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戯言、買物、入手



 長く書きすぎました…。

 数話分を一挙公開!!(黙れ






 資金はある。陛下さんから戴いた、餞別という名の大金。


 ぶっちゃけこんなに不要いらないだろとか思ったが、ジードによると勇者への餞別は金額が決まっていて、本来は武器防具全て揃えて貰うことが前提の金額だから―…まぁ、アタシが規格外って事らしい。


 だって元装備は初っ端っから完璧な訳で、金を使う必要がないんだよね。


 イマイチ通貨の単位とか価値とかは分からないが、それはジードがどうにかしてくれるだろ。



 武器屋探して随分歩き回った。…案外楽しい。どーしよ。



 紙袋を抱えた綺麗なお姉さんが挨拶してくる。ちっちゃい子供が手を振ってくる。


 そしてご老人が有り難げに何かを祈ってくる。…のはコイツが神の使いだからかも知れんが。



 このハピネスな気持ち、一体どうしたら良いんだよ。

 …うーん、神の使いかぁ…。



「…なー、神の使いって事はさ、天使みたいな物なの? ジードの民族って」

『……ジードは幼名だ。気恥ずかしいから呼んでくれるな』


 幼名…って、源義経が牛若丸みたいな?


「でもウォーレンって長いし呼びにくい」

『しかしそれだけは勘べ―』

「―で、どうなの。その〜、エンジェイ族ってのは」


『………』


 頭の中で、小さな溜息が響いた。


『…我々のその称号にはな、根拠は無いんだ』


「え、じゃあ嘘なの?」

『…嘘…ではないが…。…神話というか、創世記では我々は神々の使いとされている。

…まぁ、そう呼ばれるだけの根拠が有るとは思うが。』


 ん〜…。確かに、白い髪にシルバーの瞳は神々しいな。


 てか、白基調の重装備ファッションからして凄そうな感じがする。

 このクソ長い剣とか、シンプルながらに凝ったデザインのマントとか、ビーズみたいなのがぶら下がったバンダナとか。


 ……何かもう、冒険後期って感じ。

 ジャンプして着地した瞬間の重量がスゴいんだ。コレ。



『…まぁ、地元というか故郷では宗教的な感じだな』

「…ふーん。そーなんだー。ジードも信じてんの?」

『………僅かに』



 …え、何この間。


「し、信じてねーの?」

『信じていないわけではない。盲目的に鵜呑みにはしていないだけだ』


 ………ああ、そういう冷めたアレね。


「許される訳?」

『演技力があれば』


 …うわあー…。何だコイツ。



『…そうだナギ。お前はそろそろ一人称を変えろ。

私の身体でアタシアタシと下品な人称を使われては強わん』


「ああ、それはアタシも考えてた。…何が良いかな」


『ひとまず性別を考えた物なら』


 …せーべつー?

 うーん…。


「『オレ』…とか。」

『乱暴者に聞こえるな』

「世間体なんか気にすんなよ。お前はオバサンか」


 お隣さんがー、とかは決まり台詞だよな。ほんと鬱陶しい。

 兄貴が言わなかったから余計にな。


「うーん、オレか。―良いじゃん。決定!」


 言いやすいし性に合ってる。

 この容姿でオレってのもアリだと思うし。


『…若干ながら不服だが―まぁ…『アタシ』よりは幾分ましだろう』


「だろー?」


 っていう訳で、一人称決定。本人の許可も貰った。完璧。


 不毛な会話をしている内に市場の中心部付近に来たらしい。旅人らしき装備の人達が増えている。

 屋台も、食品中心から装備品系統に変わっていた。

 武器を扱う店も少なくない。


 …さて、

「ジード? アタ…じゃなくて、オレはどんな武器を買えばいーの?」


『唐突に聞かれてもな…。…普段は何を使って戦っていたんだ』


 え〜、基本素手だけど …。使う時は鉄パイプとか傘とかケータイの角とか…身近なモノを利用して、如何に大きくそして綺麗にダメージを与えるかが最大のポイント―じゃなくて、


