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この人



 今日は暑くて、生きているだけで体力へばりました。

 ……冬が好きなんです。








 この身体は、ウォーレンっていう名前のおにーさんの物らしい。


 そんでもってアタシは勇者として召還され、頑張って魔王を倒す。そんな運命さだめの救世主。


 魔王は世界のどっかにいる。魔界とか何とかって所。

 だけど怖くてだれも行きませんて、なんでアタシにとばっちり。




 ………そんで、簡単に『はいそうですか』ってなるか? フツー。



「―オイ。ンな事興味ねぇんだよ。

アタシのホントーの身体は一体どこだ。なんで勇者なんて貧乏くじがアタシなんだァ?

…フツーそれって男がやるんじゃねぇの?」


 うぇ、この声でアタシって気持ち悪い。

 一人称変えようかな。


「いえあのー…実は勇者選びって言うのが今回ランダムでしてー…」


「適当って事?」

「ちがっ…!? 違いますとも!! そそそ…そんな事がある訳…!!」


「そうか手抜きか。…よし、この国の最高責任者連れて来い。

とりあえずお前クビにしてからソイツぶん殴る」


「い、いけませんって勇者様!!」

「アタシ、処刑されても本体此処にないから多分死なないでしょ。ほら、早く出せよ。

―…あームシャクシャする。代わりにお前殴って良い?」


「うああああ!? 嫌です嫌です!! 勇者様に殴られたら死んじゃうじゃないですか!!」


「死なねーよ。こんな女のパンチなんか気絶するくらいで大して…―あ〜、アタシ今男か」


 男の本気パンチは確かにまずいだろう。

 前歯が折れたり鼓膜破れたり。そんなの色々冗談じゃない。

 …しかも、勇者ってからには余計な力が添付されてる可能性が高い。


 …もう、何で勇者がよりにもよってアタシな訳?

 もっといるじゃん。人間なんか68億人もいるんだぜ? 日本人に絞ったって約1億。女にしたってその半分。

 こんなんに当選する率なんて、隕石が頭上に墜ちてくる率より低いよ。


 しっかし…、ランダムってのはな〜…


「……ヨボヨボのおばあちゃんとか来ちゃったらどうするつもりだったんだろ」


 杖で戦うのか?


「はい?」

「…え、あ〜…こっちの話。…だったんだがー…」


 これは訊いた方が良いのかも知れない。

 単純に、コイツ等を罵る口実が増えるかもしれないし。



「―勇者ってのは何で決めてんの?老人とか幼児とか来ちゃったらどうするつもり?」


「…あ〜…。い、いやぁ〜…それはですね…」


「ホラほら言ってみろよ。所詮ろくでもねーだろうけど」

 アタシが言うと、白ローブは言い難そうに語尾を濁す。


「…いや…、そのぅ…。ランダムって言っても、それは実際は違ったりとか…違く無かったりとか」

「良いから言ってみろ。…あ、大丈夫。拷問に掛けたりしないから」


「う…、…いやそれが―今回だけはその…私共の下っ端が適当に選んで……たまたまあなた様を…」

「―ふぅん。それはそれはすんごく面白い冗談だねぇ。いいわ〜ホントに傑作。……さて、この世に残す言葉は?」


 手近の壺をひょいと持ち上げると、白ローブが泣きそうな声で言う。


「怒らないって言ったじゃないですか!!」


「言ってねェよ。拷問に掛けないって言っただけ。…大丈夫苦しめたりしないから」


 …にしても、それなりにデカくて高価そうな壺を片手で―とか、やっぱ不要ない力がくっつけられてますな。

 あーめんどい。


「…だ、だって!仕方無いじゃないですか!! なんか誰も勇者召還なんかに協力的じゃな―!!」

「ちょ―!レスタ…」


 慌てふためく白ローブ×2と、はっとして顔を蒼白にするレスターって呼ばれた白ローブ単独。


 …あ、そういう事ね。

 今理解。


 アレでしょ、ンな事にゃア興味ないって。

 おかしいと思ったよ。勇者召還って大事な儀式じゃん?なのに立ち会ったヤツらは3人。


 こんな埃臭い小部屋で、胡散臭い白ローブに呼ばれて。ついでに嘘臭い黒魔術の本ですか?

