ー3章ー 26話 「石に残された選択」
魔王になる前に命を落とした魔物がみせる最後の抵抗……石を残す意味は何なのか。
一番詳しいであろうオルセア自身も、推測でしかないと言うが、一体どういう意味があるのだろう。
「あの石は、恐らく倒した魔物自身ではないかと思っている」
全く理解が追いつかないが、オルセアの話ではこういう事だ。
魔物は石になり、人間が触れると魔力反応を見せる。
その時これはその辺に転がっている普通の石ではないと気が付く。
更に特性が一致すれば武器になり、それを使って魔物を倒せば石は魔物を吸収し、更に強化される。
それは魔王への魔力供給を妨げると同時に、いずれ魔王自身を倒す脅威となり得るということらしい。
しかしそれは人間が拾わなければそもそも意味はないと思うのだが……。
オルセアはかつて凶悪な魔物が居たとされる場所の調査に行った事があったそうだ。
その魔物を倒したのはオルセアではないそうなのだが、倒した人は石を持っていなかった。
調査に向かうと以前よりも魔物の数が激増していたらしい。
それは恐らく拾われずにその地に留まった石が魔物を生み出し、新たな魔王種を作りだそうとしているのではないかと言う事だ。
そうなれば自分が果たせずとも、自らが生み出した魔王種に魔王を討伐させ、頂点に君臨する事ができる。
そこまでして魔王になろうとしているのは、人間側としては脅威でしかない。
そして石になるのは、カモフラージュではないかとオルセアは言う。
推測では人間に拾われ強化された武器として魔王を倒すか、石として留まり魔王種を生み出して魔王を倒すかだ。
人間が拾った場合、魔王を倒せたとしても魔物の脅威は残ってしまう。
無念は晴らせるだろうが、こちらはリスクが伴う。
だから石コロとして擬態し、景色に溶けこもうとしているのではないかとオルセアは言った。
人間に拾われるというのは、最悪の場合でも魔王を倒せる可能性として見出した手段なのだろう。
しかし拾われるのは本望ではないので、石となり擬態して武器に変わるという秘密を隠そうとしたというわけか……。
だが一つ疑問が残った。
「この石から魔物は生まれないの?」
石が魔物を生み出すなら、この石だって生み出している可能性があるのではないかと思った。
だがオルセアの見解ではそれはないと言う。
石が武器に一度変化した時点で、武器として魔王を倒すという決断を石が下し、魔物は生み出さず石に力を蓄えさせるようになるとの事だ。
現にこの村にはオルセアと僕が石を持っている。
しかし魔物が村に発生したことは一度もない。
それが何よりの証拠だとオルセアは言った。
……この石は既に武器として魔王を倒すと決めているということか。
僕たちの生活を脅かす魔物と利害が一致しているのが何だか複雑な気分だけど、魔王を必ず倒さなければならないのは間違いない。
オルセアが語った石についての話は、この後僕らに新たな力をもたらす事になる。
……それはもう少しだけ先の話だ。