「わかんね。あんまり武器とか物騒なモンは使わなかったし、精神攻撃が主だったから」


『…何だ、その悪質で劣悪で愚劣で醜劣で醜悪な攻撃法は』


「いや、幾ら何でも貶しすぎじゃね?」


 そこまで言われたら怒る気にもなれんわ。



『……無難に剣で良いんじゃないのか。ノーマルなトゥーハンドソード…とか』


「投げやり感剥き出しだね。ソレ本気で言ってる?」

『いや、適当だ』


 …うん、正直でよろしいね。

 て、言われても、アタシにはそれがどんなだか分からない。

 ソードって言うからには剣なんだろうが。



「それってどんな? 扱い難い?」

『…む…、そうだな。…剣の心得が無い者は扱え切れないかも知れぬ』


 …無い、けどさ。

 ……わっかんねぇなぁ…。


『まあ、実際見るのが一番早かろう』


 ジードに促されて、アタシは近くの武器屋に近寄った。


「おう、らっしゃい」


 店番は、低身長というよりは短身長と言うに相応しいおっちゃん。

 小人みたい。


「何だい格好いい兄ちゃん。何か売りに来たんかい?」

「ん? …ああ、コレは違う」


 どうやらおっちゃんは背中のツインの剣に目を付けたらしい。



「じゃあ何か買ってくんか。…変わり者も居たもんだ。

何でもあんたの好きなモンまけとくからさ。ソレ、オレに売っちゃあくれねぇかい」


 アタシに価値は分からないが。どうやらとっても気に入られてしまったらしく。

 いやいや、売るなんて無理。だって…


「売っていいの?」

『駄目に決まっているだろうが』

「うん、だと思った」


「…あ?」


 ああ、やべぇやべぇ。今のアタシ完全に、独りでお喋りしてる危ない人。


「いや、何でもない。それよりオッサン。…その〜…何だ」

『トゥーハンドソード』

「そう、トゥーハンドソードっての、見せてほしいんだけど」


「…どんだけ刃物好きなんだよ、あんた」


 言いつつも、おっちゃんは適当な剣を差し出した。


「ん、コレがトゥーハンドソード。両手剣さ。

…ってェ、あんたは百も承知だよな、ンな事ぁ」

「ははははは」


 差し出されたのは、RPGでよく見る両刃の剣だった。叩き斬るようなイメージの。

 乾いた笑いと一緒に剣を受け取る。が、


「わ、重」

 けっこー重い。

 …当たり前か。プラスチックじゃなくて金属製だ。アルミでもないだろうし。


「そんな業物持っといて何言ってやがるんだよ」

「いゃあ、相当予想外みたいな。

抜いてみてイイですか」

「おう、ソレは安物だがな」


 鞘から抜くのも一苦労。


 シャァアア―と、擦れるような独特な音がして、銀色の刀身が露わになった。


 …うわ、モロ刃物。



「―おい、兄ちゃん。…あんた、全くのド素人だろう」

「えっ、や……ああ、まぁ…ハイ…」


 ばれた。

 この人だってそれなりに武器を扱える人なんだろうし、そりゃあ…当たり前っちゃあ当たり前か。


 …不便はないから別に良いけど。


「やっぱその剣売っちまいな!! 素人にゃあ勿体無ぇよ!

…大体、使わないんならあんたにだって只の荷物だろうに」

「…いやぁ、実はこれ預かり物なんすよ。

オレのじゃないんで売れないです」


 …嘘…ではない。しかし本当でも無い。

 この身体の主導権がアタシに有る以上、この剣のイニシアチブもアタシにある筈だ。


 …まあ、どうでも良いが。


「…しょうがねェな…今は諦めら。仕方無ぇ、その持ち主に掛け合う事にするよ。

そんなソードにはそうそうお目にかかれないからな」

「………だとよ」

『…むぅ、ならば十二分に気を付けねばな』


 …何だろう。この奇妙な会話。


「で、オレは結局何を買えばいいの? コレ、使える気がしないんだけど」


 それに、コレでモンスターなんかを切り捨てた暁には、もれなくR指定が待ち受けていることだろう。



『わからん。普段は戦わなかったのだろう?』


「…さぁなあ、オレにゃあ分からねェが…。

あんた、いったい普段は何をやっているんだい?」


 …おぉっと、まさかのダブルクエスチョン。

 コレは上手く答えないとマズいぞ。


「いや…普通に素手でケンカかな…」


 よし、アタシ完璧。ベストアンサー。


「ケンカって…人は見た目によらねぇんだなぁ…」

『ならナックルだろうな。

―物は試しだ。言ってみろ』


 ナックルって…ボールか?

