第十二話 師匠×秘密×一回戦
結局宿では妙な空気が漂ってしまい必要以上の会話は無かった。
サラにしてはつっかかってこなかったのが珍しい。
「さっ!いよいよ大事な本選!!コースケ!今日はしっかり応援しなさいよ!!」
すっかりいつもの鎧を着用し、意気揚々と会場に向かう俺達。
俺とミディアも本選へ出場するので、着たくもないコスチュームをドラえもんの四次元ポケットのような俺が作り出した空間へ入れておいた。
会場へ着くと、サラとレイナちゃんが誰か知り合いらしき人達を見つけたらしく一目散に駆け寄っていた。
「師匠!ハイトさん!おはようございます!」
師匠とハイトさんと呼ばれる人に元気よくサラがあいさつをし、レイナちゃんはペコリとお辞儀をした。
「おう!今日は互いにライバル同士でもある。あたったときに恨むなよ?」
「僕達も今日の本選は気が抜けないようだしね」
筋骨隆々の男とスラッとして物腰が柔らかそうな男がそう答えた。
見た感じ筋肉ムキムキなのがサラの師匠だろう。
もう一人の男がハイトさんか。
俺とミディアも遅れてサラとレイナちゃんとその師匠達がいる所へ近づいて行く。
するとサラの師匠らしき人が俺達に気づいた。
「ん?この二人は誰だ?サラ、お前の知り合いか?」
「あっ、はい!私達が護衛している人達です。コースケ、ミディア、この人が私達の師匠のディモンさん。そして今レイナと話しているのがもう一人の師匠のハイトさんよ。」
サラが軽く二人の紹介をしてくれたので俺達も自己紹介をした。
「俺はコースケって言います」
「ミディアです。よろしくお願いします」
「ほう…サラが護衛をね…俺はこいつらの師匠をしてたディモンだ。よろしくな。そしてこっちのひょろ長いのが相棒のハイト。
…ところで坊主。お前の『それ』一体どこで手に入れた?」
ディモンさんは会ってすぐ俺の首にかけている『真実のルビー』に目をやり問いかけてきた。
(ヤバいな。こればれたら奪いに来る可能性だって有り得る。追及された時に本当のことを言うべきか否か…)
数秒悩んだ後ある程度被せて言うことにした。
「……これはリースの村の村長から貰い受けました」
途端ディモンさんの表情が変わる。
「ということは坊主。お前の持ってる『それ』は『真実のルビー』だな?」
ディモンさんは真っすぐ俺の目を見て聞いた。
俺はあまりの威圧感にちらっと目を逸らすととても驚いてるサラが視界に入りちょっと面白かった。
「はい、そうですけど…」
「ちょっとコースケあんた!なんで私達にそれを「サラは黙っていろ」ですが師匠…」
サラが怒るのをすかさずディモンさんが抑える。
そしてそれに…と付け加えて言った。
「サラが気づかなかったのが悪い」
「でもこんな奴がそんなお宝持ってるなんて思わなかったし…」
「そんなことはどうでもいい。おい小僧。お前は情報が多い人間と少ない人間どちらが有利だと思う?」
いきなりの質問に驚いたが丁寧に答えておく。
「それはもちろん多い方が有利に…それがどうしたんですか?」
「情報は多いほど有利だ。情報があれば欲しいものも手に入りやすく、貴重な情報は金にもなる。だがしかし…」
ディモンさんは話すのを中断し俺の持ってる赤い宝石を少しの間見つめると再び話し始めた。
「そのアイテムだけは情報を得てはいけないただ一つのアイテムなんだ。だから俺には自ら手に入れることはもう不可能。」
いつの間にか二人で話していたレイナちゃんとハイトさんが俺達の話を聞いていた。
俺も含めてハイトさん以外は頭にはてなを浮かべる。
知ってはいけない情報というのもいまいちピンとこない。
「何で知ってはいけないの?」
素朴な疑問をレイナちゃんがディモンさんに投げかける。
「これを話してもいいんだが話したらお前達も真実のルビーを手に入れれなくなるがいいか?だがまぁ一つ言えるのは知らないことが条件だからだ」
すると二人は間髪入れずに断った。
どうしても気になったので俺とミディアは聞いてみた。
ディモンさんの話だとこんなところだ。
・全ての真実のルビーについて入手方法を知らない
・リース村の付近の森でシルバーファングを撃破後カード入手
・リース村で村長にシルバーファングを倒したことを報告
・そこで一泊をせずにすぐに村を離れることを選択
・カード以外の施しを一切受けない
・村長から真実のルビーを受け取る
・そしてチャンスは一度きり
よくわかんないけど確かに俺は満たしていたと思う。
この入手条件は「カードに関する情報を得てはいない」という情報以外についてはある程度進めると簡単に手に入るらしい。
しかし知ってしまってはもう入手不可能という罠だったってわけか…
それ故入手難度が最高ランクのSSS。
さらにスタート地点の近くにあり初心者がいきなりシルバーファングに会い生き延びた奴こそそうそういない。
二重の意味で手に入りにくいのだ。
それを聞いたらミディアが尊敬の眼差しを俺に向け
「さっすがコースケ様ですねっ!」
と面と向かって褒めてくれたのでなんだか恥ずかしくなってしまい頭を撫でて照れ隠ししたのは秘密。
「ところでお前は大会に参加しないのか?あの狼倒せる程ならそこそこいけたんじゃないか?まぁ俺達には勝てないだろうがな」
がははと景気よく笑うディモンさん。
サラの師匠だけあってよほどの強さを持ち合わせてるのだろう。
「いや、ちゃんとコースケ様は私と出…むぐぐ、むぐ…」
「出られないんだよな〜ミディア?もともとこの狼倒したの俺じゃないんです」
あぶねー!慌てて口抑えたから良かったけど、ミディアのやつドラゴンのことといい段々口軽くなってねーか?
