第二十二話 魔王城×四天王×ウ〇コ
えーっと……タイトルからして分かると思いますがシリアス要素0です。
完璧にコメディなので心してかかってください。笑
ようやく魔王城に着いた五人。
魔王城と言うだけあってかなりまがまがしい雰囲気が漂っている。
「ここが魔王城ですか……皆さん!油断しないように慎重に行きましょう」
勇者フィーネの言葉に皆が一様にして生唾を飲み込んだ。
ここからは何が起こるか分からない。
強力なモンスターが現れたり、卑劣な罠が待ち受けているに違いない。とみんなが表情を強張らせ、何が起こってもいいように構えている。
そして勇者が先頭になって城門の内側へと一歩ずつ踏み入れるとそこに看板があった。
全員が入り込むとアーニャが読む。
「ふむふむ……[魔王城へようこそ☆魔王は最上階でみんなを待ってるよ♪※注意→には罠があるかもっ!]……だってさ。意外と魔王さんもフレンドリーなのねー」
「「「「……………」」」」
誰もが黙り込んだ。
意外と魔王さんは友好的なのかもしれない。
「……そもそもさ、魔王の被害者って誰なのよ?」
「「「「……………」」」」
幸介の質問にも黙り込んでしまった。
いよいよ魔王に本当は良い奴疑惑が浮上してくる。
「確かに、魔王は悪い奴だから討伐してこいとしか王様には言われなかったな……よく考えたら固定観念として魔王と言えば悪者だと決め付けていたのかもしれん」
レインはこれは盲点だったと呟く。
誰か気付けよと幸介は心の中でつっこんだ。
フィーネにいたっては「私の存在意義はいったい……」と頭を抱え始める始末。
「取り合えず先へ進んでみましょう」
クラインの提案に一同が賛成し、いざ恐怖?の魔王城へ。
「……外から見ると怖かったんだけどね」
まさしく幸介の言うとおりだった。
外から見ると烏が飛び交い、草木は枯れ果てとても人が住んでいる気配など無いような様子だったのに対し、
「ここはテーマパークの一種なのか?」
「楽しそうで私はいいと思うんだけどねー」
レインやアーニャの言葉通り中はピンクを基調にした一面で、ピカピカのシャンデリアが眩しすぎるほど辺りを照らし、壁には丸っこい平仮名で所々落書きが施されている。
これには勇者一行の覚悟は違うベクトルから打ち砕かれた。
かと言ってそこにいつまでも留まる訳には行かないので先に進む。
そして進んで行くと確かにいくつかの罠が仕掛けられていた。
しかし必ずその前には何故か看板があり、罠に注意と書かれてあったので一行はやすやす回避することに成功。
しばらく一本道を進むと大きな扉が待ち構えていた。
「ここを通らないと先には進めないようですね。皆さん戦闘の準備をお願いします」
フィーネに従い武器を手にする各々。
しかしみんなすでに嫌な予感はしていた。
……違った意味で。
フィーネがバンッと勢いよく扉を開けるとそこには一人の男がいた。
その男は大柄でいかつく、どうみても顔で判断するとハードボイルドが似合いそうな男だった。
「ようやく来たな勇者よ。俺は魔王四天王の一人、暴犬のポチだわんっ!!」
……ただ一つ、頭に装着した犬みみカチューシャを除いて。
「…………ふぅ、何もなくて良かったなフィーネ」
「はいっ!今回は何も無かったですけど皆さんこれからも警戒を怠らないで下さいっ!」
勇者達は素通りした。
「こらっ待つんだわんっ!!俺をいなかったことにするんじゃないわんっ!!俺を倒さない限り先には進めないわんっ!!」
「ちっ、そういうことは先に言えよな……」
「あー…朝のミサよりめんどうですね」
「全くこれだから雑魚は……」
「お姉さんにちょっかい出し過ぎないでねー?」
「私の剣の錆になってもらおうか」
「こ、怖いわん……」
勇者達はどす黒い殺気を撒き散らしている。
勇者に有り得ない黒さだ。
そしてクラインは本当に神に仕えているのだろうか。
そんな疑問が立ち込めるなか、今四天王の一人と勝負が始まろうとしている。
――――――――――
「ま、参りましたわん……」
言うまでもないが結果は勇者達の圧勝。
それはそれは言葉に出来ないほど、集団で輪になって殴る蹴るのえげつないリンチ。
