ー3章ー 12話 「錬成と建築の狭間で」
錬成の可能性を探る意味でも、作ったことのない物を試してみるのは大事な事だ。
想像しただけで物が作れてしまうなんていうのは、正直あまり多用してはいけないと思う。
ただ、この村にはない物が多過ぎる。
ただの森だった場所に村を築いているのだから当然なのだが。
物資を他所から運んで作るにしても、道がちゃんと整備されているわけでもないし、そもそもそんな資金力はこの村にはない。
今回ボルン商会の荷車や車を錬成した訳だが、野ざらしというのは作った本人としては少々忍びない気持ちになる。
そこで専用の格納庫や馬小屋を作ってあげたいと考えているのだ。
しかし本来この仕事は大工さんに依頼すべき案件。
建物を錬成したら大工さんの仕事がなくなってしまう。
とは言え、大工さんはこの村で建築関係の仕事を全て担当してくれている。
その為こちらの要望を直ぐに対応することは難しいのが現実だ。
王都の情勢を聞く限りでは、今後更に大工さんたちは忙しくなるだろう。
そうなれば村の発展は遅れに遅れてしまう。
ならば僕の錬成の力は、あくまで補助という立ち位置で運用するのがベストではないだろうか。
僕は色々考えた結果、大工さんと相談する事にした。
大鋸屑の香りが漂う大工さんの工場にお邪魔して、最近の仕事状況について聞いてみた。
すると、やはり住居をもう少し増やしておかないと、今ある50軒程の家が直ぐに埋まってしまいそうだという事だ。
木を切りながら建築スペースを確保したり、家を建てたり道を整備したり……。
仕事があるのは良い事だが、余りにも多忙を極めている。
そのため大工さんはボルンにお願いして、王都から移住予定の大工さん仲間をできるだけ優先して欲しいと要望を出しているそうだ。
それでも間に合うかどうかという話みたいだけど。
やはり格納庫や馬小屋を依頼する余裕はなさそうだ。
ただ僕は建築の素人。
どの様に建物を作ったらいいのかが全く分からない。
そこで大工さんに事情を説明して、設計図を書いてもらうことになった。
暫くすると家の設計図よりは簡単らしく、忙しい中ササッと書き上げてくれた。
「いやぁ、アレン坊ちゃんが手伝ってくれるならこっちも助かりますよ!」
そう言って僕に格納庫と馬小屋の設計図を書いてくれた。
幸いこの村にはまだお店は1軒だけ。
それもボルンの奥さんが経営している食料品のお店だけだ。
その隣に作ってみてはどうかということで、それを見越した設計図を書いたそうだ。
正直どこに建てようかまでは考えていなかったので、有り難い配慮だった。
僕は大工さんにお礼を行って早速現地へと向かった。
到着すると、やはりお店がポツンと一軒だけ。
たまに利用しているから分かってはいたが……何とも殺風景だ。
ここに格納庫と馬小屋が出来たら少しは良くなるかな?
それよりも問題はちゃんと錬成できるのかだ!
まずは格納庫から。
お店の横に建てれば何かと便利だろう。
僕は書いてもらった設計図を細部までじっくりと確認し、イメージした。
初めての試みだけに祈るような思いで錬成を開始。
……頼む、上手くいってくれ!
すると、いつもの様に眩い光を放ちイメージ通りの建物が姿を現し始めた。
やはり建物も錬成できたか……これは使い所をよく考えよう。
そうこうしていると、格納庫が完成した。
大工さんの設計図通りの立派な建物だ。
これを人の手で作っているのだから、改めて思う……大工さんは凄い!
僕は静かな商業区画の真ん中で、大工さんが建てたお店と錬成した格納庫を眺めながら、人の手で作り出した埋めがたい温もりの差を改めて感じていた。




