ー4章ー 5話 「無影への道」
あれから数日、僕はオルセアから継承する天断の前段階である無影の習得に向けて、ひたすらに剣を振っていた。
あの一瞬で間合いを詰める脚力、そこから繰り出される神速とも言える斬撃。
オルセアは瞬発力を鍛えるのと、僕の剣が空気に思える程度の重さになるように鍛えろと言っていた。
要するに体全体を鍛えなければあの技は出せないという訳だ。
今使っている剣は鉄の剣。
これは石刃に比べて少し軽い。
つまり、これで練習していても全くとは言わないが、あまり意味がないという事だ。
そして瞬発力。
これに関してはダッシュを繰り返したり、走り込んだりしているが、こんな事であの動きができるとも思えない。
コツがないかを聞いてみたが、「ここからはアレンが越えるべき壁だ」という事で、教えてはくれなかった。
秘奥義を継承するという事は、きっとそういうものなのだろう。
僕はこの数日、どうすれば良いのかを考えながら練習を繰り返していた。
そしてふと思った。
……錬成を使おうと。
まずは石を握り、剣にする。
この剣で戦うわけだから、形状は同じ物の方が良いだろうという判断だ。
「この剣の重さは何キロ?」
「およそ7.5キロです」
実はあれからAIのような声の性能が上がったようで、重さや僕が見た物を判断できるようになっていたのだ!
当時は僕が想像したものしか作れなかったので、錬成が格段に楽になった。
なんて素晴らしい性能なのだろう!
それはさておき、7.5キロという事なので、これを空気……つまり持っていないと感じるくらいにならないといけない訳だ。
いきなりそんな風にはならないだろうから、まずはこれよりも少し重い剣を錬成してみることにする。
錬成を開始すると、光と共に鉄製10キロのレプリカ剣が姿を表した。
地面に「ズシンッ」と突き刺さった剣を抜こうとするが………重い!
「うおぉぉぉ!!」と唸りながら両手で何とか引き抜いたが、反動で転んでしまった。
息を切らしながら立ち上がり、剣を一振りしてみるが、完全に弄ばれてしまった。
……この壁、なかなかに分厚いではないか!
乗り越えるはずの壁があまりに頑強である現実に、心を砕かれそうになったが……負ける訳にはいかない。
それから僕は一心不乱に扱いきれていない鉄の剣と、日が暮れるまで格闘し続けるのであった。
翌日目覚めると、身体中……特に腕の筋肉痛に襲われながら、無影の練習に励もうとしたのだが……。
今日は剣を持ち上げる事ができなかった。
そこで僕はプラン変更をすることにした。
……そう、今日は瞬発力の練習をしようと。
筋肉の悲鳴を無視してハードな練習をすると、かえって成長を阻害しかねないという判断をした。
……まぁ、筋肉痛で剣を持ち上げられないのが正直なところなのだが。
そんな訳で、瞬発力を上げるために必要な錬成を始める事にした。
恐らくこの世界にはまだ存在していないかもしれないアレを。