ポチの顔が原形を留めていないのだから恐ろしい。
これが勇者のすることではないと誰もが思うだろう。
「あのさ、聞くのもばかばかしいけどお前みたいのが後三人もいんの?」
「ふっ、嘗めてもらっては困るわん。後の三人は俺よりも戦闘力は上だぜ…だわんっ!」
「お前今言い直しただろ?」
「だって犬言葉じゃないとダメだって魔王様が……」
「魔王さんって一体どんな人なの〜?」
「とっても偉大だわんっ!」
「ちっ、話になりませんね。おらっ!」
「きゃんっ!!」
勇者はボロボロのポチを蹴り飛ばした。
「ちょっ、勇者様!」
「あっ、すいませんポチさん。お怪我は?そんな…ッ!一体誰がこんな酷いことを……」
「「「「「……………」」」」」
もはやここまでくると芸術の域である。
「ずっと思ってたんですが、何故わざわざ罠の前に知らせる看板を立てたのですか?あれでは罠が丸分かりでは……」
クラインは道にあった数々の罠を知らせる看板についてポチに訪ねた。
ポチはその質問に得意げに答える。
「お前らそんなこともわかんないのかわん?そんなの魔王様が毎回罠に引っ掛かってるからに決まってるわんっ!!」
「「「「「……………」」」」」
一同はいよいよそれは本当に魔王であるのかどうかについて疑問を持ちはじめた。
そしてこの駄犬の犬言葉にもそろそろ限界があると悟った。
「じゃあな、糞犬。もう会わないことを願うよ」
「それはこっちのセリフだわん……」
幸介達はポチを縛りあげ、二階へと向かった。
ちなみに二階へ上がるとポチのカードを手に入れた。
[暴犬のポチ ランクE
魔王四天王の一人。圧倒的嗅覚で相手の位置を探る。屁に弱い]
障害物のないあのフィールドでは探るも何もない。
そして二階でも罠を教えてくれる親切設計の看板によって難なく突破し勇者隊は次なる扉の前に立った。
「今度こそ、戦闘準備を整えて行きましょう!」
勇者フィーネが今度は恐る恐る扉を開ける。
あんな出落ちはもうごめんのようだ。
そして幸介はもう何があってもつっこまないと決めた。
「ここはやけに高さがあるな……」
レインが感じた通りこの間は10m程度の高さがあった。
そしてそこに現れたのは……
「暴犬のポチを倒すとはなかなかやるコケね。今度はこの自分、燃鳥のキジ丸が相手だコケッ!!」
「「「「「……………」」」」」
どうやら焼き鳥にされたいらしい。
一同はつっこみを通り越した新しい感情に出会い、どう表現すれば良いか困っている。
「だ、だがしかし、鳥みたいにと、飛ばれたらや、厄介なんだな……私達け、剣を使う者としてはと、届かないのだから」
目に見えるほどレインは動揺していた。というより笑いを堪えている。
堪え過ぎて裸の大将みたいな喋り方になってしまっているようだ。
そもそも何故キジと主張しているのに語尾がニワトリなのか、そこには誰もつっこめない。
そしてキジ丸は手作り感溢れるくちばしと翼を着用している。
「フッ、今頃自分の恐ろしさに気づいても遅いコケッ!!」
キジ丸は何と上空を飛び回り始めた。
これには流石の勇者も驚く。
「そっ、そんな!あれでは剣が届きません!!」
「お姉さんに任せなさいっ!!」
アーニャは得意の魔法を行使するべく呪文を唱え始めた。
しかしそれを見たキジ丸がアーニャに特攻を仕掛ける。
「喰らうコケッ!フライングバード!!」
急降下してアーニャに襲い掛かるキジ丸、のくちばしだけ。
レインは慌ててアーニャの前に立ち、剣で飛んで来るくちばしを防いだ。
剣に当たるとくちばしはへちゃげてしまう。
どうやら紙で出来ているらしい。
レインは咄嗟に防いだことを恥ずかしく思った。
「何だとっ!自分のフライングアタックが防がれるなんてコケッ!!」
もはや技名が変わってしまった。
どこまでこの糞鳥はばかにしているのだろうか、と一同は苛立ち始める。
そしてキジ丸はさりげなく新しいくちばしを懐から取り出して装着した。
「みんな下がって!行くわよんっ、ファイヤーバードッ!!」
アーニャによって鳥をかたどった炎が現れ、一気にキジ丸に向かって突撃する。
ドーーンッ!!!!
