ー2章ー 25話 「結界の森と、迫る気配」
広場の中央でメルフェリアさんは魔法陣を展開した。
赤い光は森中を包み込み、やがて収束していった。
こんな大規模な魔法は初めて見た。
流石、大魔導師と呼ばれているだけの事はある。
こんな凄い人の才能を見抜いて育てたオルセアも相当凄いのだが。
それはさておき、今やった魔法に一体どんな意味があるのだろう?
僕らに直接作用するようなものではなさそうだけど……考えても分からない。
「ねぇメルフェリアさん、今の魔法はなに?」
聞いてみた方が早いので尋ねてみると、大規模結界魔法だそうだ。
意味は分かるけど、なぜそんな結界が必要なのかが謎である。
この三年間、森で過ごしてきたが特別危険なことはなかった。
多少イノシシは出たけど、それを除けば平和そのものだ。
……なのになぜ?
不思議そうな顔をしている僕に、メルフェリアさんは続けて答えてくれた。
「この世界にはね、魔物が居るの。アレンのおじいさんだけでは、いざと言う時に守りきれないでしょ?」
え、魔物!?
僕は平和な日常を過ごすあまり、その可能性がある事をすっかり忘れていた。
小さな世界で生きていると、外で何が起きているのか、何が存在しているのかが全く情報として入ってこないし、近くにあるという王都の事でさえ、詳しく知っている訳じゃない。
何となくだけど僕らが将来対峙するのは、やはり魔物?
それに備えて強くなりなさいと言われているのだろうか。
その答えは以外にあっさりと分かった。
「アレン、いずれお前達は魔物と戦うことになるだろう。だが、まだ幼い……今はそうなる事を知っていればいい」
口調からすると、もう少し後で話したかったのだと思った。
三歳児が受け止めるには少々重い話だ。
でも僕としては今聞けて良かったと思っている。
人間なのか、魔物なのか、はたまた別の存在なのか……何を敵として迎え撃たなければならないのかが分からなければ、対処の仕様がない。
そしてこの大規模結界は、魔物の侵入を防いでくれる、王都にも使われている魔法だそうだ。
メルフェリアさんいわく、完全ではないが現存する結界魔法の中では、最強の防御力なんだとか。
そう聞くと安心できるけど、一つだけ気になる事があった。
……それは、なぜ今結界を張ったのかだ!
三年間魔物に遭遇していないという事は、この付近に魔物が居なかったからだろう。
もちろん僕らが知らないだけで、人知れずオルセアが倒していたという可能性はある。
そして王都を守る程の強度を誇る結界をこの森に張った理由……これは何か異変が起こっていると考えるのが自然だ。
しかし僕はまだ三歳児。
あまり深く詮索すると怪しまれるだろう。
幸いこの森には、英雄と謳われた剣聖オルセアが居る。
今はオルセア達に任せて、僕らは自分の事に専念した方がよさそうだ。
また一つ、この世界の事について知ることができた。
あまり良い内容ではなかったが、目指すべき事ははっきりしたと思う。
僕はこの日を境に、剣術の練習時間を大幅に増やしていった。




