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LUCKY PRESENT  作者: みっち
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第二十八話 目的×考察×責任

あけおめですm(._.)m


今年もよろしくお願いします(^-^)/


 アーニャを弔った幸介、レイン、マゥの三人は一度城内へ戻ると幸介の意識がない間の情報をまとめ、今後どのように行動すべきかを話し合うつもりでいた。


「もちろん今すぐにフィーネとクラインを殺すべきだ。幸介、何をためらっている!?」


 レインは裏切られたことにかなりの憤りを感じており、一刻でも早くその裏切り者に制裁を与えたがっている。


 ちなみに幸介に対して敬称が略されているのはマゥ曰く二人の間がハグハグで縮まった証拠とのこと。

 しかしレインはマゥに対しても実は同じ対応だ。


「ちょっと待ってくれレイン。一度冷静になるべきだ」


「何を、そんな……!アーニャが……仲間が殺されたのだぞ!?じっとしていられる訳がないッ!!」


 一方それに比べて幸介は冷静だった。

 彼には妙に引っ掛かることがあるのだ。

 それは、二人から殺気が微塵も感じられなかったことである。

 どんなに場数を踏んだ殺し屋であっても、殺す一瞬だけは必ず殺気が出るという。

 それなのに彼女達からは出るはずの殺気が全く無かったのだ。

 幸介はチートの能力を得てからというもの、殺気を感じること等の危機管理能力に関しては緩めることなく最大限に感じ取れるようにしていた。


 そのことが気になって仕方がない。

 そして、もしかしたら……という考えが幸介の頭をよぎった。


「レイン……一回落ち着いてくれないか。そして俺の意識が無かった時のあの二人の言動を思い出して俺に教えて欲しいんだ」


「そんなこと……どうでもいいじゃないか!マゥにでも聞いてくれ!もういいッ!私は一人でも仇を討つ!!」


 レインはカードを手にしていたが幸介は慌ててその手を掴んで止めた。


「離せっ!離してくれっ!国にも裏切られた私にもう帰る場所なんかない!!妹だって放っておいて行った私を心の中では恨んでるに決まってるんだ!コースケが私の命を大事にしてくれたのは嬉しい。だが私はもう限界なんだっ!実力差があってもせめてあいつらを道連れにしてやる!」


 精神的な怪我を負ったのは幸介だけではなかった。

 レインもすでに限界を超えていたのだ。

 気が動転しており、冷静な判断など出来るはずもない。

 自分の心はずたずたで残った気持ちは復讐心のみ。


 今ここで気持ちが爆発したのは、アーニャを弔ったことで彼女の死をはっきりと受け入れなければならなくなったから。

 さらにそのことが負の連鎖を作り出してしまう。

 妹のことであり国のことであり、と様々なことが一度にのしかかってくることにより一種の混乱状態に陥ったのだ。


 そんな混乱状態のレインを幸介が押さえつけ叫んだ。


「お前に何も残っていないわけがないだろ!!お前は、レインは、俺が苦しんでる時親身になってくれた。今度は俺がお前の居場所になる番だ。たとえお前が国や妹に拒絶されたとしても、俺だけはお前の帰る場所になってやる。

 だから……な?そんなに泣くなよ。レインはいっつも仏頂面だけど、笑ったら誰にも負けないくらい可愛いの俺知ってるからさ」


 優しく微笑みかける幸介。

 二人の顔の間は20cmくらいしかない。

 レインは慌てて自分を押さえていた幸介と距離を取り、目元を腕で拭う。

 しかし先程までのような鬼気迫る雰囲気は無くなっていた。


「な、泣いてなんかおらんぞっ!それにコースケ、お前は馬鹿だ!!私なんかが、か、か……かわいい…などと明白なお世辞を言いよって!!その手にはのらんからな!…………でも、その……居場所になるって言ってくれたのは嬉しかった。ありがとう…コースケ」


「ん?最後の方なんて言ったんだ?声小さかったから聞き取れ無かっ……ブヘッ!」


「……何でもないわ!ばかものっ!!」


 バシッと軽く殴られた幸介。

 何故殴られたのか微塵も理解出来ない様子。


「な、なんで……」

(この姉妹は人を殴る癖があるのか……?)


