第二十一話 狂気×牢獄×助っ人
意外と早く書けました。
サラが怖い……
んでもって新キャラ登場ですっ!!
――――side Sara
アルケディアとケンプティアとの国境を抜けたサラとレイナは今ルクスムの東の町、オリジンに来ている。
国境とは言っても明確に決まっているわけでも関所があるわけでもない。
かと言って決まっていないわけでもなくただ単に曖昧で適当なだけなのだ。
何故ならこの辺りはモンスターが数多く生息しており、たとえ正確に国境を定めたとしてもモンスターがいるので人が近寄りづらいし、政治的にも経済的にも意味をなさないと判断されているから。
もちろんしっかりと定めるべきだと主張した人達もいるが、隣国との関係もかなり良好で優先すべき点ではないということになった。
密偵を防ぐ為にも関所は必要だという意見も、町の入口に関門を付ければ良いという適当さ。
しかし結局今まで何も起こっていない……
オリジンで宿をとった二人は部屋で今後の予定を決めることにした。
「ねぇレイナ?近くの町に来たのはいいけどコースケをどうやって探せばいいのかしら。がむしゃらに道行く人に尋ねても手間がかかるし効率が悪いわ。何か一気に探せる方法ない?」
レイナはうーんと首を捻るが何も出てこない。
「そういえば…サラ…お姉さんは…?
「お姉ちゃん?今も地道に探してるわよ?確かに最初はお姉ちゃんを追ってこの世界に来たけど今はコースケが先。お姉ちゃんはこの世界で絶対に生きてる。妹の勘ってやつかしら。もしかしたらもうすでに元の世界に帰ってるかもしれないわ」
それから三十分経つが二人ともお手上げだったので、取り合えず町で地道に情報を集めることにした。
「やっぱり情報と言えば酒場ね。レイナ行こっ」
レイナは頷いて二人で酒場に入った。
昼間なのに賑わっている。みんなやることがないのだろうか。
サラとレイナという美少女が入ってきたからか、男達の視線をくぎ付けにする。
二人は適当な席に座るとサラが近くの男達に話かけた。
「ねぇお兄さん達。最近黒髪のぼさぼさ少年と、緑の髪のかわいい女の子の二人組見てない?」
「いきなり言われてもわかんねーなぁ。そんなのそこら辺にたくさんいそうだし。あー、でも君達が僕等と遊んでくれるなら思い出せるかも…」
男の仲間達がニヤニヤしてサラ達を見る。
サラは吐きそうになるのを堪えて言った。
「少しなら遊んであげても良いわよ?私達を双刃の姫君と知ってるならね」
「へっ、お前らは偽物だよ。何故なら片方は兜で常に顔を隠してるらしいしねぇ。じゃあ遊んでくれるんでしょ?行こっか」
男の手がサラの手を取ろうと触れた瞬間その男の腕と血飛沫が宙を舞っていた。
「なっ……いってええぇーーッ!!!!」
「汚らわしい手で触るなッ!!!!だから言ったでしょ?遊んであげるって。次触れば遊びで命がとぶわよ??」
あまりの突然の出来事にあれだけ騒がしかった酒場がピタッと静かになった。
腕を切られた男の断末魔のような叫び声だけが店の中に響く。
仲間達はサラそっちのけで男を連れて病院に運んで行った。
「サラ…やり過ぎ…それに…手袋忘れてる…」
サラは男性に素肌を触れられると禁断症状が出てしまい無意識で剣を抜いてしまう。
その為たいていは素肌を隠しているのだが今は着けるのを忘れていたらしい。
忘れただけで切られた男があまりに可哀相だ。
「さっきの男には悪いことしたわ…でも先に吹っかけて来たのは向こう。いきなり触ってくるんだもの。男に肌触られたら私無意識でやっちゃうのよね……」
すっかり恐怖色に染まった店内には既に店員以外誰もいなくなっていた。
「これじゃ私は『双刃』じゃなくて『暴君の姫君』ね。レイナの評判も下げちゃったわ。ごめんなさい」
レイナはふるふると首を横に振る。
「サラ…そうなるのも…仕方ない…でも…むやみに切るのも…よくない…」
「そうよね…どうすれば治るのかしら……マスター。客追い出してしまった分、私から払うわ」
サラはファイルから幸介からぶん取った金全てをマスターに渡した。
「ごめんね、レイナ。また空になっちゃった…マスター、ここらででっかく稼げるのないかしら?」
「あ、ああ…そ、そういえば最近帝国が傭兵を集めてるって噂だよ」
「じゃあ早速帝国に行こうかな。……もしかしたらチャンスかもッ!?王様に呼びかけてもらえば案外コースケが早く見つかるかもしれないわっ!!でもレイナはどうする?お金は私のせいだから一人で申し込むつもりだけど…それまで暇つぶせる?」
レイナはまたしても首を横に振った。
「私達は…二人で双刃…私も…行く…」
「レイナ……ほんとにごめんね。私、自分勝手で…」
サラは申し訳なさそうに俯く。
「サラ…私より年下…それに…妹弟子…もっと甘えても…いいんだよ…?」
レイナはぽんとサラの頭に手を乗せる。
兜を取ったサラの頭はいつもよりとても小さく感じた。
サラはレイナを引っ張っていき、レイナはそんなサラの裏側を支える。
お互いがお互いを補って二人はここまでやってこれたのだろう。
二人の絆はそう簡単に崩れるものではない。
そんな二人を店の外から見つめる影があった。
「なるほど…あいつらは傭兵に参加するのか。腕を斬られたあいつの為にもこの借りは返さないとな。ひひっ、ついでに俺達をこけにした分も……」
