ー3章ー 29話 「備えるという日常」
あれから数日が経った。
オルセアからの休暇命令が解け、剣の練習を少しずつ再開している。
無理をしない程度にやっているが、6歳という肉体は思いのほか回復が早く、本当はもっと早くに再開できていたのだろうと思う。
特に心配されていたのは心の問題の方である事は分かっていたが、あの時の事を思い出してみても今はキチンと受け入れられている自分がいた。
次にまた人型の魔物が現れたとしても、気持ちの切り替えができる。
そして時間が空いたら壁作りをしている。
グランゼル側から着手しているのだが、最初に作っているのは入口となる門からだ。
僕はこの門を作りながら、いずれ自警団みたいな組織があったら良いなと考えていた。
平和であればそれで良いのだが、国が違えば考え方も違う。
この村は好戦的であって欲しくないし、そういう人達が集まっているわけでもない。
でも現実はそう上手くはいかないもので、こちらが望んでいない悲劇が訪れる事だってある。
だから備える、そのためには自警団程度の組織があるべきだと考えているのだ。
ここに門番が二人、交代制で常駐しているだけでも抑止力にはなる。
話を聞いているだけだけど、少なくともグランゼル王国は何をしてくるか分からない国という印象だ。
オルセアや勇者パーティのみんながグランゼル王国をみかぎった理由からしても、政治的、軍事的に疑念を抱いたからだろう。
実際、国民である中流階級以下の人達が続々と国を捨て、この森にある村へとやって来ている。
当然グランゼル王国からしてみれば面白くはないだろう。
だが僕らの敵はあくまで魔王。
人と争いたいなんて微塵も思っていない。
そうならないように願いを込めてこの門を作っている。
今回使っている素材は石、木材、鉄の三つだ。
イメージとしては中世の城にあるような門や壁。
実際に見た事はないけど、よく砲撃とかで崩れてしまっている事から察するに、頑丈さと厚みが足りないのではないかと思う。
まぁ当時は全て人力で作っていたのだろうから、限界があったんだろう。
その点僕は想像で解決できる。
なんて素晴らしいスキルなんだ!
一日にできる回数には限界があるけど、それでも相当早く作れてしまう。
壁に至っては素材が石だけだから、更に作業が捗るだろう。
単なる自己満足なのかもしれないが、それでみんなが安心して暮らせる環境になるなら言うことはない。
そんな事を考えながら僕は日々を過ごしている。
やらなければならない事が多いけど、実に充実した毎日だ。




