。おっちゃんもあげたいんだけど……うーん」


 そこへ一人の少年がやってきた。


「それ僕が支払います。はい、代金です」


「お兄ちゃん買ってくれるのー?」


「良かったなお嬢ちゃん!すまねえな坊主。こっちも厳しくてよ…… ほらお嬢ちゃん焼きそばだぞ!」


「うわぁありがとう!お兄ちゃん!お兄ちゃんも一緒に食べよ!!」


「じゃああっちの公園に行こっか」


「うん!」


 かくして謎の少年に焼きそばを買ってもらったマゥは、大事そうにそれの入った入れ物を抱えて公園のベンチに腰を下ろした。


「もぐもぐ……もぐもぐ……お兄ちゃんおいしーね!これ!!」


「それは良かったね。後であのおじちゃんに言ってあげたら喜ぶと思うよ」


「うん!ありがとお兄ちゃん!もしあのままおじちゃんがくれなかったらマゥお腹が空いて町壊してたかもしれない!」


「ははは……そんなことしたらいけないよ?」

(最近の子供は恐ろしいことを口走るんだな……)


「えー?マゥはいいんだよ。だってマゥは魔王だもん!」


「へー……それは凄いんだね。じゃあとっても強いんだ?」

(たまにいたよな、ヒーロー物を見てて悪の組織の方にはまる子)


「そうだよ!でもお兄ちゃんが優しいからやめてあげるー!」


「それは嬉しいなー。ありがとね、マゥちゃん」


「うん!どういたしましてだよ!!お兄ちゃんは何をしてたのー?」


「ああ、お兄ちゃんはきっついきっつーい特訓を終えて休憩してたんだ」


「へえー!じゃあお兄ちゃんも強いんだね!」


「うーん……でもお兄ちゃんの師匠のお姉ちゃんがスッゴく強いから僕はまだまだなんだよ」


「ふーん。じゃあ特訓頑張ってね!!」


「ありがとね。マゥちゃんも頑張るんだよ」


「分かったー!じゃあねーお兄ちゃん!!」


 マゥは買ってもらった焼きそばを食べ終えるとすたすたとまたどこかへ歩いて行ってしまった。


 こうして少年――ベイクは帝国滅亡の危機を誰にも、本人にも知らないところで救ったのである。



 一方焼きそばを食べて満足なマゥは今度は武器が並ぶ店の通りを歩いていた。

 しかし武器は魔王城でもたくさん見たことがあり、たいして変わった物は無かった。

 すると――


 ドンッ


 誰かとぶつかった。

 見上げて見るとそれはどこかで見たことのある気がする少女だった。

 その彼女は自分より背の低い少女と一緒にいた。


「ちゃんと前見て歩かないと危ないわよ」


「……かわいい」


「ごめんなさいお姉ちゃん。次は気をつけるね」


「あんた、パパかママは?」


「あんたじゃないよマゥだよ。えっとねー……どっちの?」


 どうやらマゥにとって幸介達はもう親みたいなものらしい。


「え゛っ? ……どっちのって……今いるほ…う…?」

(まさか私地雷踏んじゃった?)


「今ねー、二人だけでお部屋でマゥの知らない何かしてる」


「え゛っ……」

(な、何て親なのよ! 子供がいるのにナニしてんの!? この子が可哀相過ぎるわ)


 どうやらこの少女は盛大な勘違いをしているようだ。

 仕方ない、彼女も年頃の女の子なのだから。


「だから一人で探検してたの。面白いこといっぱいあったよ」


「ねぇ、マゥちゃん。お姉ちゃんと一緒に遊ばない?」

(この子不憫過ぎるわ。親に一発ガツンと言ってあげるべきね)


「えーでも知らない人に付いていったらダメなんだって言ってたよ。でもうーん……お姉ちゃん、ママに似てるからいい人なのかも」


 マゥにとって飯を奢ってくれる人は誰であろうと知っている人……らしい。


「なら……パパかママに会わせて。もしかしたら知ってる人かもしれないわ」


 適当に言った彼女のハッタリもあながち間違いではなかったりするから恐ろしい。


「うん、じゃあ付いていったらいけないから、付いて来てね」


 そういってマゥは少女達を自分の宿屋へと案内していった。

 しかし彼女達にとってここはとても見知った場所でもあった。


「……ってここ私達の泊まってる所なんだけど。何でマゥちゃんが知ってんのよ!?」


「えー?マゥの部屋ここだよー?」


「……世界は狭い」


 マゥの案内に従い幸介達の部屋の前へ付いた。

 マゥがドアを開けるとそこには――


「あれー?誰もいなくなっちゃってる。お出かけしたのかな?」


「つくづく身勝手な親ね。まぁすぐそこだって分かったしいつでも会えるから今日は帰るねマゥちゃん。部屋に戻ろレイナ」


「じゃーねーお姉ちゃんたち」


 二人はマゥに別れを告げて自分の部屋に戻っていった。まるでお隣りさん感覚である。


 それから十数分後――


「あ、おかえりお父さん」


「どこ行ってたんだよマゥ。もし今帰ってなかったら直接心に話かけてたところ……ってお父さんじゃないから!」


 幸介は直接人の心に呼びかけることが出来るが、人の心の内を覗くようで極力使用しないと心掛けている。


「今日はいろいろ探検したんだよ!面白いものいっぱいあった!あれお母さんは?」


「良かったなーマゥ。お母さんは大事な仕事に行ったんだよ……ってレインはお母さんでもないからね!?」


「それからお隣りさんと仲良くなったんだよー」


「そうかそうか……分かったから俺の頭に乗ろうとするのはやめてくれ。大きさ的に無理だから、首折れちゃうから……はぁ」



 レイナの言った「世界は狭い」という言葉は、やはり的を得ているのかも……しれない。

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