ー3章ー 11話 「動き出す商会と、二人の弟子」
僕の錬成した荷車に目を輝かせる一番弟子の女性。
何よりボルンにお弟子さんがいたのが少々驚きだけど。
ボルンによると、一番弟子の女性はベルネさん。
ボルンがグランゼル王国に取引先を変える際に、縁は残しておこうとベルネさんにアステルド連合国との取り引きを引き継いだそうだ。
そのお陰で今もアステルド連合国とは繋がりがあるそう。
男性は二番弟子ラッツさん。
彼はグランゼル王国でボルンに最近弟子入りしたばかりの新人さんだそうだ。
馬の扱いには長けているが、商売の知識に関しては、まだ殆ど知らないのだとか。
何にせよ二人ともボルンに似て、人当たりが良いのは師匠譲りと言ったところだろうか。
その辺りは商売人の基本なのだろう。
そしてどうやらこの後、アステルド連合国にボルンとベルネさんの二人で行く予定にしているみたいだ。
ラッツさんは事前にボルンから手渡されている紙にリストアップされた移住者を、ここへ連れてくる任務があるらしい。
お弟子さんも色々と大変なんだな……人の事は言えないけど。
「もう1台作ったから、良かったらそれを使ってみて!」
忘れないうちにもう1台の車を見せておかなければ。
僕は新しく作った荷車の隣にある、人の移動用で作った車を見せた。
すると三人は興味深げに車を見始めた。
「坊ちゃん……これは貴族階級の方が乗る車ですよ!?それを私らが使うだなんて……!」
かなり面食らっているけど……やり過ぎた?
話によると、一般的な車はもっと雑な作りで、商人のごく一部の人はこの手の車を使っているらしいが、それは豪商と呼ばれる人だけらしい。
さらに言えば、こういう車を作れるのも、ごく限られた職人だけで、値段も家が1軒建つくらいの値段がするらしい。
……やっぱりやり過ぎたかな?
だがそこにベルネさんが意見を述べてきた。
「師匠、これは我々ボルン商会が飛躍するチャンスかもしれませんよ!この車で現れれば箔が付き、交渉が上手く進むかもしれません」
流石は一番弟子、分かっていらっしゃる。
弟子の一言に少々しり込みをしていたが、ベルネさんの圧に押され使う事を決めたボルン。
この村の発展にはボルンの力が必要不可欠。
新しい取引国との交渉に成功してもらわなければ、オルセアの描いているビジョンが崩れてしまう。
それに今後のボルン商会のためにも、丁度いい機会じゃないか!
未だ苦笑いを浮かべるボルンを必死に励ます弟子たちがいる光景は、なんだかとても微笑ましい。
その後ボルンとベルネさんは馬に車を取り付け、アステルド連合国へ。
ラッツさんはそのままグランゼル王国へと向かって行った。
それにしてもボルン商会が今後ここを拠点とするなら、車や荷車を停める格納庫が必要になるし、何なら馬小屋も作らないとならない。
どこまで増えるかは分からないが、移住者の数も気になるところだ。
大工さんに作るのを頼んでもいいのだが……これ、僕の錬成で作れるんじゃないか?
建物なんて大きな構造物は作った事はない。
だけど車や荷車だってそれなりに大きい。
だったらそれくらい作れても不思議じゃないのでは?
僕は今後更に忙しくなるかもしれない大工さんに代わって、新たな錬成の方向性を考えついたのだった。




