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ー3章ー 23話 「代表オスカー・フェルド」

ボルンが僕の錬成した車や荷車の販路を見つけてきた。


それ自体は良いのだが、数少ない職人さんの仕事を僕の錬成が奪いかねない。

ボルンはニコニコしているが、もし簡単に決めてきたのであれば無用な争いを招きかねない。


それは僕の望む所ではないし、そんな事をしてはいけない。


その辺りを踏まえ、一体誰と交渉してきたのかを聞いてみることにした。


「交渉して販売を許可した人は誰なの?」


ズバリ確信に迫った一言だったが、ボルンは動じていなかった。

寧ろ聞いてくれてありがとうと言わんばかりの表情だった。


交渉相手に余程の自信があるのか、それとも別の要因が……?


「ご安心ください。交渉……いや、アステルド連合国で売って欲しいと言っておられるのは、連合国代表のオスカー・フェルド様です」


……え……えぇ!?

商人と交渉したんじゃないの!?


その前に連合国とはいえ、いち国家元首と話をしてきたのか?


正直今までボルンの事をしがない行商人だと思っていだが……考えを改める必要がありそうだ。


……まさか国の代表とコネクションがあるとは。


しかし何故代表のオスカー・フェルドさんは販売を許可したのだろう。


そこまで供給が逼迫しているのか?


ボルンによると、車を作っている職人さんが高齢化しているそうだ。


そこで連合国政府は若い人材を育成する為に国を挙げてこの問題に取り組んでいるらしい。


しかし技術の継承には時間が掛かる。


新たな担い手が育つまでの間も、注文が殺到し続ける状況は容易に想像できる。

一方打開策がなかなか見つからないため困っていたのだそうだ。


そこへボルンが僕の錬成した車で商談に現れた。


当初ボルンは食材等の商談をする為に訪れただけだったのだが、偶然街に居合わせた国の重鎮から話を持ち掛けられ、代表のオスカー・フェルドと急遽話し合いを行う事になったのだとか。


ボルンが僕の錬成能力を乱用しようとしている訳ではないのは分かるが、本当に大丈夫なのだろうか?


「でも僕が車をたくさん作ったら、職人さん達は困らないの?」


一番懸念している事を聞いた。


もしキチンとした返答が貰えないのであれば、この話は受けられない。


職人さんだって家族がいる。

その人達も巻き込む事になるなら、この力は使うべきではない。


しかしボルンは笑顔で「その辺りの話もちゃんとしてありますよ」と言った。


オスカー・フェルドさんの考えはこういう事みたいだ。


僕が錬成した車や荷車は、精巧に作られているが、手作り感はないらしい。

なので、本物志向の貴族や王族、大商人といった人達からすると物足りなく感じるのだとか。


一方職人さんの作った物は、一つひとつが丁寧な手作業で作られており、それそのものが芸術品として扱われているので、僕の錬成した物とは比べ物にならないらしい。


まぁ比較する対象としてどうかとも思うけど。


要するに同じ車でも違いがあるという事だ。

ではなぜ僕の錬成する車が必要とされたのか。


それは今起こっている需要と供給のバランスを戻す為という側面もあるそうなのだが……。


一般庶民にも車を使えるようにしたいとオスカー・フェルドさんは考えているらしい。


つまり、高級車とファミリーカーみたいなものだ。


僕は想像できればどちらも作れる。

しかし手作り感はない。


なので、貴族や王族、大商人達には代替車として使ってもらう。

或いは子供たち等に高級仕様の錬成車を使ってもらえる。


一般庶民の人達には、安価で手に入る位の車を作って使ってもらおうという考えだそうだ。


……僕としてはどちらも高級仕様で良いと思うのだけど、そこは差を付けないと貴族達がうるさいのでダメなんだとか。


それに価値の崩壊を招きかねないという理由もあるらしい。


いずれにしても庶民の人達は、徒歩での移動が一般的で、車があればもっと人々の暮らしが豊かになるだろうとオスカー・フェルドさんは考えているようだ。


「オスカー様が、是非アレン坊ちゃんとお会いになりたいと申していました。いかがです?」


アステルド連合国か……どんな国なんだろうな。


僕はここしか知らないから気にはなるが……。


暫く考えた後、僕はボルンに返事をした。

今の立場を踏まえた答えを。




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