薄ら笑いを浮かべる男は片腕の無い仲間の元に帰って行った。
――――change side Midia
ミディアは気が付くと薄暗い牢獄のような所に監禁されていた。
「ここ何処でしょう……?何で私は閉じ込め…あっ!コースケ様はッ!?」
辺りを探しても何も見つからない。
すると鉄の檻の外からカツンカツンと足音が聞こえてきた。
「だ、誰っ!?」
「ようやくお目覚めですか、ミディア姫。いやはや囚われのお姫様というのも風情がある」
「あなたは……!私をここから出してくださいッ!!」
やってきたのはミディアを眠らせたスーツ姿の男だった。
ミディアの檻の前に立ち止まると男は腕を組んで不思議そうに話す。
「何故かあなたには手荒な真似が通用しなくて困りましたよ。投げ込もうと思ったら体が上手く動かなくなりましてね。ゆっくりと降ろさないとだめなようでした。どうやらあなたには不思議な力がおありのご様子。私に教えていただけませんか?」
(そんな力、私には無いはず。一体何が…)
「なるほど。ご自分でもよく分かっていないようですね。まぁいいでしょう。私はもともとあなたに危害を加えるつもりはありませんから」
「だったら何故私を連れて来たのです?そもそもどうして私がアルセウス王国のものだと分かったのですか?私の事は王家と高位の貴族しか知らないはずなのに……それに…一体ここは…」
「一度にそんなに多くの質問をされても困りますねぇ。あなたをここケンプティア帝国の城内の地下牢に連れて来たのはあなたに仕事をしてもらう為ですよ」
「ここがケンプティア?それに仕事って何ですか?」
「ここが何処か聞いて内容が分からないなんて、意外と物分かりはよろしくないご様子ですね。心配しなくてもあなたはここにいるだけで立派に仕事をすることになりますよ」
「ここから出してはくれませんか?」
「それはいただけない願いですね。ここから出して逃げられては連れて来た意味がないでしょう。それでも出たいと言うなら、そのあなたの右手に握っているものを私に渡してくれたら考えてあげてもいいですよ?」
ミディアは自分の右手を見るとそこには幸介がくれたお守りがあった。
無意識に握り続けていたようだ。
「どんなに力入れてもそれをずっと握ったまま離そうとしないのでね、私としては大変気になるのですよ」
「これは……コースケ様がくれたお守りッ!まさかこれが私を……?」
「……なるほど、それがあなたの不思議な力の原因ですね。それをほんの少し私に見せてくれたらここから出してあげましょう」
「ほんの少し…ですか?見たら私にちゃんと返してここから出してくれます?」
男はにっこりと微笑み頷く。
「なら……」
――あかんっ!嬢ちゃんそれをあの男に渡したらあかんでッ!!――
(えっ!?今声が……)
突然聞こえてきた声に反応してミディアは渡そうとした右手を止める。
「どうしたのですか?私はあまり気が長い方ではありませんよ?」
男には声は聞こえていないらしい。
――絶対に渡したらダメやっ!渡したらコースケの旦那に会えんくなるでぇッ!!――
(コースケ様に……?声はどこからでしょうか……)
――自分の右手のお守りやッ!――
どうやらお守りがミディアに渡すなと訴えかけているようだ。
端から見ればとても信じるに信じれない話。
しかしミディアは幸介からもらったお守りを信じることにした。
途端男のにこやかな表情ががらりと変わり、冷徹な顔になる。
「そうですか…それは残念ですね。あなたはここを出る機会を失った」
男の言葉に泣きそうになるミディア。
――嬢ちゃん!旦那を信じるんやッ!必ず助けに来るはずやでっ!!――
(お守りの言うとおり旦那様であるコースケ様なら絶対に私を助けてくれる。私はコースケ様を信じてるもの)
何故か関西弁?で話すお守りに元気づけられ、希望を取り戻すミディア。
毎度の如く「旦那」の意味を勘違いするのもご愛嬌だ。
実は幸介はそのお守りに期待していたりする。
――せやっ!嬢ちゃん、お守りを開けてみぃッ!!――
お守りが自分のことをお守りと言うのもおかしな話だがミディアは言われた通り紐を解き開いた。
ボンッ!!!!
すると中から玉手箱のように音と煙が出てきた。
ミディアと男はたまらずむせる。
そして煙には巨大な鳥の姿のシルエットが浮かんだ。
「誰ですッ!?」
突然の第三者に男が思わず声をあげた。
ミディアはまだ少しむせている。
「わいか?わいはなぁ、不死鳥やぁッ!!」
「な、何だと……ッ!伝説の不死鳥フェニックスッ!?」
そして徐々に煙が晴れていく……
「わいをあんなもんと一緒にすんな!わいは伝説の不死鳥『フェニックシュ』やッ!!!!」
「な…なんだ……と?」
何と出てきたのは普通のひよこだった。
巨大なシルエットは光の当て方で大きく見えていただけだったのだ。
そしてミディアは現実から逃げたくなった。
――――side end
謎の自称関西弁につきましてはおかしなところばかりの可能性大です。
決して関西弁をばかにしているわけではありません。
どうか寛大なる心で新しい言語だと認識してもらえれば嬉しいです。
気を悪くした方もいらっしゃると思いますのでここでお詫びさせていただきますm(._.)m
そして出来ればアドバイス等いただけたらと思います。
みっち