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7 子供たち

「あ、ルルアーナだ!」


「ほんとだ。今日も可愛いね」


「そう?赤ちゃんなんてこんなもんでしょ」


 わたしを見つけた三人の子供たちがこちらへ走って来た。同じ集合住宅に住んでいる子供たちだよ。


 一人目がネイサン。虎獣人の子供で八歳の男の子。八歳にしては背が高く、身体つきもがっしりしている。三人の中でリーダー的な存在だよ。


 二人目はロン。垂れ目のヒト族の男の子で、ネイサンと同い年。ひょろっとした細身の身体で、今年の誕生日にもらった本を大事にしている。


 三人目はマリアベル。ヒト族の女の子でもうすぐ七歳。将来は美人になると思われる可愛いらしい顔立ちをしていて、ずっと可愛いと言われて育ってきたらしい。そんなマリアベルを褒めないネイサンとロンのことを、なんとか振り向かせようと頑張っている。


 この三人はいつも一緒に行動している………というか、ネイサンとロンの後をマリアベルが追い回しているという感じ。


 この集合住宅で、マリアベルはその可愛らしさから大人たちからの注目を独り占めしていたの。それが、わたしがこうして玄関に座るようになってから大人たちの視線がわたしに向くようになって。マリアベルはわたしのことを鋭い目つきで睨むようになった。


 ライザール様曰く。


『マリアベルは、愚かにもルルアーナをライバル視してる』


 とのこと。


 そんなライザール様は、マリアベルが手を伸ばしてライザール様を触ろうとするとシャーシャーいって威嚇する。ネイサンとロンには触らせるのにね。


「ルルアーナなんて放っておいて、森に行きましょうよ」


 そう言うマリアベルの背中には、背負い籠がある。ネイサンとロンも、それぞれ背負い籠を背負っている。


「そう言うけど、ルルアーナは赤ちゃんなんだから誰かがそばにいてあげないとだめだろ」


「そうだよ。メリッサおばさんは………相変わらず剣の素振りか。近々、冒険者として復帰するらしいから張り切ってるね」


「ルルアーナが放置されてるのは、今さらでしょ。この子も、一人でいるのは慣れてるわよ。そんなことより、わたしは森行って木の実拾いがしたいの。早く行きましょうよ」


 木の実かぁ。今の秋だから、色んな木の実があるんだろうなぁ。


『木の実だけじゃないよ。果物も、キノコもいーぱいあるよ』


 そうなの?シルフ。いいなぁ。でも、森には魔物がいるでしょ。危なくない?


『まあね。でも、森の浅い場所に出てくる魔物は弱いし、ちゃんと対策してくれば子供でも大丈夫だよ』


 そうなんだ。わたしも行きたいな。


『フフフ。ルルアーナったら。森の地面はでこぼこしてて歩きづらいから、今のルルアーナには無理よ。おとなしく家で待ってましょうね』


 うう〜っ。


『おとなしく待っていたら、今夜にでも森の恵みを収穫してくるわよ』


 わかった!待ってる!


『そう。いい子ね。それじゃあ、中に戻りましょうか』


 うん。お母さんの素振りを見るのも飽きたし、家の中に戻るよ。


 ウンディーネに促されて家の中に入ろうとスッと立ち上がったとき、ネイサンとロンがびっくりした様子で「ルルアーナ?!」と叫んだ。


 その声にびっくりして、肩がびくりと震えた。


「にゃ、にゃに?」


 思わずかんだ。


「「ブッ」」 


 ネイサンとロンが吹き出し、笑い出した。マリアベルだけが、面白くなさそうに佇んでいる。


「あー、びっくりした。ルルアーナは、もしかして獣人の血が入ってるのかな?一歳になったばかりの赤ちゃんが、あんなスッと立つのを初めて見たよ」


 あ、演技するの忘れてた!


 他の赤ちゃんは、四つん這いの状態からうんしょっ!と力を入れて勢いつけながら立ち上がるか、もしくは家具や壁なんかにつかまり立ちをするかなんだよね。前にシルフに教えてもらったの。


 それなのに………。


 ネイサンは鼻をスンスンさせてわたしの匂いを嗅ぐと、首を振った。


「ルルアーナからは、獣人の匂いがしないな。こいつはヒト族だ。でも、俺が知ってるヒト族の赤ちゃんはこんなふうに立てないぞ」


「だよね」


「そんなこと、どうでもいいじゃない。ルルアーナなんか放っておいて、早く森へ行きましょうよ」


 そうだね。これ以上、墓穴を掘る前に三人には森へ行ってほしいよ。


「 ばいばい。いってらっちゃい」


 そう言ってネイサンとロンに手を振ると、ロンがガバリと抱き着いてきた。


「あー、可愛い!」


「舌っ足らずなところもいいよな」


 それは言わないで。気にしてるんだから。もっとしっかり話したいのに、舌っ足らずにしか話せないのは恥ずかしい。


「そうだ。ルルアーナは甘い物は好き?」


「あい」


「じゃあ、お土産に果物を採ってくるよ。待っててね」


「おっ。ロン、それいいな。果物は俺が木に登って採ってきてやるよ」


「あいがと!」


 嬉しい!でも、森は魔物がいるし心配だな。精霊たち、お願い。ネイサンたちについて行って魔物から守って。


 わたしが心の中で願うと、それを念話で読み取ったシルフたちが小さな精霊たちに指示を出した。すると、庭をふよふよと飛んでいた精霊たちの一部がネイサンたちの周りに集まった。


 精霊たち、ありがとう。ネイサンとロン、あとマリアベルを守ってあげて。


 わたしがそう言うと、ネイサンたちを囲んだ精霊たちがキラキラと光った。











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