ファイヤーバードは見事にキジ丸に直撃し、キジ丸はパタッと力無く墜落した。
文字通り焼き鳥になったキジ丸にかける言葉は無く、勇者達は三階に上がった。
そこで今度はキジ丸のカードを手に入れた。
[燃鳥のキジ丸 ランクD
魔王四天王の一人。空を飛び回り剣が届かない所からの攻撃が得意。ただし、攻撃力は皆無]
もう段々飽きて来たのか勇者達は言葉を交わさず淡々と罠をかい潜り、扉の前に着く。
「今回はちゃんとした相手だと良いですね……」
フィーネは半ば呆れ顔で力無く扉を開けた。
中は草木が生い茂る一面のジャングルだった。
「なんでしょうか、ここは?」
「またろくでもないのが出てくるのは止めてほしい」
「もうそろそろちゃんとした壁に当たりたいものですね」
上からクライン、レイン、フィーネだが三人とも心なしかやる気がなさそうに見える。
そして今度は猿らしき姿が現れた。
「ウキーッ!!ウキッ!ウキッ!」
「今度の相手はエテ公かよ。で、あんたの名前は?」
「ウキキキーッ!キキッ!」
勇者達は言葉の壁にぶち当たった。
「ウッキー!!」
すると猿は突然勇者達の目の前から消え、ジャングルを自由自在に駆け回り始める。
「なるほど、今度こそ強敵だな」
レインの読みでは、こう簡単に素早く木と木を渡られるとなると捕らえるのは難しいと考える。
その中で攻撃を仕掛けれるので地の利は完全に向こうにあると言えるだろう。
「どうやって戦いましょう…」
フィーネがみんなの方を振り向く。
「勇者様、危ないっ!!」
「えっ?……ああんっ!」
振り向いた瞬間猿がフィーネの後ろに立ち、素早く優しくそして情熱的に胸を揉んだ。
フィーネは驚き剣を振るうがもう猿はフィーネの側から消えていた。
「おのれ…勇者様の胸を揉むとは許さんぞ猿め」
「それに、あの猿はかなりのテクニシャンと見たわよ」
フィーネはかなり恥ずかしそうだ。
「女は危ないっ!ここは俺が行くっ!!」
幸介が一歩前へ出て猿の気配を探る。
「そこだっ!」
猿を見つけるも…
「キキッ!!」
「うわっ!きたねっ!!あのエテ公うんこ投げて来やがった!!」
もちろん幸介は全てかわす。
しかしこの攻撃はフィーネに間接的に大ダメージを与えることになった。
「そ、そんな…ウ〇コ触った手で私の胸を……」
※いい年した少女にうんこと言わせる訳にはいきません。
――――――――――
「手こずらせよって…」
30分もの激闘を制し見事エロ猿を仕留めあげた勇者達。
辺りにうんこの臭いが立ち込めるのは仕様だ。
猿は取り合えずタコ殴りにして縄できつく縛り上げてそこら辺に捨てておいた。
なんとも勇者とは思えない悪臭を放ちながら先へ四階へ上がる一行。
すると階段の途中でシャワールームを発見した。
勇者達はすぐに飛びつき中に入る。
彼女等にとって今回の一番のお宝だと言えるだろう。
すっきりさっぱりしたところで猿のカードを手に入れた。
[痴漢のモンキー ランクD
美女のおっぱいが大好きな贅沢な変態猿。魔王四天王の一匹。しかし男にはウンコを投げつけてくる。女性の下着を置いておけば簡単に釣れる]
幸介以外は手に入れた瞬間カードを破り捨てた。
相当なトラウマになったのだろう。
カードを破り捨てるときの女性陣の憎悪こもった顔は幸介のトラウマにもなりかけた。
四階も簡単にクリアしていよいよ四天王の最後の一人が待ち構える部屋の前に一行は到着した。
一体どんなふざけた相手なのだろうか……
この小説どこへ向かって行くんだろう……
次は多少は真面目な話になる予定です。
既にお気づきだと思いますが第二部では幸介編とサラ編交互に組んでます。
ちょっと話が分からなくなるかも知れません。
その辺気をつけて読んでいただければと思います。