俺達の様子にディモンさん達苦笑いしてるよ…
「そうだったのか…だからサラ達に依頼をな…それにしてもよくサラが護衛なんかしたな…どこまでなんだ?」
「明確な目的地なんて決まってないですし、そもそもギルドを介してないんです。彼女らが騙されてお金に困っていたところを男の人がシルバーファング倒した時のなけなしのお金をほとんどあげたんです」
「ということは…あのやろう…こいつに惚れたな…ククク…とうとうあいつも兜を脱いでようやく女らしく…後でからかってやるか…」
「あの−どーかしましたか?」
「いや、サラをよろしくな!」
「い゛っ!」
ぶつぶつ言ってたから何て言ったかよくわかんなかったので聞き返したら勢いよく背中を叩かれた。
見た目通りパワーファイターだということがよく分かった。
痛かった(ノ_・。)
つもる話も終え、いよいよ本選が始まろうとしていた。
今朝張り出されたトーナメント表を見た感じ、俺達はどうやら二回戦でディモンさん達と当たることになった。
これは真面目にやらなきゃ負けるな。
ちなみにサラ達とは反対側のブロックで決勝まであたらない。
選手は控え室に集まれというアナウンスが流れ、四人は行ってしまう。
そしてついに、ついに、この時がやって来てしまった…
そう!あのユニフォームに着替える時が!!
「コースケ様?早く私達も行かないと失格になってしまいますよ?着替えましょう」
「嫌だ…行きたくない…失格でいい…」
「何言ってるんですか!ほら早く行きますよ!」
=============☆
ミディアに引きずられて控え室にやって参りました。
今から全力を出し合い戦う選手達がピリピリとした緊張の空気を作り出している中、ほうり込まれた変態二人。
控え室に入ると選手達からちらっと一瞬見られた後、選手全員に全力で二度見される始末。
この張り詰めた空気の中場違いにも程があるということを無理矢理にでも再認識させられた瞬間であった。
ほら、耳を澄ませば俺達の悪評が聞こえるよ?
ヒソヒソ
(うわ、なんだあの気持ち悪い格好の奴ら)
ヒソヒソ
(あんな姿で出るのか?俺達もなめられたもんだぜ)
ヒソヒソ
(それよりも恥ずかしくないのかしら。羞恥心なんてひとかけらも感じないわ)
ヒソヒソ
(そりゃああんな格好出来るやつに羞恥心なんてないだろうよ。それよりあいつらどこで負けるか賭けようぜ)
ヒソヒソ
(いいねそれ。俺は初戦落ち)
ヒソヒソ
(そんなのみんな初戦落ちに賭けちゃうから誰も得しないじゃないの)
ヒソヒソ
(プッ、確かにそうだ)
おのれお前ら許してはおかんぞ…
五体満足で帰れると思うなよ?
「コースケ様、怖いです」
はっ!?いかんいかんついむきになってしまった。
俺は寛容だから許してやらなければ…
っと、サラ達発見!ってめっちゃ見てるんですけど…
サラなんて兜付けてるが故にものすごい殺気を感じる。
俺何か悪いことした?
まぁ気付かれてないのは確かだろう。
何処からかアナウンスが聞こえてきた。
「ただ今よりルクスム武道大会本選を開始いたします!」
嗚呼、ついにこの時が始まってしまった…
大勢の観客に恥態を晒す時が…
――――side Midia
なんでコースケ様はこの姿を嫌がるのでしょうか?
ほら皆様方も素晴らしいといった具合にこちらをご覧になるではありませんか。
仕方なく引きずって控え室に連れていったのですが何かに怯えてるようです。
視線の先を見るとサラさんたちがいました。
一体コースケ様は何を怖がってるのでしょうか?
私はコースケ様のことが分からないです。
声を拡張させる魔法で聞こえてきたアナウンスによっていよいよ本選が始まりました。
私達は一試合目からなのでそろそろ入場です。
「ほら、コースケ様。入場の合図がありましたよ。行きましょう。」
「うぅ…もう腹をくくるしかないのか」
私を先頭に試合会場に向かう私達『ザ・バカップル』。
その途中で相手チームの紹介が聞こえてくる。
「さぁ、みんな!最近頭角を現してきた今ギルドで最もホットなチーム!!Bランクだがそれ以上だと評判高い『ブレイカー』の登場だぁ!!」
うおぉぉおおおぉ!!
と大歓声の中入場していく『ブレイカー』。
私達の時はどれくらいの歓声が聞こえるのかな?と半ば期待に胸を膨らませてみる。
そして私達の番。
「今大会最もノーマーク!!史上初ギルドランクなしでの本選出場!実力より見た目を問いたい!?全てをバカにしたチーム、『ザ・バカップル』の入場だぁ!!!」
………………しーん
派手?な紹介とは反対に歓声など全くない。
やっぱり私達の姿に見とれて何も言えなくなったのね。
それはしょうがないと思う。
隣でコースケ様が頭を抱えているが気にしない。
私はコースケ様による魔法で守られているので絶対に傷付けられることはないらしい。
治癒魔法が得意なのにコースケ様は絶対に戦闘では怪我しないから何の役にもたたないのが寂しい。
かと言って怪我をしてほしいわけでは絶対にないのでなんだか複雑な気持ちになった。
そして物思いにふけながら試合開始を告げるゴングが鳴り響く…
――――side end