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ー3章ー 5話 「静かな継承」

「剣聖」「称号」「英雄」これだけを聞けば、人がそう簡単にはなし得ない事をしたという、素晴らしい名誉だ。


しかしオルセアのソレは、表向きには華やかな栄誉だが、裏では軍事利用、外交圧力など、国が都合よく利用できる道具としてのものだった。


オルセアの実力は、まさに「剣聖」と呼べるものなのだろう。

実際に凄腕のお弟子さんが居て、魔物の脅威から世界を救った事実がそれを証明している。


これからオルセアはどうするつもりなのか。

何を思いこの森へ移り住んだのか。


僕たちは静かにオルセアの言葉に耳を傾ける事にした。


「俺は少し歳を重ね過ぎた。この先の事はお前たちに任せる……そして未来は子供たちに委ねたい」


この時オルセアは53歳……まだ若い様に思うが、第一線で戦うには無理があると分かっているのだろう。


その言葉をメルフェリアさんとローデンさんは静かに受け止め、胸に刻んでいた。

オルセアが見出し、育て、認めた人達に受け継いだ瞬間でもあった。


そして僕たちがかつての勇者パーティとしての立ち位置を担う事になるのは、容易に理解できた。


国に縛られず世界を守る。

それが僕らに課せられた使命なのだろう。


6歳にしてその運命を背負うには余りに重い内容だが、いずれその時はやって来る。

今はその時に備えて学び、力をつけるしかない。


僕たち四人の目には確かな覚悟が宿っていた。


「セリオンの代わりは俺がやる。……アレン、お前にじいの全てを教えてやるからな」


本当は勇者セリオンに僕を託すつもりだった……でもセリオンは亡くなってしまった。


オルセアは優しく僕に言ったが、その眼差しは誰よりも熱く、気迫に満ちていた。


「そう言えばリゼルはまだ来ないのか?」


オルセアが口にした人物。

リゼル・クロイスという人物は、勇者パーティのヒーラーとして活躍した人らしい。


ローデンさんの話では、途中まで一緒にここへ向かっていたそうだが、「ちょっと仕掛ける」と言い残し来た道を引き返したそうだ。


……何を仕掛けるというのだ?


謎に満ちた言動だが、リゼルさんは昔からそういう人だと笑っていた。


「遅くても明日には来るだろう」と話すローデンさん。


ヒーラーであれば、ルナの師匠となる人だ。

一体どんな凄い人なのだろうと、僕は自分事のようにワクワクしていた。


結局この日、リゼルさんは現れなかった。


僕らは夕食を食べながら、今後について話していた。


主に僕らの修行内容が語られていたが、他にもこの村の在り方についても話していた。


オルセアは昔、この森に村を作ると言っていた。

そしてそれはほぼ形となった。

あとはここに人が移り住みさえすれば、もう立派な村と呼べるだろう。


そしてこの村のもう一つの顔……それは拠点だ。


オルセアは国には組みしない姿勢を貫くつもりのようだ。

それは「剣聖」という称号が持つ意味を聞いた今となっては、十分過ぎるくらいに理解できる。


ただそれでは物が手に入らなくなってしまう。


そこでオルセアはボルンと話し合って、昔ボルンが取り引きをしていた、アステルド連合国という国に切り替えると決めたそうだ。


このアステルド連合国は、異なる文化の小国が一つになった国で商人も多く、グランゼル王国よりも安くて品質も良い物が多く取り引きされているそうだ。


それなら今もその国と取り引きすれば良いのに……と思ったのだが、どうやら距離の問題から鮮度を保つのが難しい物を仕入れる事が出来ないため、グランゼル王国に切り替えたのだそうだ。


今後の取り引きの課題は「鮮度」という事になりそうだ。


更にこのアステルド連合国は中立という立場を取っていて、オルセアを抱きこもうという野心はないだろうとの事。


ボルンもこの村へ引っ越すタイミングで、取り引き先を切り替える良い機会だと話しているそうだ。


少しずつだけど、確実に進むべき道が見えてきた。


それぞれがやれる事をやる。

当たり前の事だけど、何だか希望を感じられた一日だった。







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