ー3章ー 4話 「剣聖と呼ばれた男の代償」
「剣聖」について、遂に口を開いたオルセア。
なぜずっと話したがらなかったのか……。
ようやく明らかになる時が訪れた。
「魔物から国を守った英雄としてその称号を頂いた訳なんだが……」
少し歯切れの悪い口調に誰もが顔を顰めた。
英雄と称賛される事になんの不満があるのだろう?
オルセアの話はこうだった。
表向きは国民から英雄と称えられるというのは分かりきった話。
だがその裏側には、「オルセア」という英雄を作る事で近隣諸国、特にベルムランド王国への軍事的圧力や外交、貿易の優位性へ利用する目的が透けていたのだそうだ。
現グランゼル国王の先代、グランゼル・ハイデン王は、ベルムランド王国と深い絆を構築していた。
そのお陰でグランゼル王国が大きく発展したのだそうだ。
当時まだ王国軍の兵長だったオルセアは、国王の護衛としてベルムランド王国へ赴いた。
その際にベルムランド王女レイア・ベルムランドと恋に落ちた。
その後オルセアとレイアは結ばれ、レイアは表向き王族の地位を返上してグランゼル王国に移り住んだ。
ここまで聞いた限りでは何の問題もなさそうだけど、問題はハイデン王が亡くなった辺りからだったそうだ。
友好国として絆を深めていた両国だったが、ハイデン王が突然病に倒れ、急死したそうだ。
それにより長男であったグランゼル・ドラクマが王位に着く。
当時からドラクマの素行は悪く、ハイデン王も王位を継がせるには問題があると考えていた。
だがドラクマは密かに自分の勢力を築いており、父親が亡くなったのを機に権力を掌握していった。
その辺りからベルムランド王国との絆に亀裂が生じ始めたのだそうだ。
ベルムランドは鉱山から良質な鉱石が豊富に採れる為、近隣諸国との取り引きを行っていた……もちろん、グランゼル王国も。
就任後ドラクマはかねてより狙っていた、このベルムランドの鉱山を自国の物にしようと攻め入った事があった。
しかしベルムランドの守りに阻まれ、失敗に終わる。
グランゼルとベルムランドとの架け橋となっているオルセアにとって、この事態は受け入れ難いものだった。
だが国同士の話に口を挟めず、ただ冷えきっていく両国間の行く末を見守る事しかできなかった。
その後、世界の懸念事項であった魔物の大侵攻が始まり、両国は停戦状態になったそうだ。
いがみ合いは一旦横に置き、世界平和の為に各国が力を合わせ事態に当たった。
その魔物大侵攻から多くの国々を守ったとしてオルセアは「剣聖」という称号が与えられた。
だがその侵攻が収まったとなれば、次は妻の故郷であるベルムランドの侵攻が始まる。
そして魔物の大侵攻の際に結成された勇者パーティも、軍事利用されるのは明らか。
そう分かっていたオルセアは、勇者パーティを解散させ、「研鑽の旅」と称し国から離れさせた。
オルセアもグランゼル王国を離れ、この森に移り住んだのだそうだ。
表向きは国民に対し、英雄が誕生したという華々しい話題と、平和を築いたという国力の誇示。
しかし裏側は、外交圧力とベルムランド王国侵攻のシンボルとして「剣聖」を利用しようとしていたって事か。
剣聖が国に居れば軍の士気が上がり、さらに勇者パーティも加われば向かうところ敵なしだろう。
オルセアが語りたくなかった理由が今はっきりと分かった。
そしてそれに運悪く巻き込まれてしまった勇者セリオン。
オルセアが抱えているセリオンへの思いは、僕が想像できない程のものだろう。
そしてオルセアはこの先どうしたいのか。
オルセアはその思いをゆっくりと話し始めた。




