ジードの力
地に向いていた切っ先は、真っ直ぐに巨人へと。
ジードが、不敵に笑った。
「…一体何故かは解らんが―これは幸運と思うべきなのだろうな」
その声はつい先刻までのアタシと一緒声だけど…―比較するのは残酷だ。
芯があって、涼しくて、重たくて、脊髄が共鳴で痺れるような凛々しい声。
「良かったなナギ。何故か私が替われたから、死なずに済むぞ」
『っせぇ!!』
やっぱ無理コイツ。性格が完全破綻を期してやがる。
…友達になりたくないタイプー。
『どうでも良いから早く倒せっつぅの!』
「―ふん、私を侮って貰っては困るな。…何せエンジェイ族で一番の腕を持つ戦士―」
視界が真っ暗になる。…コイツ戦闘中に目ェ瞑りやがった。
「―あ―!!危ない!!」
これはあの少年の声。
「―がふッ!!」
重たい衝撃があって、ジードはぶっ飛んだ。
アタシは衝撃だけ感じて、痛みの類は感じない。
『ちょ、お前馬鹿じゃないの!?
いや絶対に馬鹿だ!!』
「―く…!! 油断を突くとは…油断していたな―」
『いや、重複重複』
「む―…」
…ああ、本物なのか。
「―そんな事はどうでも良い。
兎に角、異形の者は片付けさせて貰う」
両手に下げた二振りの巨刀。
鍔の無いその柄を、ガチャリ―と、結合した。
『…え、それくっつくの』
「ロングソードはこう使うのが主だからな」
―少年の声。
「ああっ!! 気を付けて!!」
「言われずとも!!」
迫ってきた棍棒。煌めいた金属の刀身。
『―!』
それが、巨大な棍棒に簡単に切り込むのを、アタシは見た。
さくり、と音がしそうなほど簡単に、
棍棒が両断された。
『わ、―…』
アタシに感覚は通じないけど、その爽快感は視覚からの刺激だけでも十分だった。
大地を揺るがして、棍棒の上半分が落ちる。
ジードが飛び上がった。
呆けていた棍の持ち手を足掛かりに、更に跳躍。
アタシの所為で充血したサイクロプスの目。
脅えたような其れが、ジードを見上げていた。
「―せめて、苦しまぬよう」
ジードが構えるロングソード。
槍投げのように片腕で。
「―次には人として生まれるよう!!」
落下速度も加算して、その長い刀身が―
青い胸に、突き刺さった。