ー3章ー 28話 「壁という選択」
錬成を使えば壁を作ることは簡単だ。
それによって村の人達の安全は一定確保できる。
外からの脅威に対してもある程度の抑止になるだろう。
今の所この森に村があるなんて事は、ごく一部の人しか知らない。
だからこそ今のうちに作っておく必要がある。
しかし問題はどの程度の広さを確保しなければならないのかだ。
こればっかりは僕の判断では決められない。
一番村作りに尽力してくれている大工さんの意向を聞かなければかえって迷惑を掛けてしまう。
本当は大工さんたちが壁を作った方がよいのだろうけど、今はそんな余裕はないだろう。
色々と考えながら大工さんの元へ到着するなり、ラッツさんから聞いた移住者の現状と大工さんの考えを聞いてみた。
すると大工さんもどこまで広げるかを悩んでいたらしい。
そこで僕は、今移住する事を決めている100人で区切って、後から決めた人はその壁の外側にしてはどうかと話した。
僕の考えでは、壁を何重かで仕切りながら拡張していくというのが、防衛的にも良いのではないかと思っているのだ。
敵となるのは何も魔物だけとは限らない。
特にどこかの国と敵対しているという訳ではないけど、この先そうならないとも限らない。
魔物が居なくなった世界で覇権を握るのは人間だろう。
誰もが平和を望み、争いのない世界であれば問題ないのだが、人は時に過ちを犯す生き物だ。
その時の備えが全くないのは余りに楽観的過ぎるのではないかと僕は考えている。
そのための壁でもあるのだ。
普通に考えて、グランゼルから2万人もの人が移住してきたらもはや村規模では収まらない。
それは街……いや、小国を名乗っても差し支えないくらいになるのではないだろうか。
もっと言えば、噂を聞きつけた他国からも移住者が現れる可能性もある。
何もない所から築き上げている村を、最初から強固な作りにしておいた方が後々困らないのではと議論を重ねた。
「坊ちゃんは随分賢いですね。まるで大人の意見を聞いているみたいだ」
……少々やり過ぎたか。
流石に6歳児の意見としては余りに考え込まれた意見だった。
だが後から区画整理なんて面倒な事は避けるべきだ。
大工さんも納得したのか、僕の意見に賛同してくれた。
翌日、大工さんがおおまかにこの位のスペースがあれば残りの家を建てられるという目印を付けてくれた。
それを基準として壁を作る事にした。
まずはグランゼル側からだ。
移住者を受け入れている事を快く思われていない可能性は捨てきれない。
それを考えるとこちら側から作るのが妥当だろう。
それにしても大規模な工事になりそうだ。
水路を作った時の比ではない。
暫く剣の練習が出来ないなら、錬成の腕を磨いておくのが良いだろう。
僕は一人、途方もない計画の着手になぜかワクワクしていた。