 姉妹揃ってツンデレだった。


「ねぇねぇ、お父さんとお母さん?」


「「誰がお母(父)さんだ!!」」


 暇を弄んでいたマゥのタイミングを謀っていたかのようなボケにより、ようやく話が元に戻りそうだ。

 いや、案外ボケではないのかもしれない。


「……ごほんっ!で、何を話せばいいんだコースケ?」


「あ、ああ……えっと、俺が倒れていた間にフィーネやクラインが何て言ってたか教えて欲しい」


 すっかりレインが協力的になったので少し幸介は驚いていた。


「あいつらは……確か計画が変更とかなんとか言ってた気がする。とは言っても恥ずかしい話、恐怖であんまり覚えてないのだ。役にたてなくてすまない」


「『計画』か……確かレインも含めて全員帝国の方から派遣されたんだよな?」


「ああ、そうだが……」


「だとしたら元々帝国が仕組んだと考えるのが普通なんだけど……そしたら色々とおかしなことが出てこないか??」


「どういうことだ?分かりやすく言ってくれ」


「一つ目にわざわざ勇者が王に謁見する形で立入禁止区域を広げたこと。レイン達を欺く為かもしれないがそんなこと最初から勝手に王がすればいいことじゃないか。それに広げる理由としたらその『計画』に邪魔者を入れない為に広げたんだろ。王には関係のないあいつらが独断でやったと考えられないか?」


 幸介は初めて聞いたときから不審に思っていた。

 帝国側からして区域を広げることがメリットにはなりにくいのではないかと。

 安全な場所まで立入禁止にしてしまっても単に勇者達が誰とも会いにくくなるだけ。

 そんなことを王が好んでする必要がない。

 すなわちそれは勇者の判断で行われたということになる。


「私はその謁見の場にいたが、特に不思議に思わなかった……より安全だからとフィーネは言っていたが、言われてみれば全く無意味だったな」


「次は魔王による実際の被害が王の言っていることと矛盾していること。被害がないなら王は討伐の命令を出す必要がないと思う。それにあの城の周りには魔物がうじゃうじゃしてるから、手に入れても使い道なさそうだし……考えられることとしたら他に魔王を倒す必要のある誰かが王に吹き込んだということかな。それに王はプレイヤーではないよ。何故なら魔王を倒した時のカードは自分のものにしてよいと言っているからね」


 レインの話によれば、国王は魔王が悪い奴だからという適当な理由で倒してこいと言われたらしい。

 しかし実際に行ってみると被害など皆無だった。

 それは魔王自身が言ったことだが自分達は魔王に襲われていないし、むしろ助けてもらったところから考えると魔王の発言は十分信用に値するだろう。


 単に領土を広げようにも魔物が周りにたくさんいるような場所を得ても役に立つ訳がない。

 この点からも国としてのメリットはないと考えられる。


 そして幸介は念のためにある確認をマゥにとった。


「マゥはこの辺の魔物達を統括してるの?」


「ううん、マゥは関係ないよ。逆にここら辺に魔物がいっぱいいるからパパがここに城を建てたんだよ」


 マゥから聞いて分かるように、魔王が魔物達を統べている訳ではない。

 よってこの土地の価値はほぼ皆無と言っても良い。

 国王がもし魔王を倒せば魔物も消えると考えていたとしても、その考えに確実性はなく、そんなギャンブル性の高いことをするとも考えにくい。


 可能性があるとしたらレアカードを手に入れれるというところだが、それも国はいらないと言っておりむしろ報酬にカードをやると言っている辺り、帝国はカードに興味はなさそうだ。


