ー4章ー 10話 「震砕――守りの先に辿り着いた一撃」
ロックゴーレムの硬い身体にヒビが入った。
何度も同じ箇所を剣で叩いた結果、一見攻撃の意味がないように思えた事が、突破口になるかもしれないという希望を生み出した。
剣はそもそも斬る事が本来の役目であるが、このロックゴーレムにそれは通用しない。
大槌のような打撃を与える武器とは性質が違うし効率も悪いが、それでも今ある武器でやれる事はこれしかないのかもしれない。
だが確実にロックゴーレムを倒す糸口は見い出せた。
……あと数回、これを繰り返せば頑強なロックゴーレムと言えども、音を立てて崩れ去ると僕は確信していた。
しかし問題は僕にもあった。
渾身の力を込めて攻撃をしているので、剣を握っている手が痺れてきているのだ。
そもそも打撃を与える武器ではない剣で、無理矢理打撃を与えているのだから、そういったリスクが生じるのは仕方がない。
だけど、あと何回この攻撃を繰り返せるのか……正直なところ分からない。
僕の手が限界に達するのが先か、或いはロックゴーレムが倒れるのが先か……。
もはや我慢比べのようなものだ。
とにかくこの作戦にかけるしかない。
僕はもう一度ロックゴーレムへと突撃をした。
ガルドは僕の動きを見て、すかさずロックゴーレムの注意を自分へと向けさせてくれた。
僕らは何度も前衛としての連携を練習してきたので、その辺はちゃんと機能していた。
思惑通りロックゴーレムはガルドへ攻撃を加えるが、ガルドの大盾がそれを阻む。
僕は注意の逸れた視界の外側からジャンプして、最短距離で目標箇所を攻撃する。
また少しヒビが大きくなったが、やはり最初と比べると掌の痛みが激しくなってきていて、思うような打撃を加えられていない。
一旦体制を立て直すためにガルドの傍まで戻り、掌を見てみると赤紫色に染まり、少し腫れていた。
「痛っ!」と思わず声が出てしまったが、ここで諦めたら僕らがやられてしまう。
僕はもう一度ロックゴーレムに向かって突撃する。
……多分この一撃が限界かもしれない。
痛みのせいで剣を力強く握ることが難しくなっているからだ。
これで決めるしかない!
僕は痛みを堪え、初撃と同じ……いや、それ以上の力を振り絞り、渾身の一撃を加えた。
「ガンッ!!」と今までで一番大きな打撃音がしたのと同時に、あまりの痛みに「ぐわぁぁ!!」と声を上げてしまった。
カウンター攻撃が来る前に何とか離脱したが、僕の手は限界を迎えてしまった。
ヒビは更に大きくなったが、ロックゴーレムは平然とこちらの様子を伺っている。
……もう打つ手がない。
と、その時ガルドが僕の様子を察して、肩をポンと叩いた。
「アレン、後は任せて!」
そう言ってガルドは僕を庇うように前に出た。
近くで見守っていたローデンさんがその様子を見て、「……決めてみせろ、ガルド!」と呟いた。
何か秘策でもあるのだろうか?
僕は痛みを堪えながら、ガルドが何をしようとしているのかを見守った。
するとガルドは僕と同じようにロックゴーレムへと突撃しだした。
明らかに僕よりスピードは劣っていたが、既の所で見事にロックゴーレムの攻撃を躱し、力強くジャンプ。
僕が打撃を加えていたポイントの上空へ到達すると、大盾をロックゴーレムへ向けた。
ガルドは魔力を大盾ごと全身に纏い、打撃ポイントへ向けて勢いよく急降下し始めた!
その姿は防御……いや、防御兼、攻撃といった感じ。
ロックゴーレムは反撃しようと体勢を戻そうとするが、ガルドの方が僅かに速い。
「震砕!!」
「ドガーン!!」という強烈な打撃音と共に、ロックゴーレムの動きが止まった。
それはまるで、巨大な大槌が頭上へ振り下ろされたかのような一撃だった。
僕が何度も叩いて入れたヒビから、一気にロックゴーレムの全身に大きな亀裂を生み出していく。
その亀裂から光の粒子が漏れ出し、ガラガラと音を立てながらロックゴーレムが崩れ落ちていった。
……防御特化のガルドが見せたその一撃は、あまりに強烈過ぎた。
僕はその光景をただ眺めるしかできなかった。
「まだ甘いが……ようやく震砕をものにしたな。よくやった!」
ローデンさんが今の技を教えていたのか。
僕の知らない所でガルドも頑張っていたんだな。
何とか僕らは魔王種を倒すことができた。
僕の手はボロボロだけど、この戦いで得たものは大きかったと思う。
しかし、ふと疑問に思った。
魔王種を倒したけど、僕の剣に反応がない。
……そうか!
僕はロックゴーレムの残骸に近寄り、ある物を探した。
そう、「石」だ!
ガルドがトドメを刺したなら、きっと魔王種の石があるはずだ!
瓦礫と化したロックゴーレムをどかしながら、必死に探していると、「……あった!」
僕はその石を拾い、ガルドの元へと駆け寄った。
「オルじいの話が本当なら、これはガルドに反応するはずだ!」
そう言って不思議そうに見詰めるガルドに、僕は魔王種の石を手渡した。




