9 隠蔽の魔法
ライザール様の『教えてやろう』発言から、わたしは魔法についてライザール様に教わることになった。ついでに、それを面白がったシルフたちも魔法を教えてくれることになった。
だけど、ライザール様が使う魔法と精霊が使う精霊魔法は違うので、よく聞いてしっかり覚えるように言われたよ。
まず、ライザール様が使う魔法はこの星のすべてのものに存在する魔素と魔法の術者の魔力を使って発動させる。魔力増幅効果のある杖を手に呪文を唱えたり、魔法陣を使ったりして魔法を発動させるのが一般的だけど、豊富な魔力とはっきりとしたイメージを持っていれば無詠唱でも魔法を発動できるんだって。
一方のシルフたちが使う精霊魔法は、精霊の持つ魔力を借りて魔法を発動させる。術者の魔力は少なくてもいいけれど、なにより精霊との親和性が必要になる。だから、精霊の気配を感じ取れないと話にならない。その点、シルフたちの姿が見えて話もできるわたしは精霊魔法を使うことができるの。
ちなみに、神様の力をお借りする神聖魔法というものもあるよ。神聖魔法は呪いの解呪をしたり、アンデット退治に役立つそう。
わたしはゼノグレア様の愛し子らしいから、わたしが心から望めば神聖魔法も使えるんだって。すごいねー。
そうそう。忘れちゃいけないのが生活魔法。教会で祝福してもらうだけで使えるようになる、日常生活にとっても役立つ魔法だよ。
『生活魔法はね、火種の魔法と、コップに飲み水を満たす魔法、服や身体の汚れを落とす魔法、明かりを灯す魔法の四つだよ。五歳の祝福で授けられるのが一般的だね』
『そうか。祝福だ。うっかりしていた!』
生活魔法について教えてくれたシルフに対して、ライザール様が叫んだ。
『『『あ、祝福!』』』
ウンディーネとサラマンダー、そしてノームが揃ってしまった!という顔をした。
『………祝福では、鑑定の水晶を使うな?』
『そうですね』
答えるシルフの表情は平然としている。
『魔法属性の他、魔力量もわかってしまうな?』
『それも、そうですね』
少し、焦る始めるシルフ。
『………ゼノグレア様の愛し子であることも、わかってしまう可能性が高いな?』
『そう………ですね』
ライザール様に応えるシルフは、ダラダラと汗を流している。
『マズイではないか!』
そこまで確認して、ライザール様は頭を抱えた。
えーと………ふたりの会話をまとめると、五歳の時に祝福を受けるとわたしの魔力属性や魔力量そして神様の愛し子であることまで教会にバレてしまうということ?
わたしの魔力属性というと………。
『ルルアーナは全属性使えるぞ。神の愛し子なんだから当然だろ』
全属性って、火魔法とか、水魔法のこと?
『うむ。俺たちがついている以上、精霊魔法も使えるぞ』
『ゼノグレア様の愛し子なんだから、神聖魔法も使えるわよ』
それってマズイの?
『マズイに決まっている!バレたら、この国の王家だけでなく、各国の王家と教会がルルアーナの奪い合いを始めるぞ』
どうしてですか?ライザール様。
『ルルアーナは利用価値が高いからだ。魔法を全属性使える者は聖人または聖女と呼ばれ王に匹敵する権力を手にすることができる。その上、精霊魔法が使える神の愛し子となれば、どの国でも喉から手が出るほど欲しいだろう。ルルアーナを手に入れ働かせることができれば莫大な財が懐に転がり込む上、子を産ませれば、その子にも価値が出る。まさに、金のなる木だ』
ええええぇぇ………。
『仕方ない。隠蔽の魔法を教えるから、しっかり覚えて常時発動しろ』
ライザール様の言葉に、シルフたちが難しい顔をしている。
ねえシルフ。隠蔽の魔法って難しいの?それとも、常時発動が難しいの?
『そりゃ、どっちもだよ。レベルの低い隠蔽の魔法でも習得は困難なのに、ルルアーナの場合は高レベルな隠蔽の魔法を習得しないといけないんだ。そうしないと、愛し子であることを隠せないからね』
『しかし、ルルアーナは普段から身体強化の魔法を常時発動しているからな。一度、隠蔽の魔法を習得すれば、あとは早いかもしれないぞ』
『ふむ。ところで、人間に魔法を教えるにはどうしたらいい?』
『『………』』
シルフとノームは顔を突き合わせて、あーだこーだ言い始めた。どうやら、精霊は感覚的なもので魔法を使うらしく、聞いていてもよくわからない。
『はあ………。これだから男どもは………』
ウンディーネの言葉に、ライザール様とサラマンダーが気まずそうに顔を背けた。熱心に言い合いをするシルフとノームは、そんなウンディーネには気づいていない。
『まあいいわ。それで?今さらだけど、ルルアーナは体内の魔力を感じることはできるのよね?』
え、うん。おヘソのあたりにぐるぐるしてる温かい流れだよね?
『そうね。その魔力を全身に巡らせて、身体の機能強化を正しく行うのが身体強化の魔法よ。ルルアーナは、この身体強化の魔法を意識して使うことから初めましょうか』
どうして?
『魔法を意識して使えるようになることが、魔法を使う上での基礎になるのよ。基礎ができれば応用ができるようになるわ』
うん。
『応用ができれば、今度は魔法を体外で扱えるように練習するの。生活魔法から始めるのがいいかしらね。これができるようになったら、次は魔力を身体に纏う練習よ。隠蔽の魔法を覚えるのはこのあとよ。わかった?』
わかったよ。ひとつづつできるように頑張る!
『その意気よ』