 そうすると帝国は本気で被害が出ていると考えているのかもしれない……

 もしくは国王が操られている可能性も……


「そして最後……これが一番厄介なんだが、ミディアが誘拐されたということだ。あいつは今帝国に閉じ込められている。これは間違いない。問題は……「ちょっと待ってくれ!!」」


 幸介からとんでもないことを聞いたレインは話を途中で遮った。


「ど、どういうことだ!?帝国がミディア殿を監禁している意味が分からない。そもそもどうしてコースケがそれを知ってるんだ!?」


 レインの疑問も当然と言えば当然だろう。

 ミディアが消えたのは途中に寄った町であるが、どこに消えたかも誘拐であるかさえも分からなかったはずだ。

 さらにたとえ帝国に監禁されていたとしてもその理由がレインには全く見当もつかなかった。


「何故知ってるかというとまぁ……あの時渡したお守りが居場所を教えてくれてるからとしか言えないんだけど……理由は……口止めされてるけどレインには言うよ。

 ミディアは……実はアルセウス国王の三人目の娘なんだ」


「――――!?」


 レインはあまりに驚き過ぎて言葉が出ないようだ。

 一方マゥにはなんの話かさっぱりという面持ちで首を傾げている。


「馬鹿なっ!?アルセウス国王は確か二人しか子供はいなかったはず。そんな話信じれるかっ!!」


「確かにアルセウス王妃は二人しか子を産んでいない。しかしミディアは国王に拾われた後養子として王の子供になったんだよ。もちろんそれはトップシークレットだから他国でも最上層部ぐらいしか知らないはずなんだけどね」


「そんな……王が拾い子を王家の一人にしてしまうなんて話聞いたこともない……」


「まぁそのことは置いといて、俺も最初は何故ケンプティア帝国がミディアをさらうようなことをしたのか分からなかった。そんなことをしたら国際問題に発展してしまうからね。けど……二人が『計画』と言っていたのを聞いて何か嫌な予感がする。

 もしかしたらあの二人は独断で裏切った訳ではなく、ミディアを知っているような帝国の重役と繋がっているんじゃないかって……もしそうなら……」


「もしそうなら……?」


 ごくん、とレインは生唾を飲み込んだ。


「近いうちに奴らは戦争を起こす気だ。それがあいつらの『計画』かどうかは分からないけど、そう考えるとつじつまが合う部分がある。俺達の同行を許可したのもミディアに気づいていたから。恐らくフィーネはミディアを知っている誰かと通信していたんだろう。さらったのは勇者達以外の帝国側の人間。首謀者は王ではなくその側近で、王を裏から操っていると考えれる。戦争をする理由までは分からない」


「……そんな冷静に言ってる場合ではないだろうっ!!早く止めにいかなければ!」


 一国の姫が他国に捕らえられることが戦争の火種にならない訳がない。

 しかし本当に戦争になるのだろうか……

 姫を捕らえている側としては、それを外交のカードとして使うことが出来るわけだ。

 戦争という形式をとる必要もなく、ケンプティア帝国はアルセウス王国を支配出来るのではないだろうか。


 しかし幸介はレインから冷静に見られているが、実は誰よりも取り乱しており真っ先に戦争を考える理由があった。

 それはもしかしたら幸介のせいでアルセウス王国を戦争に巻き込み、関係ない人達を殺してしまうことになるからだ。


 戦争の火種のミディアを傷一つ無しに助け出すことは容易だが、戦争が始まってしまえば助けたところで戦争を止めることは出来ず、たくさんの人達が死んでしまう。

 そうなると、間接的にでも幸介のせいである。

 そんなことでたくさんの命を奪う訳にはいかない。

 幸介の頭の中ではそんな最悪の事態が起こってしまってはまずいということだけがぐるぐる駆け巡っていた。

 よって冷静な判断力を欠かしているのだ。


 しかしそれが逆に功を奏することとなる。



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