 クサいでしょうよ。それはにおうわ。


 …ああ何かもう面倒臭くなってきた。

 どうでもいいやこんな雑魚共。とっとと工程済まして旅に出て魔王倒して帰ろうぜ。

「で、王は?」


「……は、はい?」


 喚びやがった報復とか、もうそんなのも面倒くなってきて、アタシは投げやりに言った。


「あれ、王政制度じゃないの?…じゃあ何、大統領? ―別に何でもいいよ。この国で一番権力があって、勇者召還だっけ…を、許可しやがった奴。」

「…あ、…あぁ、陛下の事ですね。それならこの城の広間におわすかと」


 …陛下って…やっぱ王じゃねえか。

 まぁ何でもいい。とりあえず会って話して旅に出る。そうじゃなきゃ始まんねえ。


「アタシをその陛下の所に連れてけ」

「…わ、私をクビにしてから陛下を殴ったり…」

「しねーよ。…ああ、じゃあ腹いせにこれ割っとくか」


 と、片手の壺を床に落とした。

 ひゅんと風を切り、派手な音。

 高価そうな壺が砕け散った。


「うああああ!! 由緒ある封魂ふうまの壺がああ!!」


 ソイツをはじめとした白ローブは全て、似たような悲鳴を上げた。

 …まぁ、関係ない。

 兎に角この部屋から出よう。もう良い何かコイツ等イライラする。理不尽な気もするが。

 その広間まで自力で行ってやる。



 アタシは光が漏れている所にドアを見付け、部屋を出ようとした。

 …が、


「―あれ、」

 何か引っかかってる。出られん。

 …何だこれ。

 アタシは上体を捻り、首を回し、必死に後ろを見た。


 ドアに引っかかってんのは、左右に突き出した長い…剣?


「いや…長すぎだろ…」


 それは柄が目線位に来て、鞘の先は膝よりも下にある。どう考えてもデカすぎだ。

 しかも、それはクロスして2対、ベルトで背中に固定されている。こんなん2本持っててどうしようって言うんだ。


 一旦後に下がり、カニ歩きでドアからすり抜けた。…ふう。



「…ぁひっ!? ゆ、勇者様!?」


「……あ?」


 低い位置から声がした。見下げると、ちっこい子供の白ローブがいる。


「…まだ居たのかよ白ローブ。―ってか、アタシがウォーレンじゃなくて勇者だって何で知ってる」


「…ちちっ違いますっ!! ぼくは盗み聞きなんてしていません!!」


 してたんか。盗み聞き。


「…じゃなくてうああああ!!言っちゃったああ!! ぼくのバカぁあ!!」


 ……何だよこのちびっこいの。…一人でうるさいな。

 アタシは王のいる広間に行きたいんだけど。


「ごごごめんなさい勇者様!! あなたをお選びしたのはこのぼくですッ!!」


 早くどっかに…って―はい?

 今…コイツ何て言いやがった?


「―もっかい言え」

「あ、あなたを選んだのはぼくです!!!!」


 ―コイツ、死刑。


「テメェかああぁ!!!! アタシに面倒事を押し付けやがったのわぁあ!!」


「ひぃいい!!? ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃ!!

だって勇者様はスゴく強かったんです!! 女の人なのに強かったんですぅう!! だからお呼び申し上げまして―」

「知るか!このクソガキ締め上げてジョーズのエサに―…は?」


 『強かった』んです?

 なにそれ、…どっかでアタシを見てたって事?


「…おいクソガキ。―アタシを見てたのか」


 その問いが唯一の自分の救済策だと思ったのか、喰らい付く様に答えてきた。


「そうです見てました! すごいですよね! 何人もの人に囲まれて乱暴されそうになったのに、一人でみんなやっつけちゃうなんて!!」


「…………」



 ……あ〜あ、やっちゃったなコレ…。

 アタシ、あの時何で暴れちゃったんだろう。

 いや後悔はしないけど。

 あの状況で大人しく犯されるとか冗談じゃないし。


 てゆーか、あの瞬間にケンカしてた奴なんかやっぱり山ほど居たんじゃね? 何でアタシ?


 いや…終わりが見えない自問自答は止めようか。…結局はアタシの悪運だ。


「…もう良いや、どうでもいい。諦めましたから、アタシを王のいる広間まで連れてってくんない?」

「ふ、ふぇ? 王…って…陛下の所へですか?」

「ん。」


 どうやらこのチビ白ローブは本当に申し訳無く思ってくれているらしく、文句も無く先導してくれた。


 …あ〜あ、めんどくさい。






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