表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/65

ー3章ー 2話 「勇者の死、剣聖の沈黙」

異様に圧力のある重装備の騎士が三人、馬に跨って村に現れた。


こんな人里離れた場所に一体何をしにやって来たのだろうか?


僕は余りの圧力に足が震え動けなくなってあたが、騎士たちが近くまでやってくるとその顔がはっきりと視認できた。


先頭の男は顎髭を蓄え、鋭い眼光を放っていたが……どことなく優しさを滲ませた顔立ち。


所謂悪人のそれとは違うのは何となく分かった。


……それにしても大きい!


分厚い鎧を身に纏っていても分かる、鍛え上げられた鋼のような肉体……威厳のある風格。


一体何者なんだ?


ただ立ち尽くす僕に、少しだけ目が綻んだ表情で彼は問いかけてきた。


「坊や、オルセア様は居らっしゃるかな?」


野太い声で優しく話しかける男。

その声色からはカリスマ性が感じ取れ、何と言うか人の上に立つ存在の模範のような人物だった。


彼は僕の状態を察したのか、馬から降りてこちらへやって来る。

そしてしゃがみ込んだ彼は僕の両肩をポンと叩いた。


その瞬間、何故かは分からないが足の震えが嘘のように止まり、動けるようになっていた。


「済まないね、怖がらせてしまったようだ」


やはり悪い人ではなさそうだ。


僕は急いでオルセアの元へと走った。

オルセアは畑で作物の収穫をしているはず。

それにしても同じ村の中で、緊張感のある場所とのんびりした場所が混在しているのが何だか不思議に思える。


「オルじい!鎧のお客さんだよ!」


名前を聞くのを忘れたので特徴を伝えたが、オルセアの頭に「?」が浮かんだであろう事は表情から察しがついた。


僕は怖いもの見たさもあったが、何者なのかを知りたくてオルセアと一緒に村の入り口まで同行した。


到着すると全員が馬から降りており、片膝を付いて待っていた。


「ご無沙汰しておりますオルセア様。ローデン・バルグレイヴ、北方の調査より帰還いたしました」


礼儀正しい挨拶は、メルフェリアさんの時と同じだった。


ひょっとして、この人も?


「おおローデン、久しいな!無事で何よりだ」


オルセアはローデンさんとの再開を懐かしんでいた。


メルフェリアさんは確かこの村に結界を張ってくれたから、ローデンさんは……村の警備?


来訪の理由を勘ぐってみたが、浅はかな答えしか浮かばなかった。


暫く旅先の話をしていたが、ひとしきり話終えるとローデンさんの顔付きが変わった。

そして口をついた言葉は、オルセアの笑顔を奪い去った。


「お伝えしにくいのですが……勇者セリオン・アーディアは、隣国との争いの最中……命を落としました……」


オルセアは言葉を失っていた。


瞳は光を失くし遠くを見つめていて、心は闇に囚われているかのように見えた。


……よほど大切な人だったのだろう。


肩を落とすオルセアなんて、今まで見たことがない。

心中は如何程のものか……かけてあげる言葉が見つからない。


暫くの沈黙の後、オルセアはようやく口を開いた。


「すまんな、ローデン。情勢は知っていたんだ……しかしセリオンがこうなるとは……」


オルセアはこうなった概要を知っていたようだ。


僕は黙って二人の会話を聞いた。

事の発端は、この森にオルセアが移り住んだすぐ後に起こったようだ。


グランゼル国王は、隣国であるベルムランド王国の鉱物資源を以前から目を付けていたそうだ。


鉱物資源が豊富なベルムランド王国とは、以前から取り引きをしていたが、採掘量の低下から年々価格が上がっていたと言う。


グランゼル国王は取り引きが不当だとし、ベルムランド王国の鉱山を奪おうと密かに画策していた。


ただ、魔物との争いが激化していた当時、隣国に攻め入る余裕はなかった。


オルセアと勇者パーティが魔物との争いを沈め、勇者パーティが解散したのを機に、グランゼル王国が侵攻を開始。


勇者パーティ全員を引き込む事が難しいと判断したグランゼル国王は、勇者セリオン・アーディアを王国軍統括に命じ、有無を言わさず戦いに参加させたのだそうだ。


それから5年が経過し、争いは拮抗していたのだが、一点突破を試みたベルムランド軍がセリオン部隊に対し、全方位による奇襲攻撃を断行……数の差で押し切られたセリオン部隊は、応戦虚しく全員戦火に散ったそうだ。


何とも言えない気持ちが僕を支配していた。


世界を救った勇者に、国の私欲で起こした戦争へ無理矢理参加させるなんて……。


するとメルフェリアさんが、子供たち三人を連れて村の入り口へ現れた。


「あら?ローデンじゃない!」


声を掛けたメルフェリアさんだったが、場の空気からただ事ではないと直ぐに理解した。


沈黙が続く中ローデンさんが顔を上げ、意を決し重たい口を開いた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