王って陛下って…
昨日は暑かった癖に今日はクソ寒いです。
春が好きです(←オイ
「…えと、こちらの階段を登った所に陛下のおわす広間があります。―その、勇者様?
…本当に行かれるですか…?」
「…本当も何も行かなきゃいかんだろうよ。
異世界から召喚された勇者ってまず会いに行かなくちゃいけないんじゃないの? 王に」
「…そうですよね、会いますよね。…で、では!
ご健闘をお祈りいたします!! これにて失礼!!」
言い捨てて、ミニマムな白ローブは走り去っていった。
…あれ、何だろうこの見捨てられた感は。
そんなやばい人なんかへーかサマって人は。
ひとまず会ってみようか。会わなきゃ分かんないしね。
赤い絨毯の敷かれた豪奢な階段を、一段ずつ踏みしめ、登っていく。
このウォーレンってあんちゃんがどんな人物だったのかなんてアタシの知る範疇じゃないが、城の警備兵みたいなのが見向きもしないことから、コイツが頻繁に此処に出入りしていた事は窺える。
思えば此処に来る最中はオール顔パスだったし、案外コイツ大物なのかも知れないな。
「…うおっ!?」
階段を登り切ると、急に目の前が開けた。
必然的に訪れた者は広間の中心に出る造りになっているらしく、アタシはその場の視線を一身に集めていた。
「…ウォーレン?」
綺麗な声に、またビビってしまう。
「…あ、えと、ウォーレンじゃないです。色々あって今は―」
…と、声の方を向いた。 そんで、また若干驚いた。
其処にいたのは、豪奢な衣装の女の人。
細かく絹のような金髪に、煌びやかティアラを乗せてる―王妃さん?
ピンクに近い瞳の色がスゴく綺麗で色っぽい。あれだけ豪華な服でも、存在感は衣装に負けていない。
すごく次元の違う人。
「―?」
…あ、いかんいかん。見とれてた。
「い、今は勇者です」
「まぁ。…それでは召喚師達は勇者召喚に失敗したのですね。―と、なると、貴方はウォーレンではなく?」
「な、凪です。木菟、凪」
「ミミズク? その様な名なのですか?」
「…いや、凪が名前で」
彼女はにっこりと笑った。ずっきゅーん!
「―では、ナギ? 貴女には申し訳ないことをしましたね。それと、そのウォーレンという男にも」
…そこで、王妃さんは一度咳払い。
隣の、ハゲ散らかした如何にも大臣な人に告げる。
「皆、一度出払いなさい。この者と話がしたい」
「陛下! …しかし…この話が本当かどうかも―」
「もしこの者が勇者でなくとも、ウォーレンには違いない筈です。
彼は神の膝元に住むエンジェイ族。彼に置いた信用は、この国総ての者も、私も―。…勿論、貴方も揺るぎない。違いますか」
な、何か大層な事になってないか?
「しかしウォーレンに化けた魔物―と言う可能性もありますぞ」
「彼がそれを許す筈がありません。それは貴方もご存知の筈。」
「……女王陛下はあの者を買い被り過ぎますな」
―話は終わった…のか?
一言大臣が嫌味みたいなのを言い、他の兵や使用人を引き連れて出て行った。
余りに広い空間に、美人サンと二人きり。
…いや、アタシは一応女だし、身体の性別は違うけど―…でも、女の子に惚れるような奴じゃない。
けど、これだけの美人だったら生きとし生けるものは全てうっとりすると思う。
という経緯でアタシは軽くドキドキしてる。
「―私は愚かでした」
彼女が立ち上がり、立ち尽くすアタシは呆然とそのモーションを見ている。
「ウォーレン―!」
王妃さんが走り、
アタシの胸に抱き付いた。