ー3章ー 14話 「緩衝地帯の真実と、僕らが背負う未来」
僕らは何と対峙しなければならないのか。
過去に一体何があったのか。
現状どういった事になっているのか。
知らなければならない事を、僕らはまだ知らない。
まだ6歳の僕らに理解できるのか分からなかったオルセアは、もう少し歳を重ねてから話そうと思っていたようだ。
正直その考えは正しいと思う。
だが今事実を知っていれば、より早く向き合う事ができる。
逃れようもない事であるならば尚更だ。
そんな思いで静かに語り始めるオルセアの話に耳を傾けた。
「もう少しアレンが大きくなってからと思っていたが……分かった。しっかり聞きなさい」
そう言ってオルセアは全てを話し始めた。
最初に話たのはこの森についてだった。
普通に考えれば森に暮らす意味なんて、何かに追われて身を隠すか、都会暮らしに疲れてスローライフを求めている人くらいだろう。
オルセアの過去を少しだけ知っているから、前者に当たるのかもしれないが、別にアステルド連合国でも良かったようにも思える。
それをしなかった理由は、この森の意味が関係しているのだと言う。
この森はかつて魔物の巣と呼ばれ、人々に恐れられていた場所。
当然今も人々はそういう認識で捉えられている。
位置的に見ても西にアステルド連合国、東にグランゼル王国とベルムランド王国があり、この森は天然の緩衝地帯としての役割りを果たしているそうだ。
その為どの国もこの領土だけは治めないという暗黙のルールを敷いているらしい。
ここを自国の領土としても、魔物が他国を襲う事態になれば、当然森を治めた国の責任になってしまう。
そんな危うい場所を奪う物好きな国はいない。
しかし実際は殆どの魔物は死滅していて、この森に生息している魔物は極めて少ない。
更にその魔物は魔王封印の影響で力を失っている状態だと言う。
この事を知っているのはオルセアと勇者パーティのメンバー、ボルン商会だけらしい。
オルセアや勇者パーティは当時の立場を利用し、この森の調査を独自に行っていたらしい。
他国も魔物の大侵攻の対処でそれどころではなく、調査をしている事実を知ってはいたが、魔物に関する事であった為に黙認していたようだ。
そんな事ができたのも、オルセアや勇者パーティの信頼が他国にもあったからなのだろう。
普通に考えれば国がこの森の調査を命じる事事態が、争いの火種になり兼ねない。
当時の状況があったからこそ、この森の実態を把握できたのだと言う。
そして今もこの森の実態を知らないからこそ、ここが一番安全だと判断したそうだ。
考えてみればオルセアも勇者パーティのメンバーも、その存在は正に英雄……国からすれば最強の兵器であり、喉から手が出るほど欲しい存在だ。
何処かの国に身を寄せれば、それもまた争いの火種になり兼ねない。
そう考えたオルセア達は緩衝地帯である、どの国も手を出さないこの地に移り住んだのだと言う。
自分達の置かれている立場と政治的関係性を考慮した判断に、正直感動した。
流石は英雄と呼ばれているだけのことはある。
魔物は未だ居るという事らしいが、それでもここより安全な場所はないと、話を聞いた今は理解できる。
そしてもう一つ気になるのが、魔王封印についてだ。
これが最も気になっていて、僕たちがいずれ対峙する敵となる存在。
「封印した」ということは、オルセア達でも倒せなかったという事なのだろうか?
その真実をオルセアはゆっくりと語り出した。




