ー4章ー 7話 「見て、盗む段階へ」
数日が経過して、筋肉痛もほぼ治ってきた。
痛みが和らいだ事で身体が動かしやすく、一段と練習に力を注ぐ事できている。
とはいえ錬成した剣の重さやリストウエイトに慣れるにはもう少し時間が掛かりそうなのだが、それでも開始直後に比べればかなりスムーズに扱えてきている。
何でもそうだが、特にこういった修練というのは一朝一夕にはいかないものだ。
積み上げ、積み重ねの先に何かが見えてくるのだと思う。
実際この重たい剣を振ってみて気がついたこともある。
僕は今まで腕だけで剣を振っていたようだ。
普段使っている剣は今回錬成した剣よりも扱い易い。
つまり、ある程度体に馴染んでいるという事だ。
だから腕の力だけでも対処できてしまう。
所がこの重量のある剣を腕だけで振ろうとすると、制御が途端に難しくなるなるのだ。
制御しようとするなら、まずは足腰を鍛え、効率よく動かす事を体で覚えなければならない。
その事を今回気付かされたのだ。
オルセアの動きを最近観察しながら練習しているのだが、彼は腕のみで剣を振っていない事が見て取れた。
全身の動きを効率よく連動させて剣を降っている。
つまり、剣を自分の体の一部とした場合に、最大出力が出せるように体全体を細部に至るまで効率よく動かしているのだ!
よく職人気質な人は「見て覚えなさい」と言うが、確かにその動き自体を懇切丁寧に話をされた所で、再現できるかは実に微妙だ。
そして何より人から聞いた訳でもなく、何故できないのかを出来る人が実際にやっている姿を見て発見できたのは何よりの収穫だ。
きっとこの練習方法を考えていなければ、その事に気がつく事はなかったのかもしれない。
オルセアは優しい人だから、聞いたら教えてくれるかもしれないが、今回ばかりは何も語ろうとしない。
もうお前はその段階ではないと言われているような気がするのだ。
今はとにかくこの重たい剣を自由自在に扱えるようになる為に、身体をどう動かせば良いのかを一振り一振り研究している。
そんな事をしていた時、森の奥の方から金属音が響いてきた。
僕は手を止め、その音のする方へ足を進めた。
するとローデンさんとガルドが練習をしていた。
普段は家の傍で練習をしているのをよく見かけていたので、何だか不思議な感じがした。
ローデンさんは大槌を持ってガルドに攻撃している。
いつも大盾を持っている印象なので、少し違和感があるのだが、その動きたるや……まるで武人だ!
本当に防御特化の人なのかと目を疑うほどの身のこなし。
ガルドも必死に防御しているが、「ドガーン!!」と強烈な音が森に反響して、その一撃の凄まじさが離れていても伝わってくる。
あんなのをまともに受けたら、吹き飛んでしまうのではないかと思うほどの威力。
それを大盾で凌いでいるガルドもかなり凄い。
実戦形式でガルドの成長ぶりを見るのは初めてだけど、これは想像以上だ……。
「ガルド、だいぶ息が上がってきたな。だが、まだまだいくぞ!戦場はこんなものではない!」
ローデンさんの気迫は凄まじかった。
普段話している時は、実直で誠実、男気のある人で、割と穏やかな話し方をする人だ。
だが、今の印象は「鬼」である。
オルセアとはまた違った種類の厳しさを感じる。
師匠が違うとこんなにも変わるものなんだな。
こんな厳しい教えの中でガルドは成長してきたのか……僕も負けてはいられない!
僕ももっと頑張らなくてはという思いを新たにした。
その時、ローデンさんとガルドが居る後方に巨大な影が迫ってきていた。