 …まあ、言ってみよう。


「その〜…、ナックルって奴あります?」


「あ? ナックル?

…あんた、本当に変わりモンだな。

…あんたにゃあ合わないと思うがね―」


 で、武器の詰まった麻袋の底の方からおっちゃん引きずり出した…多分、あれがナックル。



 何て形容するか…籠手、みたいな…。

 腕を覆う形の金属製のグローブ。そんな印象。

 ボクシングみたいにモコモコしている訳では無く、指の付根辺りにはメリケンサックの様な金属が固着している。


 それが左右一対。



「…どう使うのこれ」


『攻撃面では殴る系の攻撃力の増強に。防御は直に腕で止める。

基本的に武道家等が好んで使うな』


 …ああ、やっぱメリケンサック系か。

 サックは使った事無いが、基本攻撃は拳だったし…案外合うかも。



「じゃー…金は有るし…一応それ貰うか。幾ら?」

「買うのか! …まぁ…こちらとしては処分できて丁度良いがね」



 …と、いう感じで、かなりお買い得値で買い取ることができた。

 ―…らしい。アタシには通貨の基準や単位は分からない。


 めんどいから分かりたいとも思わないが。


「まいどー」


 さて、ワンステップ終了修得。


 歩きながら、半ば強引に腕を捻じ込んでみる。

『―馬鹿。留め具を外せ』


 留め具?

 …あ、この金具の事か?

 パチン!!


「お、入った。」


 指を通す布部分に指を入れ、外した金具を留める。ジャストフィット。

 確かめるかんじで、数回グーパー。


「あれ、結構イイかも」


『しかし剣とは違ってそれは力が直に反映されるからな。

ソード系は武器そのものの攻撃力が強いだけに誤魔化しが効く。だから素人から玄人にまで幅広く人気がある』


「…ふーん。振り回せば一応戦える―みたいな?」

『まぁ…そういう事か。それだけにとても深い世界だ。にわかでは極めるといっても限りがある』


 忘れずしっかり自分のフォローまでして、ジードは


『色々話した気がしたが…。結局はその武器が自分に合っているか確かめたいのなら実際に戦ってみろ。―そういうことだ』


 やや強引に、そして半強制的に締めくくった。


 戦い、ねぇ。

 元スタイルからは違わないから…まぁ、間違いは無いだろうけどねぇ。

 ちょっと気になるのはリーチの違いぐらいでさ。


 拳は人生で初めて使った武器だからな。

 ―ふふ、昔…兄貴といっぱいじゃれ合ったっけ。鳩尾殴る練習とかして。


 ……あ〜あ、今頃兄ちゃん何やってんのかなー。


「…は〜あ」

『―何だ、勇者ともあろう者が溜息か』


 …ウルセェってかウゼェなこいつ。


 …そうなんだよなぁ…勇者なんだよなぁ…。



「いや家族が心配してっかなって」

『…しているに決まっているだろうが』


 予想外にまともな答えに、アタシは軽く絶句した。


「…アンタもマトモな事言えるんだ……」

『失礼な。私はいつでも正論しか言わないぞ』


「じゃあアンタの常識がズレてんだね」


『……もういい。』



 結構アタシのほうが正論じゃね?


『それは―家族は勿論心配だろうが…。だからこそ早く帰るべきで、早くカタを付けるべき―ではないか?』


 言い直すようにジードが言葉を繋ぐ。


「…おー」



 …うん、確かに―確かにそうだね。


 兄貴のことも気になるし。恋孤の事も前言の5乗気になるし。


 早く帰った方が良いに決まってるよね。


「―じゃー。アタシもといオレ、頑張っちゃおうかな〜?」

『そうだ頑張れ。そして早く身体を返せ』


「一言よけーだし」


 アタシはけらけら笑って、


 新調したナックルで掌を打った。







 武器屋のおっちゃんの裏設定。


 旅の商人。なので品揃えは豊富。

 この国に来たのが最近なので、国内で相当に有名なジードを知らない。


 …と、いう、需要のない設定です(笑)。





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