ー3章ー 22話 「価値の重さ」
ボルンがまさかの商談を成立させてきた。
アステルド連合国へ出発する前、僕の錬成した車や荷車を見て「売れる」みたいな事を発言していたのは覚えている。
そもそもそういったつもりで作ったのではなく、ボルンがアステルド連合国へ商談に行くというので、恥ずかしくないようにという思いから作ったのだ。
荷車に関してはベルネさんの設計図通りに作っただけだし。
話によると僕が作った荷車や車のデザインが、この世界で作られている物とは違い、機能面でも優れているという事らしい。
……そんな大した機能を付けた覚えはないのだが。
この車を作っている職人さんが少ないという話は以前に聞いていた。
車を欲しがるのは主に大商人クラスの人や、貴族、王族といった一部の人達。
所謂金持ちという人種だ。
その思考は人と違う、より良いものを求める傾向にあり、色々と注文を付けるため完成までに時間がかかるらしい。
その姿は容易に想像できる。
この世界で車を作っている職人さんは、荷車は作らないそうだ。
まぁあれこれ注文を付けられたら作りたくても作れないのだろう。
商談相手が一番驚いたのは、完成度の高い車と荷車両方が新品の状態であった事らしい。
荷車は壊れやすいみたいで、数年に一度買い換えるか自分で修理してボロボロになるまで使うかのどちらかだと言う。
殆どの人は荷車を新たに購入出来ないので、後者を選ぶそうだ。
さらに言えば再購入をしたくても、納品されるまでに数年は掛かるらしい。
物を大切にするのは良い事だが……荷車ってそんなに高いの?
こちらの貨幣価値が分からないので値段がよく分からない。
そこでボルンに尋ねてみると「荷車一台でボロ家が。荷車を二台でそこそこの家が買えます」だそうだ。
……僕も後者を選ぶだろう。
ボロボロになるまで使って、どうしようもなくなってから再購入するのがこの世界の常識みたいだ。
だからボルンの荷車もボロボロだったのか。
そしてベルネさんがわざわざ設計図まで容易して僕に錬成をお願いしたのもこれで腑に落ちた。
ここまでの話を聞いている限り、需要が高く値段も高い事が分かった。
しかし荷車がそんなに高いとは思わなかったが……そうなると車は一体いくらになるんだ?
「坊ちゃん……車一台で、屋敷が建ちますよ」
……言葉を失った。
屋敷が建つって、どんだけ高価なのさ!?
それだけに作れる職人が少ないっていうのも頷ける。
それだけの価値ある車に仕上げなければ、まず売れないし、売れたとしても不出来であれば良い笑い者にされてしまうが故に、誰も買わないという訳か……。
何だか恐ろしい現実を聞かされた気分になった。
それはそうと、その荷車や車が売れると言っていたけど、一体誰と商談してきたんだ?
別に錬成するのは問題ないけど、そんな事をして数少ない職人さんの仕事を奪ってしまう事にならないのか?
僕は人の仕事を奪うような錬成の使い方はしたくない。
確かにこの村にはお金が必要だ。
その為に錬成が役に立つなら嬉しい限りだが、人の生業を奪ってまでやる事ではないと思う。
僕はその辺りを含め、どのような商談をして来たのかをボルンに問い詰めることにした。




