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ー3章ー 9話 「移住者たちと新たな錬成」

翌朝、興奮冷めやらぬ僕は早起きして剣の練習をしていた。


朝の清々しい風と朝日の優しい暖かさが、今日一日の活力を与えてくれる。


暫くの間はオルセアも同伴するのだが、イノシシ狩りの担当として任命された。

修行の一環にもなるし、非常に名誉ある有り難い話だ!


そのうちガルドも加えるという事みたいだが、師匠であるローデンさんのお許しが出てからという話。


前衛として早く二人で連携してみたいものだと、今からワクワクしている。


そんな事を考えていると、聞き馴染みのある馬の蹄の音が遠くから聞こえてくる。

その正体は行商人のボルンだ。


まだ余裕はあるけど、そろそろ新しい調味料を仕入れても良いかなと考えていた所だったので、良いタイミングで現れてくれたと思った。


しかし今日は商売で来たのではなさそうだと、直ぐに気がついた。

何故ならいつもの荷車に、人がたくさん乗っていたからだ。


最近は色々な人がこの村に現れるが、今回は何なのだろうか?


勘ぐって見たところで当たりはしないので、ボルンに直接聞いてみた方が早そうだ。


「ボルンさん、この人達は?」


大人や子供、お年寄り、性別もバラバラ。

これはひょっとして!?


「ここへの移住者の方々ですよ。王都の情勢が変わりそうなので、先に決断されたご家族から順番にご案内しています」


以前話ていた事が、いよいよ現実となってきたって事か。


今はまだその兆しがあるって段階だろうけど、土壇場で動きが取れなくなる前に移住しようと思った人達ってことなのだろう。


こちらとしてみれば村らしく賑やかになるので大歓迎だが、王都を離れるとこを余儀なくされた人達の心中は複雑だろう。


ここは自然が溢れる豊かな場所ではあるが、お店は一つしかないし、自給自足の息を脱していない。


何でも手に入る王都のような近代的豊かさとは、かけ離れた所だ。


その辺りの問題も早く解決出来ればよいのだが。


そうこうしているとオルセアがやって来て、移住者の人達を連れて居住区へと案内しに向かった。

大工さん達が何年も掛けて作った家を気にってくれると良いけど。


すると何故か一人の男性だけがその場に残っていた。


この人は移住者ではないのだろうか?


疑問に思っているとボルンが少し話しづらそうに声を掛けてきた。


「アレン坊ちゃん……その、お願いがあるのですが……」


一体どうしたのだろう。

何か言いにくい困り事でもあるのか?


話を聞いてみると、この男性はボルンのお弟子さんだそうだ。


ボルンはこの後アステルド連合国へ向かい、今後の取り引き交渉をしに行くらしい。


ただ、今持っている荷馬車はこれ一台。

馬は王都に居るらしいが、肝心の荷車がないという事で、僕に錬成で荷車を作って欲しいという事だった。


王都からの移住を希望している人が多いので、今の荷車はそれ用に使う事になり、新たに商売用の荷車が必要になったという訳だ。


なるほど、それは荷馬車一台で対応するのはちょっと難しいな。


「お礼に坊ちゃんには色々とサービスさせてもらいますので」


流石は商人……抜け目がない。


交渉成立って事で、僕は早速荷車を錬成しようとしたのだが。


ボルンがまだ何か言いたそうにしているので聞いてみると、懐にしまっていた紙を取り出し僕に見せてきた。


それは荷車の詳細が書かれた設計図だった。


どうせ作って貰うなら自分が思う最高の装備を有した荷車にして欲しいという事か。


……そこも抜け目がないな、ボルンよ。


まぁお世話にはなっている訳だし、そのくらいは大目に見ましょう。


改めて設計図を細部までしっかりと見た上で、完成した荷車を想像した。


商品棚や折りたたみ式の台、土台を固定する金具や……って待った!

金具って金属じゃないか!


僕は木の素材しか作れなかったと思うのだが?


だけどよく考えてみたら最後に錬成したのは三歳の頃だったよな。

今は六歳……年齢制限がどうとか言っていたから、ひょっとしたらイケるのか?


僕は未だ正体不明のAIみたいな声に聞いてみることにした。


すると、「現在の年齢では金属を限定的に扱う事ができます」という事らしい。


本格的には無理っぽいけど、設計図を見る限りでは金属は留め金くらいで、基本は木の素材だ。


これなら何とかなるかもしれない。


僕はもう一度細部に至るまで正確にイメージして錬成した。

するといつも通り何もない空間が光を放ち始め、錬成した荷車が徐々に姿を現した。


久しぶりに錬成したのだが、設計図があったお陰なのか今までよりもクオリティの高い荷車が完成した!


思わず「おお!」と驚きの声が漏れた。


まさか今すぐに作って貰えると思っていなかったボルンは、僕にお礼を言ってお弟子さんと二人、急いで王都へと戻って行った。


……予定を狂わせちゃったかな?


それでも喜んでくれていたから問題ないか。


僕は朝食の前にもう少しだけ剣の練習をしようと、広場へ向かった。


今日は何だか賑やかな一日になりそうだ。






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